どけ!!俺は出久のお兄ちゃんだぞ!! 作:俺もお兄ちゃんだぞ!!
これ入れて35話なので終わりは最終章は10話+エピローグ辺りですかね。だいたい戦闘シーンで4話くらいの計算にしてるので。
呪術廻戦でいう懐玉・折王だから仕方ないね(言い訳)
ただこのまま原作ラストまでじっくり書くと完結まであと250話くらい必要になるとかいう恐怖しかないので最後まで行くかは分からないな。もしかしたら神野辺りで終わるかもしれないし続くかもしれない。そうなったら90話くらいかな? 知らんけど。
ただ最終章に入った時点で緑谷転間の物語“は”10話くらいと思ってもらっていいです。
お兄ちゃん編を今まで何をテーマにして書いていたのかはある場面で発表したいですね。
ということで始まったわけなのだが、一般人ならともかく雄英に入るようなやつらだ。
一般人同士がやるとどうしても運動神経が高い人間ほど有利になるが、この面子では運動神経が悪い(当社比)になってしまうわけで。
つまり。
個性が無い分はマシだが、どいつもこいつもクソ面倒臭いということだ。
「きゃっ!?」
飛んできた水に対し、うみちゃんの腕を引き寄せて避けさせると、ピストル型の水鉄砲でガンスピンをしながら薙ぎ撃ちで撃ち抜く。
「ぐえぇ!?」
「やられたンゴ……」
「なにその撃ち方!?」
何人か殺ったようだった。
軽い分やりやすいな。
サポート科が作ってるだけあって、ライフルモードに切り替えられるとかいう無駄な技術が使われているが。
「は、はわわわわ――っ! む、むむむ胸板……っ!!」
何やらうみちゃんがパニックに近い状態になってる気がするが、踊るように動くことで放たれるライフルの水を次々と避けていく。
「わ、っ。あ、ごめんなさい!!」
芸能活動に向けての授業があり、ダンスもまた授業のひとつ。社交界に出る必要もあるため、社交ダンスも身に付けていて損はない。
中には戦うダンサーも居るらしい。攻撃が当てずらそうだなとは思った。
が、授業で習った俺と違ってうみちゃんは初見だ。
うみちゃんは俺の足を踏んだことに気づいてすぐに謝ってきたが、ぶっちゃけ全然痛くないのは彼女が軽いからだろうか。
「大丈夫だ。うみちゃん軽いしな。力を抜いて身体を預けてくれ」
「へぁ……っ、は、はぃいい……っ!!」
だがミスをフォロー出来なくてどうするか。
距離が近くなのもあって彼女の耳元で囁くような声に感じになってしまったが、当然授業で習った後にひたすらやりまくって身につけた俺に隙はない。
それも、いずれ出久にダンスを教えるために――。*1
それはそうとこのゲーム。
某イカゲームを思い出す武器種だが、遠くから狙われてることに気づいた俺は砲身を展開する。
『RIFLE』
なんか機械音声が聞こえた。
相変わらずの遊び心に呆れるが、スナイパーライフルを避ける。*2
おい、水じゃなくてインクじゃねーか。ガチでイカのゲームにするなよ、これ個性かよ。
ルールの穴をさらっと突くとはこの俺の目を持ってしても見抜けなかった。
『CHARGE』
説明書に書いてた通りの動作をすればいいため、打鉄を引く。
するとなんかチャージされた。
水をチャージするってなんだよ。ハイドロポンプでも撃つ気かよ。
しかしこのなんかよくわからないチャージしたものをそのまんまにしてると俺とうみちゃんが負けるかもしれない。
ミリオ曰く安全性はあるらしいし大丈夫だろう、とトリガーを引いた。
『TACTICAL SHOOT』
すると水玉が連射される。
えっ、なにこれ。
お兄ちゃんパワーは個性判定だろうと使ってないとはいえ、思わず両手で握りしめなければ手が持っていかれるほどの反動。
「ギャーッ!」
「虻!?」
もう完全に実銃のそれなのだが、威力は適正にされてるみたいだった。
それよりも俺の腕にだけ異常なダメージが入った件について。
これ俺以外が扱える? 他だと鬼垣や環、増強型もしくはパワー型の異形型くらいだろ。
そういや注意書きに使ったら反動がやべーから絶対に使わないでね。絶対使わないで。気をつけてね♡とか書かれてたな……ムカついて破り捨てたんだった。
そもそもそれは使えってことでは?
これがカリギュラ効果か……。
「流石緑谷さん……!!」
目を輝かせて俺を見つめてくるうみちゃんに苦笑いしか出来ない。
誰だよこれ作ったアホ。
もっと安全性を向上させるようにアドバイスしよう。威力は本当に大したことないけど反動だけ無駄にデカすぎる。
「さて次はうみちゃんが頑張ってみようか」
「がっ、頑張ります!」
それはそうとやろうと思えば俺一人で勝ててしまうのだが、あくまでゲームだ。
後は彼女を守ることに徹して、楽しんでもらうとしよう。
「くたばれみど」
「うるさい」
「シンプルにひどい!」
狙いが上手くいかずに外した結果、その隙を突いたのだろうがあっさりと俺が撃破すると、うみちゃんはあからさまに落ち込んでいた。
「うう、下手くそですみません……」
「誰だって初めはそんなもんだって。そうだな、触れて大丈夫か?」
「は、はい」
「よし、じゃあ」
許可をもらったので彼女の背後に回ると、腕を伸ばして彼女の手首を掴む。
急に掴んだからかビクついたのが分かったが、すぐに身を任したようだ。
こう言っちゃアレだが、彼女は少々無防備で心配になる。
「本物の銃じゃなくて水だ。誰も傷つかない。まず深呼吸して、持ち方を変えよう」
そのまま手を動かして、彼女は利き手が右であるため、右手でグリップを握らせる。
次にサポートハンドにするために掌低をグリップに密着させ、右手と同様にできるだけフレームの高い位置を握らせる。
右親指を少し上げ、サポートハンドが密着できるスペースを確保させる。
次にサポートハンドの人差し指はトリガーガードの下に押し付けさせた。
「利き手は3、サポートハンドは7の配分がいい。といっても水鉄砲だから力の配分はさほど気にしなくていいけど。次に足」
「ひゃ、ひゃい!」
「右足を半歩後ろに引き、つま先を45度外側に。左足のつま先は目標方向へ。乗せる体重は両足の親指の付け根に均等に配分させて」
足の方がしっかりと指示通りに出来てるのが分かる。
ただ少しズレていたので、軽く手で太ももを押すように動かして微調整。
「それから両膝を軽く曲げることで腰を落とし、肘も軽く曲げる」
「射撃姿勢の基本は自然体であることだ。首を傾げず、銃を目線の高さまで持ち上げて、銃のサイトを覗きに行くのではなく自分の目とターゲットの間にサイトを置く」
ちょうどよくこっちに向かってくる的が居るため、狙いを安定させる。
「最後にトリガーは指の腹で真っ直ぐ引くこと。感覚としてはそうだな、ボタンを押すイメージ」
「後はタイミングだ。今回は俺が防御するから避けることは頭の中から消していい。相手がどう動くか考えて動きを先読みし、こちらの一撃を当てるにはどうするか。計算すればいい。風の流れ、相手の呼吸、砂の足音、距離――」
こちらの狙いに気づいたように、横に跳びながら連射して撃ってくる。
正面から撃っても無意味だからこそ、横に移動しつつ連射することでひとつでも当てる魂胆なのだろう。
狙いが正確でなければ不可能だが、元々遠距離系の個性なだけあってあまりに正確だ。
正直俺でもやれるか怪しい。
が、水は俺たちに届くことはない。
次々と水が目の前で静止し、全ての水が届くことなく落ちた。
受け身を取って着地したのを視界に捉えつつ、彼女の指を押し込むことでトリガーを引かせる。
「ギャピ!?」
「とまあ、今回は安定性重視で動かなかったけど、本来は動きながらだから狙いはズレる。その時は調整しないといけないが――普通に狙う分にはこんな感じだな」
正直構え方とかには正解はないし俺の知識は水鉄砲ではなく実銃なのだが、説明を終えたので離れると何故かうみちゃんがその場で崩れ落ちるように両膝を着いていた。
水は当たってないはずだが……? 耳が真っ赤になってるし、心做しか息も乱れる気がする。
「大丈夫か……?」
「だ、大丈夫です……。その、耳が……あの、幸せすぎて……」
「そ、そうか……」
よく分からないが、楽しかったということか。*3
とにかく立たせると、何となく分かったようなので再び見守ることに専念しよう。
もう個性使えないから水を水で迎撃するようにするか。*4
「転間助けて!!」
「あ? おいバカこっち来るな向こういけ!! お前は敵だろうが!」
「そんな酷いこと言わないでくれよ! 友達だろ!?」
「友達なら敵を引き連れて来るんじゃねーよ!」
そう思ってたらミリオが数人に追われていてこっちに全力で向かってくるため、俺は咄嗟にうみちゃんを抱えて全力で逃げた。
さらに別のところではねじれと甲矢が暴れてるようだ。死体が出来上がっている。
やってんなぁ。
そういやあいつら2人ともメインが遠距離だしな。バレないように大人しくしとこう、相手するのは面倒だ。
ただこのままだとイツメンが残りそうだな……環どこいった?
普通にミリオの後ろに居た。
お前もこっちにくるのかよ。今は敵同士だし下手に近づかないからな。
ゲームのルール上、信じられるのは相方だけだ。
「わ、わたし……し、死にそうです……」
「何故!?」
まさかの発言に思わず止まってお姫様抱っこで抱えたままのうみちゃんを見ると、顔を真っ赤にして体を縮こませていた。
俺の視線に気づいたのか顔を両手で覆っていたが――マズイ、体調崩したか……!? 熱中症か!?
「あーっ!! 転間くん!! ズルい!!」
「やべ」
気を取られた隙にバレた。
よし――
「ミリオ、俺たちは友達だよな? 一緒に逃げよう」
「いやーちょっとそれは勘弁して欲しいかな」
「お前数秒前の自分の発言に責任持てよ!」
「転間にだけは言われたくないんだけど!?」
こいつ、ねじれを相手にするより複数人相手した方がマシというのか……!!
俺もそうだよ。
「頑張れ!」
「裏切り者!」
「ミリオは誘ってた……最初に断ったのは転間だと思う」
「それは否定しない」
「しないんだ……」
「だが水に流せ」
「水合戦だけに?」
「そこを動くなよ、撃ち抜くからな」
「ごめん嘘!! 今転間まで敵に回したら終わる!!」
「同感だ」
「過大評価どーも」
「過小評価しすぎでしょ」
「転間なら過大ではなく十分な評価じゃないか……?」
「お前にだけは言われたくないよ環」
「環も凄かったんだよね! もうたっくさん迎撃してた!」
「やっぱ仕留めとくか」
「ひえ、やめてくれ」
「――ぷっ」
「ん?」
「へ?」
「……?」
一緒に逃走しながら話してると、突如噴き出すような音に反応した俺達の視線が音の発声源、うみちゃんに注がれる。
「ご、ごめんっ、なさい――ふふふ」
くすくすと可笑しそうに笑う彼女に俺たちは顔を見合わせる。
はて……?
「何か面白いことをしただろうか。そんなチャンスがあったらあのミリオが逃すはずないが……」
「転間は俺をなんだと思ってるのさ」
「心を、読まれた……っ!?」
「口に出てただけだよ……」
「マジ?」
「マジ」
「うん」
後ろから水が飛んできたので、軽く水鉄砲を頭上に投げて反転させながら見ずにトリガーを引いて迎撃するが、まさか心の声を話していたとは。
油断しすぎたか……!
「さらっととんでもないことをしてるのに俺はツッコんだ方がいいのかな」
「あははははっ。本当に仲良しさんですね、三人とも。なんというか気軽に話し合える仲と言いますか……素敵な関係性です! それにこんな状況なのに自然体ですし、楽しそうで……なんだかそれが可笑しくて」
「ライバルで親友だからね! そんな相手が近くにいるんだから、むしろ一人でいるより安心出来るってもんじゃないかな!」
「転間が居たら何とかなるから……」
「さらっと俺に全部丸投げするんじゃねーよ。まぁ別に命の危機でもないし。何とかなるだろうしな。楽しんでは無いが」
「そういうことにしておきますっ!」
「俗に言うツンデレってやつだね!」
「ミリオお前の髪の毛全部剥いでやろうか。多少は面白くなるだろ」
「こわっ!?」
まあ、負けるつもりなど毛頭ないとはいえ。
普通に会話してただけだしな、いつも通り。
うみちゃんの反応が腑に落ちないけど。
「それに私も緑谷さんが居たら安心出来ますから。何があったって絶対に何とかしてくれるって。私はずっとそう信じてます」
「だってさー転間。まさかうみちゃんにこんなこと言われて何もしないとかないよね? 男としてもさ」
「この野郎……。 まぁ、どうせ逃げたって状況は変わらないんだ、やってやるよ。その代わり裏切るなよ」
「絶対しないって! それに俺も戦うからね!」
「俺も力になる。どこまで力になれるか分からないけど……」
足でブレーキを掛け、砂を派手に散らしたか気にせずにうみちゃんを降ろすと振り返りながら守るように手を後ろにして彼女を背後に回した。
もうほぼ全員集まってる気がするが、俺の左右にミリオと環が並んだ。
競技も変わってる気がしてきた。
なんであっち側協力してるんだよ、成績上位者が集まってたら協力して狙うか、納得。
実際にやるとなると不利だが――
「行くぞバカ共……! 水の貯蔵は十分か!」
誰が相手だろうが、そこに守るべき者が居るならばヒーローは負けることなど許されないものだ。
俺たちの戦いはこれからだ!*5
――ひとまず完全にシュートスタイルを身に付けることになった僕は何度も反復練習することになった。
シュートスタイルからファイトスタイルへのスムーズな切り替え。
出力のコントロール。
常時15%で上限突破。
コンボへの繋ぎ。
今の僕が身につけなければならない要素を博士が考えてくれた。
オールマイトは何かあった時のためやアドバイスのために見てくれて、感覚的なものを博士が翻訳してくれる。
そのお陰で昼過ぎにはだいぶシュートスタイルも物になってきたと思う。
足りないものを補う。ずっとやってきたことだ。
一撃一撃がオールマイトに劣るなら機動力。その分ぶつければいい。
フルカウルだって機動力を底上げした状態なわけだしね。
一旦昼休憩ということで終了し、昼食を摂ることになった。
部屋に戻るとメリッサさんが用意してくれていたみたいだった。
「あ、おかえりなさい。お疲れ様」
「ああ、ありがとうメリッサ。準備をしてくれてたんだね」
「うん、ちょっとこっちも行き詰まっちゃって。時間も時間だったから軽いものだけどね。それよりイズクくんはどんな感じ?」
「緑谷少年は順調さ。新しい自分の形を見つけたみたいでね!」
「そうなの? おめでとう!」
「ありがとうございます。でも……まだまだです……!」
「謙遜することはないさ、確実に1歩歩めている」
そうは言ってくれるけど、まだ完全に身につけたわけじゃない。
もっともっと頑張らなくちゃいけないんだ。無理をしない範囲で、ギリギリまで。
「しかし本当に基礎がしっかり築き上げられているね」
「はい、ずっと兄が僕の面倒を見てくれましたから」
兄だけど、ある意味僕の師匠でもあるのが転間兄ちゃんだ。
転間兄ちゃんの個性は僕が1番見てきたと自負出来る。時折サポートアイテムに活かせるように、と個性の感覚も言語化してくれていた。
まさか個性を与える個性があるなんて思わないだろうし、僕が個性に目覚める可能性までは考えてなかったと思うけど。
「イズクくんのお兄さんか……そこまで言われると会ってみたくなるな」
「私もまだ会ってないんだよね」
「機会があれば僕も紹介したいですけど……」
雄英生なのもあってどうしても時間が合わないことが多い。
転間兄ちゃんは予定を空けてくれるかもしれないけど、ただでさえ高校に上がるまでずっと僕のために時間を使ってくれて、今も使ってくれてるのに無理に言いたくない。
「そういえば今メリッサがやってる作業もお兄さんが作ったものだったね。どんな感じだ?」
「それがまだ全然終わってないの。イズクくんには申し訳ないんだけど、もしかしたら間に合わないかも……あっ、でも雄英に入学するまでには絶対に間に合わせるから!」
「いえ、無理をしないでくれればいいですから。僕、使う予定まだありませんし……念の為に渡してくれたものなので」
「ごめんね……」
申し訳なさそうにしてくるけど、全然気にしていない。
サポートアイテムに頼りきりになるのは実際に良くないし、個性があるなら尚更そっちを鍛えないと。
ただ本当に転間兄ちゃんどうやって作ったんだろう。
ここ最新技術を取り扱うところなんだけどな……。雄英の設備も凄いんだろうけど。
「どれ、僕も力になろうか。イズクくんはトシに任せて大丈夫だろうしね。やることは既に決まってるから」
「ああ、誰かが見ていた方がいいからね、緑谷少年は私に任せてくれ」
「うーんちょっと悔しいけど、イズクくんのためならその方がいいか……うん、パパも見てくれる? 本当にすごいのよ!」
「はは、メリッサがそこまで言う程か。じゃあ早く食べないとね」
「あの、本当に無理はしないでいいですので……」
「いやいやイズクくん。僕も技術者だ、血が騒ぐと言えばいいのかな。僕もメリッサもやりたくてやってるんだ、気にしないでくれ」
そういう博士はなんだか新しい玩具を見た子供のような目をしていて、嫌々やってる訳じゃないというのは分かる。
「それに僕、イズクくんがサポートアイテムを使ってた時から気になってたんだよ。僕から見ても悪くないどころか良い物だと思えるほどの出来だったからね」
オールマイトの言ってた通りだ。
なんだろう、兄が認められてるようで嬉しくもあり、誇らしくもある。
そこまで言われてグチグチと言うのは違う気がする。
「分かりました……お願いします。ただ本当に、急ぎでは無いので」
「分かった、その分気合いを入れるとするよ」
「うん、絶対良いものにするわ!」
「はい。楽しみにしてますね!」
それから僕はひたすら反復して、帰宅の準備をすることになった。
結局完成はしなかったみたいでまた謝られてしまったけど、そもそも1日で完成するものとは思っていない。
学べることは多くあった。
無個性だと診断されても、全てを諦めず目標を見つけて突き進んだ心の強さ。
戦ってるのはヒーローだけではないということ。
サポートアイテムを作るのは本当は途方もなく大変で難しいということ。
オールマイトに倣うだけではダメだということ。
本当に、様々なことを。
ここに来れてよかった。周りには似た、同じ無個性の人なんていなかった。
僕には転間兄ちゃんが居て、メリッサさんにはデイヴィット博士が居た。
向かう目標は違うけど、僕もメリッサさんも似たようなものだ。
勝手に抱いてるものだけど、仲間意識って言えばいいのかな。
似た環境と似た境遇。
自分以外と出会えて少し嬉しくもあって悲しくもある。
「じゃあデイヴ。メリッサ。私たちはもう帰るとするよ」
「元気でね、オジサマ!」
「くれぐれも無茶をするなよ。それとイズクくんのことはちゃんと報告してくれ」
「HAHA、頼り切りになっちゃうな」
「トシはむしろ周りを頼るべきだと思うがね」
またしばらく会えなくなるだろう。
ハグし合う二人の姿に写真を撮りたい衝動に駆られた。
「イズクくんも頑張ってね。入学するまでには完成させるわ」
「はい、メリッサさんもお元気で。でも入試もまだですし入学出来るとは……」
「絶対に出来るわ。だってイズクくんなら素敵なヒーローになれるって私確信してるもの。だから応援してるわ、未来のヒーローさん」
そう言って僕の手を包み込むように握って微笑むメリッサさんに、顔に熱が集まる感覚があった。
だけど。
「め、メリッサさんも……頑張ってください。博士のような、凄い技術者になれると僕は何があっても信じてるので。作業してる姿を見てましたけどあれほどひたむきに頑張っていて、向き合えるメリッサさんなら必ず大丈夫だと思ってますから!」
「イズクくん……」
「なので、その、言いたいことはですね……お、お互い頑張りましょう!」
「……うんっ。次に会う時はお互い成長してるところを見せられるように、ね。多分来年になると思うけれど――待ってる」
「はい!」
結局2日も居なかったけど、濃い時間だった。
名残り惜しく思うけど、永遠の別れというわけではない。
帰ったら転間兄ちゃんに改めて感謝しなきゃ。
「それでは行くとしようか、緑谷少年」
「はい! ありがとうございました!」
見送ってくれた二人に頭を深々と下げ、僕とオールマイトは帰るための飛行機に乗り込む。
この出会いがあったから前に進めた気がする。
それでも、まだまだ前に進んでいかなきゃ。
――あれからより激化していき、死屍累々になっていたが結局ねじれとミリオと環と俺が残って俺が普通に勝った。
正確にはうみちゃんは無事だったので最悪相打ちに持っていくつもりが、まさかあの使いづらい反動のライフルモードに助けられるとは。
でも反動は直してもらおう、普通に危ない。
そんなこんなで、最後にゆったりと過ごした俺たちは帰ることになった。
どうやらお店の方も無事に終わったらしい。
ただ普段以上に忙しかったと言われてしまったので多分俺たちのせいです、すみません。
けど俺らが居ないのに客が来たってことはあの店自体がそれほどに良いってことだ。
うみちゃんが楽しんでたこと、怪我も特にないことを伝えたら変なこと言われたがよく分からないので曖昧な返事をした。
もちろんうみちゃんにも店のことを伝えたら、胸を撫で下ろしていた。
「もう終わりか〜もう1泊しない?」
「しない」
「まー厳しいしねぇ」
「悔しいなぁ〜あとちょっとだったのに」
「ね! 転間を倒そうって思ってたんだけどなぁ」
「ねじれを相手にした時は環が居てくれてよかったって思った」
「力になれたかは怪しいんだが……」
荷造りを完了したクラスメイトたちに次々と忘れ物がないか聞いて、一応俺も各荷物があった場所を見るが特に落し物とかなさそうだ。
先に行くように伝えた俺は最後の用事を済ませるために動く。
俺の荷物は少ないため、片手で持ち上げる量しかない。
なので片手で持ち上げる。
「もう行っちゃうんですね……」
「流石にこれ以上残ると帰りの電車がな」
そうして改めてうみちゃん――と見送りに来た家族と向き合う。
わざわざ店の片付けを後回しにして来てくれたらしい。
正直こっちが勝手に関わったものなので、そこまでしなくてもいいとは思ったのだが。
ただたったの1日と半日でしかないが、かなり濃密な日々だっただろう。
まさか俺も見知らぬ土地で働いて、そこに働く少女と過去に会っていてここまで親しくなるとは思わなかった。
「私たちは別に泊まってもらってもいいのですけれど」
「そうそう、雄英の皆さんなら大歓迎だ」
「気持ちだけ受け取っておきます」
そう言ってくれるのは嬉しいが、それぞれ帰らなければならないところがある。
それが伝わったのかは知らないが、うみちゃんの両親は残念そうに、それはもう残念そうに引き下がっていた。
滅茶苦茶残念そうなんだけど。
「緑谷さん……」
「うみちゃん」
彼女の背に合わすようにしゃがむと、明るい顔は鳴りを潜めて眉は八の字になっていた。
何処か落ち込んでるような、そんな様子。
「楽しかったか?」
「え……は、はい。それは、もう。こんな日々が続けばなって」
「そっか。俺もさ、ここに来て良かったと思えたよ。俺の行動には意味があって、忘れられない――幻想的な景色を君と見ることが出来た」
「……はい」
思い出としては十分すぎるものを貰っただろう。
少なくともここでの出来事は俺はそう簡単に忘れることは無いと思う。
けど、別れがこんな別れ方では思い出も綺麗ではない。
彼女にこんな顔をさせたまま別れるわけにもいかない。
最高のヒーローを目指す者が女の子一人悲しませたまま何処かに行っては名折れってやつだ。
「……別に永遠の別れってわけじゃないんだ。いつだって会える。少なくとも来年にはまた、みんなでここに来れたらと思ってる。もし全員は無理でも、何人かで」
「本当、ですか……? また、会えますか?」
「会える。俺はこんなことでわざわざ嘘はつかない」
「そう、ですよね」
一期一会とはよくいったものだ。
しかし一度繋がった縁はそう易々と切れるものではない。少なくとも俺と彼女の縁は割と強いらしいしな。
「悩みがあったり苦しいことがあったり辛い時があったり――ただ純粋に話したくなったらいつだって俺に連絡してくれればいい。確実に出られるとは言えないしすぐ返せるとは言えないが、遠く離れていたって話すことはできる」
「はい……その、たくさんメッセージするかもしれません。連絡するかもしれません。迷惑になるかも、しれません」
「迷惑だなんて思わないって。うみちゃんだって友達と連絡するのに迷惑だとか思わないだろ」
「そ、それはそうですけど……」
「……うみちゃん。俺はヒーローを目指す。うみちゃんは料理人を目指すんだろ。次に会った時は、今より料理が上手くなってる姿を見せてくれ。俺はもっとすごいヒーローになってるから、絶対」
「今よりも……上手く……」
「うみちゃんなら必ず、人を笑顔に出来る料理人になれるよ。少なくとも俺は君が働いてる姿を見て、一緒に料理する姿を見て、そう確信した。笑顔が似合っていて、誰よりも明るい君だからこそ、人を笑顔にできる。人のことをしっかりと見てる君なら、絶対に。人の本質を見極めるその目は財宝だ。だから俺から言えることは一つだ」
彼女に対して、“頑張れ”と言う言葉は間違っている。
彼女に告げるべき言葉はきっと、こっちの方なのだろう。
「君はきっと……いや必ず凄い料理人になれると俺だけは信じ続けてる。そして誰よりも、うみちゃんを応援してる。それだけは忘れないでくれ」
そう告げて、うみちゃんの頭に手を置いてゆっくりと撫でた。
真っ直ぐにこちらを見つめてくる彼女が嬉しいような寂しいような入り交じった感情になっているのが分かった。
「……そうだな」
それを見て何かないかと自分の体を見て、荷物を降ろすと油性ペンを取り出してから着込んでいた上着を脱いでうみちゃんにそっと被せる。
今思い出したが昨日渡した上着ねじれに渡したままか。まぁいいか。買えばいいし。そのままあげよう。
「緑谷さん……?」
「大したものは持ってないけどさ、これで少しでも頑張れるかなって」
それより無地な生地でよかった。
元々柄とかどうでもいいと思っていたのもあるが。
ただファンだという彼女にはきっと、これが1番だろう。
意図を理解していない彼女に服を見るようにジェスチャーすると、掛けた服を手に取って広げていた。
「これは……」
「――俺のサインだ。考えてなかったから今まで名前だったんだけどな。こうやって書いたのはうみちゃんが初めてだよ。まぁ俺が着ていた上着だから本当は別の方がよかったかもしれないが……」
「い、いえっ! それは全然! むしろ――な、なんでもないです。で、でもっ私がその、初めてをもらってもいいんですか?」
「ああ、うみちゃんが良いなら貰ってくれ」
「……っはいっ!」
宝物を抱くように抱きしめる彼女は先と違って涙が目に浮かんでいたが、それは悲しみの感情とは全く別のものに思えた。
これならきっと、大丈夫だろう。
「それじゃ、俺はもう行きます。うみちゃんのご両親。湊さん。短い間でしたが、お世話になりました」
「そうか……もし寄ることがあったらぜひ声を掛けてくれ。その時はもっと話をしよう」
「いつでも待っていますので。すぐ飛んできますからね、緑谷さん」
「本当にありがとうねぇ。うみの面倒まで見てくれて……本当に」
「いえ。……うみちゃんも元気でな」
「はい……緑谷さんも、お元気で」
改めて鞄を手に取った俺は頭を下げて、振り向いて駆け足で皆の元へ向かう。
「もういいの?」
「ああ、悪かったな。お前らはよかったのか?」
「うみちゃんと1番話してたのは転間じゃん。きっとうみちゃんも最後は転間と話した思い出の方がいいと思ってね」
「俺たちが話すのは違うと思ったんだ」
「うんうん。それに……私だったら転間くんと話す方がいいし」
「そういうもんか?」
「そーゆもんよ。あんたのこういうとこはほんと変わんないわね……だいたいブラコンっぷりが帳消しにしてるけどさ」
「よせよ。褒めるなよ」
「褒めてないわ!!」
相変わらず俺の周りはおかしいらしい。
ブラコンは褒め言葉だろ。*6
けどまあ、こいつらなりに気を遣ったってことなんだろうな。
俺が彼女に言ったことは全部本心だ。例え離れていたとしても、応援しようと思った。
彼女のあの笑顔が、消えませんように、と。
俺たちは帰り道を歩く――
「緑谷さんっ!!」
その時。
背後から聞こえた、数十秒前に聞いた声に反応してゆっくりと振り向く。
走ってきたのか胸を上下させながら見つめてくる。
「うみちゃん。もしかして何か忘れ物でもあったか?」
「えっと……手を。手を出してくれませんか」
呼吸を整えた後、そんなことを要求されたので別に断る理由もない俺は手を差し出す。
すると彼女が俺の手を両手で掴んで――
「――へっ!?」
「え!?」
「!?」
「わーお……」
急に引っ張られて僅かに体が傾くと、停止した直後に頬に柔らかい感触が残った。
“ちゅっ”と、そんな音が耳に残り、その感触が離れる頃には背伸びしてたであろう足を戻して、うみちゃんは顔を真っ赤にしていた。
「わ、私……頑張りますから! 絶対! いつか緑谷さんの胃袋を掴んじゃうくらい上手くなって、緑谷さんが笑顔に、幸せな気持ちになれるように!」
「そっ、それだけが言いたかったので……っ! ま、また会いましょうね、み……転間さん!」
そう言って逃げるように走り去る彼女を呆然と見つめ、俺は空を仰いだ。
まさか不意打ちを受けるとはしてやられたな、と。
だけど最後に見た彼女は間違いなく満面の笑みを浮かべていて、それはきっといい別れ方になったのだろう。
問題は――
「転間くん今のっ! キスされてたっ! されてたよね!?」
「ええい近い。言わなくたってどう考えたってそうだろ」
「なんでそんな冷静で居られるの!? キスだよ!?」
「うみちゃん大胆だ!」
「今のは予想外だったな……」
「あー……やっぱりそうだったのね……。もう流石としか言いようがないわよ緑谷」
「キャーッ! 今の見た!?」
「す、すごい。あの緑谷くんに不意打ちするなんて!」
「えっ、そこっ?」
「また貴様か緑谷ァ!!」
「お前らガキじゃないんだから落ち着け! 頬にキスされたくらいでここまで騒ぐものか!?」
そもそも頬にキスってのは親愛の証でもある。
いやまあ、これが歳が大きく離れた相手ってならただの親愛のキスなんだろうなーとは思うけど。2つ下で中学三年生だ。それならキスの意味も当然彼女は理解している。
その上彼女が出した、という問題。
助けられたという話。
好きな人という話。
今された、頬にキス。
そこから考えれば自ずと答えはひとつで――考えるべきではない、か。
もしかしたら違うかもしれない。あくまで可能性であり、本当にただ親愛を示すキスかもしれない。
何よりその可能性が事実だとしたら彼女に対して答えを出すのは、
「とにかく騒ぐな! 電車乗り遅れたらどうしてくれる!? 置いていくぞ!! 何より俺が弟が帰ってくる前に帰れなかったらどう責任取ってくれるんだ!?」
「くっ……! 後で話は聞かせてもらおう……!」
「そこは知らねえけど正論すぎる……!」
「迷うから置いていかないでくれ……!」
「くそっ! なぜこのブラコンばかりがっ!」
「顔か! やっぱり顔か! それとも実力か!?」
「まー成績も見た目も強さもあった方がいいよね」
「それはそう」
「なんだかんだ性格もいいしね、緑谷って」
「なんか年下キラー化してない?」
「実際頼りにはなるからねぇ」
「緑谷くらいとは言わないけどさ、もっと強くなりなー」
「ちくしょぉおおお!!」
あとはこの面倒になった奴らをどう帰還させるか、考えないといけないことだ。
話を聞こうと絡んでくるクラスメイトたちを力づくで押さえながら後ろを見ると、既に彼女の姿は居ない。
だが来年にでも会えるだろう。もしかしたら冬頃に会えるかもしれない。
人の縁ってのは意外と繋がってるものなのだから。
少なくとも切ろうとしない限りは。
けどまあ――応援してるよ。俺も俺で、頑張らないとな。
うみちゃんが、うみちゃんにとってファンだという
そうさせないために。
感触の残る頬に触れて、彼女がこれからも元気で過ごせるように、と心の中で念じた。
願った相手は、この土地に居た“妖精”さんにだが。居るかどうかも分からない神よりもこの目で見た神秘の存在の方がご利益があるだろうしな。
果たしてそれが届いてたのかは知らないが、海の、地平線の彼方で光ったような気がした。
あといい加減面倒になったので無視して置いていく。
どけ! 俺には出久を迎えなければならないという使命があるんだ! 早く出久に会わせろ!!
――僕が帰ってきた時には、もう転間兄ちゃんは帰ってきてたようで、出迎えてくれた。
ちょっと疲れてるような気がするのは気のせいかな?
「おかえり、出久。怪我は無いか? ヴィランに襲われたりしなかったか? 俺のサポートアイテムは役に立ったか!?」
「ただいま。大丈夫! 色々とお世話になったよ!」
ヴィランに襲われはしたけど、オールマイトが駆けつけたし。
僕は流石に戦う真似はしなかったけど、巻き込まれそうになっていた人を助けるくらいは出来たので、力にはなれたと思う。
特にウィップシューターには何度助けられてることか。
それよりもなんだか転間兄ちゃんの顔は晴れやかというか……そう、海に行く前よりもさらに頼り甲斐があるようになったような……成長したっていうのかな。
そんな気がする。
僕の兄はこんなにも頼もしいんだぞって自慢したくなる。
「転間兄ちゃん」
「ん?」
僕の荷物を持ってくれる転間兄ちゃんにお礼を言いながら靴を脱いで入った僕は、ずっと伝えようと思ってたことを告げた。
「いつもありがとう。転間兄ちゃんが居てくれて良かった。僕は恵まれてるんだって、そう思ったから。転間兄ちゃんが居るから僕は頑張ってここまで来たんだって。まだまだ頑張れるんだって。それにサポートアイテムだってわかってたつもりだったのに本当は作るのがどれだけ大変かわかったから……“夢”に向かっていけるのは転間兄ちゃんか居るからなんだ。だから、ありがとう」
「出久……」
僕がそう告げると、ふわりと包まれる。
体から感じられる温もりが抱きしめられてるのだと理解する。
「おわ……転間兄ちゃん?」
「俺の方こそありがとう。俺も同じだよ。俺は出久が居るからここまで頑張ってこれたしこれからも頑張れる。大変なんて思ってないさ。弟のために行動するのが兄ってもんだからな。いつでも頼ってくれ、俺だけはずっと出久の味方なんだから」
髪を撫でられ、離れた転間兄ちゃんは笑顔を浮かべていた。
いつもそうだけど、転間兄ちゃんは僕が欲しい言葉をくれて、嬉しくなる言葉をくれる。この人が兄だから、僕はもっともっと頑張れる。
釣られるように僕も笑顔を浮かべて。
「ほら、早く母さんに顔を見せに行こうか。いつ帰ってくるのかってソワソワしてたよ」
「うんっ! ねえ、転間兄ちゃんは居なくならないでね。僕の目標なんだから!」
「出久、心配ないぞ!! お兄ちゃんはずっと出久の傍にしか居ないからな!!」
「た、大切な人が出来たりしたら僕だけに構ったりとかしなくてもいいからね? 自分の人生を大事にしてね!?」
「俺の、人生……? 俺は出久の傍で出久を見守ることさえ出来たらいいが……?」
「う、うーんそれは嬉しいけどそうじゃないというか……僕的には転間兄ちゃんには幸せになって欲しいというか……」
転間兄ちゃんってモテそうだけど、違うのかなぁ。
僕的には凄く頼り甲斐があって優しくてかっこいい大好きな兄って感じなんだけど、もしかして僕だけがそう思ってるだけとか?
それは……こう言っちゃあれだけど見る目ないと思う。転間兄ちゃんは見た目も性格も良いのに。
そう、ちょっと世間というかこの世界に対して不満は抱いたけど、一緒にリビングへ向かっていく。
その時――。
「出久も成長したみたいだな」
「え、分かるの?」
「なんとなく。何だって俺は出久のお兄ちゃんだからな!」
転間兄ちゃんには筒抜けみたいで、やっぱり敵わないなって思っちゃった。
「――あと彼女でもできたか?」
「かのっ!? で、でででできてないよ!?」
「はは、分かってるって。まぁ出久が選んだ彼女ならいいけど、その時はお兄ちゃんにも紹介してくれよ。人目見ておきたいからな」
「骨を鳴らしながら言うことじゃないよ!? それにそんな、僕なんかに出来ないと思うし……」
「なに、出久に不満があるだと!? 誰だ言ったやつ! 今すぐぶっ飛ばしてやる!!」
「わー! 落ち着いて転間兄ちゃん!」
「出久に彼女!? えっ、本当? 赤飯炊かなきゃ!」
「待ってお母さん! 誤解だ! あと転間兄ちゃんが本当に行きそうでやばい! どこに行くつもり!?」
「I・アイランドがあった場所と移動スピード、街の大きさや風向や今日の波の抵抗やパターンを算出すると――あっちだな? ここから距離にしておおよそ4――」
「待って待って、なんで計算出来てるの!? というか本当に何もないから! その、行き先で仲良くなった女の人はいるけど――」
「出久に出会いが……!!」
「出久にも春が来たのね……!」
「しまった墓穴!!」
「待て母さん。今は春じゃなくて夏だ」
「急に落ち着いた!! 転間兄ちゃんって……時折抜けてるよね……」
「へ?」
原作
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もっとお兄ちゃん読みたい
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作者の好きなようにやって欲しい