どけ!!俺は出久のお兄ちゃんだぞ!! 作:俺もお兄ちゃんだぞ!!
原作へ繋がる重大フラグその②。
忘れてるかもしれないので、①は出久の装備強化。
「――つぐつぐ思うがやはり規格外だな、オリジン」
「そうでしょ、サー。転間はすっごくすごいんだ!」
「なんでお前が胸を張ってんだよ」
俺たちの目の前には武装したヴィランが100人近く倒れ伏せていた。
なんでこうなったかというと、秘密裏に違法改造された武器の売買をしていたヴィランを捜索していたらしく、俺とミリオもパトロールしていたのだが今までの情報やナイトアイの予知を頼りに予想をつけてパトロールしていたら取引先を発見。
とりあえず取引していた人物から武器を巻き上げ、軽く脅したらあっさり情報を吐いたので警察に届けたのち、根城を見つけて3人でいざ突撃って感じだったのだが、入って早々ナイフやら銃やらロケランやら普通に殺る気満々だったので蒼で吹っ飛ばしたらこうなった。
まぁ何人かは範囲外だったがミリオやナイトアイが倒していたし、逃がすつもりはなかったので1人だったら体術も使っていたけど。
ただこの3人が揃うと、俺に攻撃が届かない+ミリオも攻撃が当たらない+未来予知とかいうヴィランにとってはクソゲーだ、運が悪かったと思ってくれ。
「とりあえず縛っといてくれミリオ」
「おっけー」
「で、ナイトアイ。予知の方は?」
「私が視た予知ではここまで色々と削れていなかったし逃げ出した者を追いかける場面だったが……見ての通りだ」
「変化しているってことか」
ナイトアイには予め昨日予知したらしい。
見つける前だったため、俺を呼ぶつもりがなかったので俺は未来に居なかったようだ。
そうしたら逃げ出すやつらを追いかける未来があったらしい。
残念ながらその未来は潰えてしまったが。
本来であればこの場合、何をしたとて逃走するヴィランは確定している。ただその予知を知って、じゃあ参加するかと参加したところ、俺の存在が未来に変化を齎したようだ。
やっぱお兄ちゃんパワーじゃないですかね。
出久の運命を変えるべく奔走していたし、なんなら既に俺の知ってる世界とは出久は違う変化をしているからな。OFA扱えてフルカウルまで使えるし。
出久の中で意識変化があったのか、身体を鍛えていたのがあるのかは俺を持ってしても分からないが……。
いくらお兄ちゃんでも心までは分からない。その心は出久だけのもので、俺が読み取っていいものでもないのだから。*1
「だがやはり変化がない時は変化しないようだ。転間、君の中で何か意識してることはあるか?」
ナイトアイは思考していたのか顎に手をやったまま俺に目を向けてくる。
ちなみに俺のことを転間と呼ぶのは弟がいるのでややこしいからそう呼んで欲しいと言ったからだ。
OFA関係者だし、いずれ出会うだろうからな。その時に二人して緑谷と呼ばれたら困る。
出久が困ったらどうしてくれるんだよ。
それで意識してることは……やはり。
「弟のために頑張る」
「いや、そうではなく」
「弟が可愛すぎる」
「真面目に聞いているのだが」
「真面目なのだが?」
俺の中は常に出久に対しての愛に染まっているからな、むしろ俺が出久のことを考えない日があれば俺の調子がすこぶる悪い証拠だ。病院連れていくべきだと思う。
「結局は不明、か。今のうちに見つけておきたかったのだが」
「スルーかよ」
「転間ー! 早く手伝って!」
「はいはい」
まだ数十人だ。
仕方ないので手伝ってやることにした。
とりあえずこいつらの位置、バラバラで面倒だしまとめるか。
というわけであっさりと事件を解決してしまった。
ぶっちゃけヴィランに同情してしまう人選だったしな。
「あのー……」
インターン生ということはサイドキックとして扱われる。
人員が少ないこの事務所では事務作業――まぁサーが昔の俺と同等レベルで作業出来るみたいだがサーが大半やってるらしく、俺も出来るので参加している。
書類に目を通して必要なところに判子を押す。
というのもヒーローというのは面倒なもので資格があっても申請書だったり報告だったり被害規模だったり他にもキリがないが、割と面倒なのだ。
それはそうと、声を掛けられたので無視する訳にはいかないだろう。
「転間くん、分からないところがあるんだけど……」
「あー、これはまた後で教えますね。とりあえず俺がやっときます」
「ごめん、ありがとう」
なんか懐かしいなあと思いながらバブルガールから書類を受け取る。
彼女は彼女で結構最近サイドキックになったようだ。
今年20歳らしいし、若いなーとは思ったな。
いや俺の方が若いんだけど、こう新入社員を見るような気持ちというか。
「というか……サー! なんで転間くんここまで出来るんですか!? まだ学生ですよね!?」
「優秀だからだろう」
「慣れてるんで」
「そ、それで終わらせていいのかなぁ」
「バブルガール。これくらいで転間のことで驚いてたらもっとすごいのを見たら気絶するんじゃないかな!」
「お前は俺の何なの?」
言い方的に誤解を招きかねない発言になってないか、大丈夫か。
もっとすごいのってなんだよ。
なんだ? 必殺技でも打てばいいのか。消し飛ぶぞ?
普通に街中じゃ使えない技だからな。
「だって、ミリオくんが言ってた通りというかそれ以上というか」
「何を言ったお前」
俺の知らないところで俺の話がされてる件。
最近くしゃみが出るのはそれが理由だろうか。風邪は引くことはない。お兄ちゃんだぞ。むしろ俺は世話をする方だ。俺が風邪を引いたら誰が出久を看病するんだよ。俺しかいないだろうがっ!
それはそうとせめて本人が居る時は隠してくれ。
「でも、転間くんはもうプロの資格も持ってるんでしょ?」
「喋るなら手を動かせバブルガール」
「まあまあ、俺がやるんで」
「そう甘やかすな……まったく」
「それより元々プロの資格については話自体はあったみたいですけどね、1年の頃に」
バカだろ。
何仮免受けさせたあとに9月で免許取らせようとしてるんだよ、アホか。
どうせ公安だろうが。
「転間だけは仮免を6月には持ってたよね」
「推薦されたせいで受けさせられたからな」
「はへ〜……すごいなぁ」
なんか立場が逆になってる気がするが、バブルガールから受け取った書類を修正したり印を押したり分けたり、と作業しながら話していた。
パソコンにもデータはあると思うが紙ベースも多いな。
パソコンの方は後で自動化出来るやつは自動化しておこう。効率よくいかないと仕事なんて終わらない。
アナログはどうしようもないが。
「デビューはしないの?」
「弟が来年入学してくるんですよ、なので嫌です」
「まさかの理由!?」
「まだ決まってないでしょ」
「は? 表出ろやお前」
「いや、今のはミリオが正しい」
「俺は二人でもいいですけど?」
何だこの野郎。
お得意の予知で視てみろよ、確定してるからな?
俺の弟だぞ、出久が落ちることなんて100%ないが、入学して来ないなら俺は雄英をやめるぞ。
ついでに滅ぼすぞ。
「弟がいるんだ。写真とかある?」
「お目が高いですねバブルガール。今俺の中で好感度が上昇しましたよ」
「それはちょろすぎるような」
「写真か。それは私も気になるな」
「俺の中で好感度が上がりましたよ」
「ギャルゲーをやってるわけではないのだが」
「もう何回も見せられたからなー」
「俺の中で好感度が下がったぞ」
「なんで!?」
そんな俺がいつも見せてるみたいな言い方しやがって……。
毎日違う写真だろうが!!
二人には俺のマイ出久フォルダーの中で最新版を出すことにした。
うーん、成長してもなおあどけなさが残っている。天使すぎる。この世が生み出した国宝だな、間違いない。
これだけはいるかわからない神に最大限の感謝をしてもいい。
「ほう、これが転間の弟か。見た限り体はしっかりと鍛えられている。体だけならばヒーローとしては十分動けそうだ。言うだけあるようだな」
「兄弟なだけあって割と似てますねー。ただ転間くんと違って正反対というか、可愛い系?」
スマホ取られた。
いや、別にほぼ出久の写真しかないからいいんだけど。たまにクラスメイトとか後輩とか先輩とか一緒になったプロヒーローとか船で騒いでるところとかあるだけだ。
だがナイトアイから見ても鍛えられてると思っているようだ。
そうだろうそうだろう。出久が努力してきたのは俺がこの目で一番見ている。オールマイトや
出久はなれると俺だけは信じて肯定した。
それが兄として生まれた俺だっただけに過ぎない。
それだけで出久はちゃんと努力し、その手に力を掴んだ。
強いだけでなく賢いのだ。何より天使だろう。
「俺の中で好感度が上がりましたよ」
「転間くんの好感度は弟くん基準なの?」
「はい」
「即答!?」
そりゃ大好きな弟を褒められて喜ばない兄は居ないでしょう。
居たらそいつはお兄ちゃん失格だ、一回殴る。
それはそうと書類が終わったため、手持ち無沙汰になっていたバブルガールに渡した。
後は流石にやってもらわないと困る。
「分からないを分からないで終わらせるより聞いてくれた方が良いので、困ったらまた言ってください。覚えるまで教えます」
「はい、ありがとうございます」
「……どっちが先輩なんだか」
「まー転間は基本滅茶苦茶優秀ですし。なんたって未だ満点以外取ったことありませんからね!」
「ミリオが言うだけある」
「雄英で満点って……何か特別なことしてるの?」
「弟に誇れる兄で居るためですよ。それ以外は特に。せいぜい他の人の倍時間使ってるくらいじゃないですかね」
主に犠牲になってるのは睡眠時間。
知らん間にショートスリーパーになってたから別にそんな寝なくてもいいし。
適応したんじゃないかな、前世で。
とまあ、気が付けばバブルガールに対して教える側に回っていたがセンチピーダーさんは優秀な人らしく俺も教わることが多々あった。
バブルガールは明るい人だが、まだまだと言わざるを得ない。若いし来年には十分仕事出来るようになっているだろう、可能性は秘めている。
ナイトアイがサイドキックにしただけあって吸収能力も高いのだ。
教えたことはすぐ学ぶし、俺が教えることも無くなるかもしれない。
ミリオとは変わらずパトロールしたり、追っている案件を解決したりと暫くナイトアイ事務所で働いていたらもう12月手前。
本格的に寒くなってきたので手袋とマフラーを装着している。
ぶっちゃけ寒さも個性で防げるんだけど、体的に良くないし俺は四六時中できる訳ではない。
脳を治しつつやったところで、持って
にしてもモフモフ。
羊に包まれたらこんな感じだろうか。やっぱあいつの個性便利だな、真綿。
寒い時には便利だし救助にも戦闘にも移動にすら使える。可能性のある個性だ。
このマフラーと手袋に関してはインターンがない日は空いてるので個性を見てるが、寒いなーと思ってたらプレゼントだとかでくれたのだ。
寒いし後輩からの贈り物なのでしっかり使わせてもらっている。見た感じデザインも見た事ないから手編みっぽいし。
他にも見てる間生み出された綿をもふもふしていたが、暖かいし柔らかいし気持ちいいしでこの俺が寝るところだった。
いや、嘘。普通に寝た。
寝る暇がなかったせいで安眠枕すら全然使えなかった俺は意外と人をダメにする系には弱いらしい。
生まれて初めて知った。
人が寝てる間に頭が痛そうだからと膝枕されたが、綿を生み出せばよかったのでは、と内心思ったのは秘密だ。
だってその後痺れて俺が抱えて連れて帰ったし。*3
ただ熱でも出たのか体温上がってたけど。冬だしいつ風邪引いてもおかしくないしな。*4
そしてインターンも継続していたのだが、この約2ヶ月間の間、ナイトアイの元で活動して検証を重ね、分かったことは一つ。
「予知に変化は無い。しかし変化が訪れる際必ず転間の存在がある、か」
そう、それしか分からなかった。
正確には俺の存在ではなく、俺の行動だ。
「俺が何もしないならそのまま。行動すれば変化する。俺の個性がナイトアイの予知を弾いているのか、それとも俺の存在が特殊なのか」
それとも俺でも知り得ない未知の力が働いてるのか、か。
あの変人曰く、呪力――俺が面倒なのでお兄ちゃんパワーと呼んでるソレの影響の可能性もある。
俺個人としては出久への愛が超ウルトラスーパーハイパーすごいパワーを発揮してるのだと思っているが。*5
「だが予知通りに進む時がある。それは何故か? 転間の存在が予知に変化を齎すのであれば居るだけで変化してもおかしくは無い。そもそも行動したとて変化しない時もあった。そこで私はひとつの仮説を立てた」
「仮説、ですか」
指を立ててそう告げるナイトアイを見ながら、俺は呑気に紅茶を飲んでいた。
……珈琲の方が落ち着くな。あとエナドリ。
とりあえず米国から取り寄せた『超強力! ウルトラノヴァ』を置いた。
モンスターより強力とは、社畜時代に欲しかった1品だ。このエナドリは気に入って飲んでいる。
サポートアイテムは作れるが流石の俺でも飲み物や食べ物を作るのはできないし料理も同様だ。コピーくらいなら出来るけど、それもレシピなければ無理だし。
今度スターのところ行く時は持って帰れるだけ持って帰れるように取り寄せてもらおう。作業したいし勉強したいし出久のためになることしたいし。*6
「確定とは言えないが、あくまで私の予想だ。転間の意見も聞かせて欲しい」
「分かりました。で、その仮説とは?」
米国産だけあってかなり効く。
頭が冴えてきた気がする。
「私の予知が変化するのは転間自身が動き、未来を変化させようと動いた時だ」
「確かに変える必要のないなと思っていた未来は一切変わりませんでしたね。かと言って変えようと思いつつも本気で思ってない時も変わらなかった。逆にこの未来だけは何としても変えようと思った時は必ず変わっている」
「そう、だからこそ私は未来を変化させているのはエネルギーなんじゃないかと思った」
「……エネルギー?」
「未来へと突き進もうとする強い意志。絶望に抗おうとする不屈の精神。変えようとする強い願望。それらのエネルギーが合わさり、転間のような運命にすら打ち勝つ純然たる圧倒的な戦闘力が未来すら捻じ曲げるほどの力を生み出してるのでは、と」
「なるほど……運命に抗う意志か。仮説とはいえ、確かに可能性は高いかもな」
「もしだ。もしそれが正しいなら、どうだ? そのエネルギーは俺だけが発せるもんじゃないだろ。なら、あんたが絶対だと信じてきた未来は変えられる。簡単にいくようなもんじゃなくたって、未来は誰にだって変えられるんだ。例え俺でなくても、あんたひとりじゃなくもっと多くの人が集まれば――きっと未来は変わる。なんたってヒーローは独りじゃないんだからさ」
そう。
確かに俺の戦闘力は高いだろう。
No.1に近い力を持つ。
そんな俺なら未来は変えられるかもしれない。
結局これは仮説に過ぎないのだ。
ただエネルギーってのが関係してるなら多くの人が集まれば誰だって変えることは出来るはずだろう。その想いが一人に集まれば、きっと。
因果の収束っていうのかな。
いや待てよ、もしかして俺が因果を収束させてる説。なわけないか。
ただ因果は関係してそうではあるが……。
結局それは出久に対する愛なのでは?
そうか……全ては出久への愛に還るということか。宇宙とは、お兄ちゃん力とは……うん、全て分かった……気がしなくもないぞ。
「そう、だな。私は諦めてしまっていたから変えられなかったのだろう。変えられないと、変わることは無いと断言して否定し続けた。恐ろしかったのだろう。予知通りになることが。光を失われることが。象徴が消えることが。大好きな人が居なくなってしまうことが」
「予知という個性を持ったんだ、そう思ってしまっても仕方ないだろう。俺だって、もし弟が居なくなると知れば絶望したはずだ。ただ違うのは、俺の場合は決してそうはならないように足掻き続けるだけだ。それは今も変わらない」
そう、弟が酷い怪我を負わないように。
弟が苦しまないように。
弟が笑顔でいられるように。
幸せで生きていけるように。
早く生まれた、お兄ちゃんだからこそ出来ることをこの世界で出久に出会ってずっと続けてきた。
今も、これからだって。
「ああ、私は大事なことを忘れていたよ。君という存在は本当に不思議だな」
「そうか?」
「未来を変えられる可能性を秘めているということはもちろんのことだが、人を惹きつける才がある。ミリオとは異なる、象徴に必要な部分が存在している。君の周囲はきっと笑顔で溢れてるのだろう、と思わせるものが」
どうだろうか。
俺は俺らしく生きてるだけで周囲が勝手に笑ってるだけだ。
勝手に周りが集まってるだけで、運が良かっただけなんじゃないだろうか。
俺は他人の感情に疎い、らしい。
だからこそ、正直なところねじれも環も甲矢もミリオも真綿も、俺の周囲が俺に対して何を思ってどう感じてるのかは分からない。
少なくとも嫌な奴と一緒に居たくないだろうから悪い感情は抱かれてないとは思う。嫌なら休みの日に遊ぼうとしないだろうし、あんなにくっついたりもしてこないはずだ。
ひとりぼっちの期間が長かったからなのか、仕事に命を注ぎ込んだからか、はたまた俺という人間がもとよりそういう人間だったのか。
本当は他人に興味を持てなかった? 本当は対等だと思っていなかった? 前と変わらず花のように思っている?
今も昔も、よく分からない。ただ俺には十分成せる力があって、誰かが苦しく辛い思いをするなら俺が引き受ければいいと思い続けて行動していただけなのだ。
そんな俺に人を惹きつける才能があるとは思えないな。
「それに何処か子供と話してるのではなく大人と話してるようで、掴みどころがない。導くはずの立場だというのに逆に前を向かせてもらった。何より君から感じられる温もり、安心感とでも言うべきだろうか。昔のオールマイトを知る私ですら、転間であらば何とかなる、と思わせるナニカがあるのだ。まるで彼のように」
――色々と褒めてくれてるらしいが、それどころではない。
鋭いなこの人。
下手なことは言わないでおこう。バレてもいいんだけど説明が面倒臭い。
ただどいつもこいつも過大評価しすぎだ。
けどまあ。
「そりゃ……俺が目指してるのは最強のヒーローなんで」
「最強か……」
俺が真面目にそう告げると、ナイトアイは目を伏せて口角をあげて笑ってるように見えた。
「なれるかもしれないな」
「なれるなれないじゃない。なるんですよ」
「そうか。なら君がそうなる未来を楽しみにしておこう。きっと光に満ちた世の中になっているだろうからな。あと1週間ほどだが、よろしく頼む」
「ああ」
そう言って手を差し伸べてきたナイトアイの手を握る。
初めて会った時より柔らかくなっていて、諦めの色は顔から全く見えなくなっていた。
抗う覚悟をしたかのように。
これならきっと大丈夫だろう。俺が居なくても彼は彼で抗うはずだ。
「……ッ!?」
すると突如、ナイトアイが顔を手で押えながら膝から崩れ落ちた。
すぐに支えるが、一転して顔色が悪い。
呼吸も荒くなっていて、正常な様子ではないのは確かだ。
そこから導き出される答えは――
「……どうした。何を視た?」
彼の予知が発動したのだろう、と。
誤爆か無意識か。それとも何か気になることがあったのか。
ひとまず呼吸を整えさせる。
「すまない……気が動転してしまった」
「いや気にするな。俺に使ったのか?」
「……ああ」
「そうか、まあいいけど」
どうやら俺に予知を使ったらしい。今更すぎてなんとも思わないが、それにしてはいつもと様子が違った。
「何があった?」
「……原因は不明だが、転間の未来は酷く曖昧だ」
「ああ」
それは知っている。
最初に聞いた。
「それも相まって、これから言う未来は何時なのか分からない。けれどこの未来は、しっかりと視えてしまった。この未来は確定してるかのように――」
大半は別のフィルムを挟まれたり、映像そのものが変化したり、ノイズが走ったりなどは多くあって。
俺の未来は確定したものが視えないらしい。
しかし今回ははっきりと視えたからこそ、動転してしまったのだろう。
その未来とは一体何なのか。
もしかしたらその未来だけは、必ず訪れてしまう未来なのかもしれない。小さな枝から大きな枝。
それらを変えていった結果、集った力が逆に俺の未来を確定してしまったのかもしれない。
かもしれないだけで、正解は分からない。
「転間……私はこの未来を変えるつもりだ。しかしよく聞いてくれ」
ただ違うのは、その未来を視たナイトアイには確かな覚悟があるということ。
今まで諦めていたというのに、今回は変えるとはっきり告げて、その覚悟すらしている。
「君は……君は――」
ナイトアイ自身も知ってしまった未来を告げるのが辛いのか表情が硬いが、耳を傾ける。
もしそれが弟に関連する最悪な未来なら、俺はどんな手を使ってでも変えなくちゃならない。
だからこそ――
「いずれ巨悪と対峙して、
「……そうか」
その未来は、
俺の死という未来。
そんな未来を知っても俺は、出久が死ぬような未来ではなかったことに心の底から安堵してしまった。
その未来が俺にとって悪い未来だったとしても、それが弟のためになる最前の未来ならば――受け入れていいとさえ。
それはきっと、未来が視えない俺でも俺がちゃんと
でなければ俺が死ぬことなど絶対にないのだから。
原作
-
入る
-
もっとお兄ちゃん読みたい
-
作者の好きなようにやって欲しい