どけ!!俺は出久のお兄ちゃんだぞ!! 作:俺もお兄ちゃんだぞ!!
とりあえずひたすらミリオをボコしてレベルを上げ、1週間経ったのでナイトアイとは別れることになった。
予知の内容に関してはいつかの未来で会うだろう弟にだけは絶対に話さないで欲しいと伝えた。
心優しい出久のことだ、俺のために必死になったり、命を賭したりするかもしれない。
ナイトアイとも永遠の別れじゃないんだ。ミリオ経由でいつでも会える。
そのため――
「――というわけで俺、そう遠くないうちに死ぬらしい」
「え……」
昼休み。
環には放課後話すつもりだが、二人っきりで話したいことがあるとねじれに告げて人気のない場所で話したら固まった。
もうなんか時を止める能力にでも覚醒しつつあるんじゃないかってくらいこういう場合多いんだけど。
予知について話したが、条件に関しては隠してある。条件が知られて対策されたら致命的になるし社外秘だし。流石に俺も他人の弱点までは話さない。
俺の未来が何故か曖昧なのは未だに分かってないが、それでもこの未来だけは確定してると見るべきだ。
最終日にも視てもらったけど変わらなかった。
その曖昧なせいで俺が死んだという結果しか分からないので、俺もどういう状況に陥って死んだのか分からないのだが。
それはそうとねじれに話したのはいいんだけど、彼女の様子がおかしい気がする。
いつもの明るさは全くないし、目のハイライトが消えて焦点が合っていない。
もう冬だというのに汗も凄くて、青褪めた顔だった。
流石に正常ではないと俺でも分かるほどで、逆に心配になるレベルだ。
リカバリーガールのところに連れていくべきだろうか。
「う、そ……だよね……? そんな、転間くんが……死ぬだなんて……冗談、なんだよね……?」
まるで幽鬼のような歩みで寄ってきた彼女は、何処か縋るように俺の肩を軽く揺らした。
それに対して俺は首を横に振ることで答える。
視えない俺にはナイトアイに言われたことを信じるしかない。だけど信じるなら正しい。
「嘘……」
「そんな不謹慎な嘘はつかないって。そもそも俺がこんなことで嘘を吐くタイプではないのはお前が知ってるだろ?」
「っ……!」
諭すように言うと、普段の俺がそうだからか事実だと分かったのだろう。
俯いた彼女の顔は見えないが、震えてるようにも見えた。
やっぱり保健室に連れていくべきかもしれない。
「やだ……」
「ん?」
「やだっ!!」
そんな大声と共に突然押し倒された。
普通に後頭部を打ってダメージを受けた。
痛みに顔を顰めると、俺の上に跨るねじれは両手を胸に着いて、俺の制服がしわくちゃになるのも気にせずに強く握りしめていた。
数日前にも似たようなことをされた気がするが、唯一違うとすれば喧嘩するような空気じゃないことだろうか。
「転間くんが死ぬだなんて信じたくない! 居なくならないで、私を1人にしないで! ずっとずっと傍に居て! これからもこの先もずっと! いつものように転間くんらしく騒いで、叫んで、いつものように居てよ……! 私、わたし転間くんがいたら頑張れるから……頑張るから! 強くなるから、強くなれるの!! だから私から、私の目の前から消えないで……居なく、ならないで……」
激情のように叫んだかと思えば、沈んでいく。
ただなんだろうか。似たシチュエーションだというのに、彼女が涙を流す姿は妙にざわざわと感情が揺さぶられる気がする。
……そうか。
「お願い……転間くん……。何でもするから、頑張るから……私から離れないで……居なくなったりなんてしないで……」
泣きじゃくる姿は変わらない。ここまで感情を爆発させてるのは初めて見た。
しかし。
――もしかしなくても俺の意図は伝わってないのでは?
そういえばミリオには言葉が足りないとか言われた気がする。
――ああ、なるほど。客観視して理解したが、どうやら俺は彼女たちによっぽど心を許してしまっていたのだろう。
言葉にしなきゃ伝わらないってのは昔から知ってたくせに、彼女たちなら解ってくれると。
俺の心は俺のもので、そんなわけがないのに。いや最近人の心を読みまくる言動をするこいつらも悪い気もするが……行間が分かりにくいのか。
ただ彼女の涙を見て感情をここまで揺さぶられるのは、きっとそのせいなのだろう。
でなければ俺が他者の感情にここまでザワつくことはないはずだ。
「だから」
背中を起こして彼女の後頭部を抱くように腕を回す。
ちょうど心臓辺りに軽い衝撃が走った。
こうやって泣いている姿は、本当にただの女の子にしか見えなかった。
胸の中で嗚咽を漏らして、震える姿はいつもよりも小さく感じた。
「だからお前の力が必要なんだ、ねじれ」
「え……?」
どういうことか分からない、といった様子で涙でぐしゃぐしゃになった顔が俺の目に映る。
未だ止まることなく、流し続けている。
「未来の俺が死ぬってことは今の俺がどう足掻いても未来の俺の強さは超えられない。超えられないってことは俺一人の力じゃどう足掻いても変えられない」
本当なら自力で解決すべきなのだと思う。
でも俺は、神様なんかじゃないから。
俺では全部は出来ないから。
「だからこそねじれ、俺にはお前が必要なんだ。お前なら俺を助けてくれるだろ。……あの夜に頼るって言った時に何でも言ってくれって言ってくれたのはお前なんだから」
「あ……」
改めて自分で言うのは何だか照れ臭くて、見られる前に強引に胸に彼女の顔を押し付けた。
――1人で何でもするはずだった。それが俺という人間だ。
その未来だって自分一人で変えようと思っていた。きっと、あの話をしてなければ。
あの時のことがなければ。
だけどそうしようと思わなかったのは、こいつが居たからだ。こいつがあの時に言ってくれたから、だからねじれにだけは告げようと思っていた。まぁミリオの本音を聞いてミリオにも言うことになったが。
「じゃあ……じゃあ、死なない?」
「それはお前ら次第だな」
「居なくならない……?」
「少なくとも俺は自分自身で居なくなるつもりはない。俺が弟を残して死ぬわけにはいかないだろ。命は懸けても捨てる気はない」
「ずっと傍に居てくれる?」
「お前らが離れなければな」
「そ、か……そっか、あはは……」
力無く笑うねじれは自ら俺の胸に顔を押し付けてぐりぐりとしたかと思えば大人しくなった。
脱力して身を預けてくる。
そうなると色々と当たるのだが、流石に無防備すぎないだろうか。
「転間くんの鼓動が聞こえる……生きてる……」
何だか妙に恥ずかしいんだけど。
というかまだ死なないって。いつか分からないけど、流石に今日じゃないだろ。
あといつまでこの状態で居ないといけないのだろう。
これ、もし他の人に見られたらヤバくない?
「ねぇ、転間くん」
「……なんだ?」
別の意味ではらはらしてきたが、さっきまで泣いていた女の子を無理矢理離すことは出来ないため、困りつつ返事する。
「私、頑張るよ。転間くんは死なせない。だから……君の傍にずっと居させてね……?」
「それを決めるのは俺じゃない」
「君に言って欲しいの」
「……好きにしろ」
「うん! 頑張るからね、君の傍にいられるように強く!」
俺から言うのはただの束縛だ。
だからこそ選択肢を与えるような言い方をすれば、満足してくれたようだ。
さらに密着するように抱きついてきたが、至近距離で笑顔を浮かべていた。
「……あれ?」
「うん?」
なにかに気づいたのか、暫しの間隔の後、ねじれの顔が真っ赤になった。
ボン、と効果音が鳴ってそうな感じで。
「あ、のっ! 私、ずっと傍にってっ! 違くて、違わないけど違くて!!」
と思えば両手をパタパタと動かしていた。
混乱してるようだが、忙しいヤツだな、と思いつつ言いたいことは何となく分かった。
あくまで友人同士として、という意味だろう。そんな間抜けな誤解はしない。
ただそれなら離れて欲しいものだが。
顔も体も近すぎる。
普通にキス出来る距離感だ。
「ねじれー? 緑谷ー? どこに――って」
「あ」
「あ」
「あ」
テンプレすぎる展開で、たまたま正解――屋上にやってきた甲矢の視線がねじれに、跨られて下にいる俺に向けられるとニマニマとした変な笑みを浮かべながらバツが悪そうに後頭部を搔いていた。
どっちだよ。
「あー、えー……ごめん。お邪魔だったみたいね! 他に誰も来ないか人払いはするから、ヤるならヤってて! 数時間は何とかして見せるわ!」
「そのヤるは何か誤解な気がするんだが、待て! というかお前は扉の前に居るのかよッ!」
くっ!! 男共ならともかく、女性であるねじれを吹き飛ばすわけにはいかないから動けない!!
殺せ!!
「いやーまさかねじれがそんな大胆になるなんて」
「ちっ、違うの有弓!」
「いいのよねじれ。緑谷にはその方が有効だと思うしね。じゃ、ごゆっくり〜」
「有弓ーっ!!」
そう言って最後の最後まで表情を崩すことなくドアを閉めた甲矢。
俺とねじれは再び二人っきりにされ、顔を見合せた。
「ど……どうしよ?」
「何かするつもりなのかお前は」
「て、転間くんがいいならいいよ!!」
「一旦落ち着け!?」
「ついにシた?」
「お前が思ってるもんはやってねーよ……」
満足したのか妙にツヤツヤしてるねじれとは対局で俺は色んな意味で疲れた。
結局あの後、しばらくあの状態だったと言えば分かるだろう。なんか混乱してキスでもするかと提案してきたし。
まあ原因は俺にあるらしいのでキスは断りつつも彼女の甘えは潔く受け入れたが、別の意味で疲れた。
ああいうことは男性にやるのは良くないはずなんだけど、まぁよっぽど信頼されてるのだろうな。
「ちぇー」
「即退学になるだろ」
「そういうプレイだって人気あるらしいじゃない。緑谷だってそうなんじゃないの?」
「経験ないから知らん」
「よかったね、ねじれ。転間はまだ未経験だってー」
「へ? なにかの遊び?」
「……こっちは無知ね。つまり――」
「うんうん――えっ、あっ!?」
なにか吹き込んだのかねじれがまた顔を真っ赤にしていたが、放っておこう。
それよりあとは環か。
真綿には伝えるべきだろうか。ある意味師弟関係にあるようなものなので言っとくべきか……ただ伝えるのはもう少し先にしよう。
そして分かったことが1つ。
すぐに協力して欲しいことは告げるべきだ、と。
環にはそうしよう。
これ以上面倒事は避けたい。
というわけで放課後、屋上で環にも伝えた。
俺が死ぬということでは似た反応をされたが他の二人よりかはスムーズに話は進めたのはやっぱり予め力を貸して欲しいと告げたからだろうか。
「……転間はやっぱり眩しいな」
「失礼だな、ハゲてないぞ」
「一言も言ってない。そうじゃなくて」
人を眩しいものを見るかのように見てきたのでそう返したのだが。
この歳で禿げてたら精神的に死ぬ自信がある。前世でもモサモサだったのに。
「俺なら自分が死ぬって言われたら絶望してた。でも転間は全然諦めてなかっただろ。……俺にとってはやっぱり、転間は希望だ」
そう告げる環に俺は空を見上げる。
隣に座る環は俺の視線に釣られるように上を見てたが、すぐに視線が注がれる感じがあった。
「そんなことないぞ、環」
「……え?」
そう、そんなことはない。
お兄ちゃんとして失格だが、前世の、今の緑谷転間という人間として、いやこいつらの友人として本音で話すなら。
「俺は雄英に来るまで、全部ひとりでやろうと思ってたし独りでいいと思ってた。確かにきっかけを作ったのは俺かもしれない」
雄英に来て最初に見たのはねじれだった。
彼女は多分0Pを倒した時の俺しか知らないだろうが、入試で彼女を見た時は驚いたものだ。
俺の他に同年代であれほどレベルが高くて、なおかつ才能溢れる者が居るとは思わなかったからだ。
ただ彼女の何かを我慢してるような苦しそうな、辛そうな雰囲気が妙に気になった。
合格するかどうかは分からないし試験の邪魔になってはならないから声を掛けることはしなかったけど。
でも俺は自分を押し殺し続ける人間は、一番知ってたから。過去の自分を見てるようで、俺のようにはなって欲しくないと思った。その先に待つのはきっと孤独死だろうと。
だから合格したあと、どうにか出来ないものかと手を伸ばした。
慣れないことをしたが、女の子1人救えないで最高のヒーローにはなれないと思ってたのもある。
そうして初めて彼女の心からの笑顔を見たとき、不覚にも目を奪われてしまった記憶は残っている。
本人には言ってないけど。
すぐに出久で上書きしたし。
「でもさ、俺が作ったのはきっかけだけだ。それがどうなるかなんて俺が決められることじゃない。俺が今独りじゃないのはお前らがいるからだ」
次に仲良くなったのは環だった。
俺からしても可能性を感じるほどの才能。見た目とは対極で本人の精神が弱いしネガティブだが、決して逃げ出すことをしない意志の強さ。
それらを見た時にいずれこいつはすごいやつになると興味を持ったものだ。個性も凄いしな。
まぁ、こいつのネガティブさが妙に転職した後輩を思い出して放っておけなくなったというのもあるんだけど。
「俺をライバル視するミリオ。俺の隣に立ちたいと言ってくれたねじれ。バカ騒ぎするクラスメイトや慕ってくれる真綿。それから頑張り続けるお前。気が付けば弟しか居なかった俺の世界は大きく広がってたんだ」
「転間……」
見上げてた空から視線を落として、手のひらを見つめる。
震えはない。
なにかある訳では無い。
「昔の俺なら死ぬって言われたって、確定した未来だと言われても弟が無事ならどうでもいいと思ってたよ。いいや、きっと諦めてすら居た。満足だ、ってな。簡単に受け入れて、その死を素直に待ってた。絶望は確かにしなかったろうけど。けどな、お前らが居るから諦めたくないって思うんだよ。例え俺にはこの先に未来がなかったとしても――最後まで足掻こうって」
「そう思うようになったのはお前らが居たからだ。環は環が思うより俺に影響を与えてるんだぞ? ミリオやねじれ、真綿。そんで環。きっと誰かが欠けてたら俺はこんなことを思うことはなかった。死ぬのが怖くなることも……いや違うな。死ぬのは怖くない。正確にはお前らと会えなくなるのが嫌なのかもしれない。こんな俺なんかと友達になってくれて、素の俺を受け入れてくれたお前らと。だから諦めてないんじゃなくて、諦めてなんか居られないって思ってるんだ」
ただ大事なものを握りしめるように手を閉じて、そう締め括る。
全く自分らしくなくてムズムズするというか。
出久のことばかり考える方が俺らしいというか。
この1面は前世と今世のミックスの影響なのかもしれない。
まぁそれでも優先順位は弟なので、俺の死が最善の未来なら受け入れるだろうけど。
前提としてそうならないためにも協力を頼んでるわけで。
「……それでも俺は、やっぱり眩しいと思う」
「そうか?」
「だから俺、頑張るよ……。転間に追いついて……ミリオに追いついて……転間を殺させない」
「……やっぱりお前は強いよ、環」
「転間には敵わないよ……」
「そっか。そーだな。そうかも。なんたって俺は
「俺はそう思ってる。それに、その方が凄く転間らしいな」
「俺はいつだって俺だよ。弟が大好きなお兄ちゃんだ」
「そうだな……俺はそんな転間が好きだ」
「男に告白されてもなぁ」
「伝えることは大切、だろ」
「そりゃそうだ」
「……転間」
「……ん?」
決意を告げた環が生み出した真面目な空気を壊すと、環も乗ってきた。
しかしまた真剣な顔をして俺の目を射抜いてくる。
その前の発言が発言だったので、ちょっと身構えた。
「俺と出会ってくれてありがとう。手を伸ばしてくれて……俺にとって転間は希望で光だ」
「そーかい。じゃ、喰われないようにしなきゃな。お前は
「そうだな……そのためにも転間には最強で居てもらわないと。俺が喰らうために」
「言うようになったなお前。ま、その点は言われるまでもない。期待してるよ、環。いつの日か並び立ってくれるってな」
隣にいる環と肩を組むと、顔を見合わせた俺と環はなんだかおかしくなって、笑い合った。
ほんの些細なことでも笑い合えるのがきっと、友人同士の良さなのだろう。
果たして未来は覆せるのか。
ただその未来が訪れるまでは後悔のない生き方をしようと心に決めた。
少なくとも俺の周りくらいは、例え俺が死んだとして悲しまないように。
もし俺が死んでも、ねじれたちが笑顔で生きられるように。
自分が死ぬ時のことは分からない。
分からないからこそ、せめて生き様で後悔はしたくない。
「あ、居た居た」
「天喰くんずるい」
「え、なんで……!?」
「……騒がしくなりそうだな」
人の隣をキープして引っ張ってくるねじれに石像のように動かないように力を入れつつ安定のメンバーが屋上に入ってきた。
あっさり位置特定されている。俺のマイスポット。
「というかなんで屋上居んの、あんた」
「そりゃ俺の拠点だからな」
「いや学校の敷地だからね、ここ」
「イレ先も学生時代よく屋上に居たらしいぞ」
「そうなの?」
「駄弁ってたんだと。つまり俺がやっても問題ない」
「どういう理論よ」
屋上の鍵は貰ってるため、俺はいつでも入れる。
問題は起こすなよって言われてるけど、俺がそんな問題起こすと思ってるんですかね。*1
「転間、環にも話したの?」
「さっきな。ねじれには昼休みに話してる」
「心臓止まるかと思ったんだからね」
「すまん」
「同じく」
「……すまん」
「転間くん、たまに言葉足らないのは良くないと思うの」
「そーだそーだ!」
「過ぎたことに容赦なさすぎないか」
「何の話?」
「かくかくしかじか」
別に甲矢ならいいかと軽く予知出来る人が俺が死ぬ未来を視たと伝えた。
すると甲矢は驚く――わけじゃなくため息を吐いた。
なんて失礼なやつなんだ。
「ねじれの目が赤かったのはそれね」
「む、蒸し返さないで!? 転間くんの前であんなに泣いたの、普通に恥ずかしい……!」
「いや、人間だから泣いていいだろ。泣かないよりかは全然。俺なんて全然泣けないし」
「転間……」
「転間、流石に女性にそれはどうかと思う。俺でも分かるよ」
「どういうことだおい」
一気に敵しか居なくなったんだけど。
あと人の服で顔を隠す意味ある?
「でも反応薄いね、甲矢さん」
「いやーだってこいつ殺しても死なないでしょ、絶対。地獄の底に落ちようが出てくるわよ、多分」
「お前俺を人外かなんかだと思ってる?」
「ある意味人外じゃない」
「この野郎」
そうは言ってるが、ある意味安心出来るというか。
甲矢にとっては一種の俺に対する信頼なのだろう。
これでもクラスは同じだから、こいつは俺の強さを目の当たりにしてるわけで。
「正直私にはどうしようもないから何も出来ないんだけど、言えるのはねじれを泣かしたら許さないってことね」
「そりゃ怖い。……ちなみに昼休みの件は?」
「不問。その代わり死ぬのは許さないってことよ」
「無茶振りするなお前」
相変わらずねじれに対して過保護なやつだ。
こいつなりの俺に対する気遣いでもあるのは分かるのだが。
「……ま、頑張るさ。俺だってねじれを泣かしたくて泣かした訳じゃないし」
「転間くんまで言わないで!?」
「いや、別にそう言うのは年齢相応で全然良いと思うけど」
「何年寄り臭いこと言ってんの」
「転間も同じ歳だろ」
「ねー」
「恥ずかしいのは恥ずかしいの! 特に転間くんの前は……!」
「なんで俺の前だと恥ずかしいんだ……?」
「言わない!」
「なんで拗ねてるんだお前」
「転間って頭はいいはずなんだけどなぁ」
「観察眼もあるけど、こういうことには疎い」
「急に貶されたんだが」
「反省しろバカ」
「誰がバカだ、俺はブラコンだぞ」
「自分で言うんだ……」
いつまでも喋っていても仕方ないため、何処かに移動するかと立ち上がった俺はそっぽ向くねじれに手を差し出す。
「いつまでもそうしてないで、ほら」
「……うん」
手を取って起き上がるのを見ると、今度は俺の腕がミリオに掴まれて引っ張られる。
「ほら、何処か話しながら食べられるところにでもいこう!」
「まずい、俺の腕がちぎれる。早くしてくれ、ねじれ」
「待って待って。俺そんな怪力ないからね!? 環の方があるよ!」
「い、いや俺も何か再現しないとそんな力はないぞ、ミリオ……!」
「環はゴリラってことか……?」
「誤解だ!!」
「……ゴリラは緑谷では?」
「それは言えてるね」
「そうかなぁ? 転間くんってちょうどいいくらいに鍛えられてるというか、むしろ私は転間くんの体くらいがちょうど――な、なんでもないからね!?」
「お、おう。何が言いたいか分からないが顔ちけーよ」
そんなゴリラみたいな体をしてる自覚はないのだが、軽く腹を捲っても筋肉があるだけで体格ゴリラでもない。
正直俺はそれほどムキムキでもないからな。筋肉はちゃんとあるけど。
ゴリラというのはオールマイトだろう、あれはゴリラだ。間違いない。
ゴリラマイトめ、俺の可愛い可愛い弟をゴリラにするなよ。いやゴリマイトと違って出久はそれでも可愛い。
「あ、あまり見せるのはダメッ!」
「いや見せたわけじゃ……というかダメなのか?」
「エッチ」
「理不尽」
服を下げられた上に妙なことを言われた。
いやまあ、ある意味逆セクハラというやつになるか。
うーむ……時代。
こういったことはもっと気をつけなきゃダメか。
寒さについては一瞬だけ個性使ってたから捲っても寒くなかったけど。
何はともあれ、俺たちは下校することにした。
なんだかんだこうやってちょっとした事でバカやって、帰りに何処かに寄って寄り道するのは学生らしいな。
正直重い話だったりシリアスするよりこうやってバカ騒ぎする方がお兄ちゃんらしさがあるなと思いました。
原作
-
入る
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もっとお兄ちゃん読みたい
-
作者の好きなようにやって欲しい