どけ!!俺は出久のお兄ちゃんだぞ!! 作:俺もお兄ちゃんだぞ!!
知らない世界に囚われていた。
暗闇の影の世界。
囚われる直前、ヴィオラが領域の展開と言っていたことから、そのままの通り領域を展開されたのだろう。
いわゆる自分の世界を作り上げるといったところだろうか?
聞いたこともない力だ。
よく分からないが、脱出は出来るのだろうか。
個性は問題なく使える。
なら。
「このまま消し飛ばして――」
動こうとした瞬間、首の皮が切れた。
血が流れるような感覚に思わず手をやると何か付着するような感覚。間違いなく出血。
適応されたわけでもなくバリアが無効化されている。そのことに理解が一瞬遅れ、その一瞬で全身が切り刻まれる。
「は!?」
即座に身体能力を強化してその場から退くと、それでもなお斬撃が襲いかかってくる。
全開で強化しながら耐えるが、絶え間なく放たれる斬撃に何も出来なくなる。
流石の俺も驚きを隠せない。
「なんだ、この力は……。これが個性の極致……?」
ただの個性ではないことはすぐに分かった。考えられるとしたら、ネフィリムの異常なまでに回転していた適応がやつを最終到達点へと連れて行ったということ。
全開なら防げるといえば防げる。だが、どういうことだ?
動いても当たる。避けようとしても当たる。それどころか個性の無効化まで来た。
蒼や赫は使えるようだが、必中必殺ってこういうことか? 個性の可能性はここまで、違う世界を創造までしてしまうのだろうか。
ふと脳裏に浮かぶのは、いつかの白髪の青い瞳を持つ男性と出会った蒼の世界。あれと似たような気がする。
個性は遺伝子由来の力だ。
それを考えるなら進化の先の果てにこのような絶対的な力があってもおかしくはないのではないだろうか。
OFAも同じだ。
あれは長い年月を得て受け継いできた力が、継承者たちが存在する世界を作り上げている。
もしそれを、このような形で具現化出来たならば。現実世界に持ってくることが出来たならば。
そう考えればこの力にも説得力があるような気がした。
全く……恐らく復活後使えるようになったんだろうが、とんでもない隠し玉を持ってやがった。
今も考えるだけで切り刻まれて痛いんだが、治す力で無理矢理回復している。
ただこれが続けば死ぬのは俺だろう。既に200%の茈を打った俺は万全の状態では無い。
それだけなら全然問題ないが、身体能力強化に治癒。蒼に赫。いくら俺でも無限に力を扱えるわけでないため、もし続くと消耗もしてしまう。呪力――お兄ちゃんパワーもヴィオラのお陰で回復してるしこれまでのダメージも回復したとはいえ精神的な疲労までは治せないしな。
対抗策がない以上、やるのは脱出かネフィリムをボコる。
何処まで続いてるか分からないなら、ボコる方が速い。
法陣は黒く染まっている。つまり、適応の個性とこの領域とやらは両立できない。
ブラフの可能性もあるが、俺の蒼が効いたということは1度死んで全体的にリセットされたと見るべきだ。
最適なのはつまり。
「近接フルボッコ!!」
切り刻まながら回復しつつ即座に駆け出した俺は握りしめるようにして手を引っ張るように動かすことで引き寄せながら殴る。
突然体勢が崩れたからか直撃したネフィリムが怯みつつ反撃してくる。
攻撃を弾いて顔面を殴り飛ばし、追いついて側頭部を両手で掴みながら膝蹴り。
瞬時に後ろ蹴りで吹き飛ばすと、ネフィリムの真横に蒼の反応を作ることで引き寄せて体勢を崩す。
倒れかけるネフィリムに蒼パンチを鳩尾を狙い、腕を掴んで投げ飛ばす。
加速して追いつき、再び蒼を纏った拳を叩きつけようとして。
「っ、影に飲まれた!?」
引き寄せる前にネフィリムの姿が影に沈んだのが分かった。
ただでさえこっちは斬撃の雨を喰らい続けて治し続けている。
長期戦になれば負けるのは俺だ。
このまま時間を稼がれたら勝てなくなる。
この空間が斬撃と影という能力を生み出すというのは分かった。斬撃に関しては防ぎようがない必中なのだろう。
一応身体能力強化で斬撃を壊せるみたいだが、無数にある斬撃を全部砕くなんて芸当は俺を持ってしても不可能。
これが斬撃だから耐えられているが、もし即死するような領域だったなら詰んでいた。
まぁ、これだって耐えられるのは謎の治癒が出来る俺だけなのだろうが。伊達に最強(仮)を名乗っていない。
外側がどうなってるか分からないが、世界全体を巻き込んだわけではないはずだ。
でなければ俺以外がここに居ないのはおかしい。となると、球体的なにかに閉じ込められた。
斬撃を飲み込む俺の蒼ですら壊せないため、恐らく内側からは壊しづらい仕様。
茈なら壊せるだろうが、斬撃の中で生み出すのはキツイな。そもそも赫が斬撃の中だと刺激されて炸裂してしまう危険性がある。
こんな理不尽すぎる力なら、何か対応策があるはずなんだが……全く分からん。
唯一の救いは、安心出来た要素は本当に一つだけ。
「よかった……。総合力では俺の方が上だ……!!」
適応のリセットの影響で200%茈を使って少し消耗した俺でもネフィリムより強いということ。
もしこれがリセットされてなければ総合力でも上回られていただろう。あの時点で消耗時の俺より強かったやつだ。
その場合、どう足掻いても殺されていた。
領域がこいつを強化してるのか知らんが、最初より強くても最後に戦った時よりは弱い。
最後らへんのこいつは全盛期のオールマイトや万全の俺を超えていただろう。今は全盛期オールマイトつっても俺よりは弱い。間違いない。俺の方が全盛期オールマイトより強いに決まっている。今ならもう100%断言出来る。
そんなことよりバリアさえ外して必中の斬撃で勝てると思ったのかもしれないが、まだ暫くは治癒を保てる。数分なら可能。十分分以上は完全に力を失って死亡確定。個性すら使えなくなる。
それでも全開にしなくちゃ治癒も間に合わずジリ貧になって殺されるのはこっちだが。
そうこうしてるうちに、ネフィリムが上から降ってきた。
いや、影か。
新しく能力でも覚えたか? それともこの領域の効果か?
ただ影に逃げた場合、俺がここを脱出することを恐れたはずだ。身をもって俺の個性の脅威を知っているはず。
どっちにしても。
「学ばねぇな。お前じゃ俺には勝てねぇよ」
落下と共に剣を振るってくるが、手首を掴んで阻止すると反撃の蹴りで若干浮かし、ボレーキックで蹴り飛ばす。
どこから出してきたのかトラックを投げてきたが普通に避け、トラックを貫いて突進してきたネフィリムの顎を打ち抜いて打ち上げると胸に蒼パンチを与えて吹っ飛ばした。
変わらず斬撃は俺を切り刻んでいるが、これもしかして無限に保てるのだろうか。
全然消える様子がない。せめて一瞬でも脱出口が見えたら高速移動で抜け出せるんだけど……。
着実に体力を持っていかれてるのが分かる。この治す力、全開にしたことなかったけど想定以上に消耗がヤバい。
万全だったとしてもどれだけ持つか……。
時間制限を儲けろ。
1分、は無理だな。2分……いやおおよそ2分30秒でネフィリムの領域が保てなくなるほどのダメージを与える。
そうすればこいつは、この領域を崩壊させて適応を選ぶはずだ。
まぁもしかしたら保つかもしれないが、その時は切り札で消し飛ばすとしよう。
あれ、1度やったことあるからあんまりやりたくないんだけどな。
「さぁ、やり合おうか。お前が対峙してるのは“最強”だぞ?」
その言葉に思うことがあったのかは知らないが、ネフィリムは急加速した。
拳を逸らすように弾き、関節でも外したのか人間には出来ない芸当で拳を叩き込もうとしてくるが、冷静に避けて連続の殴打を全て避けていく。
そして蹴りを打ってきたところで、足を掴んで持ち上げつつ地面に叩きつける。
前、後ろ、前、後ろと連続で叩きつけ、上空に投げ飛ばしながら加速すると至近距離で指先に溜めた赫を解き放つ。
巻き込まれて吹き飛んでいくが、消し飛ばない。
――だいぶ出力が落ちてるな。
恐らく治癒し続けてる現状の影響だろう。
でも対策がない以上、ゴリ押ししていくしかない。どうにかして防げないかな、これ。常時リジェネ状態+全力強化は俺にはキツすぎる。
ただそれでもダメージは効いてるのだろう。
明らかに起き上がる動きは鈍い。
「我慢比べか……!」
無数の斬撃を回復し続ける俺とこの世界を保ち続けるネフィリム。
力を使い切ったら俺の負け。逆に維持し続けられず適応を選べばこいつの負け。
単純で分かりやすい。
俺とネフィリムが加速したのはほぼ同時だった。
互いに突き出した拳が互いを弾き、復帰の速い俺が滑るように接近すると影に沈もうとするネフィリムを上に引っ張る動作をすることで無理矢理出し、腕を掴んでぶんぶんと回すと投げ飛ばしつつ追いついて引き摺り回す。
急に感触が消え、影に沈んだのを見るとその場を退くように後ろへ跳ぶ。
ちょうど立っていた位置に剣と腕が生え、出てきたネフィリムが掴み掛ってくる。
身を屈めて避けるタイミングで横に飛び、振られた剣を完全に躱す。
すぐに至近距離の赫を放ち、剣を弾くと蹴り折ってから跳躍し、かかと落としを叩きつけた。
腕で防御しているネフィリムと押し込もうとする俺。
弾かれるように後方宙返りし、着地と同時に次々と攻防が始まる。
総合力で勝っている俺が攻めの場合が多いが、実際には斬撃のせいで攻めつつダメージを受けている。
それでも近接の攻防では分があり、カウンターの胴に一撃、連続蹴りからの回し蹴りで吹き飛ばして追撃する。
このまま責め続ける!!
――これより30秒後。
緑谷転間が領域に引き込まれて150秒。
領域は崩壊する。
◇
緑谷転間が領域に引き込まれた直後のこと。
「まだ戦える人員で向かうしかない。戦闘不可能な者はホークスに運んでもらってくれ、彼にも入ってもらう」
「とにかく学生組はもう――」
「待ってください。俺はまだ戦えます! 転間だって俺たちと同じ学生ですよね!? なのに俺たちだけ退くなんて出来ません!」
「俺も同じ気持ちです。転間を置いてなんていけない……!」
「私だって……!!」
「だが……」
ジーニストもエッジショットも迷いを見せる。
戦力としてはちゃんと戦えるレベルであるため、ついていけないわけではない。
だがアレの相手はプロの自分たちでも手に負えるか分からない相手だ。正直な話、アレと長時間の間戦えていた転間の戦闘力がおかしいだけである。
2分も経たずにこっちは全滅しかけていたのだから。
もしもの可能性を考えるなら生き延びてもらって強くなってもらった方がいい。既に成長がほぼ止まってる自分たちより若い世代の方が強くなれるのだから。
「少なくとも……先の戦いぶりからこの子たちの力は必要かと私は思います」
「リューキュウ……大丈夫なの?」
「ええ、戦えるかはちょっと怪しいけど喋るくらいはね」
「……復活して能力までそのままかどうかは分からないが、残しておくべきかもしれない」
「そーだな。それによ、無事かどうかも分からねぇのに避難ってのも難しいと思うぜ」
「何かあれば俺が守ります。それに、こいつらを置いておいた方がむしろ監視になるかと。下手をすれば勝手に来かねないですよ」
リューキュウだけでなく、ナイトアイやプレゼント・マイクまで残すべきだと告げる。
先の戦い、実際に三人が居なければ時間稼ぎは不可能だった。
それに一番分かってるであろうイレイザーヘッドがそう告げるのだ。見事三人とも目を逸らしたので、完全に当たっていたようだが。
「……分かった。ただし、限界だと判断すれば強制的に避難させる。学生をここで死なせる訳にはいかん」
『ありがとうございます!』
それが譲歩だと分かったのだろう。
三人は顔を見合わせて、頭を下げながら感謝を告げる。
避難させるべきではある。だが戦力が足りないのも事実。
最低でもホークスかエンデヴァーがこちらに来ない限り。
そんな中、興味なさげに見てたヴィオラが動いた。
「ねえ、別に参加するとか参加しないとか、私はどっちにしてもお兄様の力にしかなるつもりないから興味無いんだけど。そもそもの問題、貴方たちはあの中に入れないわよ」
唯一アレが何なのかを知っていたヴィオラが妙なことを告げると、イレイザーヘッドが一番に反応した。
「何? ヴィオラ、あれを知っているのか」
「……貴方はお兄様の先生だっけ」
「相澤消太。ヒーロー名はイレイザーヘッドだ」
「そう、自己紹介ありがとう。答えてあげる」
転間が好意的に接していたのを目聡いヴィオラは見てたようで、イレイザーヘッドには何処か優しい対応だった。
既に何でもかんでも転間基準になってしまったらしい。
「昔二回くらいだけど私の兄――のようで師匠が使ってたところをね、見たことがあるの。私自身はまだ使えない。アレは外側からの侵入は簡単よ、簡単に入れる」
「だったら俺たちも――」
「それがダメだって言ってんの。領域展開は貴方たちに分かりやすく訳すなら、
「世界を、作るだと……?」
エッジショットの言葉を問答無用でバッサリと切り捨て、イレイザーヘッドの言葉にヴィオラは頷いた。
「ええ。ネフィリム――いえ、あの呪力の帯びた様子から八握剣異戒神将魔虚羅。面倒臭いから魔虚羅ね。元は式神のはずだけどネフィリムの時点で恐らく受肉でもしてたのでしょうね。それでも完全消滅から復活なんて芸当普通なら無理だし生命体であるアイツも同様。確か引っ込めたらリセットされるらしいから死から復活した時にも同じ判定がされたのか適応がリセットされていた。でも記憶はあるんでしょうね。そのために確実な適応をした。あの領域に付与されるのは必中必殺の効果」
「私たちが入ったところで無駄死にするだけ、といったところか」
「その通り。恐らく無数の斬撃に襲われて即死よ」
プロなだけあって理解力は早い。
ヴィオラから話を聞いたのはいいが、手詰まりになったことにジーニストが頭を悩ませる。
「だから外側からは簡単に入れる。逆に内側は閉じ込めるために壊せないように丈夫にしている。だってわざわざ必中効果のある世界に踏み込むなんて危険でしかない。外側を強化する必要なんて“普通”はないもの。外側を破壊するのも結局は“結界”だから難しい。お兄様なら簡単だけどね。何より閉じない結界じゃなかったのは救いでもあったわ。今回は関係ないから省くけど」
「なるほどな……緑谷の、アイツの不可侵だから問題ないわけか」
「確かに彼ならば無敵に近い防御がある。それに本人の実力も考えたら問題ないはずだ」
転間の実力をよく知るイレイザーヘッドと見てきたナイトアイだが、それもヴィオラは首を振ることで否定した。
「いいえ、言ったでしょ。必中だって。あの空間ではお兄様の個性も中和される。“自分に有利な世界”の方が上なのよ。この世界にだって重力とか物理とかその辺が反映されてるように、“ルール”だからね。
――個性しかない世界で術式を扱う存在なんて居ないしね。呪力を持つお兄様を除いて。
流石にそこの部分は余計な情報を与えて混乱させても仕方ないので言わなかったが。
それでも知らない単語ばかりで情報過多だ。
ただ言えることは、抵抗手段が一切ないということ。
「私たちは見てるしか出来ないということか……?」
「くっ、それならば最初から一人で行動させるようにしなければ……」
「外から壊すのは?」
「硬いってなら無理だろ。あれも個性みたいなものなんだろ?」
「むしろ私たちが邪魔になる危険性もある」
「ヴィオラ、何か手は?」
「……あるにはある。ただ賭けに近いわ。外側にいる私たちは問題ないけど、内部のお兄様がどうなってるかまでは私にも分からない」
――反転術式は怪我を治すことも出来る。でもその分、失った血液は呪力が補うけど消費が激しい。呪力の通常運用と反転を扱うのは難しいって聞いた。出来たとしても、簡易領域がないなら長期戦は無理。
反転術式についても呪力についてもヴィオラだけは知っている。
だからこそ考える。
彼女にとっては式を挙げる約束がある*1ため、必ず生きて欲しいし死んで欲しくないのだ。
ヴィオラにとっては彼の存在は既に生き甲斐なのだから。
だからこそ、ヴィオラは必死になって考えるし全力で応える。
現在の消費しきったこのメンバー。
自身の残った力。
転間の残存力。
そこから計算しても、数秒で何とかなるものではない。
最低でも数分は必要。
今回こちら側は一切の時間稼ぎが必要ないのは大きいが。
――ま、考えるまでもないかな。
彼女は信頼してるし信用している。
妄信的なまでに。
狂気的までに。
転間を愛しているからという単純な理由で。
「でも私が認めたお兄様だもの。絶対に少しの間なら耐えられるしあの空間を把握してるはずよ。逆に脱出する手段が分からないと思うから、こっちでやることをやる。殆ど使い切ってるから少し時間が必要だけど、私の個性なら壊せる」
「……頼めるか?」
「お兄様のためだから、やる。その代わり今日1日はもう戦力にはもうなれないから、何かあったらそっちで頑張りなさいよ」
「分かった、感謝する」
「……ふん」
◇
――結界が崩壊する。
鏡が割れるような音や巨大な爆発音に思わず耳を塞ぎつつ退くとその力が誰のものかすぐに理解出来た。
「ヴィオラか!」
視線の先には、ぺたん座りで息を切らしてるヴィオラの姿が見えた。既に力を使い切ってたはずなのに無理をしたのか顔も赤い。
あれを壊すには相応の力が必要だったんだろう。お陰で治癒に回してた力を切ることが出来た。
傷は治せてないが治す必要がないなら温存だ。
どうやら大きな借りを作ってしまったようだな。
「魔虚羅が既にボロボロに……!」
「オリジン!」
空間内でボコボコにしてたからか、横腹は削れてるし胸は貫通してるし右腕を失っているネフィリム――どうやら魔虚羅というらしい。
改めて魔虚羅に視線を向ける。
あの空間から出られた。
これで。
「今度は一撃で消し飛ばしてやる!!」
再生より早く、適応より早く。
さっさと消し飛ばすべく、出力を最大まで高める。
適応前の初見の技なら確実に消し飛ばせるはずだ、と赫を炸裂させる――
赤い光が消え、つー、と何かが垂れるような感覚。そこから次々と地面へと落ちていく。
それを意味することはただ一つ。
「マズ」
個性の許容範囲を超えた。
久しぶりに感じられる激しい頭痛と脳が出血したような感覚。
一瞬意識が落ちかけるのを堪えたが、出遅れた。
あからさまな隙を逃さず放ってきた拳。
咄嗟に右腕で防御すると骨が折れるような音と共に凄まじい勢いで吹き飛ばされた。
強化までが解けている。治し続けるのが俺が考えてた以上に持ってかれた。
妙な方向に曲がってるので強引に戻すが、紫に染まっている。
まだ治すくらいは出来そうだ。ただ火力面がヤバい。
強化も可能。先の立ちくらみの影響で一時解除されただけ。
個性の限界を迎えるとか何時ぶりだよ。あの空間、もう少し長引いてたら死んでたかもな。
こんなボコボコにしても解除するつもりがなかったみたいだし。
「っぶね……!」
咄嗟に蒼で移動して避けると、既に再生していた。
ここに来る前に適応が発動したのだろう。
斬撃を使ってこないということはあの空間の負荷?
それに他の能力を使う様子もない。1度死んで消滅したのだろうか。
復活に必要で、個性を犠牲にした可能性もある。
警戒はしつつない方向で考えよう。同時使用出来なかった可能性もあるが、使えるならあの空間で使ってれば俺を殺せたのだから。
あったとしたら、流石にヤバい。
とにかくこいつ相手に長引かせるのは危険だ。
俺の個性は大半の負荷が脳。個性因子ってよりも脳がやられたら何も使えないし出来なくなる。
そのため脳を1度破壊して修復すると、もう枯渇しかけてるのがわかる。ヴィオラが与えてくれたものがなければあの空間に居た時に枯渇していただろうな。
こうなれば最後の賭けだ。あまり取りたくない手段だったが……。
キメるしかない、無制限の虚式を――!
「赫」
反応した魔虚羅が回避した。
空振ったところを向かってきたため、互いに手を突き出して握りしめるようにしながら押し合いになる。
弱ってる俺が徐々に押され、背中が曲がる中、笑みを濃くする魔虚羅の背後からさっきの赫が背中に直撃した。
同時に両手を離して倒れ、魔虚羅が通り過ぎていく。
追撃に複数の蒼を飛ばし、建物に引っつけながら蒼を纏った拳を叩きつけた。
ガコン。
「クソッ!!」
やっぱり殺せるはずの一撃で殴っても消費しすぎて殺せない!
不可侵で防御すると、やはり適応はリセットされている。
バリアに拒まれる隙に蹴り上げて、引き寄せて地面に叩きつけた。
「位相――」
不可侵があるうちに確実に決める。
確か呪詞はこんな感じだったような。
「波羅蜜――」
鉄砲のような形を取り、さながら霊丸を撃つような構えを取ると地面から抜け出した魔虚羅がどこかに飛び去る。
「待て!!」
俺の攻撃を警戒して逃げた? いや、この行動は初めてのはず。
まるで魔虚羅はこの呪詞が何なのかを
赫は炸裂前は速度がそれほどない。
それすら知られてるようなことに違和感を抱く。
が、仕方ないので中断すると、即座に追いかける。
「緑谷!」
「オリジン!!」
「転間、待って!」
「転間……俺達も……!」
「転間くんひとりじゃ……!!」
声が聞こえた気がしたけど、悪いが余裕はない。
現状追い詰められてるのは、俺。
やつを倒せるのは俺しか居ない以上俺が何とかするしかないのだから。
特に消耗しきった今のメンバーが戦えば殺される危険性が高い。
リセットで弱体化した魔虚羅。
枯渇しつつある俺を超える強さ。
少なくとも身体能力は出力が落ちてる俺が負けている。技術でその辺はカバー可能。弱体化しようと相手はオールマイト級だ。個性を複数あった時は全盛期オールマイト以上。最終が俺以上だった。
俺の敗北が確定するのは不可侵を破られる瞬間。
あれはどっちかというと再生するための適応に見えたが、1度適応されたと考えておこう。
前と同じならあと3回だが、これも低く見積ってあと1回にしておく。
蒼の最大出力――あと1回なら可能。赫はまあ無理。
やはり無制限の茈か。どう決めるかが問題だ。
どっちにしてもタイマンじゃなきゃ俺以外を巻き込んで殺してしまうため、タイマンになる必要がある。
――1人の方が戦いやすい。
なんだかそう感じてしまう。
同じレベルの存在や近しい実力があるならともかく、自分より弱い者がいると――。
『弱いやつらに気を遣うなんて疲れるよね』
ヴィオラの言葉が不思議と脳裏を過ぎる。
そうだ。
“今は”そうだろう。
そうである、はずだ。
俺より弱くても頼れるやつは頼れる。
少なくとも俺に匹敵する強さを持つとすれば、ヴィオラ。後はスターやオールマイトくらいか。
――でも結局、こうして独りだ。
自分がかけ離れていく。強さの果て、それはやはり孤独なのだろうか。
今はそんなこと考えるものではない。
どうだっていいだろう。
今はこいつを倒すことだけを考えろ。
なぜこいつは俺から離れた?
あれほど俺を狙っていて。
どっちにしても。
「逃走が目的ってなら、逃がさない――」
本当にそうか?
蒼を準備したところで、突然逃げ出した魔虚羅の行動を改めて考える。
もし適応があと1回でいいなら逃げるより消耗してる俺を攻撃して殺した方が確実だ。
適応前に殺される可能性を考えたとしても、逃げて後ろから殺られる可能性よりも正面の方が安全。
俺の茈を警戒したとて、もし俺が容赦なく撃つなら茈なら届く。
「まさか――避難先!!」
空中にいるからこそ、理解する。
もうすぐ新宿を出る。
そうなれば待つのはやつのスペックから考えれば虐殺。
俺も全ての人を庇いながら戦うのは今の状態だと不可能だ。
今更狙い始めたことに気付くのが遅れたことを後悔する。
他に考えるべきことが多すぎて思考から消していた。
今の俺が追い抜かすのは難しい。
何か手があれば。
ミルコやエンデヴァー、何処にいるか分からない。
あの場所に居たメンバーは俺より遅いため無理。ヴィオラは可能だろうが消耗しきってるので不可能。
ミリオなら地中だからワンチャンあるが、それだけ。
一瞬でも足止め出来れば――。
そんな、有り得ないことを考えてるうちに魔虚羅が新宿を出ていた。
すぐに人がいるわけではないが、それでもいずれ人が見えるようになる。
巻き込むことに申し訳なくは思うが、こうなった以上は出来る最低限をやろうと考えた時。
魔虚羅の動きが止まり、俺のスピードが一気に跳ね上がる。
「全く――君ってば本当に自分独りで背負いすぎでしょ!!」
「――ホークス!?」
「俺じゃ一瞬しか出来ん! 頼んだ!!」
「頼りになるんだかならないんだか分かりづらいやつだな!!」
音波振動が付与された風切羽をぶつけていたホークスを援護すべくホークスの羽根によって加速した俺は追い抜かすことが出来た。
即座に赫を背面に打ち、自分を弾き飛ばすとより加速した一撃をホークスの風切羽に向かって片足飛び蹴りすると、防御していた魔虚羅を上から押し飛ばして地面に沈める。
そのお陰で魔虚羅を新宿に戻し、俺とホークスは新宿を出る線のちょうど中心で浮いていた。
この感じは、渋谷かな。
――人多いところとか最悪すぎる。完全に侵入されてたらヤバかったな。
「でもナイスタイミングだ、ホークス」
「少しは見直した?」
「――はっ、別に役立たずとは思ってねぇよ。よく間に合ったな」
「まーね。向かってたところでイレイザーさんから連絡あったから。後でインゲニウムさんとサイドキックの方々も来るよ」
どうやらイレ先のお陰らしい。
そういえばホークスに連絡入れたあと、イレ先に咄嗟にスマホを投げ渡してたな。
俺としたことが宝物を放り投げたままだ。
「で、あれが噂の魔虚羅ね。体長が完全にオールマイトを見てるようだ。緑谷くんがそこまでやられてるってヤバすぎない? オールマイトも呼ぶべきだったかな」
「さぁ、呼んだところで打撃か風圧に適応されてどうしようもなくなるオチな気もする。誰も初見の技で屠るのが条件とか思わないだろ。しかも復活したし」
「……確かに。てか、復活って何。勝算は?」
「負けるとでも?」
「それを聞いて安心したよ。その方が君らしい」
本当は既に枯渇しつつあるから3割もない。
もし次に体の一部が切断されたとして治せば茈が撃てるかどうか微妙なラインになるだろう。
少なくとも身体能力の強化に使えなくなる。スターの1戦から半年近く経ってるからお兄ちゃんパワーも多少上手くはなったと思うのだが、もっと消費を減らせただろうか。
たらればの話をしても仕方ない。
100%勝算があるわけじゃないというのはホークスも見抜いてるのが目で分かる。
それでも俺を信じてるのだろう。
全く、嫌な信頼だ。
「悪いけど俺はフォローで限界だと思う」
「それでいい。新宿から出られた方が危険だからな、それの妨害や俺を加速させる要員で居てくれ」
「了解!」
個性が消えて弱くなったとはいえ、今ですら全盛期オールマイト並の実力だ。
先より速い俺が近くに着地すると、剣を伴って斬りかかってくる。
弾き、斬り、弾き、斬り、弾き――と幾度も応戦し、サマーソルトで剣を弾くと跳躍して外向きの回し蹴り……と見せかけて、急激に縦の軌道へ変化させて頭部を蹴りつける。
いわゆるブラジリアンキックをすると首を脇で挟んで絞めるギロチンチョーク。
力付くで持ち上げられ、手を離すのと同時に拳が前を通り過ぎる。ギリギリの回避をすると、魔虚羅の拳と俺の蹴りが同時にぶつかる。
蹴りの方が有利のはずだが押し負け、地面に手を着きながら勢いを殺すと魔虚羅が姿勢を低くしながら剣を突き出してくる。
腰抜き。
倒れるより滑らかに足元へ移動し、体を横に倒して手をつきながら姿勢は低く、顔面に卍蹴りを繰り出す。
体勢を整える前に加速して顔面を蹴り飛ばすと、倒れた魔虚羅の両足を掴んで持ち上げつつ高速回転してジャイアンスイングで投げ飛ばした。
何処かのモールの中に突っ込んでいったので、その後を追うように入る。
居ない。
光のない真っ暗なモールの中。
周囲の気配を探っていると、天井に飾られていたであろう質量の大きい物体が落ちてくる。
咄嗟に横に跳んで回避し、見上げると空から魔虚羅が落ちてきた。
個性を切って首を逸らすと、剣が真横に突き刺さる。
俺に覆い被さる魔虚羅の腹を蹴り上げ、頭突きで打ち上げる。
手すりを足場にして加速した魔虚羅を再起動した個性が自動で受け止め、拳を突き出すと退避するように暗闇に逃げ込まれた。
瞬時に跳び、敢えて中心の上空に位置することで狙いを絞らせる。
どういう訳か、やはり斬撃は使えないようだ。
その間に倒したいところだが、ここで茈を撃てたとはいえ逃げられたらおしまいだな。確実にキメられる場所でキメる。
だが何故かやけに警戒されてる。何故だ。
普通の茈は使ったが、普通警戒するのは使った遠距離のはずだ。
そのせいでさっきよりもやりづらい。強さとしては祓う前だったが、厄介さは今の方が上だな。
そうこうしてるうちに、次々と投げられてきたものが不可侵によって静止させられる。
そのうち勢いがなくなり、任意で解除すると落ちていく。
何が目的だろうか。
訝しげに思いつつも警戒してると、飛び出してきた。
建物の柱らしきものが叩きつけられる。
お兄ちゃんパワーを放出して壊すと、振るわれたラリアットを避けながら蹴り飛ばすとモールの外に飛んでいき、建物が揺れていた。
即座に離脱し、出てきた瞬間にはモールごと俺に叩きつけてくる。
流石に被害が大きいので蒼で壊しつつ、加速した俺と魔虚羅の拳がぶつかり、発生した衝撃波が周囲を壊す。
次々と移動しながらぶつかり合うが、俺の方が力だけなら押され気味になる。
技術でカバーしつつ時折不可侵を発動させてると、ついに法陣が回った。
「赫!!」
即座に離すための赫で吹き飛ばし、1度戦いをリセットする。
ビルの屋上まで吹き飛んだ魔虚羅が着地し、俺は空中で見上げた。
今の適応で不可侵に適応された可能性は高い。
引力に適応させる。さすれば確実にキメられる。
適応されると分かっていて何も考えずに戦っていた俺ではない。
まぁぶつかり合いのせいで建物が崩壊しすぎて瓦礫ばかりになってしまっているが……もう既に今更なのでいいだろう。
ここまで来たらとことん容赦なく壊させてもらう。
やつが警戒してるのは茈だ。何故使ったことの無い、せいぜい俺が初めて使った時にしか発動してない一切情報のないやり方を警戒してるのかは不思議でならないが……過去に俺に似たようなやつにやられたか?
……まさかな。
「おかあさん……お父さん……何処ぉ!!」
「この声は……!」
ふと響く、子供の泣き声。
まるで探し物を見つけたように魔虚羅は目を向け、なぜだか笑ったような気がした。
意図を理解した俺は魔虚羅より早く
すぐに斬撃が放たれる。
回復していたのか、と驚く暇すらくれない。
斬撃が向かう先は、1人の少女。
「まだ逃げ遅れた人が居たのか……!? 間に合え……ッ!!」
蒼による超加速。
合理的だの正解だの考えてる間違いだの考える時間なんてない。
「もう大丈夫だッ! 目を閉じてろッ!」
斬撃より早く少女の元に辿り着いた俺は、一応伝えつつ少女を左腕で抱き寄せる。
自身の胸で彼女の顔を隠すように。この行動が待つ未来なんて考えなくても分かる。
再び走る、右腕の猛烈な痛みと喪失感。
適応以前の問題じゃない。
この斬撃は、
咄嗟に抵抗してこの子を抱き寄せつつ動いてなければ左半身と右半身が真っ二つに分かれてたところだった……!
生やすより早く、そのまま個性を少女に付与。
手にくっつくようにしつつ、走っていく。
立って居た位置に次々と突き刺さる斬撃。
当たらないように避けていくが、あまりの量に時折掠る。
ただ少女だけは意地でも守り通す。傷一つ付けさせない。
「だ、誰……?」
「知ってるか分からないけどオリジンっていうヒーローだよ。ごめん、今忙しくて手が離せないからさ。お兄さんの知り合いのヒーローに君の両親を探してもらう。だからもう少し辛抱出来るか?」
出来る限り優しく声を掛けた。
まだ上手く状況が理解出来てないようだが、騒いだり暴れるような子でなくてよかった。
「うん……オリジンって知ってる。すごいがくせいさんっていってた! 私もふぁんなの」
「そっか、ありがとう。ならこれ終わったらちょっと時間作るから大人しく出来るか?」
「わかった! やくそく!」
「ああ、それで……ひとつ聞きたい。君はどうしてここに?」
どうやら俺を知ってるらしくて警戒心はすぐに消えてくれた。
俺の右腕を見せる訳にはいかないから少しやりづらいものの、気になるのはそこだ。
一応既に封鎖済み。あのホークスが見逃すとは思えない。
それこそ、
いくら渋谷に近いとはいえ。
「えっとね……知らないおじちゃんがね、私のおかあさんとおとうさんはこっちにいるって」
「……」
おいそいつ絶対AFOだろ。それか協力者。
いやAFOだなこれ。てめえ絶妙なタイミングでまたしても邪魔しやがって!!
なんて思ったが、彼女に言っても仕方ないので押さえ込む。
なんだ? OFAを奪うための障害になりかねないと俺を狙ってきてるってところか?
上等だよ、正面から来いよ。その方が出久を守るのに手っ取り早いしアイツはハゲにすると小さい頃から心に決めてるんだ。
「そっか、少なくともこっちには居ないと思う。お兄さんは一度も人を見てない。すぐに両親の元に連れていくから離さないでくれよ」
「……うん!」
「緑谷くん!」
「とか言ってたら来たな。ホークス、この子を頼む」
追いついてきたであろうホークスに少女を預けると、俺の腕に気づいてるからか少女には見えないように配慮してくれている。
見事肩から持っていかれたからな。ちょっとズレてたら頭部がやばかった。
「それはいいけど、その腕ッ……」
「この子は誰かに唆されたらしい。両親は渋谷辺りにいると思う」
「……分かった。俺が責任をもって届けるよ」
「うで?」
「何でもないよ、もう迷わないようにな」
顔を出してきた少女だが、既に腕を治した。
その事にホークスが驚いてたが、ぶっちゃけ使っていながら未だによくわかってないのが俺だ。
ヴィオラはなんだか知ってるような様子だったけど。
詳しく聞かれることになりそうだなど思いつつも俺は振り返る。
「……死ぬなよ、緑谷くん」
「死なねーよ」
いつもは割とヘラヘラしてるホークスだが、妙に感情を強く表に出している。
だからこそ、いつもの調子で手を振るとホークスが羽ばたく音が聞こえた。
――やられたな、こりゃ。
もう茈を撃てるほどの余力はない。
口ではああ言ったが、ここまで本気でヤバいと思ったのは何時ぶりだろうか。
だからといって、死ぬ訳にはいかないな。
「弟が入学してくるんだ。そこにお兄ちゃんが居なければ導けないだろうが……!!」
残る力全てを身体能力に回し、一気に加速すると無数の斬撃を避ける。
相手もここが畳み掛けるチャンスだと思っているのだろう。
実際にそうだ。
一か八か、再生するより早くボコって殴り殺す。
両手に蒼を纏った状態で魔虚羅の拳を押し返し、一気に連打を叩き込む。
逃げる間も与えないラッシュ。
さらに顎を打ち、蹴りを繰り出すと魔虚羅の体がくの字に曲がる。
ここだ、と蒼ではなく赫を拳に纏った。
蒼とは正反対の力。
俺の腕が吹っ飛ぶ危険性はあるが、一撃で殴り殺せば――
ガコン。
「こいつッ! ここで適応――がっ!?」
咄嗟に赫を放つことで魔虚羅を吹き飛ばすが、同じように吹き飛ばされた俺は瓦礫の中に沈む。
身体能力に回すのが間に合わずまともに受けてしまった俺は頭がぼうっとして、遠のく感覚があった。
冗談抜きでヤバい。
そう思って起き上がろうとするも力が入らず。
俺の意識は、何かに引き込まれた。
◇
――蒼だ。
蒼の世界が見える。
仰向けに寝転がっている状態だと気づいた俺は冷たく感じる地面を見た。
水のように透き通った水色の地面。
見上げた先の空には青空が広がり、何処までもどこまでも広がっている。
過去に見た、蒼の世界だ。
「……ここは」
「や、久しぶり」
何だか懐かしく感じる世界に何だか懐かしく感じる声。
両手をポケットに突っ込みながら覗き込むようにしてきたのは目隠しをした白髪の男性だった。
にやけ面。
その顔を忘れるはずもない。
「うっわ……最悪。まさか本当にまた会えるとは思わなかったな」
それはあの時、1度意識が引き込まれた時同様の現象で。
いつかは会えると思っていたが今だと思ってなかった俺は体を起こしながら思ったことをそのまま告げた。
俺が超えるべき壁。
真の最強へと至るために超えなくちゃならない相手。
あの目隠しバカだ。
原作
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入る
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もっとお兄ちゃん読みたい
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作者の好きなようにやって欲しい