どけ!!俺は出久のお兄ちゃんだぞ!! 作:俺もお兄ちゃんだぞ!!
「君たちは去年経験したから分かってると思うけど、雄英体育祭が近づいている」
「もうそんな時期かー」
「ねー早いねー」
「もう体育祭……う、考えるだけで動悸が激しくなってきた……」
「3位がなんか言ってら」
「1位のやつが何言ってんの」
「そーだそーだ!」
「ほんとほんと。1位が言えることじゃないし」
出久が応援してくれたからな、そんなの1位以外を獲る訳にはいかないだろ? 全競技一位獲ってやった。
宣誓もちゃんとしたぞ。
お兄ちゃんが勝つぞ!!って。
お兄ちゃんは優勝するぞ!!って。
有言実行後、家に帰ったら興奮したように早口で捲し立てる出久が可愛すぎて悶え死んだ記憶がある。
無論お兄ちゃんは聞き逃さない。ブツブツ言ってる出久もまた愛らしいものだ。一言一句受け止めていたぞ、出久!!
「うん、それでね、緑谷くん。もうやめてね、マジで。あの時僕大変だったから。久しぶりに限界まで個性使ったよ」
「セメ先*1がんばれー」
「他人事みたいに言わないでくれるかなぁ……!ステージを完全に壊したのは君だけだからね!?」
涙目になるセメ先に2年A組は苦笑いしか浮かべられない。
俺も苦笑いしか浮かべられない。
体育祭のステージが完全に崩壊したのって俺じゃなくてねじれの波動だし……俺は自分に当たらないようにしてただけだ。割とあいつの波動を本気でやられたら洒落にならない。
試す方法はもうないが、流石の俺も“個性なし”で生身で直撃したら全盛期のオールマイトの一撃を耐えるくらいしかまだ耐久力がないだろう。お兄ちゃんでも人間だから限界がある。*2
それに体育祭後に土下座するレベルでやってしまった方よりかは被害少ないからマシだと思ってください。あっちは仮免対策と長年考えてきたオールマイトを超える必殺技開発のためとはいえ暴発しそうになったやつを咄嗟に地面に撃ってあれだったからな……。目の前に撃ってたらまず間違いなく削られたかのように俺の前方が消滅していただろう。セーフ。*3
俺も個性診断以来久しぶりに本気でヤバいと思って校長先生に土下座したし。
そういえば体育祭の決勝戦終了後、授賞の前にセメントス先生が泣いて力尽きてたっけ。
俺たちを担当する先生、たまに胃の部分を押さえてるし心配になる。ちゃんと病院に行くかリカバリーガールに診てもらってくれ。*4
「それはともかく、1年の時と違って勝手が分かってると思う。だから僕から言う必要は無いと思うけど、各自体育祭に向けて対策して頑張るように! 緑谷くんは壊さないでね!」
『『『はーい』』』
「俺だけ二度釘刺ししなくて良くないですか?」
それを告げたセメ先は教室から出ていく。
授業が始まるからだ。
一限目は……マイク先生か。
イレ先と仲良しだから割と関わる機会があった。二人してイレ先を誘ったのは良い思い出だ。
今度またマイク先生とイレ先を猫カフェに誘ってみるか。
イレ先はカラオケにクラス全員で行こうってなったとき、全然来てくれなかったんだよな。
みんなに言われて寝袋のままマイク先生と一緒に肩で抱えて連れていったけど。*5
数学であるエクトプラズム先生の授業が終わると昼飯の時間だ。
ランチラッシュという一流の料理人ヒーローが作るご飯が格安で食べられる場所であり、前世換算だと本当に高級店に匹敵する味だった。
天下の雄英というだけある。
出久の好物であるカツ丼を食べたことはあるのだが、物凄く美味い。
無事出久に薦めることが出来る。
「転間……昼にしよう」
「そうだな、行こうか」
「私も行く〜」
「ねじれが行くなら私も」
「友達と食えよ」
「友達だもん」
「俺が言いたいのはそういう意味では……いいや。混む前に行こう」
女友達もいるだろうに、こっちに来る必要はないんだけどな。
本人たちが困らないならいいのだが、クラスメイトみんな気のいいやつらだし大丈夫か。
食堂に関しては弁当を持ってくる生徒もかなりいるから全員が食堂に行くわけではない。
だが当然比率的には一般家庭はかなり多い。俺も含めてな。
逆に家が大規模な会社を持ってたりプロヒーローだったりと金持ちも結構いるみたいで、そういう人たちはだいたい弁当を持ってくるのだろう。使用人とかいるのかも。
使用人と言えば文化祭で執事服を着せられたっけ。ホラーで屋敷をテーマにしていた。*6
執事服は開催前に試着したけど『弟くんが関わらなければなぁ……』と男女問わずクラスメイトに言われたんだよな。どういうことだおい。俺から出久を消したら何が残るんだよ。*7
ただやはりランチラッシュの飯を食べられるのが大きいみたいで、結局人それぞれだ。
その甲斐もあり、滅茶苦茶混雑して遅ければ遅いほど凄い混む。
俺は出久におすすめするために全メニューを制覇したから美味しい気持ちは分かるしな。
「あ! 転間ー! 環ー! 波動さん! 甲矢さん! 今から食堂? 俺もいいかな!?」
「よくない」
「ミリオなら歓迎だ」
「いいよー!」
「同じくいいよ」
「ありがとう!」
「多数決って残酷だよな」
「……その気持ちはちょっと分かる」
肯定してくれたのは環だけだった。
陽キャには通じない。
現に俺は多数決によって意見が潰されてしまった。
「よぉし! 今日こそ転間を笑わせるぞ!」
「つまんないからやめろ」
「でもよくスマホを見てニヤニヤしてるよね、あんた」
「お兄ちゃんだからな」
「ちゃんと会話してくれる?」
「平常運転だねぇ〜」
俺のスマホに入っているフォルダは出久の年齢に合わせて作られてある。
母が撮っていたものもあるが、やはり増えたのは出久を鍛える前。
出久が無個性だと診断され、本人の心に深く残り続けて自信を無くす可能性がある。
だから成長が目に見えて分かりやすくするため、写真を撮るためにカメラを母から貰った。
そこからはもう出久の肉体の成長と個人的に最かわポイント*8を探して撮っていた。
個人的にお気に入りなのは、ソフトクリームの生クリームを口元につけたまま美味しそうに笑顔で食べている出久だ。
ああ、思い出すだけで言わざるを得ない……!
世界一可愛いぞ、出久ゥ!!
「そういえば体育祭! みんなはどうするか決めた!? 特訓!」
「うーんまだ明確には……。とりあえず個性を伸ばすように頑張る……かな?」
「優勝はいいから緑谷を何とか矢で後ろから刺すことかな」
「おい待て。今不穏なこと言ってる奴居なかったか? 殺す気か?」
「考えるだけで心臓が痛い……。病気かもしれない……」
「ただの緊張じゃない?」
「深呼吸大事だよ〜」
「もっと自信持ちなよ、環! 環なら大丈夫だよ!」
「そうだぞ、環。緊張なんて弟の応援ひとつで消滅するぞ」
「元から緊張しない転間に言われても説得力がない……けど、頑張ってみるよ……」
「さらっとディスったなお前」
予想通り食堂が混んでしまっているため、並ぶことになってしまっている。
今日は何を食べようか。日替わり定食でいいや。
「実際緊張することってあんの?」
「あんまりないと思う」
人生で一番緊張したのは出久の可愛さを知る前だったと思う。
それ以降はどうでもよくなった。出久のためなら頑張れる、それが誰もが目指すべき理想のお兄ちゃんなのだ。
お兄ちゃん友達なら募集してる。ただし出久は俺の弟だ、触れたら許さん。
「去年は転間が優勝したもんなー」
「お前は個性の使い方が下手くそだから悪いんだろ」
「いやね、これね、凄く難しいんだよね! 結構良くなってきたつもりなんだけど。と言っても転間も中々個性的な個性だからなー」
「つまんな、今すぐ回れ右しろ。仏の顔も0度までだぞ」
「待って! 今のは偶然! 本番はこの程度じゃないんだよね! というか仏様いくらなんでも短気すぎない!? チャンスないよ、それ!!」
「あ、もうそろそろ私たちの番みたいだよ。何するの?」
「日替わり定食」
「カレーライスかな、華麗にっ!」
「海鮮丼で……」
「私はコロッケ定食かな?」
「私はどうしようかなー」
「鶏の照り焼き丼はコスパもいいし美味しいぞ」
「じゃあそれ!」
各々注文が決まったら出されるのを待つだけで、しばらくして貰うと席に座る。
左から甲矢、ねじれ、俺。
対面に右からミリオ、環だ。
俺の日替わり定食はアジフライ定食だった。
アジフライだからといってただのアジフライじゃない。
焼き加減、食感、味付け、全てにおいて調和を成されている。ランチラッシュの料理を世界に出したら世界平和出来るのでは?
学生のうちにこれほどの料理を食べてたら舌が肥えないか心配になる。
まぁ美味しいものは今のうちに食べとくべきだ。
学生のうちは結構自由があるが、大人になれば消えるからな……。
「転間くんがまた遠い目してる」
「どうせ弟くんのことでしょ」
「本当に弟くん大好きだよね! 俺も会ってみたいなー」
「気にはなるけど……初めて会う人は緊張するな……」
ノーコメントで。
紹介せずとも来年には出久と会うことになるだろう。
なぜなら出久は必ず雄英に来るからな。お兄ちゃんの目に狂いはない。
オールマイトに憧れてる以上、オールマイトが卒業した学校以外は選ばないだろうし。
残りの授業を終え、各々特訓がある。
みんなと別れた俺は早速体育祭に向けての特訓と行きたいが、今日は個性に関してはやるつもりはない。
脳の処理能力を上げるために勉強でもしておこう。
「あれって……?」
図書室を目指して俺は歩き、目的地に着くと人は少なかった。
個性由来のものなのか勉強してる人は何人かいるけど、やはり大体は外でやってるのだろうな。
何かを作るタイプは勉強もした方がいいけど、発動型や異形型は勉強よりも特訓重視の方がよかったり、と分かれているものだ。
ちなみに俺は両方。
ただ勉強ばかりじゃ疲れるからたまに暇潰しに面白そうな本を適当に読むついでに勉強している時はある。
とりあえず問題集辺り探して高速で解いておくか、と本を持って誰も座っていない席に座る。
すると反対側の席に一冊の本がそっと置かれ、誰か来たのかと視線を挙げる。
「あ〜。やっぱり先輩だった」
見覚えのある生徒だ。
ちょっと時間を費やし、思い出す。
あの優秀な1年生か。
「不和さん、だったか」
「あ、覚えとってくれた?」
「まぁな。座ったらどうだ? 図書館だし立ってると他の生徒の気が散るかもしれない」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
本音を言えば後輩を立てさせて座っている先輩とか明らかに噂になればマズイというのもある。
ただ彼女もそう思ったのか、くるりと回ってくると俺の隣に座った。
こっちの方が邪魔にならないって判断か。
席に余裕があるとはいえ、他人を気遣うとは。
「もう一週間以上経つか。特に除籍があった……みたいな何かあったような話は聞いてないけど、大丈夫か?」
「うん。皆イレ先の厳しさと優しさも分かってきとーよ。みんなぴしゃっとしとー。先輩んお陰」
「俺はただ甘い考えを持っているやつらに対して実力差を思い知らせるために戦っただけだぞ」
「あははっ。言えとーたい。やけど先輩のおかげでなんのためばヒーローなる理由ば、よーく見つめ直せたんよ?」
正直あの後の質問攻めは思い出したくもないが、いい方向に進んでいるようで何よりだ。
これならもう除籍を受けることもないのではないだろうか。そのままいい方向に進んで来年出久の力になってくれ、それ以外は望まない。
ただ一日とはいえ俺が担当したから何か問題あったら俺に責任があるんじゃないかって思うため、悪い方向には本気で行かないで欲しい。
俺は頑張ったぞ、出久! 来年は必ず俺が力になってやるからな……!!
「みんな、めっちゃ感謝しとるんよ〜。会いたいって口々に言っとったっちゃね。もちろん私もたい」
そう言って、不和が体を真横に向けると俺の顔を覗き込むようにしながら若干距離を詰めてくる。
初めて会った時の暗すぎる印象ばかり残っていたが……最初は敬語だったはずなのに今は凄い砕けた話し方に変わっている。なんというか、ギャルっぽい言動と距離感だな。こっちが本来の彼女なのだろうか。
前世は社畜してた記憶しかほぼないからよく分からないため、勝手な偏見だが……。
「気が向いたら行くことにする。ただ今は体育祭を考えないとな」
「それ来んやつじゃん。でも、そうなんよね。体育祭は知っとるっちゃけど、初めてやし……大変ばってん頑張っていくんばい」
「……そうか。まぁ伸び悩んでるならイレ先に言ったらいい。文句は言いつつもやってくれるからな。先輩からの助言だぞ」
「それって〜……」
1年間担当してくれたイレ先のことをよく知っているため、助言すると彼女は言葉を区切りながら顔を近づけてきて。
真剣な目で見つめてくる。
綿の花の花弁の中にある雌蕊のような目が俺の緑色の目を映している。
俺との身長差*9もあって上目遣いになっているが――
「先輩でもいいの?」
「俺は理由なく弟以外には甘くするつもりはないんだ、悪いな」
潔く即答をしながら額を軽く押して引き離す。
全く、どいつもこいつも警戒心が薄すぎるのはどうかと思う。俺がお兄ちゃんでよかったな。男にそういうことをやると勘違いさせるぞ。
男は狼。出久は天使だ。
なんて考えてると俺が押した額を片手で押さえながら不和はスカートを押さえて正面を向いていた。
「先輩はいじわるったい。私、頼れるプロヒーローなんていんし、個性のこと気楽に相談できるんは先輩くらいしかおらんのに」
「……」
拗ねたように唇を尖らせてそんなことを言ってくる。
そう言われると弱い。
確かに同級生たちは友達であったとしてもライバルという関係だ。
切磋琢磨する人も居るが、やはり個人個人強くなる人の方が多い。体育祭ってのは手札を隠してた方が有利になるものだ。
俺もほぼ一人で鍛えてきたし、職場体験に行ったりプロと交流のある2年生と違って1年生は頼れる人脈が少ないだろう。
家族がプロや先輩だったり知り合いにそういった人がいたら別だけど、一般家庭じゃあんまりそういうのはない。
イレ先は優しいけど怖い印象の方が強いだろうし……そうなると唯一関わりのある2年生の俺を頼るのは必然になる。
それに俺は”理由なく“と言ったが、理由を付けてきた。
……こいつ、なかなかいい性格してるし賢いな。
普通なら隠すであろうことも隠さず言うし、シャキシャキしているというか、個性とは真逆すぎる。
面倒だが理由まで用意されれば仕方ない。この恩はいずれ出久に返してもらおう。
俺に貸しを作ったら全部出久に返還されるシステムだ、神すぎる。是非とも実装すべきだろう。
「分かった、手伝えばいいんだな。ただし俺も体育祭があるから……今日はサービスとして期間外でいいが、明日からの1週間だけだぞ?」
「ほんと? 嘘じゃない?」
「嘘つく必要もないだろ。ただし参考にならなくても文句を言わないことが条件だ。俺と不和さんの個性は全く違う」
「は〜い。それと先輩やし、私のことば不和さんやなくて、真綿でよかよ?」
「そうか、じゃあ真綿で」
「うん、先輩」
相談相手が得られたからか、初めて見る満面の笑みだった。
おかしい。俺も体育祭があるのに、何故か面倒を見る生徒が出来てしまった。
まぁ何があっても優勝は揺るがない。出久が自慢出来るお兄ちゃんで居なければならないからな。俺は死ぬ気で勝つぞ。遊びでもなんでもなく、命を懸けて挑むぞ。覚悟であって死ぬ気はないけどな。
さて……本題に戻らねば。決めた以上は俺も真剣にやる。
あの時のことを思い出す。
俺が吹っ飛ばした生徒を難なく受け止めてたし恐らくクッション性が高いことから戦闘ってよりも救助やサポート向きか。
そうなると他の先生たちが個性を伸ばすだろうし、攻撃手段を教える方が適切?
綿で攻撃ってどうするんだ……?
そもそもどういう個性なんだ?
そこから聞かなくちゃならない。
「真綿、個性を確かめたい」
「っえ!? ま、まぁ先輩ならよかっちゃけど……あんまり強くせんで欲しいかも……」
顔を赤くしながらもじもじと身動ぎする真綿に俺は疑問符を浮かべる。
個性を確かめるのは普通だろう。何を恥ずかしがることがあるのか。
俺の個性だって物体さえあれば見せられるし。人間は相手が危ないから出来ないが。
「じゃ、じゃあ……んっ!」
そう思ってたら隠れた耳を出すように髪を掛けて近づけてきた。
意図を示すように綿が揺れ、理解する。
いや、それ個性だったのかよ……。普通にアクセサリーと思ってたのでガチで驚いた。
しかし別に邪な考えなどない俺は耳元にある綿を普通に触る。
これは……!
ふわふわしている。まるで新品の綿だ。昔に買って使った時のことを思い出す。
肌触りが良い上に優しく支えてくれるような、包み込んでくれるような柔らかさがあってとても気持ちが良く、リラックスが出来る優れものだった。
――クソ上司からの呼び出しで休日だと言うのに眠れずそれっきり使えないまま枕は死んだが。もしかして俺の死因って睡眠不足?
邪魔な記憶だ、忘れておこう。人間は嫌なことをよく覚えているというが、未だに覚えてる前世の記憶が一番深く残ってるからか社畜してたばかりなの悲しすぎる。
何より死んだお陰でマイエンジェルブラザーと出会えた。
それよりも。
「大きさの変化は? 最大で頼む」
「えっと……こんくらい?」
手を離すと、大きさは調整可能みたいで分離した綿は抱き枕くらいの大きさだった。
成長次第ではさらに大きく出来るだろう。
……俺が耳に触れる前に最初から分離させたら良かったのでは?
何はともあれ、理想としては雲のような大きさで人を何人も包み込めるようになって欲しいが、体育祭で使うとなると……。
「とりあえず何処からでも出せるようにする。複数操って速度を上げる。それで包み込んで相手に動きを完全に封じるやり方で模索していけばいいかもな。速度に関しては真綿が一番得意とするであろう救助にも使えるし」
マイエンジェルブラザーこと出久ならもっといいアドバイスが出来ると思うが、残念ながら俺はそれほど得意ではない。
もしくは攻撃手段だと真綿で首を締める……ってことわざ通りも出来るかもしれないが。
実際には真綿で口とか鼻を防いで窒息狙うやり方も強そうだ。
「あーね」
「硬さの調整とかは可能なのか?」
「うん、硬質綿みたいなカチカチの硬さから超長綿のようなふわっふわ〜まで出来ると思う」
「そりゃすごいな。利便性が高い」
「えへへ、すごかろ〜?」
「すごいすごい」
「適当すぎん!? それに心がいっちょんこもっとらんばい……!!」
「で、話を戻すが硬さも自由なら締め付ける攻撃が有効だろうな。あとは物体に纏わせることで操れるなら空中から落として当てれば大ダメージだし前方に勢いよく発射させたりとか。例えば針をシルクで包んで投擲したあとに引き戻したり、振り回したり。*10逆にもふもふの綿毛で体を包むことで防御力を上げたりとか*11」
硬質綿となると、身近なものだと敷布団の詰め物とか座布団やクッションの中材にも使われている。反発性も弄れるなら使い方は増える。
シルクは引張度が高かった気がするし、確か針金に匹敵するんだったか。
昔は釣り糸にも使われてたんだっけ?
それに拘束した後に固めたり、逆に柔らかくすればクッションにしたり使い方によっては空中を駆け巡ることは出来るだろう、こう、弾力で。
出来るかは分からないが、個性なら出来かねないのがなんとも言えない。
「へぇ〜、やっぱり先輩に相談してよかった」
「出来るかは知らないけどな」
「それでもそん目標ば目指して頑張ってみるっちゃね! 今日はもう帰らんといかんけん。明日からよろしくね、先輩!」
結局本を読まずに返したら去って行った。
なんで図書館に来たんだ、真綿。自分で返したのは性格が見えるというか、きっちりしてるんだろうけどな。
ただ思うことがある。
それは――
「キャラ違いすぎて未だに混乱するな……」
本当にこれ。
あの暗さが嘘のように消えてるし。イレ先の攻撃力半端なかったのだろう。
普通に考えてあの状態になると思えない。何かが原因で原作よりも厳しくしたってパターンかもな。
そんな状態で俺が来たわけなのだから懐かれてしまった、というべきか。
それにしては俺に対して心許しすぎな気もする。
俺はせいぜいイレ先の優しさとヒーローとしての厳しさとか教えただけなんだけど。あと実力を分からせた程度だ。
確かにあの日は残り時間で会話したり質問に答えたりしてコミュニケーションを濃く感じるくらい取ったとはいえ、新1年生の勢いは半端なかった。
何とか乗り切ったが……これもお兄ちゃん力が高まってる証なのかもしれない。
だが、俺の弟は出久ただ一人。どれだけ俺に近づこうとも俺は他の人を弟にも妹にもするつもりはないぞ……!*12