どけ!!俺は出久のお兄ちゃんだぞ!! 作:俺もお兄ちゃんだぞ!!
あー、もう疲れた……。
声を上げることすらしんどい。
精神的にも肉体的にもしんどい。
ゲージが減っていく。
ダメだダメだ。
考えろ、思い出せ、俺は誰だ?
お兄ちゃんだ。
あの最高に可愛くてピュアで真面目で優しい出久のお兄ちゃんだ。
まだ終わった訳じゃない。
パワーを搾り出せ、俺はお兄ちゃんなんだ!!
「あ、復活した。もっと撫でたかったなー」
「いらん。やり返すぞ」
「うん、撫でて。勝ったもん」
「……くっ!!」
人がせっかく立ち直ったというのに突きつけてきた。
こいつ!!
しかし敗者は何を言っても敗者だ。
勝者に従うしかなく、俺は悔しさを胸に頭を撫でると“にへら”とねじれは表情を崩してた。
どうだ、お兄ちゃんスキルのひとつだから撫でるのには自信はある。ついでに猫カフェで猫を撫でまくったからスキルレベルを表示したらまず間違いなく“撫でる”は最大値付近までいってるだろう。
いや、そんなことは今はどうだっていい。
絶対次は勝つ――と思ったが、チーム戦となると組んだ方が手っ取り早い。別に一人でも負ける気はしないが。
ただ騎馬戦とかになったらルール上一瞬で敗北が決まってしまう。なぜなら一人だとまず騎馬戦が出来ないからだ。縄引きとかなら良いんだけどな。
……最終種目でそうしよう。
ところで手を離せ、俺はいつまで撫でないといけないんだ。俺の手は出久のためのものだぞ。
そもそもお前の手からどうやったらそんなパワーが出てくる?
普段は俺に抵抗出来る力ないだろ……!!
ぐぐぐ……! ってアニメや漫画ならエフェクトが出てそうな勢いだった。
第2種目はぶっちゃけ何も問題なかった。
リレーだったので俺が瞬間移動でぶっちぎって――としようとしたらブラド先生に止められたので我慢。
どちらにせよ甲矢、環、ねじれ、俺で勝った。
ミリオはクラスメイトの方に行った。
というのも何やら俺と競い合いたかったらしい。
仕方が無いので待って競ったが、普通に勝った。というか待っておいて負けたら俺は土下座するというかもういっそ詫びとして俺の身を捧げるしかない。
そのまま煮られて焼かれて死ぬ。*1
別に瞬間移動が封じられたからと言って俺の力はその程度なわけがない。
常に個性を封じられても、もしくは個性を奪われたとしても戦えるように想定済みだ。個性が無くなったから戦えないなんてお兄ちゃんの名が廃るだろう。
ということで、ミリオには雪辱を無事に晴らした。
残りは環とねじれに勝てば実質俺は全部1位ってことになるだろう。*2
俺はまだ負けてない。お兄ちゃんは負けてないぞ出久!!
第2種目が終わったため、昼飯の時間だ。
いや休憩なかったら正直厳しいだろう。俺でなくても。
俺も滅茶苦茶消耗させられたし、最終種目の途中で個性が使えなくなっていたかもしれない。ただし勝つ。
結局あの他の科すら巻き込んだ俺に対する妨害はなんだったんだ……?
終わったことを語っても仕方ない。
昼飯を食べて終わったら全員参加のレクリエーションがある。
ただ決勝戦がある人は出てもいいし出なくてもいい。
楽しみたい人はやればいいって感じだな。
俺は出るぞ!
出久に活躍を見せねば!!
「転間くんはどうするの?」
「出る」
「だと思った。一緒にやろ!」
「それはいいが、休まなくていいのか?」
「補給させてー」
「やめろ、俺の活力を奪うつもりか。どういう力を身につけたか分からないが保健室送りになるぞ、俺が」
ひょい、と伸ばしてきた手を躱すと次々と掴もうとしてくる。
やる気か? 俺は避けるぞ。
ひょいひょいと躱しまくる。これぞ残像。
「なにやってんの、二人とも」
「もうそんな元気が……流石だ……」
「環覚えとけよ」
「急に何!? 怖い……!」
「聞いてよ有弓!」
「いやー負けちゃったかー! やっぱり悔しいね!」
自然といつものメンツが集まって食堂に向かうことになった。
環環環環環環――!
お前だけには勝つ。絶対勝つ。絶対負けない。絶対ぶっ潰す。出久が見てるんだぞ俺がこのままでいるとは思うなよ。俺が1位だ!!
「そ、そんな目で見ないでくれ……心臓が痛い」
「……ごめん」
「ああ、うん……大丈夫。悔しがる気持ちはよく分かるから。ただ転間がそう思うとは思わなかったな」
「ね! 俺も初めて見たもん」
「うるさい。負けたら誰だって悔しいだろ。まあミリオには勝った。つまり俺はミリオにだけは負けてない」
「その理論はおかしい」
「それなら俺だって最終種目が残ってるから負けてない! これで1勝1敗!」
「最終種目たって結構競技に依るからな」
「一体何が来るのだろうか……」
「個性を満遍なく使えるやつになると思うが……雄英の考えは俺にも読めない」
競技は個性を使った戦闘だったが、武器を使う時もあるらしい。
俺は大体の武器は平均的*3には使えるようには一応している。原作通り行くとは限らないのは知ってたから出久が継承者になれなかった時の対策はバッチリだ。お兄ちゃんを無礼ないで欲しい。
何度だって言うが、常に最悪を想定するのはお兄ちゃんの必須スキルなのである。
――裾を掴まれた私は振り向くと、有弓が私を見つめていた。
「どうしたの?」
真剣な目で見つめてくる有弓に私は何かあったのかと聞くと、返ってきたのは沈黙だった。
口を開かないことに不思議に思ってると転間くんたちはそのまま先に行っちゃって、姿が見えなくなる。
天喰くんと通形くんも話してたから多分三人とも私と有弓に気づいてないんだと思う。
「早く行かないと」
「ねじれ」
「ん〜?」
声を掛けたら今度は私の名前を呼んで、私は首を傾げる。
三人には聞こえないようにしたかったのかな。
「何か緑谷に言われた?」
「え?」
「なんか嬉しそう」
思わず固まっちゃう。
そんな顔に出てたかな?
ううん有弓だから気づいたんだと思う。やっぱり有弓には隠せないなぁ。
「――うん。いつもの私の方が“似合ってる”って、えへへ」
心がぽかぽかする。
思い出すだけで口元が緩んじゃって、頬に熱が集まる。
戻そうと頬に触れても離した途端に戻る。
自分でもこのくらいで喜ぶのはちょっと安易かなと思うけど、弟くん第一な転間くんからの言葉って考えたら別で。
なんだか凄く嬉しかった。
競技の時は顔を見れなくて、逃げるように先に行っちゃった。
「――そっか、よかったじゃん。もう、ねじれは可愛いなーほんと!」
絡むようにくっついてきたかと思えば、私の頭を撫でてくる。
転間くんとはまた違った感じで大切に思ってくれてるのだとスキンシップから感じられる。転間くんの場合は――優しさに満ちてる。
そうしていたのも数秒くらいで離れると、彼が居たであろう場所を見つめて有弓はため息を吐いた。
「全く銀河一可愛いねじれが近くに居るのに全く靡かないなんてほんっと信じられないわ。ま、そんな緑谷だからこそ……なのかもね」
「有弓?」
「何でもないよ。それより早く追わないとね」
「うんっ」
何か小さな声で言ったみたいだけど、周りに人が増えたからかザワザワとした声が大きくて聞き取れなかった。
もうすっかり姿なんて全然見えないけど、向かう先はわかってるから大丈夫。
大丈夫、なはずなんだけど――。
「甲矢、ねじれ――二人とも同じ場所にいたか。よかった。席が混むぞ。今はミリオと環に席を確保してもらってるけど」
転間くんはわざわざ戻ってくれた。
ふ、と軽く息を吐いて、走ってきたのだとすぐに分かる。
確かに転間くんは弟が大好きな、いわゆる“ブラコン”と呼ばれるものでも振り撒く優しさは本物で――
「またさらに人が増えていくだろうしな。通れるうちに早く行った方がいいだろ」
根本的な部分は人を放って置くことができない、とても“お人好し”なんだって。
クラスメイト全員、気づいてるんだ。
……本人は隠してるつもりみたいだけど。
「行こ、有弓。転間くん!」
「まるで俺が遅れたみたいな……! 俺は迎えに来た立場なんだが……!?」
親友と大切な人。
二人の手を引っ張って私は食堂に向かって笑顔で駆け出した。
「……迎えに来たんだが」
「緑谷……今のねじれを見なさいよ。言う空気じゃないでしょ」
「俺が悪いのか……?」
――飯を食べ終わればいよいよレクリエーションだ。
ついにこの時が来たらしい。
挽回のチャンス。
大玉転がしで、異形型のことを考えてか重くされているらしい。中に鉱石でも入ってるのだろうか。
それもあって力自慢を見せつける場とも言える。
ここで俺が大活躍すれば出久はとても喜んでくれるはずだ。
じゃあ活躍するだろ。気合いを入れろ、緑谷転間。
お前の本気!
120%を見せてやれ!!
「やるぞ鬼垣ィ!! 本気で――」
「待てやめろ緑谷! お前の本気だと――!」
「吹っ飛ばす!!」
――大玉が破裂した。
なんなら木っ端微塵。
会場が静まった。
これは……。
「1位ってことでいいですかね?」
『失格』
「…………ま、そういう時もあるよな」
「ねえよ」
頭部を殴られて地面に埋められた。
ちょびっと血が流れた。
流石暴走時の俺を少しの間とはいえ抑えるだけある。この怪力野郎め。
気合い、入れすぎたか……!!
次は借り物競争だ。
これなら活躍間違いないだろう。
『スタート!』
速攻。
風圧を撒き散らし、カードが飛んでった気がするが気にせずに近くのを取る。
さてどんなお題でも俺なら一瞬で取りに行ける。
見ててくれ出久! お兄ちゃんは勝つぞ!!
そのためにもオープンだ!
『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲』
無言で札を裏返した。
さて、今なにかわけがわからない物が書かれてたような気がしたが気のせいだろうか。
俺はきっと疲れてるんだろう。そうに決まっている。
深呼吸して改めて冷静になる。
借り物競争だ。
どんなお題かな。
『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲』
『 ネ オ ア ー ム ス ト ロ ン グ サ イ ク ロ ン ジ ェ ッ ト ア ー ム ス ト ロ ン グ 砲 』
「なんでだよッ!! 誰だこんな聞いたこともないようなものを書いたやつ!!」
現実で聞いたことすらない物が書かれてた時の俺の思考を考えて見てほしい。
思わず地面に叩きつけて地面がちょっと凹んだ。
いや本当になんだこれ。
なんでアームストロング二回書いてんだよ。そもそもネオアーム――なんたらって一体どういうものなんだ?
どうしたらそんな名前になる!? なんだ、次の文化祭用のサポートアイテムか!?
俺の脳裏で情報が永遠と完結しなくなる。*4
『あ、間違いで入ってたみたいですね。どうやら競技の直前にぶつかってしまったらしく、回収した時に紛れ込んだのかと。時間もギリギリだったので確認する暇がなく……サポート科のメモみたいなのでもし拾ってしまったなら新しく手に取ってください』
「サポート科ァ!!」
お陰で三分くらい思考停止してしまった。
なんてことだ、このままでは先に行かれてしまう。
俺の思考を停止させるほどの意味不明な単語を作り出す才能だけはすごいと思うが、次だ次。
全く問題児どもめ。*5
『獄門疆』
「――文字見ただけでなんか嫌な感じがするというか鳥肌やばい。呪物かよ」*6
『それもメモらしいです。どうやらサポートアイテムの名前に手こずってるみたいで』
そんな情報どうでもいいです13号先生。貴女までまともじゃなくなったら2年はもう終わってしまう。
……せめて現実にあるものを紛れ込ませて欲しい。
そうこうしてるうちにサポート科のメモ回収して終わってしまった。
俺のところにお題が何一つないとか呪いだろ。*7
……俺、ゴミ拾いしてただけ?
一応、この後サポート科のところに行ったら困ってたみたいだったので返した。
文句は言いたかったが、そんなお礼を言われれば文句を言う気持ちは消えてしまう。
まぁそういう時もあるよな。
ただ獄門疆とやらにだけは何があっても絶対に作らないで欲しいとだけは言っといた。なんでか知らないけど、実際にあったら俺の身がヤバそうな気がして。
名前だけでも聞きたくないと感じてしまった。
なぜだろうか……。やっぱり名前も不穏だからかもしれない。
それはそうと二人三脚。
だが迷路式らしい。
ただでさえ難しいらしい二人三脚をさらに難しくする理由はなんだよ。
「普通に走るんじゃダメだったのか?」
「個性があるからじゃないかな?」
「確かに俺とねじれなら走る必要ないか」
ねじれと足を結んだ俺は今度こそ1位を取るべく気合いを程々にいれる。
なんたって散々な結果だったからな。
ということで二人三脚が始まった俺は肩を抱いて今度こそ速度を調整してねじれに合わせて走る。
滑り出しは順調。もとより相性がいいというか俺がだいたい合わせられるのも大きいだろう。
他と違って一度も転ぶことはない。
そしてこれが迷路である以上何らかの法則性があり、それさえ見抜けばゴールを見つけるのは容易。
いっその事真正面から行きたいところだが反則になると思うので真面目に攻略しよう。
左右に分かれるルート。
「分かれ道みたい。転間くんどうする?」
だがこういう時はだいたい取るべき選択はひとつ。
人は無意識に左周りに行動する傾向がある。つまり答えは――
「右だな」*8
「じゃあ左行こ!」
「俺の話聞けよ」
なんでか知らないが勝手に左に行くねじれに従わなければ転んでしまう為、大人しく従った。
俺に聞いた意味あった?
ちなみに壁だった。
人間の心理って馬鹿にならないな……。
その後、戻った後に正解を行って、三又に分かれてる道を真ん中を選択したら右に引っ張られた。何故かサボテンがあった。
その次は左に引っ張られた。ゴ〇ラの人形か置いてあった。動くやつ。
真ん中が正解だった。
それからもまるでRPGのダンジョンをマッピングするかのように全てのルートを通っていた。
ミミックには俺が食われた。罠だとわかってる物を人に開けさせるな。
パックンフ〇ワーもどきにも食われた。誰だ作ったやつ。著作権で訴えられろ。
というか俺が全部罠処理係になってるのおかしくない?
何よりこいつもはやゴールよりも何があるか気になって間違えてない? わざと遠回りしてるし。
しかしまあ、楽しそうなので“体育祭”というものが勝利だけを求めるものではないと知る俺は仕方なく付き合ったが。
実際観客はこんなのがあったのかみたいな感じで喜んでる人はかなり居たみたいだし、こういうグループがあった方が撮れ高もいいだろうしな。
盛り上がったならいいか。
他の組は罠を避けるためにゴールしてたからな。
ラストは玉入れ。
どうやら真の活躍場が来てしまったらしい。
試合開始ともに
この間たったの2秒。
「もうあいつ一人でいいんじゃないかな」
「というか終わったわ」
「何もやってない……」
「それはズルだろ緑谷ー!」
「チートだチート!!」
「卑怯よ!」
味方ではなく敵チームから野次が飛んでくる。
相性がいいのが悪いのでは?
つまり俺は悪くない。なんなら最初から禁止しなかった審判が悪い。