Invisible Brothers   作:CQCアーノルド

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#2 Ramble On

 

 

「諸君らも知るように、我々人類という種族は、他の生物たちと共に神々によって支配、抑圧を受けていた。」

 

2019年3月17日、横須賀某所の恐らく体育館であろう場所。白黒を基調とした、戦艦を彷彿とさせるコスチュームを着飾った女が、目の前にずらりと並んでいる少女らに届く声で説明を始めた。

 

「初めは我々を弄び、実験の対象にしていたが、時には崇拝するものに対しても残酷や試練を行い、苦しむ様をみて嘲笑ったという。

それに勘づき、過去数千年に渡って禁忌とされてきた「神を殺す」という行動を実行に移し、そして神に勝ってみせた男がいる!」

 

 

舞台の壁に設置されたスクリーンに光が投射され、1人の男の写真が映し出される。

 

綺麗にオールバックでまとめられた茶髪、彫りの深い、底知れぬ自身と余裕を感じる落ち着いた目、シャープな顎の上に鎮座した固く閉ざされた口、それぞれの整ったパーツと少しだけ暗い白い肌がその男を一目でアメリカ人だと理解させた。

そして目測り180cmほどの屈強にできた体躯を覆っているのは、アメリカ陸軍のBDU迷彩服。

M16A4小銃を片手に、塹壕から身を乗り出して遠方を見渡す姿は、そこにいる少女らがみんな知っている「アメリカの強さの象徴」だ。

 

 

「マリオ・ジョージ・フィッツジェラルド・ジョースター中尉。

第三次世界大戦における殺害確認戦果は歩兵だけでも1万と8691人。戦車及び装甲車等戦闘車輌が624台。軍用ヘリを含めた航空機類が230機、戦艦1隻。これは全てたった1人の歩哨が、3年間の戦争で作り上げた記録だ。それまでの人類史に存在した記録を霞ませてしまうほどのものを作っておきながらそれに留まらず、神へ反抗し打ち勝つことであらゆるものを抑制から解放し、我々に「進化し、外宇宙へと進んでいく権利を与えてくれたのだ。この「解放」は1999年の7月4日。今年で20年の節目となる」

 

 

今ある世界のその全ては、神々によって作られたものでできており、人が発明したものでさえも、そこには全て神からの干渉がかかっていた。アインシュタイン、ニコラ・テスラ、アルキメデス…、これまで生まれてきた天才達は、神による干渉さえなければ更なる大発明を産んでいただろう、と続けて女は説明する。

 

「そして現在においては、1969年の月面着陸以降進歩のなかった他惑星への直接の有人探査は2008年に火星、2011年に水星、2015年にエウロパと、太陽系の探査は目まぐるしい速さで進んでいる。発展のリミッターが外れて人類の技術力が本領を発揮し始めた証拠だ」

 

 

人々はそのマリオ・ジョースター…アメリカでの別名は「スーパー(超人)マリオ」なる人間を、史上最も不浄にして最も強い英雄だという。「神を殺した」という涜神どころの話ではすまない行いは、それまでの神話で記された如何なる事象よりも衝撃的であり、神への信仰が主体となってきた文明社会においては、「一応」邪悪にして不浄である行いであった。

しかし、神話や伝承の中で語られた神々の強さは本物、いやを遥かに上回るものだったのを、彼は自由の名のもとに葬りさったのだ。それが彼を「現世最強」とする理由である。

 

隊列の中の少女の1人は、語られていることを代わりに説明できるくらいその男のことを知っていた。同じくらいに勉強熱心な者は存在するが、その少女に関しては、少々マリオ・ジョースターと畑が違ったのだ。それでも尚大戦の匂いを知らないその乙女は、彼をもっと学び、自身に取り込めるものを得ようと考えていたのだ。

 

 

 

 

 

「吹雪殿!」

解散となり、体育館から出て後。少女を背後から誰かが呼び止めた。

吹雪と呼ばれた少女が振り返ると、好奇心と活発に満ちた目を持つまた違う少女が立っていた。

「秋山さん、お疲れ様です!」

相手の名前は秋山優花里。着ている緑と白のセーラー服から、彼女が日本の高等学校 大洗女子学園の生徒であることがわかる。ふたりは話を続ける前に小敬礼を交わして近づいた。

「やっぱり名前が挙がりましたね!あの人の名前が!」

優花里は嬉しそうに言った。

「教練でも、あの人の名前っていっつもでるもんね」

と吹雪も笑って返す。

「そりゃあそうですとも!たった1人なのに1個師団を全滅させ、歩兵ながらに航空機を撃墜し艦船を撃沈させてますし、23歳で中隊長に任命されてほとんど戦死者を作ることなく中国攻略の橋頭堡を作ったりもしたんですから、その戦略や能力はどこの国も喉から手が出るほど欲しいに決まってます!

話によれば、今まだ生きていればその戦績だけで元帥、いや統合参謀本部議長にまでもなれるらしいですよ!」

 

 

1999年、7月4日のことである。

太陽系からおおよそ地球に向けて、後に「神の怒り」と呼ばれた超大規模の流星群が飛来して到達しかかっていた頃。

ギリシャはオリンポス山脈の頂上から、とある儀式を行うことで行ける「神々の国オリュンポス」。そこでは、現世の最強を決める決闘が行われていた。

マリオ・ジョースターと、数多の神々を統べる絶対神<ゼウス>。

その2人が、持てるものを全て出し切り、やがて完全に原初に戻った殴り合いを行っていた。オリュンポスの外でなければ、宇宙全体に甚大な被害を及ぼすほどのパワーの迸り。NASAの宇宙望遠鏡からも著しい衝撃波として宇宙空間で観測出来るほどであった。

三日三晩続いた戦いの後、最後の轟音が響くと、白亜に輝くゼウスの神殿は、音を立てて崩れ落ちた。流星群は砂のようになって消え去り、

そしてその場に立っていたのは、マリオだったのである。

神に作られた、最も神に似せて作られておきながらにちっぽけな種族の1人が、全ての創造主に勝利したというこれまで、そしてこれからの歴史では起こることのない出来事を成し遂げたのだ。

 

彼に同行した同僚、フランク・キノッピオ曹長が証拠の写真や映像と共にそれを伝えた為マリオの功績は伝わっているが、仲間たちと共に彼が帰ってくることはなかった。

米軍の記録では「M.I.A(作戦行動中行方不明)」とされているが、実質的にはK.I.A(作戦行動中に死亡)という見解のほうが強い。享年24歳という若さでありながら、祖国と民主主義の勝利に貢献し、地球を滅亡から救った英雄として歴史に名を残しているのだ。

 

「生きていたら今もう44歳だよね…でもあんな実力持っちゃってるなら生きててもまだまだ現役だね」

吹雪にとって多大な尊敬の念を抱いている先輩は何人もいるが、マリオに関しては次元が違う。

ヴァン・ヘイレンやジョン・フルシアンテなど、歴史に名を残す多くのギタリストたちがジミ・ヘンドリックスを崇拝するように、マイク・タイソンやアレクサンドル・ウシクなどの世界の頂点に立つボクサーたちがモハメド・アリを崇拝するように、その道を行く上でのキリストとして見ているのだ。

それは優花里も同じ。こと「戦闘」という事物においては、如何なる人間をも差し置いて彼が最高級というのは彼の功績からみて明らかであるからである。

 

「あの人の同僚に会うだけでも得られるものはとてつもなく大きいはずです、新しく赴任する上官、誰か楽しみですねぇ!」

「6人もいるもんね…」

 

二人は他愛もない話をしながら、だだっ広い施設の中を歩き始めた。

 

 

 


 

 

 

3月15日。

 

 

銃声が路地を駆け抜ける。直後として男が1人、片手に拳銃をもったまま地へ崩れ落ちた。その10m前方では、ドイツ製の小型拳銃であるワルサーPPK/Sが銃口から硝煙を漂わせていた。

 

「1人やられた!」

 

ニューカッスル訛りの英語が叫ばれる。そしてその声の主を含む3人が手に持っていたルガーLCP拳銃を撃ち返した。

PPK/Sを持っていた方は、すぐ横にあった花壇に身を隠して銃弾をやり過ごした。

白髪の混じった金髪の上を380.ACP弾が通り過ぎるが、男は怯まずすぐ身を乗り出して反撃した。

 

彼の名前はジェームズ・ボンド。ロンドン在住のイギリス人で、188cmの長身と細身でやさぐれた顔つきは中年のイギリス人男性としてもハンサムな方であった。

 

よく前方を見てみると、撃った4発のうちのどれかが命中したようで1人がうめきながら倒れるのが見えた。

それを見つけるとすぐに別の敵に向かって正確に射撃し、もう1人の頭に正確に撃ち込んだ。

状況が一変したのを悟って、生き残った1人は素早く近くにあったオペルのセダンに隠れた。

 

 

すると突如、ボンドがつけていた無線イヤホンが着信を知らせた。

「もしもし?」

<順調にいってるかしら?007>

すぐに答えて見ると、老いた女性の声が返ってきた。

「連中は私と会えて嬉しいようです」

と皮肉で返事するも相手はそれに言及せず、

<突然だけど、そこでの状況が終了したらすぐに本部に戻ってちょうだい。あなたを任務から外さないと行けなくなったわ>

と言った。

「007」というのは、イギリス政府のいくつかある情報機関の内のひとつである秘密情報部、通称「MI6」における「殺人の

許可(ライセンス)」を持つ7人目ということを表す言葉だ。

「どうしてです、やっと尻尾を掴めそうなのに」

 

話しながらも007、ボンドは迷いのない狙いで少しだけ身を見せてきた敵の頭に弾丸を食らわせた。

 

<今向かっている家を調査すれば情報は得られるんでしょう?それさえ持ち替えれば後は009に引き継ぐ予定よ。

政府から貴方に召集があったの。国際連盟からの通達で、貴方を国際対テロ組織の指揮官に任命したいと>

「M.I.S.Fというやつですか?半年前くらいには失敗していましたが」

<それで彼らも補強しないといけないと察したようね、しかも我が国からは海軍でもSAS(特殊空挺部隊)でもなく、諜報員のあなたよ>

「見る目がありますね」

 

皮肉をいいながら、さっきまで撃ち合っていた男たちの死体を跨いで、ストリートを形作る民家のうちの一つの玄関口に達した。

 

<貴方は20年前の戦争で多大な活躍をしたでしょう、コーカサス攻略への糸口を作ったって英雄としても取り上げられていた…。その功績を彼らは買ったの>

 

「…すぐに戻ります」

 

通話を終了すると、彼はPPK/Sを素早く再装填し、ドアを蹴破って突入した。また激しい銃撃戦が始まった。

 

 

 


 

 

「マジかよ、俺だってのか?」

「はい。内閣総理大臣、防衛大臣、統合幕僚長、警視総監からもあなたへの出向要請が出ています。佐藤悟警部補。」

同日、日本国首都、東京都千代田区霞が関。天皇が住まうかつての江戸城、別名皇居を囲うビル群のうちとりわけ威圧感を放つ白い要塞、警視庁本部庁舎。その巨大な建物の一角のロッカールームで、48歳を迎えようとする男が、防衛省から直接派遣されてきた職員と話していた。

「ただの警官に頼むほどひっ迫してんのか?」

「あなたが一般の警察官ではないこと、ましてや公安部においても郡を抜く人材だというのは国連安保理の面々も認知しています」

 

佐藤悟、階級は警部補。警視庁公安部所属。

検挙率も高く、能力の高さは買われている敏腕だが、時には日本を脅かす相手との銃撃戦も厭わない命知らずであり、その性分からか上層部と意見がぶつかった結果、2017年より一線を外されている。

「自衛隊にいた頃の経験を期待しているんだと思います。あの宮本圭市の戦友だったあなたの戦績も目まぐるしいものですから」

20年前までは陸上自衛隊に所属し、第三次世界大戦を戦い抜いたベテランであり、故に機動隊の指揮を任されることもあった。そして日本人にも関わらず「早撃ち」の称号を20世紀に獲得した同じく陸自の英雄「宮本圭市」の直近の部下であり、最前線を彼と共に生き抜いたのだという。

 

「給料はどうなるんだよ。しかも俺は家庭があるから常勤ってわけにもいかないんだぜ」

「昇給だけでなく、ご妻子の生活のために援助を出すと政府からの通達はあります。娘さんの学費も全て持つ、と…。来年は大学受験期に入ると聞いていますよ」

「そんな条件はつけてるけど、結局は拒否権ナシだろ?」

「それについてはお答えできません」

そう返されると悟は困ったように自分のロッカーを開け、警察手帳とガンベルトをしまった。

 

「教えるのも仕事なんだろ、自衛隊式か?」

と問うてみた。

相手から帰ってきた言葉は、

「他に呼ばれた「5人」にも伝えてありますが、あなたがた独自のやりかたを提供することを上層部は望んでいます」

というものだった。

 

それを聞いて悟の手は再びガンベルトに伸びた。

 

 

 

 


 

 

 

 

ある人は、かの国を「自由の故郷」と呼んだ。

ある人は「民主主義の兵器庫」とも。

はたまた、「ヤンキー」、「資本主義帝国」、「醜い国」などなど…。

しかし今やその国は、その一挙一投足が世界を動かすほどの力をもち、今でもなお世界の多くの人々が住むことを夢見ている。

 

アメリカ合衆国。

それまでに起きた3つの世界大戦における勝者であり、それを経る事にその強さを増す大国。こと第三次世界大戦での勝利はアメリカのみならず、イギリスなどの西側諸国にも大きな繁栄をもたらした。ヨーロッパの復興を完遂しても大きくお釣りがくるほどのものであり、敗戦国側を除いてのアメリカの黄金時代がやってきた。

2008年に名門投資銀行リーマン・ブラザーズが破綻したことで世界的な恐慌が起きたこともあったが、それでさえも素早く持ち直し、内戦を経て再び力を取り戻したソビエトとの睨み合いに入っている。

英米対中ソの構図が復活した現代の新冷戦の中では、両者ともに核には深く集中せず、大規模な軍拡や宇宙開発競争に焦点をあてている。

 

そして現在特にアメリカの軍事産業を担うのは、

ゼネラル・ダイナミクス、ロッキード・マーティン、ボーイング、ノースロップ・グラマンなど様々だが、新冷戦に入って更にここに参入した企業が存在する。

 

それがアウターヘブン・エンタープライズ社である。

ルーツは1980年代に遡る。

中東、アフリカを主な活動地域として生まれたPMC(民間軍事会社)が元となって生まれた傭兵派遣会社であり、2000年代まで世界の至る所で起こる紛争に派遣されていた。第三次世界大戦においてもそれは例外ではなかった。そして大戦の中での兵器需要に乗っかってアウターヘブン社は銃器、及び走行車両のライセンス生産の業務を始め、M16自動小銃からハンヴィー、M1エイブラムス戦車まで生産を請け負い米軍への供給を助けたことで業績は飛躍的な進歩を遂げた。

時の2代目代表である「アダムスカ」はさらに傭兵派遣に力を入れる一方、ある男に兵器産業の方を譲る話を持ち込んだ。

ただの配管工だった男にはそれは夢のような話であったのか、また別の理由があったのか、彼は承諾し、2004年に傭兵派遣会社「アウターヘブン」から独立する形で「アウターヘブン・エンタープライズ」のCEO(最高経営責任者)COO(最高執行責任者)を兼任する形で就任した。

軍拡に走るアメリカ軍のために兵器をライセンス生産するのみならず、第三次大戦にも従軍していた彼は前線で得た経験を元にデルタフォースや海兵隊など特殊部隊に向けて歩兵装備や戦闘車両のカスタムモデルの設計、生産も始めた。

各軍事企業のOEMを行いアップグレードまで行うという点が質と量の両方を必要としているアメリカ軍のニーズにあっていたのだろうか、就任して間もなくから業績はぐんぐんと伸びた。2009年頃にはイギリスやイスラエルなどの西側諸国へのサービス提供やスポーツ、医薬品などの新規事業も開始し、更には航空宇宙業界にも参入した矢先、2014年に突如として、かつての母体であった傭兵派遣会社である方の「アウターヘブン」を合併すると男は発表した。

 

後世では「ガンズオブザパトリオット事件」と呼ばれる出来事が理由である。半ば世界中の傭兵事業を担うようになっていたアウターヘブンは、戦車や戦闘機、銃までもをID登録して戦争を「ビジネス」として管理し、更にはアメリカに対する大規模な蜂起を行おうと企んでいた。もちろんアダムスカが独断で始めたことであって片割れは関係なかったが、その企みは失敗に終わった。

結果として、吸収合併という形でアウターヘブン・エンタープライズの事業の1つへと衰退することになった。それを据え置いて企業は業績を伸ばし続け、米英加共同の火星探査基地の建設やエウロパへの有人探査を達成するなど、経済面だけでなく技術革新においても大きく貢献した。

ただの傭兵企業をアメリカの軍産複合体(ゼネコン)の一部にまで進化させた男は今、ロサンゼルスに居を構えていた。

 

 

 

 

「社長!」

 

3月19日。

アメリカ合衆国、カリフォルニア州ロサンゼルス。

ビバリーヒルズの邸宅のうち1つの中で、女の声が大理石の空間を通り抜ける。

 

「社長!大統領から連絡です!」

大声で呼び続けるが返事はない。仕方なく女はすぐ近くの階段を降りて地下室に向かった。

降りて巨大なガレージを通ると、分厚く作られた二重扉があった。

1枚目を開けた瞬間、耳をブチ抜くような轟音が鳴り響く。

「すごい音ッ…」

少し怯みながらももう1枚のドアノブに手を伸ばして取っ手を下ろして開いた。開けた瞬間、視界が開けるとともに轟音は全力の勢いをぶつけた。

中では1人の男が、ジャクソンMJシリーズの黒いストラトキャスターを抱えてプレイングに勤しんでいた。曲目はアメリカの伝説的スラッシュメタルバンド、メタリカの「Creeping Death」。今やメタル音楽におけるスタンダードであるが、その難易度は随一である。ちょうどそのギターソロ部が終わったところで男は演奏を止めた。

ギターが繋がれていたランドール社のギターアンプはフォーティン社のノイズゲート・エフェクターのお陰でノイズを出すことなくふっと静まり返った。

 

「ンだよ、また平和団体からの苦情か」

 

アウターヘブン・エンタープライズ代表、ジョン・マーシャル・ホロックス。今年で50歳を迎えるスーパーセレブである。

 

「アームストロング大統領から連絡が来ています。ペンタゴン(国防総省本部)への出向依頼です。「ジミ、頼むから今すぐ来てくれ」とのメールが来ています」

 

女がそう言うと、彼はギターをホルダーに戻してため息をついた。

「さては去年くらいに作ってた対テロ部隊の話だろ…」

「例の失態から半年経ちましたが、世論は未だに冷ややかな視線を向けています。それを何とか打開したいのでしょう」

「まともに対応力もない階級だけの指揮官使ってもな…ヤツや国防長官はあの戦争を経験したのにそれに気付けなかった」

ジョンの腰の右側には、常に拳銃用のホルスターが装着されていた。入っているのはコルトのM1911。アメリカの銃器設計士ジョン・ブローニングによって生み出され、100年以上愛されている傑作拳銃だ。

自宅…それも厳重なセキュリティを設けられるであろう財力があるのにそれを携行しているのは趣味だろうか?偏執だろうか?

「すでにジェット機を手配しております。ご指示があれば、すぐにアーリントンへ飛べます」

女…社長秘書のデイジー・パトリックはそう言ってアメリカ大統領からのメッセージが映るタブレットを見せた。

「…しょうがねえなあン野郎は」

 

室内にも関わらずジョンはタバコを取り出して火をつけた。

太平洋から流れてくる潮風が、著しく効力を失って邸宅に吹き付けた。

 

「多分しばらく帰ってこれねェし、一時的にお前が経営を頼む」

「かしこまりました。社長の命令通りの運営を行います」

「ん。」

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