東家長男は全力でお兄ちゃんを遂行する   作:全力で遂行するタイプのお兄ちゃん

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書きたい内容を詰め込み過ぎて文字数が超増えてる…もう少しコンパクトにしたい…

という訳で今回はお兄ちゃん大暴れ回です。
前回も大概だろって?知らんな







お兄ちゃんと八雷神

 

魔防隊の朝は早い―――とは言われるが実際は朝という概念すら怪しい話となっている。

 

魔都を跋扈する醜鬼に昼光性も夜行性もクソもない。ゲリラ的かつ突如として発生する(クナド)に現世から魔都へ迷い込む一般人など対応しなければならない問題は山積みである。

 

しかし、そんな今現在、魔防隊を震撼させる事態へと発展しつつある―――それが人型醜鬼の出現

 

人語を操る特殊醜鬼とは別格の存在

その被害は現在判明しているだけでも凄まじい

 

3番組の組長を除く隊員蹂躙

6・7番組の隊員を病院送り

 

報告によれば、その内一体は6番組組長出雲天花の活躍により討伐されたとされているが、実際にその場面を目撃した訳ではないようで命からがら生き延びているとも噂されている。

 

尤も、現段階においてこれらの情報は各組の水面下における情報共有のみであり、本格的な対応についてはこの後行われる筈の組長会議にて、その方針が決められる予定だった。

 

そう、今はまだ手つかずの状態でもあった。

 

「マジで俺、運なさすぎんとちゃうか?これ逆に今宝くじとか買ったらボロ儲けできたりせえへんかな?」

 

「へぇ…随分と余裕じゃん、東日々輝?」

 

「これは余裕とちゃう、現実逃避っちゅうんやでお嬢ちゃん?」

 

「お嬢ちゃんとは失礼だね、僕これでも君より年上だよ?」

 

「ありゃ?こら失礼。」

 

単独での巡回任務中、結界により通信すらも絶たれ、孤立した日々輝の前に現れたのは『八雷神』と呼ばれる醜鬼の中でも別格の上位存在

 

紫黒(しこく)、本当にこの人間が情報にあった奴なのか?」

 

「間違いないよ壌竜(じょうりゅう)

 

「本当にか?これでは拍子抜けだ!我らの実力では話にならん!」

 

「落ち着きなよ雷煉(らいれん)。」

 

それが3体

この状況を打破出来るのはおそらくただ一人

魔防隊最強『山城恋』あるいは複数の組長格による連携が必要となるだろう。

 

(この口振り…ピンポイントで俺を狙いに来たんか…そしてこの出来過ぎたタイミング…)

 

「おたくらみたいな大将格に知られるなんて思わんかったわ。俺って結構有名人なん?」

 

「あれ?魔防隊の中じゃ有名人じゃないの?」

 

「今の時代男やったら嫌でも目立つからな、どういう目立ち方してんのかぐらいは気にさせてや」

 

「…ふーん」

 

八雷神から見ても日々輝の力はどう甘く見積もったとしても副組長クラス、組長格すら凌ぐ超戦力―――という前評判通りの力は微塵もない感じられない。

 

(…調べはついてる。()()()()()()()())

 

―――一人目は元一番組組長 冥加りう

 

―――二人目は元魔防隊総組長 東海桐花

 

そして、彼らの目の前にいる東日々輝

これらは飽くまでも噂程度の情報だが、元組長と総組長に名を並べている事実が何を意味しているのか、考えるまでもなかった。

 

―――誤算

 

(―――これがねぇ…)

 

「…え?何この空気?黙りとか酷ないか?」

 

「逆に貴様は良く口が回るな。時間稼ぎのつもりか?」

 

「いやいや、状況見てみ?結界で連絡は途絶、逃げようにも逃げられる様なメンツちゃう。時間稼ぎなんて意味あらへんやろ?折角の今際の際や、自分を殺す相手の事くらい知っておきたいやん」

 

「フン、戦意すら失せるとは情けない」

 

「優しく殺してくれんなら話はちゃうけど、おたくらそんな聖人とちゃうやん。」

 

「それは貴様次第だ!我らを楽しませる事が出来れば考えてやろう!」

 

「無理ゲーって奴やないですかヤダわー…」

 

()()()()

紫黒が抱いた印象を一言で表すならそれだった。

飄々とした性格と掴みどころの無い言動、そして評判と大きく異なる覇気の無さ。

 

周囲の評価と目の前の男のソレのギャップがより違和感を強く増幅させる。

 

―――誤算

 

「紫黒、気になるのは分かるがこれ以上は時間の無駄だ。」

 

「うーん…やっぱりガセだったのかな?」

 

「アレ?これ俺もう御臨終って奴?やったら最期に一つだけ聞いておきたいんやけど…」

 

「何だ?折角だ、今際の貴様に我らが答えてやろう!」

 

「へー神っちゅうんわ慈悲深いんやな。念の為確認しておきたくてなぁ―――

 

 

 

 

 

6番組と7番組を襲ったはお前らでええんか?

 

―――ほんの数瞬、何かが変わったのを感じた

気の所為とも言える、考えすぎとも捉えられてしまうほどの小さな違和感。その変化に唯一、紫黒だけが気付いた。

 

―――誤算

 

「…そうだよ、と言ったら?」

 

「マジで?何や、なら今日はホンマ()()()()()やん。」

 

「貴様何を言って「―――だってなぁ」…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「人の妹にちょっかい掛けたゴミが目の前に居るんやで?神サマに感謝しとかなアカンなァ…!」

 

 

―――誤算

 

 

三人の脳裏にこの二文字が過ぎる

自らが神であるという自負と相手が下等な人間であるという事実からなる傲りが戦闘態勢への移行を遅らせる。

 

 

―――その隙を見逃す日々輝ではない。

 

 

八雷神の前から日々輝の姿が消える。

 

居合 神刈(カミカリ)

 

特殊な歩法、緩急のある気配と殺気の表出、天与の肉体に物を言わせた神速の縮地。そして、そこから生じる一瞬の居合。

 

―――そしてこの居合を無傷で凌ぐ事が出来る人間は山城恋を含めて存在しない。故に―――

 

 

チン

 

 

一人目

 

―――紫黒の首が宙を舞う

 

「紫黒―――」

 

しかし、眼前の男は止まらない

仲間の死を受け入れる間もなく、強烈な死のイメージが2人に植え付けられる。怒りを力に変え、大技を振るう。

 

 

―――地殻竜拳(ちかくりゅうけん)

 

 

壌竜の行動は()()()()()()()()()()()()()が、それでも悪い考えではなかった。

 

常軌を逸した殺傷能力と速度を有していても耐久力(タフネス)は人間由来。いくら超人じみた肉体であっても大技の一撃は命に届くと。

 

壌竜の考えは正しかった―――

 

 

居合 神刈(カミカリ) 六閃(ロクセン)

 

「がぁ…!?」

 

チン

 

二人目

 

…出来るかどうかを考慮しなければの話だが。

 

硬化させて腕を振るい、衝撃が辺りを無に還す

――前に硬化諸共、四肢と翼を斬り飛ばす。

 

八雷神屈指の身体能力故に、生命力も高い。

四肢と翼を欠いてもなお、絶命には至らない。

 

最期の一人、雷煉も同様に殺さんと動き出す。

しかし―――

 

甘いぞ人間!

 

「…!」

 

飛び上がり、天割で両断しようとした日々輝を雷撃が襲う。

 

2人に剣技を振るのにかかった時間は約2秒

目の前の状況を受け入れ、仲間への弔いに燃える雷煉に最早隙はない。

 

このまま黒焦げになる日々輝を幻視した雷煉だったが、異常な光景を目の前にする

 

(何だ…?我が雷撃が奴の刀に…!!)

 

日々輝が振るう日本刀は陰陽寮と東家が協同で開発した叡智の結晶。通常の刀では振るうだけで折れてしまう天与の肉体に合わせた特注品(オーダーメイド)

 

無論、複数の桃の能力者による恩恵を受けている

その内容は『常軌を逸した耐久性』と『毀れぬ刃』―――言わばメンテナンスいらずの壊れない刀である。

 

逆を言えば、それ以外は普通の日本刀

常人が振るっても普通の刀と何ら変わらぬ効果しか齎さない。

 

しかし、日々輝は圧倒的な技量と身体能力、そして超感覚による最適解の算出によりそれをカバーしていた。

 

そして、この技は自身が遊んだゲーム(フィクション)の中に存在する。

 

言わば、物理法則無視の荒唐無稽の技。

その名も―――

 

雷返し

 

「ぬぐぅぅぅ!!?」

 

(馬鹿な…!!我の雷撃受け止め、あまつさえ返すなど…!?)

 

空中で雷を受け止め、着地の前に相手へと返すという常軌を逸したその光景にダメージ以上に驚愕が勝った。

 

雷撃による痺れと驚きによる身体硬直

唯一出来た隙に、技を差し込む

 

穿天(センテン) 

 

飛ぶ突きを放つ飛天に対し、飛ばない突き技ではあるものの近距離で放つ事でその威力は飛天を凌駕する。

 

その速度(スピード)は見切った!

 

(…流石に手の内見せ過ぎてもうた、止めよるか)

 

しかし、2度の神刈による速度への慣れ

そして彼自身が雷撃を扱う上で、雷撃への耐性もある事からの復帰の早さ。

 

辛うじて刀身を掴み、突きの威力を殺し、自慢の体の硬さで止める。

 

急襲が主戦法の日々輝にとっては最大の危機であり、雷煉にとっては唯一の勝機。

 

だから何や?

 

「ぬぅおおお!?」

 

それすら灰燼と化す

刀身を力点に力の流れを操り、自身の数倍の体躯と馬力はあろう雷煉を軽々と投げ飛ばす。僅かな勝機すらも摘み取られ、最早挽回の機会すらない。

 

東日々輝は剣技の天才に非ず

東日々輝は武の天才でもあるのだ。

 

宙を舞う隙だらけの雷煉を見逃す程、日々輝は優しくない。

 

居合 神刈(カミカリ)

 

「ぐぁ…!?」

 

三人目

 

不可避の一撃が雷煉の身体を両断し、右腕を残して上半身のみとなる。

 

「何か硬いおもたけど、成程ね。あっちで達磨になっとる奴以上の防御力自慢ちゅう訳やな、言っとっけど俺は鋼だろうが何だろうが斬れるで?

 

「ぐぬぅ…この程度で―――」  

 

「死ぬと思うてへんわ。仮にも神名乗っとんやろ?どうせ()()()()()()()()()()()()()。出せるかは置いといてやけど。」

 

日々輝の読みは正しかった。

雷煉には全力形態とも言える切り札が残っている。しかし今この状況、全力で戦えば動けぬ壌竜を巻き込んでしまうリスクが非常に高かった。

 

そして何より、雷煉自身が薄々気付いていた

 

(直に受けて理解した…仮に全力の姿になったとして、この男の斬撃は防ぎきれん…!回復力が増強されるとはいえ、この速度で斬られ続けられれば、確実に殺される…!)

 

―――例え万全を期しても目の前の男には勝てぬ事に

 

「ま、ええわ。情報吐く口は一つあれば十分。

2つもいらんねん。

 

「「…ッ!」」

 

その場にいた誰もが恐怖を感じていた

圧倒的強者によって齎される、死の運命に

 

淡々としつつも、雷煉の息の根を止めんと首に刃を振り下ろす。しかし、首を捉える視覚を他所に他の感覚が違和感を訴える。

 

(―――待てや、最初に殺った奴の死体があらへん…!)

 

神刈の初撃ではね飛ばした紫黒の死体がないという矛盾に、振り下ろす刀の動きが止まり、矛先が変わる。

 

その矛先は―――

 

 

―――暗澹波(あんたんは)

 

 

彼の背後を刺そうと、力を溜める()()()()()に向けられる。

 

日々輝はすぐさま振り向き、技を出そうとするがそれも紫黒は想定済み。地中から出てきた蛇が日々輝の足に噛みつく。

 

(陰で出来とる蛇…しかもこの痛み、毒かなんかやな?)

 

確実に屠るため、確実に当てるため毒を流し込む

雷煉の防御力ならば流れ弾を考慮する必要性もそこまでない。まさに、正念場。

 

(―――全て、問題なし)

 

しかし、この期に及んで彼らは東日々輝という怪物の力を測り損ねていた。その場で納刀し、抜刀の構えを取る。

 

(コイツまさか、僕の毒が効いてないのか…!?)

 

天与の肉体を得た彼の身体にとって毒物の解毒など造作もなく、神の呪縛すら跳ね除ける。

 

―――羽々斬 一閃

 

その言葉に違わぬ威力を持つ、世界を断つ斬撃が紫黒の放とうとしている一撃諸共、斬り裂く。

 

「ぐっ…!」

 

(右腕は斬った、でもまだ動きよる。身代わりとほぼ探知不可の潜伏、死にかけ2人(雷煉と壌竜)より能力的にも最優先に斬らなアカン…!)  

 

技の暴発と斬撃による右腕切断、痛みに怯む隙に仕留めにかかる。

 

紫黒側からしてもここが瀬戸際、殺しの優先順位を雷煉から紫黒に変えたことが彼らの窮地を救った。

 

「―――行け、雷煉!!」

 

ヌゥオオオオ!!

 

「なんやて…!?」

 

死にかけながらも力を振り絞る。

自身への注意が紫黒に向かい、警戒が薄れていたタイミングで少しずつ、力をためていた。

 

万全とは言えずともそれは確かに、今の雷煉が出せる最大出力であり、最大火力。

 

―――火雷大珠(ほのいかづちのおおたま)

 

「…ッ!!」

 

巨大な火球が日々輝を包み込み、炸裂する。

あらかじめ陰の中に潜り、流れ弾を回避していた紫黒がすぐさま雷煉に駆け寄る。

 

「雷煉生きてる?」

 

「はぁ…はぁ…何とか生きておる。壌竜は?」

 

「斬り飛ばされた腕諸共回収済み、何とか生きてるよ。」

 

「そうか、あの人間は…」

 

「今は逃げるよ。今ので動けないくらいにはなってるかもだけど、死んだとは考えにく―――

よう分かっとるやん」…冗談でしょ?」

 

目の前の爆炎の中から現れたのは、隊服が多少焦げた程度で目立った出血や火傷は殆ど見られない日々輝の姿だった。

 

こんな火力じゃバーベキューも出来へんで?

 

(馬鹿な…万全では無いとはいえ、我の全力の一撃だぞ!?)

 

(噂通り―――いやそれ以上の怪物っぷり…本当に人間なのか!?僕等と同じ八雷神でも中々出来ない芸当だぞ?!)

 

秘技『神武解(かむとけ)

東日々輝が有する剣技の中で唯一の防御技

自身の正面から向かってくる衝撃や攻撃を後方へと受け流す言わば『受け流しの極意』である。

 

彼程の剣技であれば、例え八雷神の本気の一撃すらほぼノーダメージで受け流せる。

 

もうええやろ?往生せえや…!

 

「クッソ…!」

 

陰を盾の様に展開し、射線だけでも絶とうとするが既に後の祭り。本来ならば陰を通じて撤退する筈だったが、今目の前にいるのはそれすらも許さない怪物。万策尽きた紫黒も覚悟を決める。

 

―――羽々斬 一閃

 

万物を斬り裂く斬撃を前に、影もクソもない

分身だろうが本物だろうが関係ない、正しく詰みの状況のはずだった。

 

「嘘やん、消えおったぞ…」

 

切開かれた陰の後ろには2人の血痕のみがあり、両断された死体は何処にもない。逃げる余力すら無いと思われ、逃げられるはずが無かった状況。考えられるのは―――

 

(斬撃を放つ直前に感じたあの()()()()()()…多分別の神…八雷神ちゅうニュアンス的に後5体は居るんやろうな。)

 

外部からの介入

この戦いを何処からか見ていたのか、或いは仲間の危機を感じ取り救出に来たのか。しかし、重要なのはそこではなかった。

 

(最後に感じたあのヤバすぎる気配…下手せんでも総組長クラスはあった…あのレベルの奴が何体もおったら間違いなく人類は負けかねへんけど…それなら攻め込まん筈無いしな…)

 

日々輝が最後察知した大き過ぎる存在

仮に対峙していた場合、間違いなく死を覚悟しなければならない事態に発展していた。

 

(これから俺ら、あんなバケモンども相手に戦わなアカンのか…気ぃ重たなるわ…ま、ええわ)

 

これから訪れる大きな戦いに憂鬱さを感じながらも、日々輝は怒りに震えていた。

 

これが八雷神と東日々輝の最初の邂逅となったが、彼らは一つ大きな過ちを犯した。

 

妹達の借りが返せるんや、今度はちゃんとブチ殺したるわ…!

 

魔防隊最大の龍の逆鱗に触れ、本気で怒らせた事である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ってのが、まぁつい2時間くらい前の話やね。いやホンマ死ぬかと思ったわ…」

 

「「「「「…」」」」」

 

そんな激闘から2時間後、彼は組長会議に出席し、戦いの内容を各組長が集う場で報告していた。

 

彼の話を聞いた者たちの反応は三者三様、彼の話に驚愕する者、あまりの規格外っぷりに呆れ返る者、この手の話に慣れきっているのか最早大して驚く様子すら無い者など多種多様である。

 

「成程、つまり結果的とはいえ八雷神の討伐は叶わなかったと…」

 

「勘弁してくださいや…報告させてもろた通り孤立無援で手傷を負わせた上で五体満足で生還、敵の情報は可能な限り報告しましたやん…。」

 

「いえ、流石に3体同時に相手して頸を取れなかった事を咎めはしませんよ。」

 

「いや絶対怒ってますやん、その反応…。」

 

総組長である山城から発される有無を言わさぬオーラは明らかにキレていた。しかも、人より秀でた感覚を持つ日々輝にしか分からぬ範囲で感情を出していた。

 

「それにしても、アンタ軽いケガで済むんだね。」

 

「ま、これでもしぶとさと回復力には定評あるもんでな。何とかなったわ。」

 

「聞いてた話の中にしぶとさ要素がまるで無いのは突っ込むべきなのかい?」  

 

「気のせえや」

 

そんな彼に軽口を叩くのは師である冥加りう。

日々輝の化け物っぷりを知る身としては3体同時に相手して撃退した彼の実力より、寧ろそれ相手に逃げ遂せた八雷神側を評価していた。

 

「それで日々輝、八雷神3体を同時に相手にした貴方だからこそ意見を聞きたいのだけど。」

 

「何ですか?月並みな事しか言えまへんけどそれでええならどうぞ?」

 

それは彼女、山城恋もそうだった

彼女にとって日々輝は自身を畏れぬ煩わしい存在ではあるが、実力については魔防隊において自身に次ぐと評価はしている。

 

「貴方であれば八雷神の対応戦力はどうするの?」

 

「そうですねぇ…先程山城組長が言うてた組長対応は無難ですけど、相性次第では複数の組で連携して交戦したほうがええかと」

 

「相性?」

 

「ええ、例えば報告にあった雷煉ちゅう奴はアホみたいな防御力が自慢な様で、交流戦のときは幸いにも防御無視の出雲組長が戦ったのはかなりメタ張っとったちゅう話やな。」

 

「…因みに貴方はどう戦ったの?」

 

「普通に斬り飛ばして終いやったけどだいぶタフな奴やった上に、多分向こうも全力は出せとらんと思うで。」

 

「成程…」

 

「大体、八雷神自体がある意味レイドボスみたいな奴やからな。一対一(タイマン)で戦うの自体が悪手やで。」

 

この場にいる全員は彼の戦い方を理解している

相手が全力を出す前に屠る―――それこそが日々輝の基本戦術であり、常套手段。

 

相手との実力差関係無しに、決まれば例え複数の八雷神という格上にすら通用する番狂わせの曲芸。

 

(尤も、そんな真似が出来るのは兄弟子くらいだ。―――『机上の空論』としか言えん戦法を現実に落とし込む…本当に規格外だな)

 

しかし、八雷神との交戦を経て両者の力を知っていた京香からしてみれば日々輝の実力の異常さに目がいってしまう。

 

「そんなんなんで、最低ラインで組長含む組一つ分の戦力。欲言うもんなら組長格2人くらいの戦力でやるんがベスト何やけど…」

 

「生憎、今の魔防隊はそれが出来る程人材がある訳でも無いのよね」

 

「でっすよねぇ…正直一番のベストは出雲組長と月夜野組長のコンビで早期決着が理想像なんすけどねぇ…」

 

「べ、ベルですか…?!」

 

「いやまぁ、ぶっちゃけ出雲組長の天御鳥命とベルちゃんの笑う寿老人(カノープス)のクソコンボなら余程の相手でもあらへん限り勝ち確やろ?組むまでがハードル高過ぎやけど…」

 

山城恋の『万物を総該した無限宇宙の全一』を除いた、魔防隊屈指のチート能力『笑う寿老人』

 

あらゆる防御を無視し、無生物すら灰に還する即死能力と摘み取った命を依り代とした防御性能。神を殺す上ではこれ以上無い能力だが、零距離まで接近する必要がある。

 

しかし、距離というデメリットを無視する天御鳥命の前では無に等しい。もしこの2人が組めれば理論上は八雷神殲滅すら夢ではないのだが―――

 

「やっぱ肝は最後に出張ってきたアイツやなぁ…」

 

「アンタがそこまで言うもんなのか?仮にも八雷神3体撃退したなら行けるだろ?」

 

そう尋ねるは2番組組長上運天美羅

ヤンキー気質でありながら、礼儀を忘れぬ立ち振る舞いは何処となく日々輝に通ずるものがある。

 

「いやいや、アレは別格や。山城組長と他組長くらいの別格や。」

 

「…嘘だろ?」

 

「嘘やあらへん、直感やし実際に対峙した訳やないけど…アレと戦っとったら間違いなく骨すら残っとらんかったわ…

 

「「「「!!」」」」

 

総組長に匹敵する存在

その言葉に誰もが戦慄する

 

事実、日々輝の戦力分析はかなり正確に弾き出すことが出来る*1。その彼の慧眼を持ってしてこの評価となれば他の組長では相手になるかすら怪しくなる。

 

「せやから、そのヤベー奴の対応については―――」

 

「私自ら出向くわ。相手にとって不足は無さそうね。」

 

「助かります、あんなバケモン相手にしとったら命が幾つあっても足らへんので」

 

「あら?私としては貴方も一緒に戦って欲しいのだけど…」

 

「勘弁してくんさいよ…誰が山城組長クラスの怪獣大戦争状態の周りをウロチョロ出来ると思うてんですか…」

 

(((((お前は出来るだろ…)))))

 

何時もならピリついた組長会議の空気感において、唯一一同の意見が一致した瞬間でもあった。

 

その空気をぶち壊すが如く、悪い知らせは突如としてやって来る。

 

「恋サマ!皆様!会議中に失礼します!醜鬼の大群がこちらに向かって来ています!」

 

「「「!」」」

 

すぐさま映し出される画面

そこには四方向から攻めてくる醜鬼の大群が映る。

誰が見ても分かるように統率の取れた集団であり、八雷神かはたまた桃の能力かをすぐさま分析する組長格

 

「―――銀杏ちゃん、右に三歩動いてや」

 

「え?あ、はい!」

 

しかし、最も早く動き出したのは日々輝だった

会議中に感じた違和感が確信へと変わり、先んじて動き出す。

 

チャキ

 

「っヤベ…!」

 

「優希伏せろ!」

 

「は、はい!」

 

事前通告無しに卓上の上で抜刀の姿勢を取る日々輝に各々が回避姿勢を取る。

 

対する日々輝は()()()()()()()刃を振り下ろし四閃する。

 

行動の意図が見えず優希も疑問を浮かべるが、その答えはすぐに現れた。

 

チン

 

―――    !!

 

(何も無い所から醜鬼…!?)

 

納刀音と共に、首を落とされた人間大サイズの特殊醜鬼達が部屋の様々な場所から3体。そして、銀杏のいた背後に更に一体現れた。

 

「すんません、下手に動くと暴れられかねへんのでいきなり斬らせてもらいました。」

 

「醜鬼…!?一体いつから…」

 

「正確なタイミングは俺にも分かりまへんが、八雷神交戦時の話をしていた途中からおったな。」

 

「…結界を素通りしたということかしら?」

 

「多分コイツら自身が『探知或いは結界をすり抜ける能力』『視覚・聴覚・臭覚において認識出来ない能力』を持っとってお互い掛け合っとったんやろ。姿どころか臭いも音もせぇへんかったわ。」

 

「外の大軍に注意が向いた所を一気に…か」

 

もし日々輝が動かなければ―――そう思うと優希は悪寒が走った。組長達ならともかく、銀杏や自分の様な戦闘員とは言い難いメンバーなら不意打ちを受けていた可能性が高かった。

 

「山城組長、念の為俺はここで待機しときますわ。2度目が無いとは言い切れへんので。」

 

「ええ、頼むわ。風舞希と八雲、美羅、木乃実は醜鬼の撃退を。残りはここの防衛よ。」

 

「「「「「了解」」」」」

 

名前の上がった組長達はすぐさま外へ向かい、醜鬼殲滅にあたる。防衛は性に合わないと京香も優希を奴隷化させる。

 

そんな中、りうが日々輝に尋ねる

 

「日々輝、アンタよく醜鬼の存在に気づいたね。見えてたのかい?」

 

「別に難しい事やあらへん。見えとらんでも、聞こえとらんでも、臭いがせんでも、それ以外の全て分かっとったらそれは見えてるも同義や。」

 

「アンタの説明は答えになってないよ」

 

「あー…分かりやすく言うとやな、シャーペンとか鉛筆の字を消しゴムで消しても消し残しや紙の凹みは出来るやろ?つまりそういう事や。」

 

桃の能力は万能ではない

あるはずのものを無いものとして存在させようとしても必ず無理が生じ、多かれ少なかれ何らかの差異が生じる。

 

日々輝程の超感覚の持ち主であれば、それを感じ取るのは造作もない。

 

「理論上は誰でも出来る芸当や。りう婆や京香ちゃん、木乃ちゃん辺りはその内出来るようになるんやない?」

 

「「出来る訳ないだろ…」」

 

この日々輝の発言にりう婆と京香は即否定

周囲の者達も『そうだそうだ』と言わんばかりに頷いていた。

 

結局その後は潜伏した醜鬼が現れることはなく、醜鬼の大群を導いた首謀者達を発見し総組長自らが捕縛し、その後の尋問もある為組長会議は終了となった。

 

 

*1
ただし、自己評価は除く





東 日々輝
色々やりたい放題やった人
敵の幹部級3人を殺しかけて、最高戦力の情報を持ち帰ったトンデモMVP。八雷神相手に何処ぞの一番イケてる零番隊士みたいに能力発動前にワンターンキルが出来る。雷返したり斬撃飛ばしたりとやってる事がどっかの剣聖みたいになってる。怒れるお兄ちゃんは強い、八雷神は僕が殺します。因みに最後の京香と木乃実ちゃんの伸び代については割とスキルツリーの伸ばし方次第で出来たりする。

紫黒
やりたい放題やられた人その1
最初から分身で様子を見てたがあっさり殺られる分身と壌竜、雷煉の姿を見てヤベー奴認定した。しかも毒も効かないし、雷煉の攻撃効かないしで本当にビビった。

壌竜
やりたい放題やられた人その2
速攻でやられたが、最後まで生き残ってたら一番苦戦してた人。いつの間にか達磨にされて、目の前で仲間がボコらる様を見せつけられ、本気でビビった。

雷煉
やりたい放題やられた人その3
殺される優先順位が最後だったため一番見せ場があった人。防御力自慢のなのに防御力を無視出来る主人公のせいでほぼ一方的にやられている。因みに全力形態だともう少し拮抗は出来るが負ける。

大極
やりたい放題やられた為、慌てて助けに入った人
本来なら母の傍にいたが、八雷神が一気に五雷神になりかけた為、「おいちょっと待て…」となり助けに入った結果、早い段階で存在がバレた。もしあの段階で主人公と戦った場合、無傷では勝てないし、何かしら弱体化レベルの深手を負う。

冥加りう
主人公とは師弟関係にある
剣技と投手空拳で分野は違うものの、動きや力の使い方など伝授していたが、途中から変な事やりだして「何それ知らん…怖」状態になっていた。今は慣れてる

上運天美羅
京香繋がりで主人公とは交流あり
過去に一度、京香の勧めで模擬戦をやったら戦国無双みたいに分身が伸されていくのを見てドン引き。何だあのゴリラ…

山城恋
自身への畏れがあまりない主人公に対しては認めてはいるがいつか分からせると決意している。実は山城相手に一番フラットな関係を紡いでいる。

組長会議に出てた他のメンバー
主人公の事を基本ヤバい人として認識している、実際合ってる。それはそれとして実力は高く評価している。

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