朝、瞳鷹リラの朝早い5時になりスマホのアラームが鳴ると共に手を伸ばしアラームを止めランニングウェアに着替えまだ日が上りきっていない街に走り出していく。
大きな人工的に作られた水場の外周を周回するのが私のいつもの日課である。
「いち、に、いち、に」
水辺の近くなだけあって少し冷えるが、暑くなった体を冷やすには丁度良く心地よく走れるのだ。
「いち、に、いち、に」
何より人工的に作られたとはいえミレニアム自治区の中にしては自然が多少ある為空気も新鮮に感じる。
まあ、私以外に走る人はほぼ…
「左失礼、いち、に、いち、に」
「……スミレ、おはよう」
「はい、リラさんもおはようございます…では学校で」
彼女は乙花スミレ、毎日では無いが彼女もこのランニングスポットを走る人物である。
ちなみに何故学校でと言ったのか、それは彼女はこの水辺を周回している訳ではなく、家から急勾配の道を通り100段を超える階段を5往復した後この水辺を回り家に戻るらしい
初めて聞いた時は絶句した、更にその後ももっと走るらしい………偶に誘われるのだがその時は次の日筋肉痛になる事を覚悟して付き合う事もある。
「ハァ、ハァ……よし、これでいいか」
ある程度走り終わり家に戻り軽くシャワー浴びてテレビでニュースを見ながら朝食をとり学校に向かう。
いつも通り授業を受けた後、所属している部室に向かうが廊下を歩いている途中で声をかけられた。
「あら、リラじゃない今から向かう所?一緒に行きましょ?」
「リラこんにちは」
それは同じセミナーに所属している早瀬ユウカと生塩ノアだった
「ユウカにノア、早かったね……アレ?確かコユキをつかま、一緒に来る筈じゃ?」
そう、色々とやらかしたコユキを連れて今日は反省として一緒に業務をする筈だったのだが………もしや
「それがねリラ、コユキちゃんテストを受けずに色々してたみたいで……今追試を受けているの」
「全くもう!なんでテストそっちのけ……終わったらすぐに罰として終わるまで自由にさせないんだから!」
両手を握りしめ今にも噴火しそうなユウカをノアと2人でまあまあと宥めながらセミナーの部室に向かった。
「ああ、なるほど………ってなると今日は私、部活視察だけど書類仕事した方がいい感じ?」
「うーん……いや、大丈夫よ元々私とノアでなんとかなるし………何より今日ってエンジニア部でしょ?そっちの方が優先だから」
と、少し哀れみが含んだ目をしながらユウカは答えた。
エンジニア部……様々な発明品を開発しミレニアムにてトップクラスの実績と成果を上げる部活
マイスターと言われる天才が複数人所属しておりなんと言ってもこの私の武器である弓のリカーブボウと矢筒のアンストップタクティカルもそのマイスターの1人が制作した物なのだ。
と、ここまではとても優秀な部活に聞こえるがその実態は3日間部室が無事なことは無いと言われたり
一つの発明品の為にほぼ部費を使い切ったり
発明品のロボットが暴走し保安部がほぼ全滅に追いやられた出来事はまだ記憶に新しい。
その時はC&Cと一緒に私も介入し止めに入った。
終わった時には矢は一本しか残っていなかった……正直あまり良い思い出では無い。
「ま、まあ……なんとかなるよ、多分」
と、ほぼ諦めが入った言葉を言いながらセミナーのホワイトボードの自分の名前が書かれた欄の横に【部活視察】名札を付けてセミナーの部室を後にした。
「失礼します、セミナーから来ました瞳鷹リラです」
「お、待ってたよリラ」
待ってたと言わんばかりに扉を開けた私に声をかけてきたのはエンジニア部の部長、白石ウタハだった。
「はい、今日はよろしくお願いします」
ちなみに私がする部活視察とは、内容としては私自身がその部活の活動をしてセミナーに書類として上がっている活動履歴に矛盾が無いか否かを調べるのだ。
まあ、ある程度そつなくこなす、言い換えれば器用貧乏な私にはピッタリな仕事である為こうやって……
「よし、ではこれを履きたまえ」
「はい……これなんですか?」
「水面ホバーシューズさ」
此処での私の仕事は発明品のテストプレイが多い……まあ、ミレニアムで運動神経が良い生徒なんて数える程しか居ない為ある意味では私の存在は貴重なのだろう。
「……まあ、防水は当たり前として耐火性やBluetooth機能や足ツボマッサージ機能そして自爆機能スプリングが作動して跳躍機能まで入れているのは浪漫ですか?」
「その通りさ!いや〜リラも分かってきたね」
分かっているのではなく諦めてるんですよっと言葉を飲み込みだ
ここでただをこねても時間の無駄に終わるのは目に見えている。
私ができる事、それは失敗せずに無事に終わる事である。
早速シューズの電源を入れてプールに一歩踏み出した。
「お、お〜……立ってる」
不思議な感覚ではあるが、しっかりと水面を浮かんでいた。
ローラースケートの様に勝手に動くかと思っていたが、地面に立っている時とほぼ変わらない
強いて言うならばふわふわのマットレスの上に立っている様な感覚に近いだろう。
「水に落ちずに立って居る…勝手に滑って居ないのを見るに上手く自動制御が作動しているね」
「はい、不思議な感覚ですがほぼ地上と変わらないです」
「よし、それではゆっくりと歩いてみようではないか」
そして、一歩一歩しっかりと地面を、いやこの表現は正しくはないな
水面を踏み締めて歩き出して居た。
楽しい、ここ最近の中ではかなり楽しい私的ミレニアムプライス受賞レベルである。
だけども、楽しかったのはここまでだった。
そこから私はスピードを上げ早歩きから段々とスピードを上げ始め軽く駆け足レベルにまでスピードを上げた時点でシューズから変な音が鳴った。
「え、なんか音がっっ!痛ったい!?イタタタ!?」
突如として足ツボマッサージ機能が作動したのだ
しかも恐ろしいことにかなりの激痛、私はとてもじゃないが立って居られずプールに落ちてしまった。
「リラ!?どうしたんだ!?」
そんな声がしたが水の中に落ちた為声が出せないというかマッサージが痛すぎてそれどころじゃない、ホバー機能が作動して居ることもあって私はプールの底に押さえつけられていた
くっそ、空気を押し出すモーターが水を押し出してるでもこれぐらいなんて事ない!!!!
私は足を動かしてシューズを脱ごうとする
しっかりと足首を固定して履いている為硬いが、問題無い
そうして私は今も魚の様に動いているシューズがあるプールから這い出た。
「ハァ、ハァハァ、コホコホッ…ハァ」
「えっと、その………大丈夫かい?」
プールのそばに仰向けに倒れて居た所に顔を覗き込むようにウタハ先輩は声を掛けてきた。
その美貌でそんな事を言っていると誰でもコロッと落ちてしまうだろう。
ファンクラブがあるのも頷ける……私は納得するだけで落ちる訳では無いのだが………何せこの人の事はある程度知っているリオ会長ほどでは無いが付き合いは長い方だろう。
「ハァ………ええ、大丈夫ですよ、あのシューズ私じゃなければ危なかったですよ?」
「そうだね、キミに頼んで良かったよ本当にすまない」
「………それなら1つ頼まれてください」
これくらい許されるだろ、まあいつか頼もうと思って居た事だし
それにしても、寒いなぁ………着替えて正解だな
私は髪の毛を軽く絞り水気を落としながら私の弓矢の製作者であるウタハ先輩に新しい武器の草案を話した。
何気に左失礼と言われる主人公……この描写は入れたかったッ!!!