私の武器ですか?弓ですけど?   作:珈琲紳士

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第三話 メイドですか? 親友ですよ?

弓を引き、狙いを定め放つ    

掠める大口径の弾丸はゴム弾の筈なのに飛翔する衝撃波(ショックウェーブ)ですら休憩のインターバルはあれど連戦に次ぐ連戦の体にとって集中力を削られる。

 

されでもそれは相手も同じ、私の矢を避けきれずに可愛らしい服には傷が付いていた。

 

劣勢であり優勢、放たれる攻撃は牽制でありながら必殺級、シーソーのように変わるこの戦闘の優劣

 

 

なんでこんな事をしているのか、説明するには3時間前に遡らなければならない。

 

 

 

 

「ふぅ、ご馳走様」

 

 

セミナーにて昼食を済ませそのまま部活視察の書類作成をする為にパソコンを起動しカタカタと作業をしていた。

 

よし、これくらいならすぐ終わるなって電話?……え、なんでこの人から?

不思議に思いつつ通話ボタンを押し電話に出た

 

 

「はい、リラです…どうかされました?ネル先輩」

 

『おう、暇か?ちょっと頼まれてくんねーか?』

 

「……急ですね、もしかして依頼の手伝いとかですか?」

 

『いや、戦闘訓練の相手だ』

 

 

……ハァ!?いや、前にC&Cの部活視察の時に軽く手合わせみたいなのはしたけど、こうも直球で来るなんて

 

 

『あぁ、勿論相手は私じゃないぞ?お前のよく知っている相手だ』

 

「………あぁ、カリンですか?というか何故私に?」

 

『なーに、同じ相手ばかりバトっても意味ないだろ?それじゃよろしくな』

 

 

あ、ちょっと!!………電話切ったし

うーん、書類はいいとして他に用事は…示し合わせたかのように丁度終わるし追加も無い

 

まあ、クレーを撃つだけなのもアレだし行くか

椅子に掛けてある矢筒のチェックを軽くすませ背負い先日ウタハ先輩からのお詫びの品として作ってもらったガジェットをブーツにセットしてっと、忘れてた。

 

 

「瞳鷹…えっと理由は、C&Cとの訓練により外出っと」

 

 

ホワイトボードに理由を書き込んでセミナーを後にした。

 

 

「よ、久しぶりだな」

 

「そうですね、あのロボットとの戦い以来ですね」

 

「はぁ…急にごめんリラ」

 

「いや、大丈夫……一応訓練用の刃が潰してある矢を持ってきましたけど……スポンジ矢の方が良かった?」

 

「ううん、スポンジだと重心が変わって飛びにくいんでしょ?そっちで来て」

 

 

訓練場に向かうとそこにはC&Cの最強、いや此処ミレニアムサイエンススクールの中で【最強】美甘ネルと一年生の時まだ保安部に居た頃、ライバルでもありお互いに背中を預け合える

私にとって親友とも言えるカリンが居た。

 

 

「カリン、改めて言うが今回の戦闘訓練は自分には不利で相手には有利な距離での戦闘だ」

 

 

「はい、しかも相手はリラ……」

 

「あぁ、アイツの動きや癖も知っているかもしれないがそれは相手も同じ……ましてや得意な場所と距離はアイツの方が上だ」

 

訓練場は外にあるとはいえ、フィールドには大小さまざな壁が設置されてあった。

その一つに軽く叩いてみれば鈍い音が響く……硬度は充分って所か

 

 

「で、リラお前は敵が相手のことをよく知っている敵に対しての戦闘そしてこれを持っとけ」

 

「おっと………これなんですか?」

 

 

一見真っ黒の少し大きめの缶バッチの様に見える………うん?なんかアンテナみたいなのがある?

 

 

「発信機だ、お前は常に居場所がバレている状態でカリンと戦ってもらう…ちなみに壊れたらお前の負けだ」

 

 

ハァ!?狙撃手しかもカリン相手に!?

しかも遮蔽物はあるけど正直カリンにとってあんまりアドバンテージが取れるとは………

 

 

「後その缶バッジ心臓辺りに付けとけよ?、一応頑丈には出来てるがゴム弾なんて食らったら1発で壊れるからしっかり避けろよ」

 

「えっと、戦闘訓練の勝ち負けの決め方ってなんですか?」

 

「あぁ、それは私が有効打を判断するカス当たりとか足や手だけじゃ続行だからな」

 

 

まぁ、ネル先輩が判断するならAIが判断するより確実だし異論は無いかな

軽く準備運動と装備品のチェックを済ませカリンとの訓練(タイマン)が始まった。

 

 

 

 

えっと…何戦目だっけ?、あぁ22戦目か……っ!危ない

集中しないと、正直居場所が常に狙撃手にバレているってのは本当にキツい

距離がある程度近いし音もあるからなんとかなってはいるけど……それでも21戦中10勝10敗1引き分け

良いとは言えないこの結果、勝たないと……何のために私は命を拾われて、助けてもらって

そしてその恩を返す為に、技術を磨いた。

 

 

「訓練だけど……負けられない」

 

 

 

ネルside

 

 

 

2人の訓練を上から眺めていながらネルはその不機嫌さをあまり隠さずに顔を少し顰めさせていた。

 

別にカリンがリラと接戦になっている事に不機嫌になっている訳では無い、この訓練はとある人物から依頼された事による仕組まれた訓練なのだから

 

そして当の本人はネルの隣にドローンの3D映像によって映し出されていた。

 

 

『順調そうね、ネル』

 

「あぁ?なんだ直接見なくて良いのか?……お前の守り刀だろ?」

 

『彼女の使う武器は弓なのだけれども……でも、C&C程でもないわ』

 

「じゃあなんで保安部から引き抜いてセミナーなんかに置いたんだ?本来ならウチ(C&C)の筈だろ?」

 

 

そう、本来ならカリンと一緒にリラもC&Cにスカウトして共に肩を並べる筈だった。

 

それをこのリオ本人がセミナーに移動させたのだ

一度理由を聞こうと乗り込んだ事もあったが……なーんか、ここ最近は忙しいらしく中々会う機会が無く話す機会も依頼の時しかなかった。

 

でも今こうやって話す機会が生まれた

 

 

『………瞳鷹リラ、彼女は2年前に瀕死の重体にいるところを私が偶然見つけてそのまま保護したわ』

 

「ハァ!?瀕死の重体!?」

 

 

あり得ない…とは言わないが此処キヴォトスにおいてヘイロー持ちがそこまでの怪我を負う事なんて珍しいのだ

 

 

『回復後、彼女を元の場所に帰らせてあげようと考えたのだけれども……それは本人の希望で無しになった』

 

「………」

 

『そして、彼女は当時中学3年生だと言うのに中等教育すら危ういレベルの学力しかなかった…………そこで私を勉強を教えたらスポンジの様に知識を蓄えていったわ、それも此処ミレニアムサイエンススクールに合格する程にね』

 

「待て、話が脱線してねぇか?リラの重たい過去もそのすげぇ勉強出来る事も『そこよネル』あぁ?」

 

『そうね、リラは学習能力が極めて高いわ……怪我もあって勉強を教え始めたのは受験の5ヶ月前よ?それも付きっきりで教えた訳じゃないわ、私がやったのは勉強をする環境と質問に対して答えただけ…たったそれだけでリラは此処ミレニアム生に相応しい程の学力を手に入れたわ………学力だけじゃ無いテーブルマナー、工学、プログラミング、全てにおいて秀才と言っても過言ではないほどに……学べば習得する、まるでAIと思った事もあるわ』

 

「それじゃリラをウチ(C&C)じゃ無くてセミナーにおいて部活視察なんてやらせているのは……」

 

『適材適所よ、才能や実力に見合った采配をしたまで』

 

 

少し気に食わない所もあるが、誰よりもミレニアムの事をよく考えて合理的な判断をしたと言うのもよく分かる。

 

たが、それを踏まえても気になる点がある。

 

 

『見なくて良いのかしら?もうすぐ終わりそうよ』

 

「……そうだな」

 

 

その疑問を口に出さずに目の前の訓練に目を向けた。

 

 

 

カリンside

 

 

 

息を整える、連戦により息が乱れていると言うのもあるが狙撃手であるのに相手が近くにいるという状況

何より相手がリラである事も身体的にも精神的にも疲労を与えていた。

 

たが、それは相手も同じであった。

その証拠としてこちらが放ったと同時にカウンターショットとして飛来してくる矢は放つ瞬間にブレたのか腕を掠める程度に避ける事が出来た。

 

時間的にも後1、2戦ぐらいで終わるだろう

 

かと言って消耗を抑えるのも難しい、現に先程の狙撃は当たらず此方の射線を通さない様に動きに緩急をつけながら接近して来ている。

 

幾らC&Cで訓練を積んだとはいえリラ相手に接近戦など、ほぼ負けるのが見えている……何せアスナ先輩ですら勝ち越してしまう事があるのだから。

 

コッキングしチャンバーに弾丸入れる動作を加えながらある程度リラを視認しながら距離を取る

偶に腕を動かし狙撃するかの様な動作を入れ牽制するのも忘れない

 

そして今まで隠していたであろうリラの弱点を発見できた

 

 

「右足を庇う様な動き……見逃さない」

 

 

右足首……何戦か前に私が撃ち抜いた箇所、そこが痛むのだろう

ゴム弾とはいえ普通よりも大口径な弾丸は距離もあって痛さを隠しきれていないのだろう。

 

そしてチャンスが現れた、矢が此方に飛んできたのを確認する…このままならヘッドショットは免れない……でも、これぐらい

 

 

避けれなければC&Cなんてやっていけない

 

 

「……ッ」

 

 

首を傾げ矢を避けると同時に愛銃を構え息を止める

放たれた渾身の弾丸はリラでは無く、彼女の背負う矢筒に命中した

 

何かが割れる様な鈍い音と共にリラは体制を崩していた

 

矢筒にセットされていた矢はその殆どが破損しており無事なモノが数本あるがその全ては軽く曲がっているのが確認出来る。

幾らリラとはいえ弾丸よりも空気抵抗を受ける矢がそんな状態では当たるはずも無くリラに残された勝ち筋は近接格闘しかなかったが……そんな隙を晒す私では無い

 

すぐにコッキングし勝敗を分ける一手を放とうとした時……リラは私に向かって走るでも無く、壁に隠れるでも無く、私に向かってや弓を引いていた。

 

 

「なっ!?うっ!!!!」

 

 

リラはブーツに付いていた装飾品、いや折り畳み式の矢を取り出し私の溝辺りに放っていた。

体制を崩していたのでは無く、その矢を取る為に屈んでいただけだった。

よく見ていなかった……いつでも気付ける要因はあった、それでも一手の差であったとしても私は負けてしまった。

 

 

『リラの勝ちだ、時間が時間だ…今日は此処で終わりにするぞ』

 

 

インカムからネル先輩のジャッチが下され私とリラの訓練は終わった。

 

 

 

リラside

 

 

 

危なかった、カリンならやりかね無い…いや、カリンの技術があるからこそやるであろう武器破壊を逆手に取った戦法とも言え無い賭けは私の勝ちで終わった。

 

正直言ってかなりギリギリだったし割と痛む足でカリンの狙撃を避けながら近づくのもキツかったが為の賭け……要するに私のスタミナ不足による不安定な勝ち筋だったのだ。

 

戦闘訓練の反省点を思い返しているとネル先輩がこちらに来ていた。

 

 

「ありがとな、戦闘訓練に付き合わせて」

 

「いえ、私も反省点が浮き彫りになったので…カリンは?」

 

「一足先に保健室に向かってもらった、あぁ安心しろ怪我はなんて事ないぞ」

 

 

刃を潰してる矢とはいえ割と本気で放ってたからカリンの怪我を心配したけど……それじゃなんで一足先に向かわせたのか

 

 

「なぁ、リラ…お前のその戦闘技術は独学か?」

 

「………そうですね、銃は苦手なので弓を使う人なんて私以外に居ないですから、自力で頑張りましたよ」

 

「………………」

 

「………………」

 

 

鋭い、最強の名は伊達じゃ無い………訓練で熱を持った体から汗が背中を伝い落ちていく

嘘は言っていない、銃が苦手なのもこの弓術が独学なのも本当の事だ

 

私よりも低い筈なのに、とても大きくて恐ろしく感じるのは…幻覚でもあり現実でもあるのだろう。

 

 

「変な事聞いたな、今日は此処で解散だ…じゃあな」

 

 

私の答えに満足したのか…分からないがとりあえずはよかったみたいだった。

近くのベンチに背を預け少し休息を取った………さっきの質問は恐らく、きっと

 

 

5分ほどベンチで休んだ後、カリンに連絡して保健室の場所を教えてもらい向かった。

 

 

 

腰の古傷が痛むのは、まだ過去から逃れられないなのだと私に言っているのだと……過去も今も未来も全て、いや…私はそうは思わないと言い聞かせながら廊下を歩いていく





うん、あの、長くなってごめんなさい
なんか筆が乗ったんです!!!!
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