建物を飛び出し、外付けしてあるロッカーからリカーブボウと矢筒を取り出し戦闘態勢を取る。
「部長!みんなを連れて避難して!それと保安部に連絡!!」
「リラは!?どうするつもり!?」
背筋がピリッと突き刺さる様な気配を感じ建物の扉を見た瞬間、青い爆発と共に私達を襲ったロボットが現れていた。
「セミナーとして、何よりこのプロジェクトの監視役として此処で保安部が来るまで時間を稼ぐつもり」
後ろ髪を引かれる様な視線を感じながらも私1人でそのロボットに相対していた。
勝てるかどうか……廃墟のロボットと同じ姿であることを見て同じ性能なら余裕で勝つことが出来る
まぁ、廃墟のロボットは手から青い炸裂する光弾を放つ武器なんて持っていないんだけどね
「ユ、勇敢だな?」
「ッ……驚いた、ユーモアを話せる程に知能があるなんて……とても廃墟のロボットとは思えないね」
「ふむ………廃墟、ロボット、データベースに二足歩行出来る設計があったが故このボディを作った……戦闘用のボディはこれだけだったからな」
「そう、それでお前は誰だ?何が目的だ?」
とてもじゃ無いけどAIとは思えない程に会話に知性を感じる……まるでハレの作ったAIと思える程に
もし、コイツが海洋生物模倣ロボット作製機の性能を充分に扱うのだとしたら
それは、リオ会長が恐れる事態をもう一つ増やしてしまうことになる。
「言ってなかったか?ハッピーバースデーだと………いや、固有名詞が無かったな………」
危険だ、コイツは危険な存在
自己をハッキリと認識しようとしてる…プログラミングされて学ぶは違う
此処ミレニアムの、リオ会長の敵になりうる存在
リカーブボウの複数のスイッチを操作し矢筒にある通常の矢から一本だけ炸裂矢に変え取り出す。
すぐに弦を弾き放たれる矢はいつまで経っても私の手から放たれることはなかった
何故なら矢を引く私の手を50センチ程のサメの形をしたロボットに持っている矢ごと噛まれていたのだ。
「いっ、キャッチシャーク!?」
「私はネプ、そうだなネプにしよう」
噛みついているサメ型のロボット、キャッチシャークを地面に叩きつけ破壊する
割と一撃で壊れてくれたことに多少の安心を覚える中、何故キャッチシャークが出てきて私を襲ったのか……答えはすぐに判明していた。
「なんで、警備ロボットが」
ネプと名乗ったロボットの周りには魚を模した水族館を守る筈の警備ロボット達がずらっと並んでいた。
敵をその鋭い刃と大きな口で手や足、そして武器などに噛みつき捕縛するキャッチシャーク
敵に近づきその体を膨らませ目が眩む程の光を放つぴっかーんふぐ
物や人を運ぶことが可能でであり現場に急行することが出来るのせマンタ
他にもふざけた名前で付けられた魚型のロボットがどんどんと作られその全てが今私に牙を向けていた。
データをしっかりと作りダウンロードすれば作ってくれる機械という事もありほぼお遊びで作られたが、その性能はどれも高水準である。
「言っただろう?私のモノだと…全て私の制御下にある……そして、目的を聞いていたな」
次々と飛んでくる魚型のロボット達を私は矢を放ち撃ち落としていく、直線的ではなく曲線を描きながら迫ってくるロボット達はその全てを落とせる訳で無かった
地面スレスレに迫ってくるサメに対して蹴りを放ち他のロボットに当てっ!?持っている矢を放たずに直接突き刺して光る前のふぐを沈黙させる。
周りを動き回り矢をネプに向かって放つがマンタがその巨体で防いでしまい有効打にならないが、私の体には撃ち漏らした魚型のロボットの体当たりや噛みつきによりアザや傷が段々と蓄積され始めていた。
「此処、キヴォトスの破壊……混ざり合ったデータの中で構成された私の根幹にあるオーダーはキヴォトスの破壊だ」
ドンッと建物の屋が吹き飛び、そこから複数のマンタとワイヤーで繋がれた海洋生物模倣ロボット作製機が運ばれ盗まれようとしていた。
「待て!何処に行くつもりだ!!!」
「今ある資源では足りないのでな、で良いのか?アレに釘付けだぞ?」
「ぐっ!?…こ、つは」
その瞬間私の右腕から肩にかけてぐるっとウツボの様なロボットが巻き付き私の首に噛み付いてきた。
噛みつき対象を捕縛するサメと違いコイツは対象に巻き付き爆破し沈黙させるロボット……コイツのデータを作り組み込んだのは私、よりにもよってコイツにやられるなんて
ネプはマンタに乗り作製機と一緒に飛んでいく姿を睨みながら、至近距離での爆破でその身を焦がされ激しい痛みで気を失うまで………
リオside
『これが一連の流れです……監視役、部活視察としてミレニアムの危機を作ってしまい申し訳ありません』
「分かったわ…とりあえず今は体を休めなさい、大丈夫よ貴方のせいではないわと言っても気休めにしかならなそうね」
『いや、その………申し訳ありません』
電話越しに聞こえる彼女の声はとても弱々しくまるで初めて会った時を彷彿とさせる。
「そのネプは今保安部が追っているわ、それにヴェリタスにも協力を要請するつもりだから安心しなさい」
『はい………ありがとうございます』
メンタルがまだ不安定…やっぱり今も過去の鎖から逃れられていないのね
通話を切りイスに背中を預けて軽く上を見る
リラの過去、話す事すら文字通りに刻まれたトラウマによって何回も苦しい思いをさせてしまったけれどもこうやって学校に通って交流関係を増やしていく事で彼女のメンタルも順調に治っていった
最近になって彼女の過去をその口から知ることも出来たが、こうやって何か失敗があると彼女はあの時の様に弱ってしまう
どうにかしてあげたいけど、私には難しい事だった
合理主義者でありすぎるが故に向かないとヒマリにもよく言われた。
でも何も彼女の心を癒すのは私だけでは無い……保安部からセミナーに引き抜いて部活視察という役職を与えたのは色々な理由があるがその一つには友を作る事も入っている。
私みたいにならない為に
「それにしてもネプ、こんなのが生まれるなんて相当な確率なのに」
ネプというロボットもとい人工知能はこの作製機を作る際に紛れていた廃墟のロボットの部品を使った為に出来てしまった言わばバグに近い存在。
リラから送られた作製機の設計図やプログラミングを見るに他にも色々な部品に残っていたデータが集まり作られていく中でダウンロードされたデータが集まり生まれた存在、天文学的な確率で生まれた意図しないAIはその根幹となるキヴォトスの破壊を命令として動いてる。
誰のせいでも無いのは間違いないのだが、それでもリラは気にしてしまうのだろう。
「………最悪の事態には備えるべき、よね」
着手していたエリドゥの作業を止め別の作業に取り掛かった。
10分と経たずに完成したプログラミングと設計図のデータをファイルに纏めコレを完璧に作成する事が出来る人物に送信した。
軽く体を伸ばしたのち元の作業に戻り部屋の中にタイピング音を響かせ続けた。
誤字報告本当にありがとうございます。
感想もお返事は出来ていませんが読ませていただいており、とても励みになっております。