「どう? 先生」
「”良い! 凄く似合ってるよホシノ! 最高!“」
一旦話を学校に持ち帰って、『先生』をソファに背負い投げして折檻した後、私は『先生』の勧誘を快諾した。
ってか『先生』。私を追いかけ続けて疲れるのは分かる。疲れ過ぎて歩けないのも分かる。故に私に背負って貰うのも分かる。
でも頭の匂いを嗅ぐのは違うよねェ? 背負った瞬間から背負い投げされる瞬間まで私の頭から顔を離さなかったその執念だけはマジで形容し難いナニカを感じたよ?*1
…まぁ今こうして褒められるのは悪い気はしないけどね。
「”仮面! 仮面も着けてみて!“」
「はいはい。子供じゃないんだからそんなにはしゃがないでよ〜」
仮面ね。うわ…凄く、悪そう。
「物々し過ぎない? これ」
「”そうかな? 一応参考にしたものはあるけど“」
「参考ってかコレ…『厄災の狐』でしょ」
黒くしただけじゃん。
「許可とってるの?」
「”…はは“」
取ってないんだ。
「…でもさぁ、『先生』。こんな仮面付けてたら相手萎縮しちゃわない? 『厄災の狐』の関係者って思われたらどうするの?」
「“うーん…ネームバリューで敵対者を威圧できるかもって思って作ったけど、今思うと味方も威圧しちゃう可能性もあるのか。参ったな”」
「じゃあさ、コレ着けるの戦闘になる時で良いんじゃない? ほら、戦闘開始の合図みたいな感じで仮面着けるって感じでさ」
「“おぉ! それ良いね! 確かに『本気になった感』があって良い演出になるかも!”」
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というわけで。
私は今、数日前から万全の準備が整うのをじっくりコトコト心待ちにしていたゴトゴトヘルメット団前哨基地の前に来ていま〜す。
『“ホシノ、本当に大丈夫?”』
「だいじょぶだいじょぶ〜」
『”疑ってるわけではないけど…危なかったらすぐに逃げるんだよ?“』
目的は『先生』に実力を見せる事。
「大丈夫だ〜ってば。だって、私『先生』の指揮下じゃ
手始めに、前哨基地規模のヘルメット団を薙ぎ払えば『先生』も認めてくれるだろうしね。
「それに…」
私は黒い狐の面を被る。
「ヘルメット団如きじゃ、私は倒せないよ」
私に気づいたであろう見張りの一人が、大声で仲間を呼び寄せる。
その間に、私はゆっくりと歩み、接近していく。
「連邦生徒会の服を着てやがる! 一人でカチコミに来やがった!」
「バカなヤツだ! お前ら、蜂の巣にしてやれ!」
『“あぶない!”』
二十人程集まり、私に向けて銃を構える。
ある程度統率が取れた集団のようで、短時間で密集し…。
「撃てッ!」
二十そこらの銃口が火花を撒き散らした。
銃は構えない、避ける素振りすらない。
ただ、無造作に腕を伸ばし。
神秘の強化と己の膂力にモノを言わせて、ただ
私の制服や髪が風で乱れる。
砂と
「…は?」
相手の唖然とした雰囲気が、砂埃の中からでも伺える。
今の風圧で動けなくなっているのなら結構。
私は愛銃を片手に、足音も立てずに走り出した。
「う、撃て! まだ正面の筈だ! 扇状に射線を展開して撃て!」
残念。もう既に君らと同じ
二十人と少しの人数が密集して撃ってるんだ。視界不良の中、密集したまま無闇に動かす事はしない筈。
正面から突っ込んでくると踏んだ相手の指揮を嘲笑うように、私は銃弾が直撃する寸前で跳躍し、集団の上を通り抜ける。
そこでバリスティックシールドを展開。
前方に強く押し出す形で振るうと、空気抵抗で私の身体は空中で減速し、ヘルメット団の密集集団の後方付近に着地する。
そのまま振り返り、バリスティックシールドを
全身に神秘を流す。
狙いは密集集団の中心。
脚に力を込めて、私はシールドバッシュを繰り出した。
___ドグシャァアッッ!!!
まるでボーリングのピンのように
今の一撃で晴れた視界の先で、鈍い音を立てながら水切りのように遠くへと吹っ飛んでいくヤツらの様を見て、私の心は至極満悦である。
「な、何、が…」
おっと、運良くこの場に取り残ったのがいたみたいだ。
状況を理解できていない様子の、私に背を向けて這い
「おぐっ!?」
「残りの仲間の数は?」
「だ、誰が言うか…っ!」
お、ラッキー。声的に指揮者ちゃんか。
「状況、理解できてない? 君以外全員寝てるけど?」
「ハッ、基地にはまだ数十人居るんだよ! ウチらを倒したって、調子に乗ってんじゃっ」
「へぇ」
基地内だけね。
ならもう、
足を退かさないまま、私は愛銃の照準を前哨基地に向けた。
放つのはいつもの散弾銃じゃない。
無造作に腕を伸ばして、弾の籠ってない愛銃に
『“これは…”』
「
これは宣告。
「【終結:バイ・アイ】」
私の勝利。これが結末。
神秘が放たれた時点で、
まるで鋭い刃で斬られたような、全方位から狂風で吹かれたような、私の神秘が通り過ぎた場所から全てが粉々になる。
ヘルメット団の象徴であるヘルメットさえも粉々に砕け散り、武器や投擲物すらも爆発する猶予も与えずに砕け散る。
結果、気絶した生身の人間数十人を残して、その他全ては原型も分からない程に粉々に砕け散った。
「ハッ…ハッ…ッ!」
目の前の光景が信じられないのか、足の下にいる指揮者ちゃんは過呼吸気味になりながら恐れている。
「さて」
「ッッ!!!」
「君以外全員寝てるけど?」
態とらしく、さっきと同じ問い掛けを投げかける。
「ッ…降参、します」
その言葉を聞いて、私は足を退ける。
ふらふらと立ちあがろうとする指揮者ちゃんの後頭部に、静かに銃口を向け、そのまま少量の神秘を用いて後頭部をぶち抜いた。
「がッ…」
気絶した彼女をそのままに、私は制服を翻して先生の元へと向かう。
『アカツキ』としての初陣は、『先生』にとって良い結果になったかな?
そんな事を思いながら、私は悠々と仮面を外しながら歩みを進めた。
プロローグの終わりにこんな戦闘描写書いといてなんですけど次回から日常(?)回です。