隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録   作:sakigake2004

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ルシールが泣き止んでから、私は気になっていたことを聞くことにした。

 

「ねえルシール、会ったばかりの頃の貴女は『強くならなきゃいけない』って言ってたわよね。」

 

「うん。」

 

「どうしてそうなったの?さっきまでの話からある程度の想像はつくけど。」

 

「…私が幸運を捨てたいってエレノアに話したら

 


 

「運を捨てるのは難しいでしょうけど、もっと観測対象を集めれば運を制御するのはなんとかなると思いますよ。ただ、それで運を制御できるようになるには運も実力の内って言えるぐらいにならないと。」

 

「本物の幸運のお守りの需要は尽きませんからね、実力が無ければ手に入れられないなんてのはよくある話です。」

 

「貴女が幸運を制御出来れば、ロバートおじさまも少しは貴女を見直すかもしれませんね、確証はありませんが。」

 


 

って言ってて、だから強くなることにしたんだ。」

 

「幸運を捨てる為に?」

 

「それよりは…おじさんを見返してやるのと、身勝手な神様に文句言ってやる為かな。」

 

「なるほどね。」

 

泣き出した時は力強く生きるルシールにも脆いところがあるのだと思ったけど、自力でそれを乗り越えつつあるのだろうか。

 

「愛理サンに強くしてもらって、ロバートおじさんに私の実力を認めさせて、いずれはポンコツな神様に一矢報いて、最後はチンピラもいじめっ子も…私の友達も、全部取り戻してやるんだ。」

 

やっぱりルシールのこれは空元気なのかもしれない、そうも思うけれど…

それでも、彼女の強がりには確かな価値がある様に思えた。

 

「あれ、お父さんはどうするの?」

 

「父さんは…知らない、いずれ向こうからなんか言ってくるでしょ。」

 

「貴女はそれでいいの?」

 

「いいわけ無いけど、どうすればいいかよくわからないし…」

 

…よし。

 

「決めたわ。」

 

「呪理チャン、何を決めたの?」

 

「貴女が強くなるのを私が手伝う、そう決めたのよ。」

 

「いや、もう十分手伝ってもらってるっていうか…これ以上は悪いよ。」

 

「何を今更、こんな話聞かせる時点で打算は多少あるでしょ。」

 

「それは…そうだけどさあ!」

 

「うだうだ言わない!私達は友達で同僚!貴女を強くする事に私にはなんのデメリットも無い、それで決定!わかったらさっさと仕事の準備よ!」

 

「…わかったよ、呪理チャン!」

 

「よし、それじゃあ…」

 

♪♪♪!!!

 

その時、スマホのアラームが鳴った。

 

「これは…朝ごはんのアラームね。」

 

「じゃあ食べに行こっか、腹ごしらえは大事って言うもんね!」

 

「それよりも着替えよ着替え、まだ私達パジャマなんだから!」

 


 

私達がホテルのレストランで朝食をとっているその時。

 

「君達、朝からよくこんな大量に食えるな…」

 

「若さってそういうものじゃないか?なあ?」

 

ツルギさんとライト…『狐火』と『八咫鏡』が深刻な表情でやってきた。

 

「あっ、あれ?オークションまで時間あると思ってたんだけど。」

 

「ちょっと慌てすぎ、口にソースついてるわよ。」

 

私はナプキンでルシールの口を拭う、たまにポンコツになるわよねこの子…

 

「…ありがとう。」

 

「どういたしまして。」

 

なんでそんなに照れてるのかしら…?

 

「俺たちを差し置いてイチャつくのは「ちょっと黙ってろ!」何すんだおい!?」

 

ツルギさんとライトはなんだか揉めていた、仲良いのか悪いのかわからないわねこの人達。

 

「それで、要件はなんですか?」

 

「昨日ツルギを襲撃してきたのがアメリカ政府からの刺客だと裏付けが取れた、つまりタイムリミット…」

 

「え〜!?ちょうど気合い入れたところだったのに!」

 

「…なんてな、まだチャンスはある。」

 

「どういう事です?」

 

「どういう事も何も、向こうもオークションに参加すると言ってるんだ。」

 

「「何故?」」

 

「それは私達が聞きたいぐらいだよ…」

 

「それで、やってきた連中はアイテール・インダストリー…アメリカの宇宙産業を担う企業のエージェントが二人だ。アイテールの取引先はNASAやらエリア51やら…アメリカ政府とそれに関連する組織が大半、ウチほどじゃないがそれでも超級の大企業と言えるな。」

 

「でも二人でしょ?数の暴力でどうにか「ならなかったな。」ならなかったんだ…」

 

ツルギさんの顔には悔しさが滲み出でていた。

 

「ラッキー、君ならアイテールのことをある程度知ってるんじゃないか?」

 

ライトには何かしらの確信があるようだった。

 

「なんで私…あ、もしかしてロバートおじさん?」

 

「あんたのおじさんがどうしたのよ。」

 

「おじさんはめちゃくちゃいろんな仕事を兼任してるんだけど、最近…と言っても私がアメリカにいる頃だけど、どこかの宇宙開発組織の役員をしてるとかって言ってた気がする。」

 

「よし、ならこの顔に見覚えは?」

 

ライトがスマホに映し出したのは、金髪の男女二人の写真だった。かなり遠いところから撮ったのを拡大してるみたい…これって

 

「防犯カメラの切り抜き?」

 

「その通りだ、オラインの情報網をなめてもらっちゃあ困る。」

 

「…男の人はわかんないけど、この女の子は見たことあるよ。」

 

「お、どういうやつだ?」

 

「確か…イブニングって名前だったかな。ものすごい厳しい試験を突破した凄腕隠秘使い(オカルティスト)、っておじさんの家の前で自己アピールしてた。最終的に通報されてたような気がするけど…」

 

「ふむ…まあこっちの持ってる情報と矛盾は無いな。その女性のコードネームは『ネフィリム』このツルギがトドメを差しきれないどころか逆に追い詰めていた強者だ。」

 

「…おい。」

 

「それでそっちの男は『アルゴス』詳細不明だが三課をまとめて拘束できるイカれた隠秘兵器の使い手だ。」

 

「…ふん。」

 

ツルギさんの機嫌が目に見えて悪い、勝てなかったことが余程悔しいらしい。

 

「そういやアメリカからの情報って届いてなかったんじゃないの?」

 

「聞いて驚け、あっちは妨害が厳しいからって他の支社へ情報を流してそれでなんとかこっちに回してきたんだ。結局一番ちゃんとした情報が回ってきたのがイギリス支社営業一課への情報だった。」

 

「もしかして、エレノアのおかげ?」

 

「そうだ、概ねお前らのコネのおかげだな。」

 

「ふーん…」

 

「うれしくなさそうだな?」

 

「なんだか複雑なの、まあこっちの問題だし気にしなくていいよ。」

 

「そうか、じゃあ俺たちは先に。」

 

「待って。」

 

席を外そうとしたライトとツルギさんを呼び止める。

 

「私とルシールがもっと強くなる方法に心当たりない?」

 

「ふむ?随分思い切ったことを言うが、どうしてそうなった?」

 

「同僚が強くなって困るなんてこと、無いでしょ?」

 

「強くなる手段によるが…なるほどな。」

 

「え、なに、二人だけでわかりあうのちょい怖いよ!」

 

「安心して、要するにアプリを契約してもらうだけだから。」

 

「なるほど〜、ってそんないきなりで大丈夫なの?」

 

「私達が時間をかけて強くなるのも悪くないけど、それで今日中に『ネフィリム』に勝てると思う?」

 

「えっと、流石に無理じゃないかな、ツルギさんと私達の間の実力差は天と地ぐらいあるし…闘いになるの?」

 

「可能性としては十分にある。」

 

「え〜…でもさ、ライトが今すぐ用意できるものって何かあるの?」

 

「もちろんあるぞ、俺の手札で君達でも使えそうなのを紹介してやる、もちろん金は取るけどな。」

 

「感謝するわ。」

 

「そういうのは成果を見てからにしたほうがいい。」

 

「…言っとくが私は先に行ってるからな?遅れるなよ『八咫鏡』」

 

「おう、露払い頼んだ。」

 

「ふん、私達で全部片付けてやる。」

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