隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録 作:sakigake2004
「『狐火』が居なくなったから言うが、君達と狐火の差を表す言葉に天と地は相応しくない。」
オラインの倉庫へ歩いて向かう道中、ライトが妙な話をし始めた。
「私達ってそんなに強かったわけ?」
「そういう意味では君達はだいぶ弱い。」
「そっか…」
「そりゃそうよ…ああ、わかったわ、ジャンル違いって話でしょ?」
「正解だ、君達と狐火の実力差は天と地というよりも月とすっぽん、いやそれすら違うな、月とチーズみたいなものだ。」
「何も合ってないじゃん。」
「そうなる。そもそも狐火の専門、というよりは『化物』の使用用途は戦闘や呪いじゃない、偽装だ。君達は戦闘力を求めてるだろう?」
「そうね、戦闘力の無さはこの前の怪物との戦いではっきりわかったもの。」
「ここまでの流れを踏まえた上で言うが、何故急に強さを求めてる?ああ、言いたくないなら言わなくていいぞ、別に君達が弱くてもオークションに支障はないからな。」
「…過程は長いから省略させて欲しいけど、ルシールが自分の叔父さんを見返したいって言ってたら、実際に叔父さんと関係ありそうな話が出てきたから、チャンスだと思ったのよ。」
「呪理チャン…」
「ふむ、見返す、か。ならちょうど良かったな、やってくるエージェントに関してイギリス営業一課の情報に書いてあった事がある。」
「?」
「私の叔父からの刺客、だとよ。」
「それって、エレノアからだよね。」
「そうだ。今の君達の話を聞いて何故そんな事を書いてあったか合点がいった。『ラッキー』、君がこの情報を知ればやる気をだすからだろうな。」
「つまりネフィリムとアルゴスを私がなんとかすれば、ワンチャンあるかも…」
「それ、一つ訂正させて。」
「何?」
「私達でなんとかする、よ。私達同僚なんだから、勘定に入れたっていいでしょ。」
「…ありがとう、頼りにするよ。」
「いや、同僚ってそういうもんだったか…?」
「ちょっと黙っててライト!今感動に浸ってるところだから!」
「感動…?」
私感動するようなこと言ったかしら…?
「着いたぞ、ここが俺の権限、つまり営業二課が売れる商品のある倉庫だ。」
そこは巨大な建物だった、灰色の外壁に灰色のシャッター、そして灰色の屋根、屋根と外壁にはオラインのロゴ…
「外観だけ見ると普通だね。」
「倉庫の見た目に金かけても仕方ないだろ、セキュリティに関してはバッチリだけどな。」
「それで、ライトが売りたいのはどこのどれなの?」
「こっちだ、ついてこい。」
ライトが端末を操作してシャッターを開けると、そこには大きな棚に大量の…
「何?黒い函?」
「あれはテメノス構築錠、フォークロア観測函の一種で保存に特化した機能を持っている。この棚ではテメノス構築錠を使って観測対象を保管してる。一応言っておくと俺が見せたいのはここじゃない。」
そう言ってライトは倉庫の中をスタスタと歩いて行くので、私とルシールもついていった。
「ここ、素人でも使える隠秘兵器の棚だ。」
その棚には色々なケースが並んでいた、あるケースは透明で中が見えているが、違うケースは真っ黒で何も見えない。そして全てのケースにはタグが付いていた。
「『マンドラゴラボックス』、このタグが商品名?」
ルシールは近くにあった黒いケースのタグを読み上げた。
「そうだが、それはやめとけ。」
「どうして?」
「それは近日発売予定のマンドラゴラをめちゃくちゃに叫ばせるツールなんだが…耳栓か、あるいは聴覚を停止させるアプリが別途必要なんだ、無いと最悪死ぬ。」
「あー…マンドラゴラだもんね。」
「それに生のマンドラゴラも必要だからな、俺の権限でマンドラゴラとセットで売ってもいいが。」
「うん、やめとく!」