隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録 作:sakigake2004
「イルカルラを手に入れるのに思わぬライバルが生えてきたけど…私達のやる事は変わらない、そうだな?」
「ああ、金と暴力、それが全てだ。」
「とんでもない会話ね…」
「アメリカにいる頃のオラインはこうじゃなかった気がするんだけどな〜」
「そもそも広報部が戦闘に駆り出されるのはごく僅かだろ、自分が知ってる事が全てだと思うな。」
「ライトがめちゃくちゃ厳しい!慰めて呪理チャン!」
え、ここで私に振るの?
「えっと…間違った事は言ってないわよね、言い方は過激だけど。」
「…ツルギさん!」
「ノーコメントで。」
「私の味方、0じゃん!」
ばりん
「相変わらずだねライトにツルギちゃん。」
「…!」
嫌な音がしたと思えばツルギさんが貼った結界に亀裂が入り、そこから人が入って来た、この人は…
「『黄金』…いや、葵さん?」
「あーしの事はコードネームの黄金で呼んで、カースちゃん。」
「黄金…生きてたならこれまで何処に居て、何してたんだ。」
「あはは…何もかも簡単に忘れる国に居るって事すらツルギちゃんは忘れたみたいだね。」
「質問に答えてくれ、私達同期だろ。」
「それだけだよ、私達にそれ以外の繋がりはもはや残ってないの、悪いけどそんな話をしに来たわけじゃないから。」
「…じゃあどんな話をしに来たんだ。」
黙っていたライトが喋りだす。
「簡単に言えば、取引。」
「何と何を。」
「月の石を私に渡す代わりに、マガツが月の石を手に入れるのを止めてあげる。」
「それ条件が破綻してるんじゃ?だって同じ組織の仲間でしょ?」
「違う。私達はオラインを倒すという目的が合致してるだけで仲間じゃない。次に私とマガツを仲間って言ったら…貴女達を殺す。」
「!」
彼女の目に宿った殺意を認知した時、私はまるで自分の心臓が金属に変わったかのような錯覚に陥った。
心臓が動かない、全身が動かない、私が…
「呪理チャン!?しっかり!」
「…わかった、わかったから!貴女達は仲間じゃない!」
「そう、それでいい。」
彼女の目から殺意が消えると、私の心臓も元に戻った。
「死ぬかと、思った…!」
「さて、勘違いを修正したし話を戻すけど…マガツを見てこう思ったよね『勝てない』って。」
「そう思ったとしても、それをオライン所属の俺たちが話すか?」
「話さないね、オラインに所属する以上その程度で止まるようなオカルティストではいられないから。」
「じゃあなんだ、まさか勝つ方法でも提示してくれるのか?」
「まっさかあ、その逆、アイツがオラインに負けられるとあーしが困るんだよ。」
「…」
「マガツがいなきゃ異界駅のコントロールはなりたたない、異界駅の無法さあっての終末論議会なんだから、アイツ無しで議会は成り立たないんだよね。」
「じゃあどうして月の石を渡さないんだ。」
「わかんない?アイツめちゃくちゃ調子にのるタイプなんだよ、月の石を手に入れてちょっとでも強くなったら議会なんて放ってオラインと全面戦争し始めるに決まってる、そうなったら…まず議会もマガツも負けるよね。」
「…」
「そのパターンは非常にまずい、誰も得しない、だからマガツの手元から月の石を奪える確実な選択肢を提示しに来たわけ。」
「…一つ教えろ、葵、お前は月の石を何に使う気なんだ?」
「何、ライト、さっきからめちゃくちゃ慎重じゃん、あーしの知ってるライトらしくないね。」
「…三年も話して無いんだから変化もあって当然だろ。」
「ふーん、まあいいよ、教えてあげる。あーしが月の石を使ってやるのは…『前の灰吹タカヤ』を甦らせることかな。」
「なんだと?」
「え、誰?」
私が睨まれた時以降静かだったルシールが素っ頓狂な声をあげる。
「アンタ…ここは黙って聞いておくべき場面よ。」
「いやでも、全然知らない人の名前じゃん、流石に気になるよ。」
「…灰吹さんはこの地球で一番賢者の石を作るのが上手い人、あーしなんかよりよっぽど上手い、本当の天才だよ。」
「待て待て、灰吹タカヤの記憶は」
「『レーテー』で消されてる、でしょ?でも肉体と精神と魂が綺麗に揃ってるのにそこから記憶だけ消すなんて都合良くはいかない、いくわけがない。」
「だとしても、それになんの意味がある?」
「…教えられないかな、なんせ今のライトとツルギちゃんは仲間じゃないからね。」
そう言うと、彼女は結界から出ていこうとする。
「待て!」
「交渉に返事が出来ないなら私はテキトーなタイミングで帰るから、それまでに考えといてね。」