隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録 作:sakigake2004
「さて、戦闘は概ね終わったみたいですしあとはアリス達が帰ってくるのを待つだけ…とは行かなそうですね。」
視界の端に映ったのは黒い蔓。
それは竜の死骸から死骸へと伸び、目にみえる速度で成長していた。
「…吸血植物、それも単なる遺伝子改良種ではない
「…悪竜の片づけはファフニールからこっちに任された仕事なんだ、見逃してくれないか?」
蔓を辿っていけば、アイギス…
「無名警備はアリスに招待されていたのでしょう?見る限り貴方もかなりの実力者のようなのに何故船に乗っていないんです?」
「死なない僕が冥界行きの船に乗れる理由がない。」
「なるほど、噂に聞く無名警備の『ハイドラ』が貴方ですか。」
「そうだよ…ああ、それと『オデュッセウス』CEOがこう言ってたからね。」
「CEOはなんと?」
「警備会社を警備目的で呼ばないなんて明らかに怪しい。イギリスの夢追い人だろうがアメリカの陰謀家だろうが私達が付き合う義理は無い、乗らずに様子だけ見ておけ。」
「こんなところさ。」
「ま、流石に察しますよね。」
「今更だが、オラインイギリス支社はアリスの計画をどう見ているんだい?」
「理論的には確実に勝てるギャンブルだが、過程が長過ぎて人間では上手くいくわけがない、そんなところです。」
「なるほど、つまり上手くいくわけだね。」
「今の話でどうしてそうなるんです???」
「だって、特別優秀な
「過大評価ですよ、死なないだけなんて誰にでも出来る事です、特に貴方なら余裕かも。」
もちろん本心じゃない、私以外に『フェイルノート』のコードネームを乗りこなせる人間が居るとは到底思っていない。
「お世辞も過ぎれば失礼ってやつかい?」
「ご想像にお任せしますよ。」
「僕なんか論外だよ、死なないだけ僕では押し寄せる苦難に耐えられない、そして苦難に耐えられないからこそハイドラなんだ。」
「反応に困る自虐ですね。」
「そっちは皮肉なんだから、お互いさまだろう。」
「…」
「…」
気まずい沈黙が流れる
「俺を無視して話すんじゃない!」
あら?
「起きたんですね?それなりに痛めつけた確信があったんですが。」
先ほどまで無音で倒れていたはずのアスカロンが立ち上がっていた。
鎧を脱ぎ捨てながらまだ生きてる竜へ近づいていく。
「この程度で竜殺しが倒れてたまるか!
彼は宣言と共に手に持っていた短刀を竜に突き立てる。
返り血が彼を汚し…彼の姿が変わっていく。
『なるべく使いたくなかったが!給料の為ならこの程度!』
巨大な竜と化したアスカロンが、私へ向かって飛び込んでくる。
「はあ、ファフニールってこういう事してくるから疲れるんですよね…」
竜を利用し竜を代表する彼らは、当然竜を処分する事にも長けている。
竜の返り血を浴び、竜の呪いを受け、しまいには竜と一体化する。
量産型の『ジークフリート』それはファフニールの戦闘員の奥の手としてはとてもありふれていて、とても厄介だ。
「アスカロンから『バルムンク』か『グラム』にでも改名したらどうですか?」
『もういるんだよな!』
悪竜が炎を吐く、跳んで避ける、炎が当たったコンクリートが溶けている…元になってる人間が強いだけあって流石に火力は強いな、だけど。
「図体が大きければそれだけ当たるわけですよ『銃』」
炎を銃弾が突っ切っていく、幽霊に物理攻撃は効かない、炎も当然効かない。
弾は…命中してるけどあんまり効いてないな、というか防御されたらしい。竜殺しとして竜の弱点は当然把握してるだろうし、そういう意味では防御力が高くて面倒。ここは…あら。
「『ヘラクレスの偉業』」
私とアスカロンの間にハイドラが割り込んできた。
『なんで邪魔するんだ?』
「なんでって、貴方が無茶しそうなのを止めるのも契約してるからね。」
『誰とだ?』
「副社長さんだよ、貴方の利用価値について得意げに語ってたし、ここは止まった方がいいんじゃない?」
『…チッ、命拾いしたな!」
竜の体が煙に変わり、気づけば元の姿のアスカロンがそこに立っていた。
「そちらこそ、霊界行きにならなくてよかったですね。」
「…さて、地上の問題はこれで一区切りついたみたいだけど、アリス達はいつ帰ってくるかな。」