隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録 作:sakigake2004
0皿目、或いは最後の晩餐の予知夢
俺の大切な人
俺を愛した人
俺の真実
唯一無二の真実だったそれを失った事を今でも鮮明に思い出す。
「魔女ってね、なんでもできちゃうんだよ?」
「そう、なんでも!」
「あのつまんない部屋もキラキラのお城に変えちゃうの!」
「だから、あたしが魔女になって、らいとを助けてあげる!」
「夢、か」
夢を見るのは久しぶりだった。
アイツが死んで三年、いや四年?
神殺しを為してから時間感覚が曖昧になっているのは理解していた
「そうか、四年か」
この、つまらなくて知っている真実だけを告げる
いや、そもそもこの世界に飽きていたのだ、最初から
俺には物心ついた頃から真実というものがぼんやりと見えていた
それは大抵の場合は死、あるいはより退屈な生という既視感しかない螺旋の形をしており…
それの存在は俺以外にはわからないようだった。
両親は俺を愛していた。
より正確には俺と言う形をだ。
巻き戻された人間と巻き戻される前の人間に連続性が無いことは赤子でもわかる。
俺はそれよりも根本的な部分で人間などガワだけの存在である事を理解していた。
巻き戻された俺を、巻き戻される前の俺と同じ様に扱う両親を見て吐き気を覚えた。
それが俺の、俺という形の最初の記憶だ。
それからしばらくたったある日、俺は誘拐された
俺を誘拐したやつらは俺の形ではなく俺の本質が重要だと言っていたが…それは嘘だ。
より正確には、やつらは俺に被せる役割の為に俺の部分を欲しているだけだった。
人間というのは、いや、この星の99%はそうだった。
全ての存在は役割によって己を規定し、区別し、本能的に観測している。
そう、本能なのだ。
観測という言葉に含まれる自主性とは裏腹に、生命にとって自己観測とは本能である。
この矛盾を無視して運行される世界、人に、全てに吐き気がした。
ある日、息をする事そのものに違和感を覚えた結果、息をする方法を忘れかけて死にそうになった。
それでも、本能に逆らう事は難しく、結局息の仕方を思い出す。
結局のところ、何もかもが嫌に思えているのに誘拐されてからの拷問じみた生活と誘拐される前の生活なら誘拐される前の方がマシだと思っているのが嫌だった。
そんなある日、妙な事に気づく。既視感と矛盾を感じないものを見つけたのだ。
魔女の話題だった。
その事を考えていると息が出来る気がした、既視感や矛盾に対する吐き気が減った。
俺にそれを教えてくれたアイツにとても感謝した。
だから…
魔女の真実を知った時、俺に満ちたのは失望だった。
「魔女は
俺にとって魔女の話の真実はどうでもよかった。
ただ、魔女について話していたら吐き気が減って…
苦しみではなく、君と向き合えることが何よりも嬉しかったんだ。
だから…
君が死んだこの世界に意味なんてものは無いんだ。
「今日こそは倒しますよ!」
…気づけば、連日押しかけていた女が今日も来ていた。
この星が滅びるまで残り一日だと言うのに、よくもまあやる気があるもんだ。
「
この女の同僚だったかなんだったか、顔のない男を殺したのは俺だ。
手ごたえの無いやつだった、無さすぎて殺していないかと疑ったぐらいだ。
「ん?妙な事を聞きますね、私に復讐すべきものなんてありませんよ!」
…巻き戻しか。何度も来て何度も死んで、特に変化も無いあたりコイツを送り込んでいる側も期待はしていないんだろう。
「しかーし!勇者たるもの世界の滅びに立ち向かうものです!」
「お前」
「はい?」
「お前、名前は?」
「ソフィー!ソフィー・山田・
「くっ、あははは!」
おかしい、おかしいったらありゃしない
今更俺を倒したところで、この星の運命は決まっているというのに
刻まれた歴史は、ただ刻まれるだけだというのに
「冥土の土産に教えてやる、俺は『八咫鏡』…いや、ライト、八咫ライト。全ての神と英雄を殺した、魔王だ!」
こいつの名乗りにのってやる事にした、なんの意味もない、ただこれまでの吐き気よりはマシな…暇つぶしだ
「いきますよ、魔王ライト!」
「かかってこい、勇者ソフィー!」
煉獄が無駄に景色を見せてくる
ある可能性では俺はこの女のファンボーイらしい、反吐が出るが…それでも、今と同じくらいは笑えるかもな
だが、それは俺の運命じゃない、真実じゃない。
そうやってこの星最後の…
暇つぶしが始まった
二一〇二年十二月十八日
「…がはっ、はっはっ…今のは…なんだ…?」
「あ、八咫烏が起きた。」
営業一課に連絡を取ったのちしばらく仮眠していたライトが起きた。
「途中からすごいうなされてたけど大丈夫?」
「…ああ、大丈夫だ、おそらく。」
「悪夢でも見た?処理に困るようなら僕が片付けるけど。」
「夢味…いや、大丈夫だ、そこまでする必要は「呪理チャーン!!!」…」
同じく短い仮眠をとっていたルシールが涙まみれになりながら走ってきた。
「ちょっと、抱き付かないで暑苦しい!なに、何があったのよ?」
「すっごい怖い夢を見たんだよ…!」
「泣くほど?」
「泣くほど!」
「そう…」
「ラッキーも?二人して悪夢なんて、何か変なものでも…昼夢。」
「課長、何の要件?。」
「二人の夢を再生できるか?」
「…許可さえくれればいつでも。」
「オライン営業三課課長の権限をもって、許可する。」
「おい、俺は許してないぞ…!」
「私もプライベートがあるんだけど!?」
「ゴタゴタ言うな、やれ!」
「はい、『這い寄る混沌の夢』夢想再演…」
ライトとルシールに有無を言わさず、昼夢さんは二人に向かってアプリを使用した。