隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録   作:sakigake2004

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「端的に言うが、状況はかなり悪い、具体的には最悪の二つ上だ」

まさか『異界駅』とは、現物を見るのは初めてだ、そしてこれが俺の想定通りなら絶対に見たくなかったものの一つだ。

「えーと、ここ何処?何かの駅?でもアレクサンドリアのじゃないよな…マジで何処?」

『ここは『異界駅』ですね〜名前通り『駅』の形をした〜『異界』です〜』

「そして『異界駅』のアプリケーションは一般に出回ってないんだよ、『神隠し』や『チェンジリング』の代替品として注目されたはいいが、ついぞまともに運用出来なくて発売されなかった」

「なんでそんなのチンピラが持ってるのさ…」

「知るか!俺が聞きたいぐらいだ!」

本当にそうだ!大昔のプロトタイプしかない非売品アプリケーションをあんなギリギリ雑魚じゃないチンピラが使うって誰が予想…いやあいつら金回りは良さそうだった、ギリギリあり得たか…?

「クソ!とにかくここに長居するのはまずい、『異界駅』が発売されなかった最も大きな理由は制御不能な事だ、制御不能だからこそ個人レベルで起動出来るし、制御不能だからこそ何処にでも発生し、制御不能だからこそ起動すら不安定だったはずだ」

「じゃあ待ってたら充電が切れて脱出出来たりは?」

『楽観的に見ればそうですけど〜あのチンピラさんがここに居ないので〜そうはならないと思います〜』

「俺たちの実在証明はそもそも俺が起動しっぱなしだった『八咫烏』が俺を叩き起こしたから成立してるんだ、観測者の居ない人工異界では時間空間精神全てにおいて内部での認知こそが正解、八咫烏の電池が切れたら俺たち全員ドロドロに溶けてお陀仏だ」

「ガチのピンチじゃん!」

『パニックになったら〜余計寿命縮みますよ〜』

「とにかく探索するしかない、幸いな事に『フギンとムニン』もまだ機能してる、手分けして…はダメだ、俺と離れたらオルフェと『カリオペー』が溶け出す」

オルフェは明確にビビりだしていた、チンピラに蹴られていた時ですらもっと強がっていたのに、怒りと恐怖で怒りが優先されていたのか?

 

「そして見つけたのがこれか…」

探索の結果俺たちは日本の地下鉄風の薄暗い領域にたどり着いていた。

「なにこれ、掲示板?」

「俺もオルフェも読めない字だけどな」

何語だこれ、営業二課の講習にも無かったぞ。

『書いてあるのは〜お〜なかなかすごいですね〜』

「読めるのか?」

『読めるというか解読してます〜人間のお二方に見えてるよりも情報量多いですから〜解読には申し分ないですね〜』

「なんて書いてあるの?」

『ざっくり言うと〜犯罪組織の裏取引の時間ですね〜』

「…なんでここに?」

『後は〜この異界のルールと成立理由が書いてます〜』

「そっちの方が重要じゃん!」

『慌てないでください〜読み上げますから〜

 

『ここはアメリカの悪党のみなさんが一丸となって協力する為の場所です』

『この場所はみなさんが所有する特別なアプリケーションでのみ出入り出来ます、入る時は出口を忘れないで入ってください、忘れると出られません』

『列車の邪魔をしないでください、邪魔すると死にます』

『ここで争わないでください、争うと死にます』

『12時間以上連続で滞在しないでください、滞在すると人でなくなります』

『24時間以上連続で滞在しないでください、滞在すると死にます』

『この駅の設立には以下のスポンサーの方々の協力がありました、悪党の方々は感謝してください、感謝しないと死にます』

 

だそうです〜』

「不気…味…」

あ、オルフェの恐怖が限界を迎えたらしい、ふらついている。

「スポンサーの名前は?それが分かれば『戦いの旗』の取引先がよりわかるかもしれない」

『こっちは読めませんね〜丁寧な認識阻害が組んであって読んだそばから忘れるようになってます〜記録は出来ますけど〜今ここで読み上げても意味はないかと〜』

「なるほど、しかしアメリカか…」

エジプト、日本、アメリカ、本格的に俺だけではどうしようも無さそうだが…まあこれは本社に投げればいいだろう

「脱出の参考になりそうな情報は『列車』だけだが、悪党が複数形な以上誰かと鉢合わせる可能性があるのは危険だ、『戦いの旗』が雑魚だっただけで本当に危険なやつらが来ないとも限らん」

「じゃあ、どうするの…」

どうするって

「最終手段だ、『神話破壊者』を励起率100%で撃つ」

「撃つとどうなるの?」

「俺の計算が正しければ、この駅の壁を異界の定義ごとぶち抜いて元の場所に戻れるはずだが…」

「だが?」

「この駅に実在の座標があったりするとまずい、異界から出てもそっちの座標が優先されて倉庫に戻れない可能性がある、しかも励起率100%を使うとミソクラスト投影鏡がほぼ確実に破損するから俺が戦闘で役立たずになる」

「博打じゃん…」

「別にカゴちゃんに頼ってもいいが…いや、そっちの方が白兵戦能力が高いな、ぶち抜きは俺がやる」

『そういう事ならどうぞ〜』

「よし、俺から少し離れてろ、ほんの少しでいい」

 

「ミソクラスト投影鏡、起動」

「『デウス・エクス・マキナ媒質』励起率100%』」

「破損可能性、考慮、承認」

 

「『神話破壊者(ミソクラスト)』強制照射!」

 

その瞬間、俺の体と投影鏡が同期し、激しい光を撒き散らす

不思議と眩しくはない

この光が俺そのものなのだから当然か

これを見るといつも不安になる

使い終えた時に、俺が消えているかもという不安だ

今日はそうじゃないかもしれないが、明日はそうなるかもしれない

まったく、日本が恋しいよ…いや、そうでもないな

 

そして光が止まった時、俺たちは倉庫に居た

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