隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録   作:sakigake2004

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「残りのメンバーはどこにいるんだ?」

センパイの情報によれば後二人いるはずだが…メンバーの内訳は『タイフーン』のエリザベス・ロッシと『ゴエティア』のセラム・ソロモンまでしか決まっていなかった、最後の一人は追って通達と書かれていたが…そもそも、エリザベスはともかくセラムの事を何も知らないんだよな。エチオピア支社開発一課副課長という肩書きの時点で戦力として頼りになるのは間違いないが、戦力だけならエリザベスでいい、ギリシャ文化と縁深いアレクサンドリアにおいて彼女の炎で破壊できない隠秘など無いに等しいのだから。

「セラムとジェシカさんには私が吹き飛ばした『戦いの旗』の事後処理を頼んできた、一応は私がリーダーだから挨拶は私がした方がいいって言われたし、そもそも後片付けとか苦手、苦手なのよ」

事後処理、なるほど二人はそのために呼ばれたわけか…

「ジェシカ?まさか小笠原ジェシカか?本社広報の有名人で役員で映画監督の?」

「そのまさかだけど…もしかして映画のファンだったりする?」

「当たり前だ、『ただいま、シンジュク』は全バージョン持ってるし『黄金の学園』シリーズが完結した時には三日は泣いてたし『神託と狂気、この40年』の斬新な視点には感動した!社員としても監督としても彼女には敬意しかないね!」

「朝はもっと落ち着いてたのに、そんなに興奮する要素だったんだ…」

「何言ってるのオルフェ!『ただいま、シンジュク』の良さを知らないの!?」

「えっ、何?ユリディスまでそうなるの?というか見たことあったの?」

「俺が貸した、休憩時間にでも見ろってな」

「ほんっとうに面白いのよ!ネタバレしたくないから今すぐ見ましょ!今すぐ!」

そう言ってユリディスはオルフェを連れて行ってしまった

「だいぶ愉快な協力者さんだね?」

「まあな、たった二日の付き合いだが、だいぶポテンシャルはある」

「ふーん…本題に入っていい?残りの目録がどこにあるかについてとか、本社がこの儀式をどうするつもりかとか」

「残りの二人は来てないがいいのか?」

「セラムとジェシカさんはもう少し後になりそうね、こっちに来るまでに手土産の一つ二つ持ってくるみたいだし」

エリザベスの顔にはさっきまでの軽快な印象とは打って変わって、ある種の獰猛さが滲んでいた、これから狩り殺す獲物の事を考えているような、そんな印象だ。

 

 

 

「それで結局、この儀式をなんだと思ってる?日本支社の意見を教えて?」

「…偽物の目録を本物に仕立て上げる儀式、具体的には生贄を捧げて真理を得る魔術、実行者は市長」

「どうしてそう思う?」

「そもそも市民が逃げられなくなってる中でギャング組織が暴れてるとか、散らばった目録という明確な火種もそうだが…再開発計画の構図が決定的だな、この街は『ピラミッド』に偽装した祭壇だ、空へ上がる階段に見せかけて獲物を置く台座なんだ」

ユリディスに資料を整理させて良かった、証拠もなしにカッコつけれないからな

「うーん、本社の分析員達の意見とだいたい同じだけど…50点かな」

「何故か教えてもらっても?」

「方法と目的が欠けてる、発掘計画に発掘品の偽造に大規模な結界を伴う儀式…エジプト支社の協力も無しにこんな大事件を起こせる人間がいる?」

「…支社長の裏切りだと?」

「厳密には独断専行、狂言誘拐、マッチポンプ、自作自演ってことよ」

「カゴちゃん?説明出来るか?」

これまでずっとタイミングを逃してきたからな、そろそろ聞いてもいいだろう。

『う〜ん…簡単に言うと社内政治と国際情勢の弊害ですね〜」

「責任転嫁って事?」

『まあ、はい』

「…続けて」

『ここからはライオンモードに代わります〜』

『支社長は各支社の力の不均衡を憂いていた、国家間のパワーバランスを調整するシステムになり、神官としてのあり方を失ったエジプト支社を特にな』

『そこで市長の計画に一枚噛んだ、アレクサンドリアを使ったこの儀式を提供し、最後には我らエジプト支社で成果を掠め取る算段だった』

「だったってことは、失敗したのか?」

『というよりもライトの存在がかなりイレギュラーだった、貴方が最初に結界を一部破壊したせいで予定よりもずっと早く本社にこの儀式がバレて人員が来た、結果として儀式の段階は急ピッチで進んでいて、カリオペーを持つ我ら以外は動いてさえいない、おかげでエジプト支社の計画は立て直しで全員出払っている』

「えっ、誰もいないの俺のせい?」

「もしかしたら結果オーライかもしれないわよ?」

うーん…

「成果を掠め取るとは言うが、目録を得たからなんなんだ?俺の見立てではこの儀式で本物は召喚できないし、本物が手に入ってもこの程度の観測対象はもう持ってるだろ」

『市長の厳密な目的は目録ではない『儀式によって完成した目録がどんな状態でもいい、他の観測対象と組み合わせてある種のコンデンサーになる予定だ』と』

「なにに使うんだそんなの」

『『ムー大陸復活の儀』に使うと言っていたが眉唾だ』

「その名前だけで危険な試みなのが丸わかりだな」

『儀式場はこの街そのもの、そしてこの街を奪うだけならエジプト支社の持つ戦力でも簡単にできる』

「市長の計画が根本的に穴だらけね…」

「…ここまで開示してくれるってことは市長をボコってもう終わりでもいいのか?」

俺はボーナスさえ貰えばなんでもいい…いいわけないな、支社長もたぶん何かしらの処分が下されるし、俺もそのためにしばらく拘束されるだろう、想像したら憂鬱だ

『そうはいかない、この街の結界は彼が直接維持している、攻撃すれば私たち全員が損害を被るだろう』

「当初の予定通りに目録を集めて持っていかなきゃならないってことか?」

『そうだ』

「最悪だ、ラスボス戦前のスルー出来ない中ボス戦があるだなんて…」

憂鬱の極みだ

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