隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録 作:sakigake2004
「この三日間で俺たちがすべきことがわかるか?はいユリディスさん早かった、どうぞ」
一夜明かし、俺たちは会議とは名ばかりの集会を開いていた
「もっと強くなること?」
「正解だ、より具体的にはオルフェにもっと荒事慣れしてもらう必要がある」
「…昨日みたいにいちいち吐いてちゃダメって意味でしょ、流石にわかるよ」
微妙に不貞腐れてるな、どんな二度寝でも『八咫烏』を至近距離で聴かせたら流石に起きると思っていたが、やりすぎたか。
「吐くのもそうだが、それ以上に疑問を自己解決する能力が必要だ」
「自己解決?勝手に納得しろってこと?戦いっぽくないね…」
「
昨日みたいにビビり倒してるといずれ本当に死ぬだろう、死因が自爆か不注意かは知らんがな
「だから恐怖を感じてもそれを態度に出さないぐらいの自己暗示が必要だ」
「どうやるのさ…まさか昨日みたいなのをもう一回とか言うんじゃないよね」
「そのまさかだ、お前には俺とカゴちゃんがそれぞれ選出したホラー映画を今からぶっ通しで見てもらう、必要以上に態度に出した場合はそれに応じて時間が伸びるから覚悟しろよ」
説明しながらオルフェにヘッドギアと足枷をつける、覚悟とか関係ない、やってもらう
「スパルタにも程があるって…!」
「スパルタの訓練はもっと厳しいということを忘れてるな、一本追加だ」
「今時こういうのはダメだって…!」
「グダグダ言うな、エリザベス頼んだ」
「はーい、ごめんねオルフェ、私もユリディスも付き合うからさ!」
「そんなあ…」
オルフェがエリザベスとユリディスに引きずられていく、よし、身体能力とかは後でなんとかできるが精神を鍛えるには時間がかかるからな、エリザベスがいるしなんとかなるだろう
「異界駅突入時のポジションを決めませんか?」
戻ってきたセラムから提案された
「ポジションか、まあエリザベスがビーム撃ちまくって解決する話でもないからな」
「私とジェシカさんは対人戦闘向きではありませんから、後方でお願いしたいですね」
「具体的に何持ってきたんだ?俺よりも戦闘に不向きだなんて」
「『ガープ』しか使用許可が出なかったんですよ、信じられますか?」
「…序列33番の大総裁は十分じゃないか?」
記憶処理、というよりも精神干渉のアプリケーションだ、自由度が高く偽の記憶の付与も叡智の取得も自由自在、その代わりライセンス料も観測難易度も最高クラスで使える人間は数少ない。
「一つだけだと物理攻撃が出来ないんですよ、もし精神干渉に強い人がいたら…ああ、エリザベスに頼るのも癪だし…」
心配性、というかエリザベスに頼るのがよっぽど嫌らしい、わりと仲良さそうだったが、まあそういう事もあるか
「…まあエリザベスに任せっきりだとビームで異界の壁をぶち抜きかねないし、俺が先に出るよ、その分後始末よろしく」
「わかりました、こっちも頼みますよ」
「ジェシカさん、ジェシカさんがどのアプリケーションを持って来たか尋ねてもよろしいでしょうか!」
戦いの旗から奪った金庫を調べていたジェシカさんに話しかけた
「…そんなに畏まらなくていいんですよ、それで、私のアプリですか」
「ええ、セラムと突入時のポジションについて話しまして、各々のできる事を把握しておきたいなと、セラムもエリザベスもジェシカさんのスタイルやアプリを知らなかったので聞きに来たんです」
土壇場で組んだチームはこういうのが困るんだよな
「意外かもしれませんが、54年間の間私は一度も盾を手放した事はありません、拳銃はたまに変わりましたが、それでもスタイルは一緒ですよ」
「拳銃と盾!映画でやってたアレですね!」
「映画ほどスタイリッシュではありませんが…アプリケーションは、この鞄にいろんなものが入ってます、貴女やエリザベスさんほど特化していないので手数を確保しておこうと、まあ私も76の老人、無理は出来ないものですけど」
「ええ!ジェシカさんの手を煩わせずとも俺達で解決して見せましょう」
「期待していますよ」
『何だか急いでますね〜』
「潜入する為の装備を申請してるんだ、具体的には認知弱体ヴェール、エリザベスに頼りっきりになるわけにもいかないからな」
『私は勘定に入って無いんですか〜?』
「入ってると言えば入ってるが、不安要素もあるだろ」
『と言うと〜?』
「異界でライオンモードで居られる時間は?」
『…よく気づいたな、エジプト外でのライオンモードは一日あたりフル稼働時間は累計3分だけだ、それより長くは観測強度に機体が耐えられん』
「やっぱり、前回俺よりも先に壁をぶちぬけそうだったのにそうしなかったのは、俺達を気遣ってるだけじゃなかったんだな」
『それの比重の方が大きいですけどね〜』
「さて、三日間の緊急修行が終わったわけだが…何も変化がわからないな」
「あんなス…厳しい修行だったのに!?」
…こいつ
「スパルタって言いかけたか?」
「言ってない言ってない!」
「ならばよし」
「ほっ…」
絶対言いかけたなこいつ、まあ流石に許してやろう
「取引場への入場方法は戦いの旗から奪った端末で分かってる、カリオペーでの脱出は不可能だが他の目録の位置を探すのには必要…そしてどうやって取引が進行するかはわからないままだ、なので入ってもしばらくは動かず様子を見る」
「この認知弱体ヴェール肌触り悪いんだけど、刺青も隠れちゃうし」
「出番が来たら破くなり焼くなり勝手にしてくれ、出力は気をつけてくれよ、壁ぶち抜いたら今度も無事に帰れるかわからないからな」
「はいはい、わかったわ」
「ジェシカさんはこっちでしばらく待機する、向こう側が大丈夫そうだったら信号を送ります」
「そういうわけです、皆さんの安全第一で行動してくださいね」
「オルフェ、安全第一だからね」
「分かってるよ」
ジェシカさんの話にかこつけていちゃつきやがって…
「『ガープ」と『八咫烏』で道案内は出来るでしょうが時間は無駄に出来ません、逸れないように注意してください」
「よし、行くぞ!」
「フォークロア観測函、起動」「『異界駅』観測開始」
薄暗い駅の中に俺達はテレポートした
「幸い誰も離れてないな、こっからは喋らずに端末への入力で済ませるぞ」
(了解)
(さて、他の目録はどこかしら)
(カリオペー、他の目録は?)
(この道の先)
(よし急ぐぞ)
俺達以外の人影は見えないがそれでも慎重に進み、駅というよりも夜の公園の様な大きな広場に出た
(ここは?)
(わからない、前回には無かった場所だ)
(人がチラホラいるわね、物陰に隠れましょ)
エリザベスが言及した様に俺達以外にも人間と…
(自己証明を失って死んだ人の成れの果てですね、こうやって生きた人のいる場所に居るのは珍しいですが)
(異界だから?)
(そういう事でしょう、ですが居るだけみたいです、近寄らなければ害はないでしょう)
(それよりも困った事が一つあるぞ)
(何?)
甲冑と現代的防護服の中間の様な格好のやつらが広場の中心で大型コンテナを守るように立っているのを指差した
(