隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録   作:sakigake2004

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無名(ウーティス)警備、日本一の警備会社で、日本の民間で二番目に胡散臭い企業で、日本で官民問わず三番目に強い武力組織。ただ、その強さの方向性はオライン営業課(俺たち)とは少々異なる。戦力をどう確保するかを自社製品の採用を除けば課あるいは個人の裁量で決めている俺たちに対して、無名警備はある程度統一されている。騎士甲冑の様なデザインと引き換えに最高の性能を誇る防具『アイギス』、八咫烏以上にうるさく量産性の高いドローンの群れ、頑丈さだけなら最新の核シェルターに引けを取らない装甲車『木馬』、バイオテクノロジーで強化された猛獣や飼い慣らされた実在隠秘存在(リアリティフォークロア)、そして何よりも、前歴一切不問という異常な採用条件でありながら正規軍の訓練と未知の手法を取り入れた結果量産された強力な戦士達…

(確かな実力と最高の装備を持つ人間が数の暴力で戦う、生半可な軍隊にも引けを取らない日本最凶の民間組織、それがアレだ、日本支社とも長年バチバチにやり合ってきた正真正銘の狂人達だよ)

(なんで日本の警備会社がエジプトにいるのさ)

(無名警備は複数の国に跨って活動しています、そこはオラインと似た様なものです)

(見たところ非戦闘員も混じってる、識別マークらしい部分に『ニュンペー』と書いてあるわね)

エリザベスの観察によってある程度正体がわかった

(『ニュンペー』か、確かエンジニアばかりが集まってるチームだ、函を守るために雇われたなら納得の人選だが、戦う可能性がある以上は比較的マシな方だ)

戦闘に特化したチームが居たらエリザベスはともかく俺では勝ち目が無い、銃撃や投槍で終わりだ

(向こうから誰か来る、何か喋ってそうだけど、読唇術とか出来ないわよ)

(しょうがない、『フギンとムニン』を飛ばす)

こういう時の為に持ってきた式神は感覚共有で聴覚も共有できる、しかも俺の聴覚は据え置きだ、まあ同時に聴くと感覚が狂って酔うからデメリットでもあるんだが

 

歩いてきたのは三人、無名(ウーティス)警備の装備を着ているが他の兵士やエンジニアとは少し様子が異なる

「いきなりエジプトに出張だなんて…『オデュッセウス』は本当に人使いの荒い人よ、今まで過保護に扱っておいて、今更引っ張り出してくるなんて」

一人はヘルメットを被っていない赤毛で日焼けした小柄な女性、ほんのわずかではあるが関節から駆動音がする事から両腕は旧式の機械義手だとライトは推測した、しかしライトがそれよりも注目したのは背中に装着されたジェットパックである、観測が不要なレベルに一般化されたエネルギー機関による飛行装置、一兵士やエンジニアが持つには明らかに過剰であった。

「本当に今更です、向こうの平和も悪くありませんでしたが、ワタクシ達にしてみれば戦場の方が体に馴染んでいます」

もう一人は小柄な女性よりも一回り大きかった、ただし手は3対6本であるし、足も3対6本を無理やりまとめている様な構造、特異な義手義足というよりは主要な内臓以外を機械に換装されたサイボーグだと推測。

「そのワタクシ達っての、ワタシと『キルケー』は含まれてないよな?今更戦場なんてこっちは真っ平ごめんだね、早いところ平和に終わってくれる事を祈るよ、無駄だろうけど」

最後の一人は他二人よりもさらに大きかった、何よりも目を引くのはその装備が甲冑というよりも巨大な立像か、はたまたある種の防護服か、あるいは拘束具の様でもあったからだ。元から大きいだろう体は装備で嵩んでもはや巨人にさえ見える。

「ちょっと、『キルケー』って呼ばないでよ、それすっごく気持ち悪いのに」

小柄な女性はそう反抗する

「仕事ですから仕方ありませんよ、終わればいくらでも本名で読んであげます。それはそれとして、ワタクシ達というのはこの『スキュラ』とその操作ユニットのみを指しています、いい加減覚えてくださいね『キルケー』『カリブディス』」

サイボーグが煽る

「あ、また呼んだ!」

「あーもう、あんた達ってほんっとうに…はあ、面倒くさいよ、帰りたくて仕方ないね」

巨人が呆れてため息を吐く

 

(だいぶキャラ濃いな…)

(感想それでいいの???)

小ボケてる暇は無いんだが、面白くてついつい言ってしまうんだよな、

(まあわかったことはいくつかある、アレはコードネーム持ちだ)

(俺みたいな?)

(まさか!無名(ウーティス)警備のコードネームは必ずしもそれに合致するアプリの使用を意味しない、全く使わないやつもいる、それよりも社長のお気に入りって方向性だな、結果を出した兵士に与えられる勲章みたいなものだ)

(つまり、手強いってことか)

オルフェもなかなかわかってきたらしい、こいつにも勲章をやるべきかもな

(私がフルパワーを出せば吹き飛ぶとは思うけど、それは危険だって言われちゃったしね)

流石にな、前回みたいに帰れるとは思えない

(コンテナを開けるみたいですね、ここから中は見えませんが)

(確認する)

 

「解除コードは…これでよし」

『キルケー』がハンドルを動かしてコンテナを開けていく

「ここにあるフォークロア観測函が今回のメインだったか?」

「ええ、アレクサンドリアでの儀式がどうとか」

「はっ、如何にも権力者だのオラインだのが考えそうな事だ、現場の兵士達の事なんて何一つ考えちゃいない」

「文句を言っても仕方ありません、ワタクシ達はよりマシな戦場を選ぶのみです、このワタクシ達は貴女を含んでいますよ『カリブディス』」

「はいはい…こっちのは?」

『カリブディス』が示したのは目録の入っている観測函とは別の観測函の山だった

「ここまでエジプト中の隠秘使いの組織が集まる事も少ないからそれに合わせて売るんですって、中身は色々だけど…一番の目玉はこの『スフィンクス』かな」

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