隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録 作:sakigake2004
間違いない、残りの目録はあのコンテナの中だ
(だが『スフィンクス』だのなんだの、他にも色々持ち込まれてるらしい)
(スフィンクスは知ってるわ、やたら頑丈で高火力、私には関係ないけど)
あの手の神獣は使いこなせもしないのに持ち出してくる馬鹿がよくいる、他の
(時間的にも攻めるのは今しかない、初撃は俺が幻術破りで怯ませる、なるべく殺すなよ)
(つまり?)
(攻撃開始!ゴーゴー!)
「はあ、こんだけあると壮観だね…ん?」
キルケーがコンテナの中の観測函を眺めていた時、通信機が起動した
『6時から攻撃!隠秘と物理!』
「全員、防御態勢!」
キルケーの対応は完璧だったが
「『幻術破り』!」「『ドラゴンブレス』!」
小手先の対応では防ぎきれない火力であった
「どうなってる?」
「ゲホッゲホッ!煙でわかんない…」
ドラゴンブレスによる煙と灰に包まれた中で世界危機対処チームは立ち尽くす
「あ〜…あんまり上手くいってないかな、あっちとか」
エリザベスの回答を機に全員がコンテナの方を注目する
「ゴホッゴホッ…来ると思っては居ましたが、随分と、ゴホッ、派手な登場ですね、ゴホッ、オライン社!ゴホッゴホッ!」
煙で咳き込みながらもキルケーはエリザベスを睨みつけていた、灰と煙だけでなく、炎を浴びているはずなのに、怪我一つ、火傷一つ無く。
「今の一撃で大半の戦力と装備がダメになりましたね、この時点でワタクシ達の利益と損害は損害の方が遥かに上回るでしょう」
全身サイボーグのおかげがスキュラは特に不調も無いようだったが、よく見ると左腕が二本溶けて折れていた、モロにくらったというよりはそれでキルケーと自分を防御したらしい
「ああ…『アイギス』が溶けるなんて、あり得ないと思ってたよ…よくもやってくれたな…!」
カリブディスのヘルメットは一部溶け落ちて中身が露出していたが
「…は?」
その中身はヒトの顔でも、血でも、ましてや脳髄や骨でもなく
「水、いや、海?」
それは海水であった
『人間の体重のうち成人男性なら60%、新生児なら80%は体液と呼ばれる水分で出来ている』という有名な話がある。
とある国のとある武力組織ではこれを利用した
実験の99%は失敗、大半は肉体が負荷に耐えられず死に、残りも環境に溶け落ちて死んだ。人間一人に環境との合一は不可能というのが結論であった、が、しかし、一人の例外が居た。
彼女は肉体の99%が『海』という『環境』いや『異界』に置き換えられておきながらも残ったわずかな脳組織ではっきりと意識を保っていた。
それでも彼女は失敗作であった。単純に兵力として落第だったからだ。
彼女の大きく重すぎる身体は目立ち、下手に環境として広げれば彼女の方に損傷が増えるという、その有り様は当初の目標からは完全に逸脱していた。
『たまたま生きているだけの、なんの参考にもならないレアケース』というのが最終評価であり、実験は凍結され、彼女も打ち捨てられる事となる。
ある日、施設ごと廃棄され、飢えて死を待つだけであった彼女のもとに一人の狂人が訪れる
『アンタだれ?』『ただの船乗りさ』『なんのために来たの?』『部下が欲しくてね』『部下?ここには誰も居ないよ』『君がいるじゃないか』『ただ飯食らいなだけの水たまりを誰が部下にするのさ』『何を言う、私はこれまでに君よりも遥かに面倒な怪物と遭遇して生き残ったのだよ、今更なんという事はない、部下と言っても私について来さえすればいい』『ついて行けば、生きていられる?』『もちろん』『わかった、部下になるよ』『よしきた!部下になるというなら…君には名前が要るだろう』『名前?』『そうだ、私の…『オデュッセウス』の冒険に相応しい名前だ』
『君の名前は…』
『カリブディス』