隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録   作:sakigake2004

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「お〜!!!ここがお前らのアジトか…質素だな、街のど真ん中にあるってのに。」

「うるさっ、いきなり大声だすなよ、というか地下スラムを街のど真ん中とは言わねえよ。」

綺麗な反応だな?街のど真ん中と敢えてぼかしたのに座標の話題ではないと一蹴した。」

「なんでそんな事に驚いてるんだよ…」

「顔に出てたか?」

「声に出てるよ!」

なかなかツッコミが上手いなコイツ、お笑い芸人とか向いてそうだ、100年ぐらい前のジャンル限定だが。

「先輩も同期も最近はちゃんとツッコミ入れてくれねえんだよ、だいたい「そうだな」とか「そんな事よりも!」ってサラッと流しちまうんだ。」

「その態度が原因なんじゃ?」

「そうかもな、お前の足をもう一度折ってもいいなら認めてやるよ。」

「最悪な脅しだ…」

「流石にやめてあげてください、治療薬ももう無いんです。」

おっと、彼女…

「君らの名前なんだっけ?流石にお前らとか君らだと商談の相手への態度にはならないからな。」

「私は「待てよ、そっちが先に名乗れ。」ちょっと!?」

ふむ、やっぱりそれなりに度胸あるな、蛮勇の節も否めんが。まあ自己紹介ぐらいはしてやるか。

「では改めて…俺の名前は八咫 来徳(ヤタ ライト)、ヤタさんって呼んでもいいがややこしいからライトさんと呼べ。」

「はい、ライトさん。」

「じゃあ、ライト。」

「呼び捨てとは、普通に蛮勇だが━━━まあいいだろう、俺の目的は単純明快「金儲け」もっと言えば会社の営業と買付に来たのさ。」

「会社って?」

「オラクル&インサニティ・カンパニーだ。」

「大企業じゃん、しかも胡散臭さに定評があっていつも評論家から馬鹿にされてる。」

「オルフェ!そんな言い方無いでしょ!」

「いやそんな事は無い、全て事実だ。」

本当に事実だから困る、胡散臭すぎて企業名言うだけだとなんの信頼性も無いんだからな。

「俺は日本支社営業二課の課長補佐やっててな、まあ課長は忙しいし副課長も忙しいんで好き勝手に買付に来たんだよ、ここへテレポートさせてくれたりとさっきから頼りっぱなしの『アレクサンドリア図書館目録』をな。」

「ふーん…」

「今話せるのはあらかた話したぜ、次はそっちの番だ。」

とは言ってもだいたいの予想は付いてるし、なんならもうリサーチ済みなんだが。


「俺は『オルフェ』こっちは『ユリディス』さっきも言われたようにコードネームだけど、本名は流石に勘弁してほしい。」

「あらためて、こんにちは。」

「どーも、こんにちは。」

まあウチの一課とか呪い特化のやつらとかになると本名なんて無くても余裕で呪い殺せるからなと思ったが、これ言うとたぶん本気でぶたれそうなので止めておく、顔が本気だし。

「俺たちは見ての通りこのアレクサンドリア地下スラムの最下層民、金を得てこの街から脱出するのが目的なんだ。」

「この街…?どうしてアレクサンドリアから脱出したいんだ、言っちゃなんだがこのスラムもスラムという括りならかなり裕福な場所だろ。」

隠秘(オカルト)が氾濫して久しいこの現代、人々の関心は未来ではなく寧ろ過去に向いている『二十二世紀の歴史なんてのは信じるに値する形で残らないと人々は薄々分かっているのかもな』と先輩が言っていた…気がする、気がするだけだ。とにかく、アレクサンドリアは二十二世紀の今でも古代や中世の文化を味わおうとする観光客で賑わっている。

「その裕福さが壊れる寸前だからだよ、新しい市長の再開発計画がそこら中で動いててこのスラムも立ち退きを迫られてるんだ。」

「なるほどな、『八咫烏』アレクサンドリア、再開発計画。」

『コレ!コレ!』

「話してるやつの前でファクトチェックするな!というかインターネットに信頼性の高い情報なんてあんのかよ!」

「意外とあるぞ、ディープウェブやダークウェブは一部のシャーマンとAIの独壇場だがそれ故に全てのデータが垂れ流しだ、旧世紀の情報網にタダ乗りしてる雑なシステムは初手でハッキングされて何もかもダダ漏れだし…見たら死ぬ呪いとか攻撃的な圧縮ミームに触れさえしなければ不便は無いのさ。」

実際そんなもんなんだよ、まあ俺以外に『八咫烏』に頼りっきりな生活送ってるやつ見た事ないから無理があるのもわかってるんだけどな。

「ふむ、真実か、この地下スラムも目録の発掘地点も本来なら再開発工事の対象と。」

「そうさ、発掘地点は国の調査団が来るから後回しになってるけど、その分こっちには地上げ屋だの警察だのが来てずっと揉めてるんだ。」

「地上げ屋ねえ…さっき金が要ると言ってたな、俺みたいな隠秘使い(オカルティスト)の組織が目録に懸賞金でも掛けてるのか?」

これはインターネットでもはっきりとわからなかった情報だ、チラシや本の情報は防犯カメラのネットワークから出回るから、情報伝達は口頭、それも呪術か魔術的な制約付きだろうな。

「懸賞金は市長が出してるんだ、目録をフルセット集めて持っていったら再開発計画の中心のビルを一区画分くれるって話をね。俺たちが一生かかっても買えない様な建物だ、その権利を売ったら相当な額になる…だから目録というより懸賞金目当ての諍いが街中で起きてるんだよ。」

「目的。」

「あ?だから金だって。」

「違う、市長の目的だ、そこまでして目録を手元に置きたい理由はなんだと思う?」

「えーと…『目録が行方不明のままだと国の調査団が帰ってくれなくて発掘現場をどうするか決めれない』って発掘現場の人達が言ってたし、それじゃないかしら?」


再開発計画の進行か、市長の方針としてはまともだが…

『知ってる人からお電話です♪知ってる人からお電話です♪』

「うわ、何この嫌な音楽。」

「うわとはなんだうわとは!これは俺の同期の山田さんがセイレーンのボイスチェンジャーを試した時の音声だ!可愛らしいだろう、セイレーンの呪術的な作用で精神不調とか船酔い誘発とかあるけどな!」

「着信音にするにはデメリット大きいかも…」

「いや、この音でむしろ緊張して頭が冴えるんだ。はいもしもし、八咫来徳です。」

『━━━━八咫、生きてるか?』

「もちろんですよセンパイ、あいや階級で」

『━━━━御託はいい、本題だ、良いの一つと悪いの二つがある、まず悪いのから。』

「早いですって!」

『━━━━時間が無いんだよ、まず悪いのその一、君が勝手にエジプトに乗り込んだせいでエジプト支社から苦情が来た『こっちで色々制御を試みてる儀式に外様が来るな!』と。』

「代わりに謝っといてくれませんか?」

謝罪文は俺が最も苦手とする分野なのに。

『━━━━自分で謝罪してくれ。そして悪いのその二、ギリシャ支社のデルポイ予言律が乱れている、予想される災禍規模は世界危機、ざっくり言うとエトナ山のティフォン騒動に匹敵する。逆算された元凶はちょうどエジプトのアレクサンドリアだ。』

「俺が原因だと?」

『━━━━流石に無いだろう、君如きで世界は危機に陥らないよ八咫来徳。そして最後の良いニュース、この自体へ対処するチームの先鋒として君も候補になっている。積極的な活動が認められればボーナスが出るだろう、やるか?やるなら謝罪文をこっちで手伝うが。』

「やりますやります!」

『━━━━それならよかった、こっちはセイレーンの塩漬けの処理に手間取っててね、それでは。』

「あっ切れた!セイレーンの塩漬けをあの人達で処理する気だ!ズルイ!」

こうしちゃいられない、一刻も早く残りの目録を集めて世界を救わなければ…

「そんなノリで世界救うんだ…」.

「声に出てたか?」

「今度は顔に出てたよ…」

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