隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録   作:sakigake2004

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「ムー大陸とアトランティスは分かりましたけど、『破戒』というのはどういうことなんでしょう。」

ここまで奇人(ライト)奇人(エイト)奇人(センパイ)から垂れ流されるオカルト初心者に不向きな説明を黙って聞いていたユリディスからの質問だった。

「読んで字のごとく、戒律を破ることだ、オカルティエンスにおいて最も戒律と呼ぶべきなのは…国連のOrganisation for the Prohibition of Occultience Weapons(隠秘学兵器禁止機関)が見張ってる『隠秘学兵器の開発、生産、貯蔵および使用の禁止並びに廃棄に関する条約』の全文か?」

「えーと…」

ライトの説明はスラムで人生の大半を過ごした未成年にはピンとこなかった

「化学兵器に関する条約をそのまんまオカルティエンスに入れ替えてできた詭弁の塊さ、今時誰も守ってない…とは限らないんだよねこれが、今の世界ではこれを破らないオカルト兵器が氾濫してるのさ、笑えるよね!」

「…」

エイトのあからさまなブラックジョークに全員が無言を貫いていた

「笑ってくれてもいいんだよ!?━━とにかく、これを含めたいろんな条約と法律でオカルティエンスの攻撃的な利用は厳しく取り締まられてる、規模のでかい儀式なんかは特に念入りにね、だけどルールってのはしっかり決めれば決めるほど破った時の影響とか破る価値が出てくるもんで…」

『━━━━ムー大陸浮上ほどの危険で本来不可能な儀式が始まればそれだけで世界中の結界が揺らぎだす、もし完遂されればそれこそ世界が終わる。』

「そうそう、それは今の世界秩序そのものへの反逆。最悪の場合は、ゼウスがパリスを使ってトロイとアカイアを戦争させた様に世界そのものを巻き込んだ戦乱が始まるかな、デルポイ予言律の乱れはその始まりに過ぎないって感じ。」

「…もしかして『ダイダロス』からのメッセージガン無視してたのやばかったか?」

ライトはエリザベスが合流して以降ひっきりなしに届くギリシャ開発課からの催促と苦情のメッセージを可能な限り無視していた。正確には最初は真摯に対応していた(センパイとエジプト支社に丸投げした)が途中からそれすら忘れていたのだ。

『━━━━彼なら昨日本気でユピテルをアレクサンドリアに向かって使おうとしたのをギリシャ支社の総力をあげて説得したらしいからしばらくは大丈夫だろう、神託(オラクル)にもそう出ている』

前提が全て大丈夫では無かった、儀式が始まる前から世界の危機である。

「あらら、身内が世界を滅ぼすトリガー引くところだったわね」

エリザベスが若干呆れの感情を込めた言葉を発した瞬間

 

『『『『『どうしてそんなに冷静なんだ!!!』』』』』

部屋の通信機のほぼ全てから爆音で成人男性の怒号が響く

 

「うるさっ!」

『━━━━エリザベス君の声に反応して自動で流れるボイスメッセージだ、わざわざ僕のところにも送り付けられている、ちょっとは構ってあげた方がいいんじゃないかい?』

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