隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録   作:sakigake2004

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4皿目

「結局、私たちにどう動いて欲しいんですか?」

「ジェシカ、君ってせっかちだって言われないかい?まあ言ってあげるけど」

エイトは大袈裟に息を整えながら姿勢を正す

「儀式を本格的に始めるには僕たちの手元にある目録が必要な以上、市長は必ずこっちにやってくる、だから逆に」

「「「こっちが攻め込む」」」

ライト、ジェシカ、エリザベスの声が重なる

「ちょっと、僕のセリフ取らないでよ!」

「じゃあじゃあ!攻め込むタイミングはどうする?」

セラムとの戯れ合い以降おとなしかったエリザベスが急にテンションを上げだす。

『━━━━なるべく早い方がいいだろう、市長の実力がどうであれニャルラは僕でも手こずる実力者だ、彼女の手札的にも時間を与えるのは危険だと思うね。』

「もう一日経過してますけどね…」

「急いで準備するぞ、オルフェは着替えてから車に乗れ、ユリディスはここで待機だが市長のデータをできる限り調べてくれ」

「わかったよ」「わかりました!」

「セラムにはちょっと相談があるから俺と一緒に来てくれ」

「相談ですか…」

「あれ、アタシは?」

「リーダーに出せるアドバイスや指示は無い!この後の戦いで身一つでなんでもできる事を証明してくれればいい」

「よくわかってるじゃない、今回も活躍してあげるわ!」

「ジェシカさんは…」

「私は本社へ連絡をしておきます、エリザベスさんが動く気なら片付けの準備はいるでしょう」

「わかりました、そっちをお願いします」

 

「…僕へは何もないのかい?」

『…こういう時の指示って〜本当は階級が高い人がやるもんですよ〜』

「はは、カゴちゃんは手厳しいね!」

『━━━━僕は一旦失礼しますが、このまま逃げたりはしません、間に合えば応援を送りましょう』

「おー、日本支社の一課とか来てくれるのかい?」

『━━━━本当に間に合うかわからないので、今は言えませんね』

「サプライズってことか、なかなかいい性格してるねキミ」

 


 

ミソクラスト投影鏡の修理の為にライトとセラムは倉庫を漁っていた。

「投影鏡にこの数日で無理をさせすぎたせいだと思うんだが、どうにも出力が不安定だ」

「破損前提の出力なんてのを短期間に二度も使ったからですかね、取り替えた中身にとどまらず外側にもダメージがあるということでしょう。」

「何か代わりのツールに宛ては無いか?」

「この土壇場では難しいでしょう、いっそ別の筐体に組み込んでみては?」

「ふむ…いや、一応候補はあるんだ」

「あったのならそれを使えばよかったのでは?」

「…あまり使いたくない、いい思い出が無くてな」

そう言いながら、ライトは自分の荷物の中から暗い褐色に煌めく金属の棒を取り出した。

「これは、アイテールのエーテルスチール製品ですか?まさか、オレイカルコス?いや、ヒヒイロカネ?どことなく見覚えはあるんですが…」

棒を渡されたセラムは反応に困っていた、武器や観測ツールとしては見た目ほど重くもないが実用性の為に軽くされている訳でもない、意図というものが希薄な状態の試作品にしかない性質だと感じたが、それだけだった。素材は見た目から判断できなかったが、明確な観測プロセスを踏んで作られた隠秘科学(オカルティエンス)の産物であることは確かだった。

「見覚えがあるのか、開発一課だしそういうこともあるよな…これはそうだな、『賢者の石』の出来損ないみたいなものだ、メイン素材は銅と鉛だが…物質化された呪いとでも言えばいいのか?そういうものが混ざってるらしい」

「…そんなものどうして貴方が?」

「まあなんというか、大昔に友人から貰ったんだ、性能的にも法的にも問題はないんだが、どうにも気持ち悪くてな」

そう語るライトの顔には複雑な感情が浮かんでいたが、セラムはその真意が『苦痛』に見えた

「見たところその素材ならばここ数日のような無茶をしても壊れたりはしないでしょう、エチオピア開発一課として断言できます。」

 

「うーん…」

ライトは唸りながらしばらく悩んでいたが

「そうだよな…よし、流石に覚悟が決まった、使うとするか」

そう言うとこれまで使っていた杖から投影鏡の核ユニットを取りはずし、金属の棒に取り付けていく。

「いいんですか?精神的な不信は貴方のメインアプリケーションに悪影響を齎しますよ」

「不信とか不安とか、まあ今更だな、100%を使う時はいつもビビり散らかしながら使ってるよ、そうしなきゃいけないからそうするってだけだ」

淡々と語るライトの感情が覚悟か自棄なのか、先ほどと違ってセラムには判断できなかった

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