隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録 作:sakigake2004
俺たち世界危機対処チーム(ユリディスを除く)は最新式の小型バスに乗って建設現場へ向かった、だが…
「…どうしてこうなったんだ?」
本来、まともに進んでいない建設現場があったはずの土地に、見るだけで気が滅入るような漆黒の摩天楼が聳え立っていた。
「なんだあれ、昨日の今日で出来たってのか?誰にも気づかれることなく?」
『計算によると〜あれは巨大な結界ですね〜それも可視光線を一切通さない事に特化してます〜』
「他の方法なら中身がわかるの?」
『わかりますけど〜目に見えなくてとんでもなく気味の悪い形状の肉塊が蠢いてる感じです〜感覚共有とかはオススメできませんね〜』
「みんな、しばらく別の方向を向いてるのをオススメするわ。
『ティフォン/ドラゴンブレス』!」
エリザベスが結界の上部へと放ったビームは直撃したが…
「効果は無しかー、しかも私対策とかじゃなくて単純にめちゃくちゃ硬いだけね。」
「急に攻撃しないでください!これで壊れたらどうするつもりだったんですか!後始末を誰がすると
「悠長にしてる暇は無いわよ、あの結界をほっといたらそれこそ大変なことになるわ。」
…どういう理屈で?」
「『ガープ』でチェックしてみればわかると思うけど、あの結界は中身の定義にあえて欠陥を作って注目だけを集めてるのよ。」
「確実な証拠をださず、観測リソースだけを掠め取っていると?それこそありえない、それで得られるのは意味が無い…ぐちゃぐちゃの…まさか。」
セラムの顔に目に見えて緊張が浮かぶ、なるほどな
「観測と干渉を中途半端に阻害する結界、気味の悪い肉塊、ふむ。」
「今回はわかったよ、どうせ邪神の肉体とか言うんでしょ、よくわかんないけど。」
オルフェは半ば投げやりに言うが…
「おそらくそれが正解だな。」
「え、マジで???なんで???」
「説明は移動しながらしてやる、あそこに行くぞ。」
「行くの!?」
『防いでるのは物理的な現象だけですから〜ライトさんかオルフェさんがアプリを使えば入れるかと〜』
「そういうことだ、外のことはいいから俺たちは中に入るぞ!」
「え〜!」
結界に走る二人を見送りながらエリザベスはギリシャ支社と連絡を取っていた
「もしもし、『ダイダロス』にちょっと頼みがあるんだけど
『急にかけてくるな!こっちも忙しいんだ!』
えーと、具体的にはアレキサンドリアに『ユピテル』で攻撃して欲しいのよね
『何を今さら』
座標と必須要素は
『その程度はわかってる!そっちで火力を調整できる状況じゃないわけだな』
あら、もうわかってるの?なら話は早いわね、タイミングは改めて言うから頼んだわよ
『おい待て、まだ言いたいことが山ほど』
頼んだわよ!よし!」
『何もよしではないと思うんですけど〜』
「大丈夫よ!私とダイダロスとセラムの秘められた力を見せてあげるから!」
「ここまで来たら付き合ってあげますよ…」
エリザベスの顔には喜悦が浮かぶ一方、セラムの顔には怒りと緊張が振り切れた笑いが浮かんでいた。
『不安です〜』
「見えない世界には常に神聖さがある、蠱毒タイプの呪い、セフィロトの異次元、地下や山にあるとされる冥界、空の上や遥か遠くの海にある天国や理想郷…個々人が好き勝手に観測できないことは
「でもそれだけで邪神になるの?意味が無いのに?」
「たとえ上辺だけでも肉体ができればそれを操作するオカルトなんぞごまんとある、神の体だとほんの一瞬でも定義できれば市長の手元にはムー大陸だかアトランティスだかを引き摺り出すための仮想の神性が出来上がるだろうな。」
「無理やりすぎない?」
「当然、こんなことは予定外も予定外だろうな、おそらくはアレクサンドリアを封じる結界の再利用が主題か。この肉塊も目録がなければ動き出すこともないだろうが…
『消すこともできんのだよ!』
…いきなりラスボス戦の始まりか」
結界にふれた瞬間、俺とオルフェは…空の上に居た。
感覚的にわかる、ここはアレクサンドリアを囲う結界の最上層であり、成層圏の一番上まで延びた摩天楼の頂上だ。
「どうやってここまで結界が伸びたのかとか俺たちの転移はどうやってとか興味はあるが…まああんたを捕まえて尋問なり拷問なりすればわかることか、市長。」
そして俺たちの目の前には、写真で見た通りのやたら黒い格好の男、シリウス・ポールが居た。
「残念ながらそれは叶わぬことだ『
「…ここに来てからそう呼ぶのは二人目だが。なんだ、人間やめるのがそんなに流行ってるのか?」
「エジプト支社長なんかと私を一緒にしてもらっては困るな。」
「…それと一応言っておくが、儀式を中止して事情を説明する気は?」
「無い。」
「わかった、じゃあ、殴り合いだな。」