隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録   作:sakigake2004

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6皿目

空の上でライトとオルフェが当人達の予想よりも早く決戦に挑んでいるその時、アレクサンドリアの地下深く。

(シリウス負けてくれるかな、自分で強化したやつを自分で処理は嫌なんだけどな〜)

邪神の端末、依神ニャルラはアレクサンドリア結界の維持に努めながら、雇い主の敗北を祈っていた。

そもそもこの少女の目的は『自ら以外のニャルラトホテプの殲滅』

邪神を召喚、あるいは創造してでも世界の秘密を知ろうとするシリウスの計画は、少女の基本行動方針と完全に相反するものであった。

ここでは語られぬ物語でさまざまな死闘と陰謀を繰り広げた彼女は、邪神召喚とそれによる隠秘の独占(少なくともニャルラはそう捉えている)を目論むシリウスによって攫われ、その計画を破壊するべく敢えて逃げずにいたのだった。

(別に今から戦えなくも無いけど、オラインの連中とまともに協力とかは期待できないし、このまま勝手に負けてるのが一番楽なんだけどな〜)

最低限の義理でシリウスに極端なチャンスを与え、最大限の保身で助けに行かないという行動方針を決定するその様は、皮肉にもオラインが対外的にとる姿勢によく似ていた。

 

「━━━━ふむ、どこにいたのかと思えば、工事現場の下層部のさらに下か、予想の範囲内ではあったね。」

つい先ほど、ほんの数秒前まで、絶対に居なかったはずの人物がそこに居た

「…」

「━━━━直接会うのは初めてかな?どうも、初めまして依神ニャルラさん、━━━━です…あ、これじゃ伝わらないか、『センパイ』と皆からは呼ばれている。」

オラクル&インサニティ・カンパニー日本支社営業二課の怪人である。

「…どうも、初めまして━━━━さん、依神ニャルラです。早速ですけど、帰ってもらっていいですか?」

「━━━━そうはいかない、君には聞かなきゃいけない話が山ほどあって、とりあえず今一つ聞いておきたいんだが。」

「断りたいけど、なに?」

センパイと依神ニャルラ。

顔の見えない青年と顔が意味を成さない少女。

主人公の外形と主人公であるはずの器。

なんでもできる会社員となんでもできる研究者。

「━━━━僕達キャラ被りしてないか?」

「してないね。」

ある意味キャラ被りしまくった強者達の戦が始まった。

 

「「フォークロア観測函、起動」」

「『This Man』観測開始」

「『這い寄る混沌の夢』夢想再演」

ほぼ同時に観測函を起動し、宣言する。

 

「━━━━はい!」

その瞬間、青年はアレクサンドリアから一度消失した。

(どこだ…?まさか!)

少女が辺りを見回す。

「━━━━終わり!」

再びアレクサンドリアに現れた青年は、少女の背後に立っていた。

彼はそのままPDWによる銃撃を放つが

 

「それで?」

無傷。

少女にはなにも変化が無かった。

「無駄だね。」

「━━━━それ、どうやってるんだい?今回は殺す気で、わざわざ市販されてない武器を持ってきたのに。」

「答える筋合いはないかな、『ンガイの森の焼失』限定公開」

少女の手元の短刀から太陽と見紛うほどの光と炎が溢れるが

「━━━━熱を感じない、見た目だけってことか。」

常人なら失明するほどの光を浴び、炎に包まれたままの青年は少女をまっすぐと見据えていた。

 

(光で怯まない、これに関してはそれなりのオカルティストであるなら視界喪失前の強烈な自己暗示や視界に頼らない感覚での戦闘継続として納得できる。)

少女は思案する、無貌の誰かとして、自らと似て非なる常人を凌ぐ為に。

(問題点は熱による攻撃が効いてないこと。この炎が恒星級邪神の一部であるという情報注入は視覚効果とは切り離されている、光で怯まないからって無傷なわけがない。)

少女は思案する、邪神の端末として、神に挑む勇者を殺す為に。

(認知操作や精神攻撃への不干渉、あるいは免疫?いや、それなら彼は『夢』を完全に無視してもっと早い段階で私に接触できるはず。)

少女は思案する、研究者として、一人のレアケースへの好奇心を満たすために。

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