隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録 作:sakigake2004
「━━━━相殺、ってことかな、つまり引き分けだ。」
青年と少女は無傷でその場に立っていた
「.違う…違う…ありえない!」
「━━━━む、不服かい?」
「貴女如きがそのアプリを使えてるという事実がありえない、概念に影響を及ぼすアプリを使ってお互い無傷だなんてのがありえない、私に合わせて手加減した?私の手の内を把握しきってるとしても常軌を逸してる!私に負けて死ぬ可能性だってある!それを単なる時間稼ぎの為に!?」
取り乱す少女、その疑問と驚愕の全てはもっともであった。
「━━━━はあ…勘違いしてるみたいだから言っておくけど、
別に僕は一人で負けに来たわけじゃない。」
「何を…」
「『聖剣再考/ミスティルテイン』!」
「『矛盾』」
「なっ!」
背後でも、正面でも、側面でもなく、頭上から『発生』した攻撃を少女は回避出来なかった。
右腕を直刀で、左腕を矛で貫かれた彼女はバランスを崩し倒れ伏す。
(外れない、動けない、観測が掻き乱される…剣は変形しての物理拘束、槍は付与されてる『全てをつらぬく槍』属性の不可能性そのものが情報量を増大させて観測を邪魔してる!)
「━━━━急に取り乱したのはさっきの口約束の効力がすぐ切れる事を理解しての事だろう?僕の注意を引いて逃げる算段なのは超AIじゃない僕でもわかる。」
「…」
「━━━━まあ、万が一が有ろうと無かろうと、単独行動しないのは会社勤めの鉄則だ。僕ばかり警戒して墓穴を掘ったね。」
少女、依神ニャルラの背後に二人の人物が立つ。
「珍しいものが見れると聞いて来ましたが、その通りでしたね。」
一人は老婆、今回の世界危機対処チームの監視役でもある小笠原ジェシカ。
「人使い荒いですよセンパイ!久しぶりに動画配信するところだったのに巻き込むんですから!」
そしてもう一人。白いポニーテール、上等なスーツ、普段している「私は無害です」という顔ではなく多少の苛立ちの混ざった…というか意識的に怒ってますアピールの顔、多少細身に見える女性。
「━━━━後で何か奢るから今は辛抱してくれ、セイレーンの加工品はそろそろ勘弁してほしいが。」
「じゃあ
その名を山田ソフィー、オラクル&インサニティー・カンパニー日本支社営業二課副課長を勤める天然の変人。無害そうな印象と裏腹に有害と危険を積極的に取り扱う
「負け犬の遠吠えですが、どうやってここまで降りてきたんですか?ここに来る為の道は全部塞いでおいたんですよ。」
「全部切ってきました!『斬鉄』もその派生もそんなに難しい概念じゃないので…こう、ズバッズバッ!って感じで。」
「…はは、貴女みたいなのが来るってわかってればもっと丁寧に塞ぎましたがね、認めましょう、油断しました。」
ソフィーが手刀を振り回す様にニャルラは苦笑するしかなかった。
「━━━━君が居ると判断する前からソフィーを送り込んでいたが、正解だったね。」