隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録   作:sakigake2004

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「━━━━教えて欲しいことは山ほどあるが、今聞くべきなのは…まず一つ、この儀式を終わらせる方法、知ってるだろう?」

「…シリウスが持ってる二つの観測函の制御を奪取すればそれで済みます、街にある全ての結界の根本がそこにあるので。制御コードはシリウスを攻撃して吐かせるなり殺害するなりすればなんとかなるでしょう、と言うかそれ以外の手段は基本無いと思ってください。」

「━━━━結局暴力か、よしわかった。ソフィーは上にいるライト達にこの話を伝えに行ってくれ。」

「はいっ、行ってきます!!」

どたどたと音が聞こえそうな勢いでソフィーは地上への道を走っていった。

「━━━━それともう一つ、会社としてはこっちが重要で、その為にわざわざジェシカさんを呼んだ。」

「…???」

なんのことか完全に理解できていないという表情をニャルラは浮かべる

「この儀式による死亡者というのは現在0人です。ギャング達に殺された哀れなスラムの住人が数人いましたが、彼らが死んだのはこの街を覆う結界が完成するよりも前、つまり儀式が始まっていない時期でした。」

ジェシカは淡々と、この儀式における異常事態を説明する。

「━━━━僕ら(オライン)はこの統計学的な怪奇現象を君の仕込みだと考えている、君は『人間』には優しいとデータに出ているからね。しかし、そうなると実に奇妙だ。」

 

「━━━━そんな君がどうしてシリウスに協力していたんだい?」

 


 

『『虹龍』『サンダーバード』!』

実体として接触可能な虹

視認可能な速度で移動する雷

現実感の無い視覚情報をライトとオルフェは認識するが、それらは全て現実のものである。

「『幻術破り』!」

ライトが杖を構え、宣言と共に防御姿勢を取ると虹も雷も霧散した。

しかし、戦闘開始から10秒も経っていないのにライトの顔にはすでに疲労が浮かんでいた。

「せめて観測開始の宣言ぐらいはしろよ!どうやってるんだそれ!」

『貴様のような半端者に教える筋合いは無い!』

「誰が半端者だ!」

シリウスがゆっくりと歩きながら、手を宇宙(ソラ)へとかざす。

 

(精霊、魔神、悪魔、幻覚、夢、現実、恐怖、崇拝、忘却、隠秘)

 

突然の啓示によりこの男の一挙手一投足が過剰なまでの意味と価値を持つことをこの一瞬でライトは理解した、理解する他なかった。

過剰な情報量による隠秘の強化、というよりも魔改造がシリウスの攻撃と『幻術破り』との拮抗を成立させているのだ。

そのギミックの出どころ(トラペゾヘドロン)をライトは知らなかったが、知っていたとてできることには何も変化が無かった。

「頭が…気持ち悪い…うえっ」

「オルフェ!このタイミングでダウンするな!戦えないなら逃げろ!」

『結界への記述権限が私たちよりも彼の方が上だから、どうやっても無理よ。』

「最悪の回答をありがとうカリオペ!」

詰み、と言うほどではないが、リスクのある選択肢しか存在しないことをライトは察した。

 

『まだ、反抗する気か?全く、実に残念だよ、半端者と言えど貴様ならこの理想を理解できると思ったのだが。』

「…はっ、このタイミングで勧誘か?世界を滅ぼすラスボスなら滅ぼした後の世界の半分でも報酬として提示しろってんだ。」

『無理な相談だ、意味のないヴェールで覆われた今の世界と真なる世界は比べようがないのだから。』

「何それ…」

『少年は知らないのか?そこの男は私と同じように今の世界を変革する使命を持って生きてきたのだよ、金の亡者達によって意味もなく掻き乱されるこの世界を!』

 

「…あれが、使命?」

ここまで、オルフェの前では決して苦痛を見せなかったライトの顔に、初めて苦痛が見えた。

「ふざけるなよ、俺の、いや俺じゃないあの時間を使命だと?」

『そうだとも!隠秘科学(オカルティエンス)による偽りの平穏、偽物の崇高さを破壊する使命!

真なる世界(プレローマ)から流出した(ライト)である貴様ならば!

そうやって創造された貴様ならば理解しているだろう!』

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