隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録 作:sakigake2004
「賢者の石にそんな機能が存在した覚えはないけど、間違えてるんじゃない?」
「━━━━その四人には出来たんだよ、魂に焦点を当てた錬金術がね。」
「生きてる三人が黒幕なら君は気づいてそうだけど…四人目は死んでるんだろう?有り得ないはそれこそ有り得ない、なんてさっき言ったけどね、死を回避するならまだしも巻き戻したり否定するのはほぼ不可能だよ。」
「━━━━だから渋ったんだ、与太話の類だからね。」
「…
「?」
「死亡して久しい四人目、オラクル&インサニティー・カンパニードイツ支社開発二課に勤めていた呪物の専門家で、当時のコードネームは『黄金』三年前に異界で行方不明になり、今は死亡退職扱いです。」
「勤めてるならそれは確かに身内の話だ。三年前は、ああ
「━━━━むしろ彼女の話題は社内でも秘匿されている、社員が異界で行方不明だなんてのは『陰謀論』の温床になるからね。ジェシカさんが知ってるのは。」
「…そこまで話すつもりはありませんよ、まだ他人ですから。」
「━━━━おっと、そうだった。」
「まだ他人?何、この話のオチもしかして勧誘なの?」
「━━━そうだ、ちょうど営業三課の課長が先日退職してね、席が一つ空いたのさ。人事部はずっと忙しいし、社外に頼ろうにも色々きな臭いから、君がある意味適任なんだ。」
「断るって言ったら?」
「━━━死ぬ以外のあらゆる方法で君が苦しむかな。」
「拒否権は無し、ですか。」
「━━━そういうことさ、不適格なら拷問なりなんなり
(混沌、降臨、目前、夢界、急接近、要対処)
「上で問題が起きたようですね。」
「━━━━ここでも見えるとは、よっぽどだね。」
「もしかして啓示?あーこれは…シリウスに渡したやつがバグったかな…ここで話している暇は無さそうだけど?」
「━━━その様だ、じゃあ僕は行ってくる、ジェシカさんはニャルラの相手を頼んだ。」
「ご武運を。」
「フォークロア観測函、起動」
「『This Man』観測開始」」
青年が地下空間から消える。
「…似た様なことできるけど、あれは流石の私でもドン引きだよ。」
「奇遇ですね、私も同意見です。」
異変はすぐ起きた、シリウスの目から敵意が、意思が消えた
消し飛んだはずの左肩と左腕が映像の逆再生の様に復活して
なおもそこから肉と血は膨れ上がり、シリウスそのものを呑み込み
足場となる結界そのものを覆う様に広がり、溢れ出す
「待て待て待て待てっ、文脈が破綻してるだろそれ!」
「どうなってるのあれ!?」
「隠秘に相応しい様に肉体が変わる珍しいパターンですねこれ!今から箒呼んで逃げますか!?」
「海抜5万メートルに箒が飛んでくるまで何分かかる?」
「最速で3分ですかね!」
「よし、戦うぞ。」
「本気!?」
「さっきも言ったけど勝算はある、山田さんが来てくれたおかげでな。」
「何言ってるのかわかりましたよライトくん、今日こそあの必殺技の出番ですね!」
「そういう事だ!ところで肝心の観測対象か観測函は?」
「観測函の予備は無いです!血を避けるのに精一杯ですし、そもそもさっき結界に穴を開けるためにリソースを使い過ぎました!エリザベスさんの真似はやめた方がいいですね!」
ライト達から数センチの距離に血が迫り、ソフィーの結界に弾かれたそれらは少しずつ嵩を増していた。
「この作戦は失敗だ。」
「なんで!?」
「観測対象も観測函も無いのにアプリが使えるか!?」
「じゃあどうし…
「『カリオペー』!ライトの武器を用意できる!?」
『出来るわ、注文の内容次第だけど。』
「注文、なんか、ある!?』
「『この杖を穂先にしたなるべくギラギラした飾り付けの多い矛』だ!データはあるから観測対象さえあればなんとかなる!」
「その杖使う気になったんですね!?」
「人は成長すると相場が決まってるからな。」
ライトは投影鏡に使っている金属の杖を指定した。
『承知したわ』
「後は耐えぬく『完成したわ』早いですね!早く行ってきてくださいライトくん、この血猛毒みたいでちょっとしんどいです!」
血の嵩はライト達の目線にまで上がっていた。
「フォークロア観測函、起動」「『八咫烏、フギンとムニン』
ライトの周囲の3羽の鴉が現れる。
「創造、神威、光輝、
ライトの手に握られた矛は変わらず、変わらない事が重要だった。
「『聖槍採光/天逆鉾』!」
ライトの頭上から矛へ『光』が降り注ぎ、装飾で反射した『光』は周囲の血を照らし、追いやられていく。
「血が、消えてる?」
「消えてるわけじゃない、逃げただけだ。」
「逃げたんだ…」
「これこそ私とライトくんが三日間の徹夜の末に編み出した必殺技です!」
「そのエピソードは黒歴史だが…効果は確かだ。ありがとうオルフェ、カリオペー、助かったよ。」
「素直なライトってなんか…あれな気分…」
「そこは普通にどういたしましてでいいだろ!」
血の濁流が晴れた先には、グロテスクな肉塊が地上へと向かって伸び続けていた
『市長の持つ観測函はこの巨体のどこかに埋もれてしまったようね』
「どうする?」
「『八咫烏』の分析と『フギンとムニン』の視界共有で俺にはわかる、行ってくる!」
ライトが肉塊に向かって跳んでいく。
「ご武運を!」
「…ところで観測函をライトが奪ったらどうなるの?」
「さっき仕様を確認したのでわかりますけど、一部の結界は安全処理の為に構造がリセットされますね、私が定義を弄った部分はともかくこの足場とかは消えるんじゃないかと。」
「ヤバくない?」
「ヤバいですね!箒を呼びましょう!」