隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録 作:sakigake2004
「邪魔!今更抵抗するな、罪が重くなるだけだぞ!」
切削、解体、分解、裁断、その他諸々etc.
ありとあらゆる手法で、シリウスでなくなりつつある肉塊を退け、ライトは進む。
『ソッチジャナイ!クジノホウコウ!ソノカベヲキレ!』
『フギンとムニン』が道を探し、『八咫烏』がそれを精査する。
それでもダメなら肉塊と結界を『天逆鉾』で壊して進む。
『天逆鉾』は天地創造を逆転させた隠秘。天地を再創造するこの武器は、触れたものの定義を原始海洋と同様に再定義し分解する。適切な振るい方をしなければ空気や結界、最悪の場合は自分自身すら分子レベルでかき混ぜて分離し破壊してしまう。究極の諸刃の剣、ライトの奥の手。
猛毒の血液も、驚異的な膂力の触手も、多少人型を保っている骨格も、今のライトの相手にはなっていなかった。
「手こずらせやがって…ようやく見つけたぞ。」
肉塊に埋もれ、意識を失ったシリウスの手から不気味な装飾の施されたフォークロア観測函を抜き取る。
「実行中の
『権限未確認、無効なコマンドです。』
「流石にロックはかかってるか…緊急マスターキー使用、『世界危機、
世界危機対処チームに渡された、販売済み観測函に対するマスターキーは世界危機の最中にのみ彼らにオライン製品のセキュリティを無視できるようにする。
『権限確認、実行中の隠秘、『輝くトラペゾヘドロン』』
「…たった一つでここまでの大事を?まあいい、緊急マスターキー使用、『世界危機、法則戦争』、実行中の隠秘の観測を終了」
『権限確認、実行中の隠秘、『輝くトラペゾヘドロン』観測終了。』
「き、さま、よくもやってくれた、な…」
身体の大半が肉塊に押し潰されボロボロになっていたが、シリウスは『偶然にも』生きていて、『奇跡的に』意識を取りもどした。
「生きてるのはわかってたが、その状態で意識を取り戻すとは、なんて言うか本当に勿体無いなあんた…まあ今更どうでもいいか、それよりもう一つの観測函は何処に…
ライトの背後に落ちていた観測函が、起動した。
「はあ!?」
観測函に入力されたのは、アレクサンドリアの全ての儀式を投げ打って、邪神を召喚するコマンド。
「待て待て待て待て!?」
(混沌、降臨、目前、夢界、急接近、要対処)
無慈悲に、啓示が事態の悪化を告げる。
「ああ、クソッタレ!市長はまだ生きてるのになんで自爆システムが起動してるんだよ!?緊急マスターキー使用!『世界危機、法則戦争』、実行中の隠秘を停止!」
『観測構図破綻、無効なコマンドです。』
「頭おかしいんじゃねえのか!」
『該当隠秘無し、無効なコマンドです。』
「お前に言ってない!市長!シリウス!どういうことだ!?」
「知、ら、ない、そんなこ、とは、設定して、ない」
「よしわかった、聞いても無駄だってことが!」
「し、た」
「あ?なに言って」
ライトとシリウスの足場だった結界は、崩壊し始めていた。
ギリシャ最強を自称するエリザベス・ロッシにも大小さまざまな弱点が存在する。
本人が自覚する中で最も致命的なのは『弱いふり』が出来ない事であった。
幼い頃から何をしても本能的に叩き潰す、潰せてしまう。
ゲームもスポーツも勉強も教養も。
溢れる才能は彼女を無制限の『強者』として振る舞わせ、手加減や抑制というものを放棄させた。
幼少期から青年期に至るまでその暴挙はとどまる事を知らず。
ギリシャ支社営業二課に所属してからはより悪化し
『この恨み、忘れるものか!いつか貴様らを滅ぼしてくれる!』
竜殺しを経て
「『ダイダロス』…その、ありがとう。」
「どういう風の吹き回しだ?」
「別に、私だけじゃ『ティフォン』は倒せなかったから、手伝ってくれた人に感謝するのは当たり前でしょ…」
「なら、私以外にも言ってくるべきだな、そろそろ本社と日本支社のメンバーは帰るぞ。」
「あっそうよね、ちょっと言ってくるわ!」
多少マシになった。
「回想シーンなんて、私らしくないわよね?」
「急に何言ってるんですか?」
「いやなんか、誰かに覗かれてる気がして、ね?」
…
「言いたい事はわかりますが、集中してくださいよ。」
…
「はいはい、それで邪神の降臨は止めれそう?」
「…降臨直後に『ケラウノス』で儀式の結界ごと潰すのでは?」
「ライトが渋ったから無しよ、無し、さっきの啓示で何か思いついたんでしょうね。」
「はっ…降臨を止めるのは難しいでしょうが、仕様を変えて弱体化なら。」
「オッケー、オッケー、攻撃が通るならなんでもいいわ。」
『一応言っておきますけど〜攻撃に巻き込んで建物とかを傷つけるのは〜勘弁してくださいよ〜』
エリザベスとセラムの作戦に釘をうつカゴちゃんであった。
「あったりまえよ、何の為にこれを送ってもらったかって、手加減する為なんだから。」
『その武器は〜宇宙を焼く雷では〜?』
「ふっふっふ、ゼウスに匹敵する巨神ティフォンを纏う私ならこれを加減として使う事が出来るのよ!」
そう言って槍を握るエリザベスの右手は赤熱していた。
『思いっきり押さえ込んでませんか〜?』
「フルパワーに比べれば適切、適切よ!私とケラウノスで相殺しあうからちょうど良くなるってわけ!」
『力技過ぎますね〜』
「ところでセラムー?準備出来た?」
「出来てるわけないでしょう、隠秘を無詠唱即時起動できる貴女がおかしいんですよ!」
『魔神72種と高い親和性を持つ貴方も〜本当はおかしいんですけど〜」
「ま、それでこそ
(混沌、降臨、目前、夢界、急接近、要対処)
「ふーん…そういう事しちゃうのね?」
『今のは!』
「セラム、大丈夫?」
「大丈夫に見えますか!?すごい勢いで邪神にエネルギーが注がれてるんですよ!」
「急いだ方がいいわ、結界を開いたらあとは私がやるから!」
「ああもう!こんなことになるなら安請け合いしなければよかった!」
『エリザベス、私も助力するべきではないか?』
ライオンモードのカゴちゃんが尋ねるが
「大丈夫よ女神様、『最強』を信じて。」
キッパリと、彼女は断った。
『…信じよう』
「うおおおおっ!」
ライトとシリウスは上空5万メートルから落下していた。ライトは意識を保っているが、シリウスは落下開始直後に再び気絶していた。
「━━━━やあライト、元気かい?」
(センパイ!助けに来てくれたんですね!)
二人とも重力に従って落下中であるにもかかわらず、センパイの声はライトにしっかり聞こえていた。
「━━━━下では邪神がもうすぐ降臨するところだ、エリザベスとカゴちゃんがいるから心配はいらないが。」
(それはよかった!助けてください!儀式が終わってない今なら死なないのは確実ですが、このまま落ちるのは嫌です!)
「━━━━残念ながら君と僕の分の箒は無いよ、ちょうど今ソフィーとオルフェ君に渡してきたからね。」
(そんな!)
「━━━━ところで、この街で人が死なないことを何時把握したんだい?」
(あ、それは割と最初からです、オルフェやユリディスが『八咫烏』に人間判定されなかったあたりで結界内の認知が変なのはわかってましたから。)
「━━━━なるほど、そしてもうそろそろ地面だ、覚悟の準備をしておいた方がいい。」
(いやだ!死なないだけで死ぬほど痛いのはいやだ!い
ライト達はそのまま地面へと激突した
「ライトくん、立ち上がれますか?」
「…は、い、なんとか。」
「見るも無惨な事になるかと思ったけど、大丈夫だったね…」
箒で安全に降りてきたソフィーとオルフェが、ライトの意識を確認している。
「大丈夫なわけあるか…式神を使っての受け身なんて取らずに気絶する方がマシだ…全身の骨がぐちゃぐちゃなのを感じるぞ…」
「喋れるって事は、まだ大丈夫ですね!そろそろエリザベスさん達の方が動きますよ!」
「引きずってくれ…立ってるだけでしんどいんだよ…」
「この辺のアスファルトで引きずられたらもっと痛そうですけどね!」
「…歩くよちくしょう!」
「セラム、あと何秒でいける?」
「あと55秒!」
「セラム、あと何秒でいける?」
「あと48秒!」
「セラム、あと何秒で「何回も聞かないでくれ!あと10秒だ!」
(混沌、降臨、夢界、接岸、危機)
啓示は消えず、危機を示し続ける。
「雷、台風、怪物、
━━━━
エリザベスの右腕は輝き、握られた雷霆から火花が散る。
(
結界が開かれ、人間には耐えられない邪悪さを持つ怪物が現れ━━
「『
雷霆により、焼き尽くされる。
エリザベスの言う「加減」とは、あくまでも地形や建造物を破壊しないという言語化であり、怪物や邪神を破壊するのにはなんの関係もない要素である。
「…今回の事って、全部エリザベスだけでよかったんじゃない?」
「彼女に任せっきりだとこの街が更地になっていましたよ。」
「じゃあダメか…さようなら、顔も名前も知らない
ニャルラは、今まさに焼き尽くされている怪物に向かって手を合わせ、ジェシカはそれを無表情のまま見つめていた。
「これで一件落着、なのかな…どうしよこれから…ねえ、ライト?どうした?」
オルフェとライトは、ギリシャ最強の無法な一撃をぼんやり眺めていた。
「さっきから探してるんだが、センパイとシリウスは?」
「急に元気になったね。」
「俺の体調はどうでもいい、シリウスは何処だ、どうして俺の過去に言及できたのか知る必要がある。」
「市長は受け身を取った時にライトの反対方向に弾かれてたけど…センパイさんは…あれ?何時の間に?」
「センパイなら事後処理がどうとかでさっき移動してましたよ、市長を探しに行ったというのが適切ではないかと!」
「ありがとう山田さん…まあ…センパイが探しに行ったなら、いいか…」
「そういやライト達は俺とユリディスの経歴一方的に知ってるけど、俺はライトの過去何も知らないよね。」
「…秘密にしてるわけじゃないが、他人が聞いたところで面白くもないし、俺も楽しくないからな。」
「ふーん…」
「くっ、どうなっているのだ…我が神が、あっけなくやられるなど…外なる神の使者は神すら見捨てたというのか…?」
降臨した怪物が敗北し、トボトボと裏道を歩くシリウス、あてもなく、逃げたところで…
「「「(どうしようもない)」」」
「いやー!!!さいっこうに面白い破滅だよね!怪物が出てこなくても、これだけで超おもしろいよ!」「怪物が弱すぎたので低評価ではありますがな!」「もはやエリザベスこそが怪物なんだよ!やっぱりオラインの上層部はいい趣味してると思うね!」
「「「それな!!!」」」
「…趣味悪すぎ、ねえ『駅長さん』、こいつら雇ったの失敗じゃない?」
『どうでもいい、『作家たち』の計画はオラインの反応を見るという成果を出した、過程は非効率でもなければ過剰でもなかった。むしろ『黄金』、貴女の集中が『八咫鏡』に向きすぎて『タイフーン』にバレかけた、致命的。』
「超遠距離で観測函を起動した最大の功労者に何その言い種、そもそも昔馴染みに注目して何が悪いの?あーしの失われた青春はこれでしか癒せないわけ、結局バレてなさそうなんだしさあ、ちょっとぐらいわかってよね。」
『貴女への理解、無駄、無価値、無意味、却下。』
「最低…さっきから黙ってる『最優兵器さま』と『巨神王(笑)』はどう思う?」
『(無関心・戦略的意義無し・戦術上の余裕・誤謬・慢心・フェイルセーフを要求)』
『そんなことよりも、エリザベスめ!
「オーケー、アンタたちに聞いたあーしの方がバカだった、もういいわ
ちょっと黙ってて『ミダスの黄金』。」
『
『(
『命令するな小娘!『
「ちっ…こういう時だけ意見を一致させやがって
「喧嘩はダメよー!」「我々のように楽しく!」「ドキュメンタリーってのはバランスが大事なんだ!」
「…もーやだ!『魔神』抜きでアンタらと一緒なんてやってらんない!ちゃっちゃとシリウスの記憶だけ消して帰るわ!」
「フォークロア観測函、起動」「『リンフォン、パンドラの函』
「『賢者の石』『
「━━━━ようやく見つけた、全く、そんな満身創痍でどうやって…」
センパイは確かに市長を見つけた
それは肉体と魂の釣り合いが取れず、人格や記憶の破綻した廃人であったが。
「━━━━出遅れたか、これじゃライトにどんな顔してあえばいいかわからないな。」
「━━━━葵、君が生きてるのならそれなりに嬉しいが。そんな君がオラインの敵だって言うなら、こっちも困るんだ。」
「━━━━だからせめて、生きているというのは僕の勘違いであることを願おう。」
「ふっつーに生きてるんだよね、あーしは…まあちょっと諸事情はあるけど。」
「この星を殺して『本物の魔女』になるっていう、
『
『その約束は果たされませんよ。』
『この星は私が管理するので』
『地球霊長文明:ステーション・ディメンション』異界駅都市伝説終点/如月マガツ
『(管理、無関心、無益、不可能、破綻)』
『(同族、抹殺、完成、繁栄)』
『外なる神』2102年最優戦争兵器ソムニウム・エクス・マキナ/チクタクマン
『殺戮こそが価値というのは同意してやろう』
『しかし、それを為すのは
『地球最終霊長個体:巨神竜王』ティフォン
「うーん、なんだか難しい話をしてるね」「そうですな」「それに比べて僕らは怪物映画のことしか考えて無いからね!」
「「「はっはっはっ!」」」
『インビンシブル・マスターピース』狼男のフレデリック/理想人間のメアリー/吸血鬼のブラム
「ほんっとうにうるさいなこいつら…」
「我々の集まりに名前をつけるべきでは無いでしょうか?」「名前!」「いかにも組織って感じのがいいよね!」
「下手なもんつけてもオラインのシステムに引っかかって困るし、いらないよそういうの。」
「有権者…」「終末論…」「主義…」
「「「
「どーぞご勝手に…!」