隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録 作:sakigake2004
1皿目
突然だが、自らの故郷を嫌いだと思った事はあるだろうか
「あの店が無い」「あのオカルトが使えない」「あの景色が無くなる」
人はなぜ故郷に対していちゃもんをつけてしまうのか
何もかも与えてくれるからだろうか
何もかも奪うからだろうか
私はその答えを知ることができるのだろうか?
「うわっ、また赤字だよ…はああ…」
中年男性がデスクに項垂れている。ヨレヨレの上着を着たその背中には哀愁が漂っていた。
「社長、ため息吐いてると幸運が逃げるんじゃありませんでした?」
灰色の髪に鷺の羽が『生えた』女性が書類を見比べながら反応する。
「
「それを先月から社の標語にしたのは社長ですよ。はい、お茶です。」
「ありがとう…はあ、先月からトラブルだらけだよ、電気は切れるし、コップは割れるし、オラインからは観測函の契約止められそうになるし。」
「あの時は珍走団を止める為に無理をし過ぎましたね、すみませんでした…」
「いやいや、謝らなくていいよ、あれは流石に酷かった。あれで怒らないのは人間じゃない!ってね。」
「社長、そこまで行くとコンプライアンス的に問題が。」
「締まらないなあ!」
ここはアワブンラク隠秘事務所。
メンバーは社長である
現在は赤字経営の真っ只中、自転車操業と言ってもいい。
「はああ…何処かに金塊でも落ちてないかなあ…」
「税金問題で困りますよ。」
「そうだけどさあ…あ、退勤時間だよ。」
「はい、それではお疲れ様でした。明日もよろしくお願いします。」
「お疲れ様、まあ給料はなんとかするから、明日もよろしく!」
「金塊、か」
(あの村にならそういうものもあったのだろうか?)
「いけないいけない、そういう話じゃない、そもそも経営方針に口出すのは私の仕事じゃないし…」
「誰か助けてくれ!」
「っ!…錯覚、じゃない、ちゃんと聴こえた!」
ヨシノは声のした林へ向かって進む
林を進むと、ゴミ山の中に犬耳の生えた青年が居た。額から血を流し、両手には酷いアザが見えた。
「ちょっと、大丈夫!?」
「うっ、貴女は…?」
「急に叫び声が聴こえたら見に来て、何があったのよ。」
「いや、来ちゃダメなんだ…そんなんじゃ…ダメなんだ…」
「は?何言って「その通り」誰!?」
「『ゾンビ』観測開始。」
ヨシノの振り向いた先には、悍ましい腐敗臭を漂わせた人型の怪物が列を成していた。
「うっ、
「誰がチンピラだって!?俺たちゃ天下の『軽蔑』よ!」「そうだ!」「その辺のクズども一緒にするんじゃあねえ!」
怪物達はその頭の上から被ったボロ布の下から、悍ましい怒気が込められた声を放つ。
「勝手に喋るなクズども!」「「「ハイ!」」」」
「申し訳ないお嬢さん、そこの男を渡してくれないか?何、ちょっと身内でトラブルがあっただけなんだ、別に殺そうってわけじゃあない。」
列の先頭に立つ、ボロボロのヘルメットを被った長身の怪人は嘯く。
「…」
「信じてくれないか?ならこうしよう、私の手元にはそれなりの金がある、それで手打ちという事で…「ふざけないで。」…ふむ。」
「貴方達が何者かとかどうでもいいけど、人を傷つけて平気な声の人間を初対面で信じれる訳がない、ましてや金で解決しようだなんて。」
「じゃあ…少し手荒になりそうだな?」
「やれるもんならやってみなさい!フォークロア観測函、起動!」
「!?あの女を捕えろ!」
「『劣化神話、八岐大蛇』観測開始!」