隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録   作:sakigake2004

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2皿目

『支流』吹っ飛びなさい!」

ヨシノの鞄から水が浮かび上がり、彼女の左手が方向を示すと水が怪物達へ殺到する。

 

「うわっ!」「痛え!」「目に入った!」

怪物達は水流に悶えていた。単に水を被っただけではないようで、苦痛を訴えている。

 

「よし、逃げるよ!」

「は、はいっ。」

ヨシノは青年の肩を支えながら、元来た道を走る。

 




 

 

 

「なにをやっているのだ、あんな小娘一人に!」

怪人は怪物達の愚鈍さに怒っていた。

「痛いんすよ!」「今も!」「目があああ!」

「ちっ、使えんやつらだ…」

 

『困っているようですね。』

「スポンサー様!どうされましたか?」

怪人の手元の通信端末からよく通る少女の声がする。

 

『あなた方の資金調達がうまくいっていないようでしたので。』

「それは…いえ、支払いに手間取ってしまい申し訳ありません、間に合わせます。」

『そうですね、早く処理を終わらせるべきです、すぐにオラインの介入が始まります。』

「はい!『軽蔑』は成果を必ず上げて見せます!」

『では、貴方方の回収の為に扉を開けましょう、『異界駅』観測開始。』

 

 

 




 

「ああいうのは、街中まで、逃げれば、追ってこないって、相場が、決まってる、よね。」

「はいっ。」

息も絶え絶えといった様子のヨシノと青年であったが、なんとか林から抜け出して、アワブンラク事務所のある市内に戻ってきていた。

「病院、行けそう?お金とか身分証明とか…何も持ってない、そりゃ無理よね。」

「すいません…」

「いいの、大丈夫、とりあえず事務所に行こう、あそこでも応急処置ぐらいなら出来るから。」

 


 

「あれ?四国さんどうし…本当にどうしたんだ。」

ジュウロウは怪訝な顔でヨシノと青年を見比べる。

 

「怪我人です。」

「よしわかった、入りなさい。」

「ありがとう、ございます…」

 

 

 

「それで、何があったんだ?」

一通りの応急処置を終え、ジュウロウとヨシノは青年を席につかせ対話を試みていた。

「帰り道でリンチにあってまして、流石に見るに耐えない様子だったので…」

「まったく、ここ最近治安が悪くて困るねホント…」

「ご迷惑をおかけしてすいません、すぐに帰ります。」

「まあ待て、それよりも親御さんとか親戚とかに連絡した方がいい、悪党ってのは意外と根にもつんだ、君のことを追いかけてきてもおかしくない。」

「…両親はだいぶ前に蒸発しました。親戚は…」

青年の顔には淀んだ悲しみが映っていた。

「すまなかった。デリケートな話題だったね。」

「いえ、その平気です。」

「そうか…自己紹介がまだだったね」

 

「僕は坂東ジュウロウ、会社の社長としてこのアワブンラク事務所を運営している、職業は俗に言う探偵さ。」

 

「そして私はここの社員の四国ヨシノです、たまに荒事を任される以外は事務員を務めています。」

 

「僕は…阿波野アイって言います、学生…なのかな…ここ一年ぐらいずっと閉じ込められてて…」

「…それは、ご親戚に?」

「そうです、ずっと前から嫌がられてはいたんですけど、超能力に目覚めると余計に酷くなって。」

 

「超能力」

「超能力です、誰に言っても信じてもらえなかったんですけど、僕手で触れずに物を動かせるんです。」

「ははは、そんなのウチの四国さんだって「社長」はい?「社長、本当です。」…」

 

視線を動かせば、ジュウロウが持っていたお茶の入ったコップが、アイの手の動きに合わせて空に浮いていた。

 

「…いやね、世の中には観測函なしで隠秘(オカルト)を使える人だっていると聞くから…それにしたってだな…」

「数日前に家に押し入ってきた強盗、さっきの『軽蔑』って名乗ってた人達もこれを見せたら目の色を変えて僕だけを攫ったんです。」

「『軽蔑』?そりゃまた大層な名前の泥棒も居たもんだな。」

「自分達で名乗ってましたけど、どういう意味なんですか?」

「ああ、四国さんは去年入ったばかりだから知らないか。」

 


 

簡単に言えば世界で二番目に有名な悪党の集まりだよ

強盗、暗殺、恐喝、なんでもありの悪の組織さ。

ほんの二年前まではブイブイ言わせてたんだが、結局は全員捕まったって話だな。

 


 

「その名前にあやかろうとする小悪党は海外では跡をたたないと聞く、きっとそいつらも暴力団配下の半グレとかの擬態だろう。」

「なるほど、勉強になります。」

「しかし超能力者か…金塊が欲しいとは言ったが…」

「…適切な組織に売ればお金になる、とあの強盗達も言っていました。」

「まあな。」

「そうなんですか?」

「野良の念動力者一人だけでも、うちみたいな零細事務所の予算1000年分は出されるぞ、天下のオラインなんかはもういくら値段を釣り上げても買うって話だ。」

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