隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録 作:sakigake2004
俺と『ユリディス』は気づいた時には孤児で、なんだかんだ二人で生きてきた。別に姉弟でも兄妹でもないがそれでもずっと一緒だった。ユリディスはスラムにいるには勿体無いくらいに賢くて、綺麗なやつだけどちょっと抜けてて、それを指摘すると「貴方もでしょ!」なんて説教されて…二人で生きていけるならそれなりに楽しいだろうし、それはスラムでも外でも一緒だと思ってたんだ。先月までは
『再開発計画?なんでまた?』『わかんねえけどやるんだよ、もうじきここも出ていけって押しかけてくるぞ。』
噂話は真実ですぐにギャングだの警察だのが出張ってくるような争いが起き始めた。
隣の家のおじさんがギャングの抗争に巻き込まれて死んだ、商店のおばさん達は拷問された、自警団は警察と揉めてすぐに機能しなくなった。
それなりの平和はあっという間に無くなって、街のどこにいてもスラムの人間というだけで石を投げられるようになった。
産まれて初めてこの街が嫌いになった、どうにか出ていけるならそれこそどんな犯罪だって働いてやろうと…そんな矢先に市長が懸賞金を掛けて、それをあのチンピラ達が持ってた。
魔が差したというにはあまりにも確信的な行動だった、そんな中で一番間違えたのはユリディスを巻き込んだ事だった。
「ユリディス!」
「ちょっと、離して、痛いじゃない!」
どうしてこうなったのだろう、俺達、いや俺は平和に過ごしたいだけだったのに。
「向こうから連絡は?」
「まだねえな、他の連中の邪魔を受けたのかもしれん。」
「チッ、無能共が…まあいい、このクソガキ共から函を取り戻せればなんでもいい。」
チンピラの背景にいるギャングが出張ってきて、俺達はきっと殺されるのだろう、どう死ぬのかは考えたくはなかった。
「おいクソガキ、この函の解除コードを教えろ、さもなくばお前もお前の彼女も…まあどうせ殺すが、出来るだけ惨たらしく死ぬ事になる、楽に死ぬかそうじゃないか、選べ。」
鶏みたいなバカバカしいモヒカンのギャングが俺にそう言う。
「ふざけんな!街を散々荒らし回ったギャングになんで教えなきゃならないんだ!お前らさえ来なければもっときっと━━━
ドッ
「グエッ━ゲホッゴホッ、痛ってえ…」
普通に顔面蹴りやがって…
「言っただろ、死ぬのは確定だって、マシな選択肢を選べないくせに反抗するのは知恵の無いバカのやる事だ。そもそもお前らみたいなスラムのバカなガキにはあの函、いやあの函の中身の価値がわかってない。」
「じゃあ説明してくれよ、その知恵でよ
ガッバキッ
足が、折れた!?痛い!いや、アレは━
「まだ悪態吐く体力があるとはな、まあいいだろう、俺の知恵で説明してやるよ」
「━あの函の中身は偶像なんだ、本当の神に匹敵するレベルのな、この街の結界ありきとは言え低レベルの歴史改変まで成し遂げる強大なパワー、全ての
「どうだわかったか?スラムのバカなガキ共。」
「わかったよ、お前らが
「こいつ…!」
だってそうだろう?なんで俺なんかに乗せられて何十秒もベラベラ語ってるんだ、こうしてる間にも━
「なんだてめグアッ
「天下のオラクル&インサニティーの獲物にチンピラ如きが手ェつけてんじゃねえ!」
外から邪魔が入った!
「「ライト!」さん!」
「お前ら、誰からもバカなガキ扱いなんだな…流石に可哀想になってきたぞ。」
「うるせえ!そんなことより助けてくれ、商談相手が死んだら流石に困るだろ。」
「うーん…まあいいだろう、特別サービスだ、そのぐらいはやってやる。」
「てめえらだけでごちゃごちゃ言ってんじゃねえ!『バーバヤーガ』!」
その時、俺達の両隣の建物が動き出した、というよりも…
「脚がついて、立ってる!?」
「ふむ、スラブ民話の魔女だな、鶏の足がついた小屋にいて、子供を食うというやつだ。」
「そうだ!この辺は違法建築物だらけ!お前ら全員踏み潰して終わりだ!」
流石にあんなのがのしかかってきたらひとたまりもない!
「『ミソクラスト投影鏡、起動』「『デウス・エクス・マキナ媒質』励起率50%『魔女狩り』強制照射」
ライトが何か唱えると杖が光りだして…これは、炎?
「一応言っておくが、これで死んでも恨むなよ。」
「はっ!今更何を
ザシュッ
「は?」
ガラガラガラ…
ライトが杖を振ったら、建物もギャングも崩れ落ちた…
「どういうこと?」
「『魔女狩り』だよ、これで人間を攻撃したら魔女って事になって、もう一回切ると大ダメージってわけさ。」
「いやいやいや…」
「アイツはバーバ・ヤーガのアプリで小屋を従えてて、それがバーバ・ヤーガの小屋である事を認めたんだ、それはもうアイツ自身が魔女かその類例って事だろう、そういう機能なのさ。」
そんなのアリなんだ…
「そんなの…アリかよ…」
下を見るとうつ伏せで倒れたモヒカンのギャングがいて同じ感想を言っていた
「ん?まだ息があるのか、よかった〜殺しは流石に手続きが面倒だからな。そのまましばらくは生きててくれよ、そろそろ本命がくるだろうし。」
「本命って…何のですか?」
「それはもう『お答えいたしましょ〜』うわっ!」」」
なんだ?アンドロイド?顔が…ネコミミのついた女の子?
「どうも、エジプト支社のアンドロイドさん、色々やることあるけど…とりあえず自己紹介してくれないか?」
『はい〜、わたしはオラクル&インサニティー・カンパニーエジプト支社営業一課所有の戦闘用アンドロイド『バステトの加護』と申します〜、以後お見知り置きを〜』
妙に間延びした猫撫で声でアンドロイドが自己紹介してくれた
「自己紹介ありがとう、ところでその猫なで声なんとかならないか?」
『なりません〜』
「ならないか、じゃあしょうがない。それはともかくそこのチンピラ共とか、ロシアかぶれっぽいギャングとかの後片付けはそっちがしてくれるって事でいいんだよな?」
『もちろんです〜もとよりこちらの事情で起きている問題に地元民の方々や日本支社のお方を巻き込んで申し訳ないです〜』
「まあ、なんとかなったから俺はいいんだ、こっちのオルフェとユリディスにはそれ相応の謝礼とか用意したいんだが…目録の9分の1で市長との報酬交渉はできるか?」
『難しいかと〜市長さんはフルセット揃う事をお望みです〜それと今エジプト支社長から連絡が来ました〜』
「ん?どういう内容なんだ?」
『『この儀式に立ち入ったからには正式に参加してもらうぞ、
「え、てことは。」
『しばらく日本に帰れませんね〜』
「そんな…宿もちょっとしか設定して無いのに!」
『それは〜ウチの建物を貸すとのことですよ〜そこのお二方も家が壊れてしまったようですし〜どうですか〜?』
ドア蹴破られたし、こっちにライトが来るまでに荒らされてそうだし…
「俺達は…」
「行きます!」
「ユリディス。悩まないのか?」
「だってギャングの人達に扉破られてたし、元々スラムにはいずらかったでしょう?ちょうどいいと思いましょ!」
うーん、急だけど、まあ
「…そうかもな」
「よし、決まりだな、俺達は急造チームだが意外と信頼構築出来てるし、エジプト支社にお世話になるか。」
「なんでライトが仕切ってるんだよ!」
「仕切るだろ、23歳で年長だぞ!」
「そんな理由が22世紀で通るか!」
「二人ともごちゃごちゃ言わないでください!」
『賑やかな人達ですね〜』
俺達の生存記録はまだ終わっていない、だけど無茶苦茶濃密な一日はこれにて終了、頼むから終了してくれ!
隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録