隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録 作:sakigake2004
「オラインめっ!いつの間にこちらの手駒を!」
『異界駅』の何処かで、少し前まで『佐藤レン』だった人形に、ヘルメットの怪人は怒りをぶつけていた。
「一人へっちまったぜ」「でもあいつってなんだっけ」「そもそも俺たちは?」
「『ゾンビ』!余計な事を喋るな、黙っていろ!」
「「「はい!」」」
『お困りの様ですね』
「スポンサー様!無駄に時間をかけてしまい申し訳ありません。」
『言い訳や弁明は要りません、あなた方に要求があります。』
「何なりと!」
『この試作品を戦闘に投入し
普通の、路線や型番がはっきりしないが、それでも普通の地下鉄が怪人と怪物の横に停まる。
『異界駅』は駅である、故に線路には時折ではあるが列車が通る。
その時停まった列車はなぜか貨車であり人らしきものは乗っていなかったが、高さ5メートルほどの、言うなれば比較的小さい大仏ほどのサイズの函で梱包された荷物が一つ、ポツンと載せられていた。
異界では、あらゆる異常と不条理が恣意的に合理として罷り通る。
『利用目的は実験体の捕獲以外でも構いませんが、事情を問われた時には
『成功すれば支援は継続しましょう、できますね?』
「もちろんです!」
『では、あなた方を目的地に送りましょう、『異界駅』離脱。』
『さて、試作品はうまく稼働するでしょうか?』
梅の花を模した髪飾り、白いワンピース
黒い髪に赤い肌、額から生える二本のツノ
小さく華奢な体躯
いかにもな風貌の
その名を如月マガツ、地球文明に終末を齎そうとする、
「さあね、スポンサー様のご要望に沿うようバランスをとって作ったつもりだけど。」
狼の毛皮を頭から被り、その濁った目だけを露わにし
高級なスーツを着崩している長身でやせぎすの男
その名をフレデリック、最強の『怪物』を夢見る、ブラックマーケットで名を馳せた映画監督。
『それなりに期待していますよ。』
「そんなに言うなら、僕の映画の一本でも観てほしいけどな!」
『検討しておきましょう。』
「…まあいいさ、怪物の活躍を待とう!」
時計の針が午前十時を過ぎた頃、事態は動いた。
「何?地震?」
アワブンラク事務所が、ビルごと揺れ動いていた
「いや、そんな警報はまだ…外に出るよ!」
ヨシノ、アイ、ジュウロウの三人が外に出るとそこには
『グアアアア!!!!』
身長五メートルで腕が二対四本ある、巨大な人型の怪物がビルに向けてその全ての拳を突き立てていた。
「何!?」
『グ…グアアアア!!!!』
怪物は、ヨシノ達を見つけるとズンズンと足音を立てながら、向かってくる。
「なんですかあれ!」
たまらず逃げ出す三人。
「長い事やってるけど僕も知らないよあんなの!」
「あいつ結構早い!このまま街中を動いてたらそのうち追いつかれますよ!」
「逃げられると思ったか?」
ヘルメットの怪人が、三人の前を塞ぐように立ちはだかる。
「あ、昨日の怪物!」
「ふん、その節は世話になったな。」
「なったな!」「ここであったが…なんだっけ」「どうでもいい、殺す!」
「殺すな!さあ、早くその少年を渡せ、さもなくばお前達の後ろの『工作』が貴様らを叩きぶすであろう。」
「工作…?」
「知らんのか?軽蔑の八人の筆頭の中でも最も世界を震撼させた工作を!?これだからモグリの
「犯罪者を知ってたからって偉いわけ?」
「四国さん、相手を煽らないで…!」
「…わかった、少し貴様らの知恵を高く見積もり過ぎていたようだ。もう巻き戻しなど知った事ではない!」
「やるぜ!」「八つ裂き!」「血みどろさ!」
「やれるもんならやってみなさい!
「「フォークロア観測函、起動!」」
「『劣化神話、八岐大蛇』観測開始!」
「『ゾンビ』観測開始!」
「工作!ゾンビ共!こいつらを叩き潰せ!」
『グオオオオ!!!!』
「ねえっ!私たちも混ぜてよ!」
その時、ヨシノの頭上方向、ビルの屋上から身を乗り出す二つの人影が見える。
「は?え、だれ?」
「何者だ?いや関係ない!吹き飛ばせ!」
『グオオ!!』
工作が街灯を掴み、振りかぶる。
「「フォークロア観測函、起動」」
「『聖骸布』観測開始!」
「『丑の刻参り』観測開始」
『グアア!!』
工作が、掴んだ街灯を投げる、が
街灯は工作の手から滑り落ち、あらぬ方向へ飛んでいく。
「外れた!やっぱり私ってラッキー!」
金色の長髪を靡かせる碧眼の少女が、ジャラジャラとキーホルダーのついたバッグを振り回しながら高らかに宣言する。
「当たり前でしょ。」
「そうだね!じゃ頼んだよ呪「コードネームね」…『カース』チャン!」
「はいはい…」
『グオオオオ!!!!』
「『カウント-1』。」
カースと呼ばれた黒髪ショートの少女は、襲い来る巨体を回避し、無機質な宣言をしながら、自由落下のままに手に持った金槌で工作の頭を打ち据える。
カンッ
軽い音が鳴り響き、次の瞬間
『グアア…オオオオ!?』
工作がうめき声をあげ、怯み、倒れ伏す。
「なっ、工作の防御を!」
「ねえ!こういう時こそ名乗りが必要じゃない?」
「まあ、乗ってあげます。」
「イギリス発!新進気鋭のオカルティスト!『ラッキー』と!」
「…『カース』です、ロンドンのカタシロ呪術事務所を、よろしくお願いします。」
イギリス、古都ロンドンからの、誰も予想出来なかった幸運の乱入者であった。