隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録   作:sakigake2004

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10皿目

「姿が、変わった…

『シャアアッッ!』

っ速い!」

 

息つく暇もなく、タロウの左腕に『奇術』の蹴りが入り鈍い音が響く、が

 

「けど、先輩達に比べたら大したことないな!そらっ!」

 

そのまま奇術の足を右腕で掴み、そこに蹴り返すこと三回。

奇術の足が蹴り折られると

 

「!?」

 

折られた足が光とともに爆発した。

 

「ぐっ…」

 

『シャアア!!』

 

『大丈夫か新人!』

 

「大丈夫です!そこそこ痛かったですけど、でも足を一本取りましたよ!」

 

「いや、まだだ。」

 

その瞬間、奇術の折られて爆発した右足が機械的な腿の内側から滑り出してきた。

 

「生えた!?」

 

「…『ドッペルゲンガー』観測開始『目標(ベクトル)/奇術』。」

 

レンが再び分身を増やし、対処させようとするが。

 

「もう壊そうだなんて勿体無い!撮影時間のバランスを取れないのは困るんだ、今は退かせてもらおう。」

 

閉じていた空中の扉が開かれ、奇術はそこに飛びこむ。

タロウと分身が追い縋るも、扉はすぐに閉じられ霞のように消える

 


 

「…クソッ!第二形態なんて聞いてないぞ!というかあの流れで逃げるなっ、何が撮影だコンニャロ!というか誰だよ!?」

 

地面を蹴って当たり散らかすのは自前の『化けの皮』を脱いだツルギ。

ツルギの使用する『化物』は化けるために基準を必要とする。

彼女自身が巨大な妖狐の怪物になるのではなく、立体映像を特注のスクリーンと空間に投影し、彼女がそのスクリーンを纏う事で膂力や速度を得ている。ただし元となる実体がなければこの隠秘は使用できず、故に彼女が四肢でスクリーンを振るえる範囲にのみ妖狐の攻撃と防御は存在する。

『化物』は見た目通りの対処を許さない、騙しに特化した隠秘アプリである。

 

「すいません!もっと僕がうまく攻撃できていれば…」

 

項垂れているのは仮面を外したタロウ。

タロウの使用する『天狗』はそのまま天狗を再現する。

彼が仮面を被っている間はさまざまな神通力や超人的身体能力を得られるが、そもそもタロウが未だこのアプリの使用方法に慣れていないのもあって火力不足であった。

『天狗』はその効果を発揮しつつ、更なる変化を目指す落下に特化した隠秘アプリである。

 

「…責任を誰がとるかは今話す事じゃない、問題は、仕込んだ人形の信号も途切れたことだ。」

 

社用の携帯端末を覗き込んでいるのは分身を解除して再び一人になったレン。

レンの使用する『ドッペルゲンガー』は彼の分身を作成する。

形代となる人形にアプリを使用することで、それを起点に彼の分身が発生し本体が思った通りに動き出す。ただし分身の耐久力や行動時間に応じて彼自身の生命や体力、あるいは俗に『観測リソース』と呼ばれる資源を消費しなければならない。彼は分身の稼働時間と耐久力を極限まで削って使用することで、同時に数十体の分身を作成可能としている。アプリは常に稼働しており、この場にいるのも多めに意識と耐久力を割いた分身でしかない。

『ドッペルゲンガー』は使用者を選び常に効果的とも限らない限定的な隠秘アプリである。

 

「超能力者とのコンタクトよりも軽蔑と異界駅を優先した結果俺たちは墓穴を掘ったわけだが、取れる選択肢はまだある、そこに転がってる珍走団の首領だ。」

 

レンが指差した先には、気絶したガラの悪い男がいた。

 

「私はリーダーが盲信に化けてるもんだと思ってたけど、そうじゃないのか…あれは軽蔑の信奉者か残党…いやでも…」

 

思考に囚われたツルギを尻目に、レンとタロウは気絶した男を起こそうとしていた。

 

「この人から話聞けますかね?」

 

「ゾンビ化はショックで解けることもある、昨日のうちに気付け薬として薬局で香料を買ってきているからこれで起きればわかるだろう。」

 

気絶した男の顔にレンが蓋のあいた小瓶を近づけ扇ぐと

 

「がふっがふっ…!なんだ!くっせえ!痛え!」

 

「あ、起きましたね。」

 

「ゾンビ化も解けている、成功だな。」

 

「ゾンビ化…『先生』のやろう!俺を騙したのか!?クソが!絶対に殺し…がふっがふっ!本当に臭えぞ!」

 

「無理に息しないほうがいいですよ、たぶん鼻や喉の粘膜がさっきの戦闘で傷ついてるでしょうし…」

 

「おめえらがやったんだろうが、クソッ…」

 

「ふむ、記憶があるのか?資料によれば盲信の被害者には記憶がなかったはずだが。」

 

「盲信?あの伝説の?先生は盲信じゃねえよ。」

 

「先生って誰だよ、ちゃんと説明してくんない?」

 

ツルギが会話に参加を試みるが

 

「なんだこのガキ、偉そうな口を「誰がガキだって!!!???」うおっ」

 

ツルギが妖狐化した足で男の体を踏みつける。

「もういっぺん言ってみな?お前の体を踏み潰して巻き戻させてやるよ、何週間リセットされるか知らないけどなあ!」

 

「ひいっ!」

 

「そこまでにしておけ、脅しは無駄だ。」

 

「ちっ…命拾いしたね。」

 

ツルギは渋々妖狐化を解く

 

「それで、先生っていうのはどなたなんですか?」

 

「ほ、本名は俺も知らねえよ、昔は軍隊にいたとかいろんなところで知恵をつけたとかなんとかって、全身サイボーグのおっさんなんだ!俺たちに詐欺ビジネスへの勧誘をしてきた!」

 

「ふーん、それで?」

 

「しばらくは詐欺だの恐喝だのに付き合ってたんだけど、サツの取り締まりが厳しくなって、最後にでかい仕事をやってお互い縁を切ろうってなったんだが、そしたら急にあの人俺たちがまだ上手くやっていける方法があるって言って、変なアプリを使わせられたら…」

 

「ものの見事にゾンビになってこき使われてたと、情けない話だね全く。」

 

「最初は美味い話だと思ってたんだよ!書類とかなんとか、俺の家にあるから、それ以上のことはなんも知らねえんだ、信じてくれ!殺さないで!」

 

「私たち警察じゃないし、お前らが今後どうなるかはマジでどうでもいいんだけど…そうだな、とりあえず家の住所だけ教えてもらおうか。」

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