隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録 作:sakigake2004
「ゾンビ、やつらを押しつぶせ!」
先ほどまでと違い、物言わぬ怪物の集団がヨシノに迫る。
『『八岐大蛇』『支流』!」
◇ ◇ ◇
『八岐大蛇』ルーツ:日本神話
日本書紀、古事記に登場する頭が八つ尾が八つの巨大な怪物の事。
オライン日本支社販売商品の分類において八岐大蛇退治は世界各地の神話に描かれる邪竜・悪竜討伐の神話類型に属する一つ。
ヨシノとサブロウの解釈によれば八岐大蛇退治は異なる民族・部族の力を統制して治水を行う、国家による自然と人間の征服・統一を正当化する神話である。
アプリとしては水神として解釈された八岐大蛇に倣い、水の操作を可能とする。これまでヨシノ本人だけで使用するにあたってリミッターとして『劣化神話』の詠唱が組み込まれていたが、サブロウとの合一によりリミッターを外した。『支流』は水を射出する為の掛け声。
◇ ◇ ◇
『砕けろ!」
ヨシノのカバンに入っているペットボトルが全て炸裂し、浮き上がった中の水が怪物達に殺到する
「人形?というか脆いな?』
物理的に砕けた怪物達は木片として散らばっていた。
「『ゾンビ』の本来の使い方って人間に使うわけじゃないらしいし、あれが正解なんじゃない?」
「弱くなる正解ってなんなのかしらね。」
「というか四国さんそれすっごいね!もしかして完全に合体したの!?その腕とか私の従姉妹みたいでマジカッコいいよ!」
ヨシノの両腕は透き通った川に置換されていた。
『言ってる場合か!?まだ来ますよ!」
「あっ人格は別々なんだ!よーしじゃあ私もそろそろ奮発しちゃうおうかな!」
ラッキーがバッグからもう一つ観測函を取り出す
「いいけど…待って、それ日本で使える?というか使っていいの?」
「試して無いけどたぶんなんとかなる!法律は罰金数万円で済むからセーフ!「セーフじゃないわよ!」『
◇ ◇ ◇
『
シリアルナンバーなどが無く製造者や所有者を追跡出来ない銃の事。
製造用のデータを元に3Dプリント、あるいはインターネット上でパーツ単位で購入された部品を組み立てる事で作られる。
21世紀前半の社会問題であり、インターネットが庶民の役に立たなくなった今もテロリストや反社会組織の間ではデータや部品が出回っていて根絶に至らない社会悪の概念。
アプリとしてはイギリスの『幽霊』と一体化しており、紐づけた観測ツールを通して契約済みの武器の『幽霊』を呼びだせる。ちなみにオラインイギリス支社が一般販売する武器は全て『人を『幽霊』までしか殺せない』という安全措置が課されている。
◇ ◇ ◇
ラッキーの手元に現れたのは古臭い仕様の機関銃、よく見ると本来所有者や製造者を示していたであろう部分は強引に削られている。
「幽霊の重さは魂の重さ!すなわち21g!」
叫びと共に機関銃から大量の弾丸が放たれる
「どうしてそう無粋なエンディングばかり選ぶんだい!?」
『合理的ではありますけどね。』
「えっ誰?」
銃撃が止まる
怪物を模った人形は全て壊れ、怪人だけが立っている
「…怪人さんは避けて撃ったけど、無傷ってのは流石にラッキーの範疇じゃないよね。」
「ええ、貴女の観測函がめちゃくちゃなエラーを発してるのもラッキーじゃないわ。」
ラッキーとカース、いや、怪人も含めた全員の顔に緊張が浮かぶ
「まったく、本当にまったく…!見てられない!演者達で勝手にジャンルを変更するなんてどうかしているよ!おかげでバランスを取るために僕らが出る羽目になった!」
『結局こうなるなら、渡すだけではなく使わせればよかったですね。』
「スポンサー様…!」
怪人の背後から、狼の毛皮を被ったスーツの男とツノの生えた駅員風の服の女性がやってくる。
「あの女の人…」あれはやべーぞ』そうよね」人間じゃないどころじゃない、アイツがこの異界のボスだ!』
「マジ!?…えっじゃあもう一人はマジで誰…?」
「人に名前を聞くなら自分から…とは言うけど、まあ君たちの会話はチラホラ盗み聞きしてるし一応自己紹介しようか。」
「僕はフレデリック、『
『…これは私もやるんでしょうか?』
「やってくださいよスポンサー様」
『断ります。』
「そんな…まあいいです、それじゃ『盲信』君には申し訳ないが…フォークロア観測函、起動。」
「そんな、ご慈悲はまだ!」
『もう待ってられませんからね、そのまま戦って、そのまま死になさい』
「『グール』観測開始『
フレデリックが詠唱を終えた瞬間
ぱりん
「ぐうおおおっ!?」
怪人の手元から液体が溢れる
液体は怪人を押し潰し、遂には腕や足を穿つ
「そんな、私は、必死に!」
骨が軋み、筋肉が膨れ上がり、内臓が溢れる
「ねえあれヤバくない!?」
『ヤバいなんてもんじゃない!早く逃げるぞ!』どこへ!?」元々目指してた帰り道だ!具体的にはあの女の向こうの井戸!』
「ねえお姉さん、一応なんだけど帰らせてくれたりは…?」
『実のところ、思ったよりも貴女達は面白かった、カタシロ呪術事務所』
「僕は嫌だったけどね!」
『なので貴女達に免じて二つ選択肢をあげます。一つはそこの超能力者を置いていく事。』
「ええ…」
『もう一つは今から監督渾身の出来の怪物を倒してもらう事ですね。』
怪人から血が溢れ出すのが止まる
『グるルるル…!」
「よし完成した!名付けて…『因習への軽蔑』!現代社会が生み出した悪魔崇拝のデッドコピーである怪物だ!」
『最低の設定をどうもありがとう…それでは、挑戦開始ですよ?」