隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録 作:sakigake2004
「…というわけで、異界駅からは全員生還、ただし重傷者多数にイタケーも修理の必要あり。」
とあるビルの一室
「偽『盲信』の正体はなんとびっくり、『狐火』にコンタクトをとってきたオカルティスト、正確に言えばそれすら嘘の身分で本物はもうずっと前から夜逃げしていた、本物をわざわざ俺が捕まえたからこの辺は確定。」
「偽物の方の正体は元軍人、ザイル・楠瀬・フウ、界隈でも悪名高い詐欺師、保釈金を払って出てきてすぐに地元のチンピラどもを使った詐欺事件に関わっているのは確定だが、具体的な過程は不明。まあ警察に任せる範囲の仕事だな。」
「それでグール…まあとりあえず怪物化としておこう、怪物化した影響とおそらくは『レーテー』の影響で本人は重要なことを何も覚えていなかったが、最初からオライン三課を狙っての組織的な犯行だったことも確か。」
「問題点はアワブンラク事務所の四国ヨシノと超能力者の阿波野アイが『軽蔑』の被害者だったという共通点だ、10年前全国で起きた誘拐事件の被害者だった。書類の山をひっくり返した上で本人にも聞いたから間違いない。偽『盲信』だった時のザイルの発言やわざわざヨシノのトラウマを抉るようセッティングされた異界から、奴らは俺たちすら知らない軽蔑の事情を把握していた、あるいは把握したがっていた可能性がある。」
「そして目下最大の脅威、『異界駅』如月マガツ。オデュッセウスの話によれば前回…つまりアレクサンドリアでの世界危機の裏で糸を引いていた黒幕だ。これまで人前には決して姿を表さず、異界駅そのものを操って各地の犯罪組織や表向きの元凶であるシリウスとコンタクトをとっていたとのこと。最もオデュッセウス情報だから信憑性は微妙だが。まあ疑う理由もそれだけだ。」
「人間には使えず、第二種の人工知能でようやく観測条件を満たせる超高難易度魔術を使って俺たちを異界から追い出す…あんなのはどう考えても本質じゃない、戦いになればギリギリ向こうが有利だった。戦いを避けたのは…フレデリックの為か。」
「フレデリック、本名不詳、ダークウェブで趣味の悪い自主制作映画を販売して好事家達から人気を博してる得体の知れない男だ。作るものの多くはドキュメンタリーで、内容はもっぱら怪物に人間が殺されるパニック・モンスター映画。何個か見てみたが正直好みじゃなかった、映像制作技術はあるんだろうが…話が逸れたな、とにかく技術は確かだからなんらかの理由で協力してると見ていいだろう、少なくともフレデリック側は撮影のつもりらしいが。」
「それでまあ、なんだ、何か質問はあるか?はいヨシノさん早かった。」
「なんで私の病室で全員揃ってやるの?」
ヨシノの病室にはジュウロウ、アイ、カース、ラッキー、ツルギ、タロウ、レン、そしてライトが揃っていた。
「それは君が一番の重傷者で動けないからで、全員居るのは時間の都合だな。」
「じゃあ、そもそもどうやって助けに来れたの?異界なのに」
「助けに来たというか、
「ラッキーさんが観測函を井戸に入れろって言うので、僕が入れたんです。」
「そうそう!オラインの観測函のエラーはオライン側で監視してるって話。覚えてて良かった〜!」
「…そうかそうか、流石だな『ラッキーE』」
「え、私ラッキーだけど」
「すっとぼけるなよ、全部調べはついてるんだルシール・
「マジ黒歴史なのよそれ!」
「ついでに言うと君の従姉妹がイギリス支社に勤めてる事も、君たちのビザが旅行なのに現地で仕事しようとしてたのも知ってるぞカタシロ呪術事務所。」
「あんた、ちゃんと手続きしておくって言ったじゃない!」
「いやこれは愛理サンが後でなんとかしてくれるって言ってたし…!」
「ああ、そういう小細工はちゃんとされてたな、まあ俺たちなら握り潰せるんだが。」
「…なにが目的?そこまでする理由ある?」
「いや?取引するなら交渉材料が多い方がいいだろう?まあ元身内のやらかしなんてこっちも取引材料にはしたくないんだが。」
「取引?」
「それこそとぼけないでくれよ、数日後に始まる月の石のオークション、あれが目的だろ?」
「そこまでバレてんの!?ヤバ、オラインナメてたわ…」
「ウチで働いた事があるならそのぐらい覚えておけよ…それでカタシロ呪術事務所、見物程度にとどめるつもりだったろうが…アワブンラク事務所と一緒にオークションに参加しろ、参加費は出すし、月の石は俺達がさらに高値で買い取ってやる。」
「えっ!?ウチもですか?」
「参加する人数は多い方がいいというのが日本支社の意向だ、本来は二課総出の暴力でなんとかするはずだったんだが、ちょっと忙しくてな、三課四課と提携事務所を交えてオークションで買う事にした。」
「たらい回しにされた仕事をやらされる側にも…なったことなんてあるよなそりゃ、はあ
「はは…」
ツルギが悪態をつくが、タロウには苦笑いしか出来なかった。
「えーっと…愛理サンに聞かないと!」
「もう聞いたぞ、『ロンドンがまだきな臭いからしばらくそっちで頑張りな!』との事だ。」
「愛理サン!?」
「観念しろ、逃げ場はないんだラッキー。」
「そうみたいね、諦めて付き合いましょ。」
「呪理チャンまでそんな事言うなんて…!」
「本名で呼ぶな!」
「それにしても。」
「なんですかライト先輩?」
「どうしてツルギはアワブンラク事務所から超能力者を買わなかったんだ?」
「うーん…どうしてでしょうね。」
「まあ、なにかしら思うところがあるんだろう。」
「でも僕達で
「実にツルギらしい、まあセンパイも
「━━━━え?超能力者?そりゃ会社としては要るけど…部下に嫌われたくは無いからね、ちょっとは融通してあげるよ」
って言ってたし…ん?」
「そうでしたっけ?確か
「────俗に、新しい超能力者の価値は普通の『異常』1000回分だ。逆説的に、君達が他の手段で、それだけの価値を生めばいい。なに、我が儘の通し方ってヤツを教えるのも教育係の仕事だよ」
って言ってたような…」
「今お前なんて言った?」
「え、
「センパイの本名そんなしれっと憶えてるやつ始めた見たわ…こりゃ『凶星』候補も当然か…」
「???」
「いやーにしても四国さんが無事で良かった…本当に良かった…」
「社長、そんなに泣かなくても…」そうだぞ、みっともない』こら!」
「サブロウさんはもういるのが当たり前なんですね…」
「まあなんていうか、今回のことでちょっと気が晴れたし、こいつがいても良いかなって。」
「それは良かったです。」
「そういえばアイ君はどうするの?家に帰る?」
「ああそのことなんだが…うちの事務所で面倒を見ることにしました!」
「え、大丈夫なんですか社長?」
「うちの奥さんに話したら
「そこで家に返したら見殺しと一緒だよ!」
「って言われちゃってね、まあ手続きは済んでるし、しばらくは事務所で寝泊まりしてもらって…そうだ次のオークションにも行ってみようか。初仕事ってことでね。」
「オークションの場所ってどこでしたっけ?」
「えーっとね…ああここだよ!」
「大阪!」
「absence of evidence is not evidence of absence」
証拠が無いことは無いことの証明にならず、世界から否定されなくなった
かく言う私もその一人、隠秘を利用し隠秘絡みの厄介事を解決する、小企業の戦士というヤツだ。
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