隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録 作:sakigake2004
『フレデリック、生きていますか?』
駅員の姿をした鬼、如月マガツは倒れ伏したフレデリックに声をかける
「生きてますよ、全く急にとんでもない大魔術使うんですから…」
『あれがとんでもない?というよりこれが魔術?魔術とは全部こう無駄ばかり?』
「スポンサー様、普通の人間や怪異では時間そのものへの攻撃魔術なんて起動すらできないんですよ、教えた僕が言うのもあれですがね。」
『使う方法が無いものを作るなんて、貴方達人間は本当に理解できないですね。』
「僕に言われても困りますね…そしてバランスを取ってお膳立てしたセットが無茶苦茶だ。」
フレデリックの視界の先には強大なエネルギーによって溶け落ちた地面が広がっていた。
『もうしばらくしたらこの区画は放棄します、残していてはまた
「…そもそもどうやって追い出したんだい?」
『時間そのものを攻撃するというのは時間の停止、そして観測の断絶、即ち存在の死を意味しますが…彼ら
「異界そのものへ乗り込む能力があるんだ、実在証明に関してはとんでもないレベルの資産が注ぎ込まれてるだろうね。」
『ですので、彼らだけではなく彼らの接岸した空間も指定して時間を壊しました、私にしてみれば傷口を抉ったようなものです。』
「僕のまだ残ってる人間の感覚としては、ずいぶん痛そうですが。」
『化膿して死ぬのに比べればこの程度の痛みは誤差ですよ…おや?』
マガツの視線の先には、偽盲信が持っていた錫杖が落ちていた。
『ふむ?何かいますね?』
錫杖はガタガタと揺れ、短い放電を繰り返していた。
「観測函の暴走ですか、無茶な使い方をしたり使い手が急に死ぬとよくなりますね…いる?」
『あら、見えませんか?今こうしている間にもこの函の中では私の同族たちが産声をあげていますよ。大半はすぐに死んでいますが、少し見どころのあるのもいますね。』
「…何をするつもりで?」
『餌でもあげようかと、それに』
マガツは自らの手のひらに爪を立てて切ると、そこから流れ出る鮮血を錫杖に塗りたくる。
『ふむ?これでもダメですか?なら…』
自らの腕をもぎ取り、握りつぶす。
『あら、これはいいんですね?』
マガツが錫杖を振ると…
ばちゃん
マガツの目前に、血だらけで全裸の少女が現れた
「!?スポンサー様!?」
『へえ?成功するんですねこういうの』
『うえ、ぐえ、あうっあっ』
『ああ…最初は喋るの難しいでしょうね、ほら、私の口に触れて。』
『ひっ』
『怖がらないで…ね?』
少女が無言で頷く
『マザー』
『ま、ざ』
『マザー』
『まざー』
『マザー』
『マザー』
『そう、お上手』
『マザー!マザー!』
『そう焦らないで…』
「うーん?なにする気なんだいスポンサー様、ホームビデオを撮るなら僕は付き合わないよ。」
『まさか!この子も私と同じで
『ひっ』
『だから怖がらないで、貴女の様な不完全なものは怖がればその分消えていくのだから…さ、血を落としたら似合う服を着て、その後はチクタクマンから借りた軽蔑の遺産を弄りましょうね、貴女と四国ヨシノを見て確信しましたがアレにはまだ利用価値があります。』
「ふーん、まだ何かあるんだね?」
『貴方にも付き合ってもらいますよフレデリック、オークション前にもう一仕事です。』
「オークション、結局参加するんだね?葵女史はあんなに頑張っていたのに。」
『あれが頑張った程度でなんとかなるほどの金庫ではなかったのでしょう、さすがアメリカのエリア51と言ったところでしょうか。』
「…本当に知識が偏ってるよねスポンサー様は、何か理由でもあるのかい?まさか数年間閉じこもってたとか…?」
『…監督、逆に聞きますが、理由らしい理由は怪物に必要ですか?』
「こりゃ一本取られたな…確かに不要だね!」
偽物の夜空と偽物の村が黒の中に溶けていく
怪物達もまた、夜の闇よりも悍ましい黒の中に溶けていく
『そうだ、貴女に名前をあげましょう』
『因習への軽蔑…いえ『いんしゅーちゃん』…ふふふ、ずいぶんと可愛らしくなりました、ね?』