隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録 作:sakigake2004
「あーっ忙しい!」
とあるビルのとある部屋、書類の山に埋もれながらライトが叫ぶ。
「虚空に向かって叫ぶなよ『八咫鏡』」
「しょーがねえだろ忙しいんだから、山田さんは休みだし、イギリスから余計な仕事回された開発一課の皺寄せをたまたま暇な俺が受けた直後だぞ!」
「卜部課長はあんたに仕事回す時すごい顔してたけどね。」
「なんかわからんけど俺すごい睨まれてんだよな。」
「自分の隠秘の性質を考えた方がいいよ、それで好みになるわけないだろ。」
「…否定できない!」
「で、いまは何やってんの。」
「ザイルとザイルの身代わりに捕まってた偽隠秘使いとゾンビになってたチンピラ達の証言を擦り合わせてるんだよ、全員記憶消されててしっちゃかめっちゃかだけどな!」
「…手伝おうか?」
「ありがてえ、恩に着るよ『狐火』!」
「…一応聞くけど私ら同期だよな。」
「あんまり顔合わせた事無いけどな。」
「タロウが言ってた巻き戻しが苦手な先輩ってお前のことだったりする?」
「…たぶんそうだが、どうしてそれを聞く?」
「ツグミ先輩が私の事をどう思ってるか、わかるか?」
「あんまり顔合わせた事ないから細かくは…たぶんだが『申し訳ない』とか『不甲斐ない』とかそんなんじゃないか?」
「そうか…」
「まあ巻き戻しになんの感情も持たない人間なんてのは稀さ、よっぽど特異な環境で過ごしてない限りはな、そういう意味では卜部さんが連れてったパラグラヌム隠秘事務所なんて…」
「…どうした?」
「『これより先を言うと減給される』という文章を『八咫烏』が提示してきた。」
「もしかしてずっと起動してんの?よく正気保てるね。」
「意外と便利だぞ、道に間違わないし、包丁選びも間違わないし、戦うべき相手も間違わない。まあ調子こいてたらこの前ダークウェブの三回見たら死ぬ絵を連打されて山田さんと一緒に死にかけたが。」
「はあ…そういえば、ラッキーとカース…ルシールと呪理だっけ?はどうしたんだ?」
「金出してやるから大人しくしてろって言ったらホテルの飯食いまくってたよ、これが経費でオチるんだからオラインってすげえよなホント…」
「そういう話じゃなくて、アイツらの正体だよ、アメリカ本社広報に居たとか言ってただろ。」
「正体って言うほどのもんをアメリカの担当者が教えてくれなかったからなんとも、ただラッキーを連れてきたのはジェシカさんだとよ。」
「あんたが大ファンの?」
「そうだよ、顔採用とかなんとか、だいぶ怪しいけどな。」
「呪理は?」
「
「…そんだけ?」
「そんだけ。」
「カタシロ呪術事務所そのものは?」
「数年前まで稼働してたけど形代セツリが年齢を理由に休業してそれっきり、形代セツリ本人も8月末に持病で死んだ、だけど9月から急に再稼働してる。再稼働してからはまだ大した実績が無いのにオライン側の担当者がイギリス営業一課。」
「は?営業一課?」
「ああ!そうだそうだ、これが一番大事な要素なんだがラッキーことルシールの従姉妹ってのが…
かつ、かつ
わざとらしい音を立てながらロンドン霊界のひとけの無い道を歩く女が一人と…それを先導する人形が一体。
「…それで、既に世界危機で手一杯のイギリス支社に手伝えと?」
一人は金髪に目立つ赤いメッシュ、ライフル銃型の観測函と剣を携えた女。
『うちの子にこの仕事はちょっと荷が重いんだよ、もしなんかあったら妹に顔向け出来ないのさ。』
「愛理さん、老婆心ながら申し上げますが、若者というのは思っているよりも成長するものですよ。」
『私以上にババアな知り合いは両手で足りるぐらいだよ…誰がババアだって!?』
「自分で仰られたのに━━━━私達つけられてますよ。」
『やだやだ、変な事言っちまった━━━━知ってるよ、人間一人とゲテモノみたいな混ざり物の神が一柱だ。』
「…」
『…』
「…待っていても埒があきませんね、私が撃ちます。」
『妹が現役だった頃を思い出すね、あの頃はしょっちゅうこうだった!』
「その話、いつか詳しく聞きたいものですね、フォークロア観測函、起動。」
女性が観測函を壁に向かって構える。
「『
観測函がライフル弾を壁に向かって発射し
◇ ◇ ◇
『
幽霊銃はオラインからの商品購入時にさまざまなオプションを選択できる。
例えば銃の霊魂化による軽量化処理、例えば弾丸の無限化、そして弾丸の幽霊化。
弾丸の幽霊化は目標に命中するまで弾丸が幽霊化し、不要なダメージやエネルギー減衰を齎さないという画期的なシステム、しかし重力は無視できない。
そして一つ、オラインイギリス支社の社員は特定のオライン製品を直接幽霊銃として所有できる。それは銃に限らず…
◇ ◇ ◇
「…手応えがありませんね。」
『アンタにゃ見えてるだろうけど私にゃ見えないんだよ!』
「もう一発、いや無理そうですね。」
『こんな小細工はうんざりだ!』
壁を突き破り、竜人、いや竜神が現れる。
「ギリシャ支社から報告のあった
『もう一人いたはずだけど、どこへ行った?』
『知るか!それよりも
竜神の口から炎が吐き出される、炎は景色を歪め、地面を溶かすが…
「『剣』」
女性はステップを刻み、剣を構えて炎を受け流す
『…なんだそれは?』
「何って、『剣』ですけど…ねえ。」
その『剣』は『先端が毀れた直剣』だった
『ふざけるな!』
「ふざけていませんよ、そういう理屈なんです、でもそうですね…貴方レベルなら使ってもいいでしょう。」
女の雰囲気が変わり、左手と右足がうっすらと光る。
◇ ◇ ◇
幽霊銃の本質、それは『あらゆる
銃に限らない全ての武器のデッドコピーを可能にする、イギリス支社がこれで作ったのは…
◇ ◇ ◇
「聖剣、慈悲、正義、
━━━━
『ちょっと!私を巻き込むんじゃないよ!』
女の剣と銃が光り
「ご自分で避けてください。」
全ての悲劇を超えた一撃が放たれる
「『
人形の名は
カタシロ呪術事務所の屋台骨である『呪いの人形』
女の名はエレノア・
コードネーム『フェイルノート』
オラクル&インサニティ・カンパニーイギリス支社営業一課の課長。
イギリス支社最優最良最強の騎士にして