隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録 作:sakigake2004
追憶
日本。
ジャパン、ジャポン、ヤパン、世界統一言語を無視するならこの辺かしら。
皆様ご存知の通り、首都は
現代、二一〇二年の冬に於いて世界で唯一「現実ではない」レイヤーに主体を置く国家であり、列強として語られる国々の中でも最悪との呼び声が高い────あくまでおばさんが言ってたことで、私はそうでもないと思うけど────超大国。
とはいえ私は来たばかりでこの国の真実を知る機会がないし、普通に住む分には死がない安心安全のユートピア…そういう意味では
見慣れた摩天楼はどこの国でも変わらず、俗世と化した霊界との違いなんて分からない。来るまでの神隠しは面白かったけど。伝承に於いて霊が特別な存在だったのは「人ではないから」である以上、人間が好き勝手に霊体になれる現代の霊界に一体どれだけの特別性が残っているのか。
────ああ、自己紹介が遅れたわね。
私の名は
とある隠秘事務所で調査員と呪詛返し役を勤めている冴えない女よ…自分で言うと虚しいわね、今後はやめとこ。
一人しかいない同僚からは呪理チャンとか、あとはコードネームで『カース』とか呼ばれてる。
今の時代、国から国へ渡るのはそれ相応の準備が必要、特に仕事とかね。
他国に乗り込む理由が学業の片手間でやってる仕事のせいなのが特に困りごとよね。
「さて、普通の女子高生を呼び出して、何が目的なの?」
「こちとら花のJKよ!独身成人男性が近寄ったらそれだけで危ない話なんだからね!」
「普通の女子高生は機関銃とか持ってないんだよな…!」
オラクル&インサニティ・カンパニー、その日本支社が数多く所有するらしいオフィスの3階。ガラス張りの壁から第二都市の雑踏を一望できる部屋。
私達が相対している黒髪の男は、先ほどまで格闘していた書類の山を強引に押し退け、ようやく視線を此方と合わせた。
「…じゃあ、話し合おうかカタシロ呪術事務所。と言っても君たちは首を縦に振れば良い。次の…今年最後の競りでオラインが絶対競り落としたいモノと
彼は、オラクル&インサニティ・カンパニー日本支社営業二課課長補佐。
「人?人身売買ってこと?」
「大阪市
「それで、競り落としたいモノは…なんて、茶番だよね、月の石でしょ、流石にわかってるよ。」
「じゃあその月の石がどこの何なのか、ルシール、君はわかってるか?」
「…やばあ、忘れてる!」
「よし、じゃあジュリ、君ならわかるな?」
「アメリカ政府によって推進された月面開拓計画の残骸。月面が魔境になっててこれだけしか持って帰れなかった曰くつきのアイテム、類例の無い聖遺物、つまり超貴重な観測対象、だけど…」
「だけど?」
「人は知らない、おばさんは何も言ってなかった。ただこのオークションを見てこいって、それだけだったはず。」
「ふむ、予想通りの知識量だな…じゃあどうしてアメリカのお宝が日本にあるかわかるか?」
「闇市場だし、転売とか横流しじゃないの?」
「ある意味正解だが、違う。」
「えーじゃあ何?」
「…それを教えるには一つ条件がある、今回の本題だ。」
「何?」
「君たちの経歴を改めて開示しろ、日本支社とアメリカ本社のこの件に関する連携は現状うまく取れてない。本社の協力が得られない以上、石と人を競り落とすための仲間である君たちの情報は日本支社の保安上全部把握しとかなきゃならん。言えないならオークションへの参加は無しで強制送還だ。」
「…ん〜どうする呪理チャン、これ言わないと私達無事に帰れないやつじゃない?」
「まあタダ飯食わせて帰らせるわけには行かないかもな!」
「あれそういう罠だったわけ!?」
「素面でステーキ食ったやつの驚愕とセリフじゃないだろ…!?」
「…わかった、説明するわ。どうせ喋って困るようなことは無いし。」
私達の、どうしようもない日常の始まりを、私は語ることとした。