隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録 作:sakigake2004
「本当に近いね、道跨いですぐじゃん。」
学校から歩いておよそ五分。私達はごく普通の家の前に立っていた。
「これが聖遺物ブローカー界の重鎮の家に見える?」
「うーん、見えないね!」
「でしょ。父さんは居ないみたいね、門は空いてるけど玄関は閉まってる…あれ?」
ポストに手紙?今時珍しい。
「しかも蝋で封がしてある、凝ってるわね…」
「もしかしたら考古学者仲間の手紙かも。」
「そんなわけ…
ピコン♪
メッセージの通知音、私への。
「誰かしら、あ、父さんからだ。」
「…ねえグレイさん。」
「あ、ルシールでいいよ、さん付けもいらない。」
「…じゃあルシール、貴女の言ってた
「あれ、マジで?」
「父さん曰く事務所があるって、私は知らないというか覚えてなかったけど。」
本当に覚えてないんだよね、この住所のあたりは行ったことあるはずなんだけど。
「そんなに遠くないし、もし時間があるなら貴女も来てみる?」
「行く行く、時間もまだまだ有り余ってるし!」
「じゃあ行くわよ、バスに乗って10分ぐらいのところだから。」
「ここが…事務所?」
私たちがついたのは表通りから外れ、立ち並ぶビルの隙間、薄暗い日陰の端の端にある小さな物件だった。
日照権とか大丈夫なのかしらここ。
「でもちゃんと看板が出てるよ『カタシロ呪術事務所』って。」
「そうね、手紙はポストに入れておけばいいって話だけど…」
ピンポーン♪
「すいませーん、誰かいますかー。」
「ちょ、あんた何してんの。」
「いやだって、事務所って言うぐらいだからおばあさんの同僚とか部下とかいるかもだし。」
「そりゃそうだけどいきなりやって来て開けてくれるるわけ
がちゃり
…開いたわね。」
扉が、勝手に
扉の向こうは薄暗くて、何があるんだかわからない不気味な状態で
「行ってみよっか!」
「ちょっと!」
薄暗い中からなんとか手探りで電気をつけ、中を見回してみたが
「廊下、長くない?」
進んでも進んでも薄暗い廊下、かれこれ五分は窓もドアも無い廊下を歩いている
「というか入口すら消えてんね、おもろ。」
「もしかしてそういう警備システム?私たちが勝手に入ったから?もしかして呪術事務所だけに呪い?」
「ん〜?でも向こうから開いたわけだし、警備システムとしては変じゃない?」
『警備システムと呪いは合ってるから三分の二正解、勝手に入ったから起動したわけじゃないから三分の一は不正解、ただし疑問を持てたから及第点、具体的には100点中70点かね。』
「誰!?」
声のした方を見ると、そこには…
「子供?いや人形?さっきまで無かった…よね。」
120cmぐらいで、セーラー服?の人形が立っていた。
『わたしゃ人形だよ呪理、久しぶりだね。』
「「しゃべった!動いた!」」
カタカタと人形の口が動き、そこからは女性の声がした。
『呪いの人形だよ、そりゃ喋るさ…もしかして私のことを覚えてないのかい、親戚なのに。』
「親戚………もしかして
『大正解、ただし忘れてたのとおばさん呼びで減点だね、具体的には100点満点中50点さ。』
「愛理サン…って誰?」
「おばあちゃんのお姉さん、たまに話に出てきた、内容は子供の頃に面倒をみてくれたとかそういうやつだけど…人形なのは知らなかった。」
『わたしゃあんたのおしめだって変えたことあるんだよ、まあ憶えてないなら仕方ないけど。』
「えーっと…愛理サン、ちょっと失礼ながら聞きたいんだけど貴女って
『分類で言うなら実在隠秘存在、私は怪異とか物怪の類さ、人間に作られてるけどね。』
「「へー…」」
二人して感嘆を…あれ?ルシールも?この子の方が詳しいと思ってたんだけど。
『立ち話もなんだし、座るよ』
おばさんが手を振ると、廊下が縮み出した。
「ワーオ、どんだけ歩いてもつかなかった出口に着いちゃった。」
窓がないことを除けばいかにもオフィスらしい部屋にたどり着いた私たちは、少し埃を被ったソファに座った。
『…そういえばセツリは、妹はどこだい?もうここには一週間も来てないんだけど、あの子がいないと掃除をしようにも私じゃ手が届かなくてね。』
「…おばあちゃんは死んじゃったよ、一昨日」
『なんだって!?』
知らなかったんだ…
「おばあちゃんが心臓に持病抱えてたのは知ってる?」
『そりゃもちろん!妹のことは生まれた頃からの付き合いでだいたい知ってる、もう先が長くないのもね…だけどまだまだ死ぬには早かったはずさ。』
「だけど発作があって、救急車がついた頃にはもう手遅れで。」
『それであれかい、結局延命処置も虚しく死んだってのかい?』
「…そうです。」
おばさんの表情は変わらないみたいだけど、頭を抱えているので困っているのは伝わってきた。
「おばさんはどうするの?」
『人形は一人で生きていけないのよ、人間でもそうだけど、あとおばさまとお呼び!』