隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録 作:sakigake2004
『それで呪理、そもそも何の為に来たんだい?まさか妹の訃報を伝える為だけじゃないだろう?』
「あ、それは…えーと、まず私のクラスメイトのルシールがおばあちゃんについて聞きたいって言ったのが最初なんだけど。」
『今時珍しいね、最近はこの事務所も開けてないってのに。』
「従姉妹が紹介してくれたんだよ、自分が知る中でロンドンで一番実績のある事務所だって。」
『ロンドン一ねえ、嬉しい事言ってくれるじゃないの、ちなみに従姉妹の名前は?』
「エレノアだよ、エレノア・グレイ。」
『…もしかしてその子のミドルネームは
「よくわかりますね!もしかしてお知り合い?」
『かもね。あんた、ルシールって言ったね、フルネームは?』
「ルシール・
『エラー、エラーと来たか、呪理や、今更こんなこと言いたかないがその子と付き合うのはやめな。』
…???
「え、急に何?」
急すぎて反応できなかった。
「ちょっと、初対面のJKを名前だけで追い出すなんてひどくないですか?」
『そんなミドルネームつけてる家でグレイって言ったらアメリカの
「家の事なら大丈夫、母さんが死んでからは父さんともども本家から縁切られてるから!」
『…それはそれでダメだよ、だいたい何さエラーって、30年前の
「アノマリーってエリーおばさんのこと?私の知る限りでは普通の人だけどなあ。」
『はあ、頭痛くなってきたよ、そんな機能は搭載されてないのにね。』
二人して私の知らない話してる…なんか空気悪くなってきたし…話題変えないと。
「そうそう、もう一つ用事があるんだけど。」
『何だい?』
「父さんがこっちに手紙を持っていってくれって、そもそもおばあちゃんの家のポストに入ってたんだけど。」
そう言って私はバッグから蝋で封のされた手紙を渡す。
『なるほど、昔嫌がらせがひどい時期に住所表記を家と事務所で分けたんだけど、今となって仇になるとはね…こうやって気取った送り方をしてくるのは大抵オラインのイギリス支社、それも開発課だよ、憶えときな。』
「なるほど。」
おばさんが封を開け、手紙を読み出すが、途中から唸り出した。
『うーん、面倒なことになったね。』
「もしよければ内容を聞いても?」
『預けてたセツリの仕事道具が一つ行方不明なんだよ、フォークロア観測函ってやつ。』
「そういうの預けちゃうんだ。」
『市販はともかくオーダーメイドのフォークロア観測函なんていうゲテモノのメンテナンスなんて、使用者本人ならまだしもそれ以外はオラインしかできないよ。』
「…ルシール、この話題勉強になってる?私全然わかんないんだけど。」
こちとらまだ進路が決まってない以外は普通の高校生、アメリカの富豪がどうとかオラインがどうとかは浮世離れしてて頭に入らないんだよね。
「めちゃくちゃなってるよ!こういう基礎教養みたいなの私さっぱりだから!」
『なんだいルシール、あんた
「えーどうして。」
『この業界は割に合わんことが多すぎるよ、特にうちみたいなトラブル解決は特にね。逆恨みにあって見ただけで死ぬような呪いのアイテムが送られたことなんて山ほどあるのさ、まあ妹は全部送り返してたけど。』
「へー…」
思ったよりも物騒な話題が出てきた。
「でもでも、イギリスって死んでも死なないんでしょ?なら大したことないじゃん。」
『ルシール、一応忠告しとくけど外でそういうこと言うんじゃないよ。』
「どうして?」
「…死ぬよりも酷い目に遭うから。
これはテレビで見たのだけれど、死なないということに調子をこいて破産するのはイギリスあるあるらしい。
死なないというのはあくまでも魂や精神の話で、肉体は現実的な苦痛を伴って死ぬ。
肉体の替えがあれば蘇れるけど、そんなすぐに替えが用意できるのはお金持ちだけで、基本は保険に入ってないと永遠に肉体がないまま彷徨うことになる。
そうやって彷徨ううちに魂や精神が擦り切れて…
最後は消えて、それでおしまい。」
「つまり、死ぬのはなるべく回避したほうがいいってことだね!」
「そういうことよ。」