隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録 作:sakigake2004
「よし決めた!」
「何を?」
「愛理サン!私をここで働かせてください!」
『断る。』
「ええ〜」
『うちは今社員もバイトもパートも募集してないよ、そういうのは責任者の…セツリはもう死んだんだから…
「え、うん」
「はーい…」
ルシールを置いて、私とおばさまはあの暗い廊下に出た。
『娘であるあんたから見て、戒理、つまり自分の父親ってどう見えてる?』
「えーと…頼りない人かな、仕事はできるんだけど家のことになると抜けてる感じ。」
今日だって手紙を祖母の家に置いてきたわけだし。
『だろう?あの子は今の仕事で手一杯で、この事務所のことなんてとてもじゃないが任せられない。』
「他に雇ってる人とか…」
『いないよ、セツリが歳食って頻繁に休むようになってからはほとんどやめてもらったし、最終的にはみんな独立したさ。』
「最終手段としておばさまだけで切り盛りするとか…」
『私は人形だよ?人権ってものが無いのさ!』
「そんな胸を張って言わなくても。」
『あんた結構ズケズケもの言うね、若い頃のセツリにそっくりだよ。』
「そうなんだ。」
私は歳をとってからのおばあちゃんしか知らないから、私みたいに喋るおばあちゃんがイメージできないなあ。
『ともかく、戒理に任せらんない以上はセツリの遺言が重要なんだけど、私はその内容を知ってるんだよ、なんせ一緒に書いたからね。』
「…なんかうっすら嫌な予感がするんだけど。」
『大正解だよ、もしセツリになんかあって遺産の配分が決められなかった時は私の、つまり形代愛理の判断でそれを割り振ることにしたんだ。』
「もしかして。」
『呪理、あんたがこの事務所を受け継いでくれないか?そうでないと私が路頭に迷っちまうんだ。』
「いやいやいや、急だよ、急すぎるよ、だいたい私呪術のじの字も知らない学生だよ?」
『私の見立てによればあんたには才能がある!』
ええ…
『戒理には受け継がれなかったセツリの、もっと言えば母さんの持ってた呪いの才能がね。』
「母さんって、ひいおばあちゃんってこと?」
『そうだよ、私の生みの親、作り手さ、呪いの人形が無から生まれるなんてのはそうそうないよ。』
「いやあ…」
それにしたって無理があるんじゃないかな、経営とか学んでこなかったし。
『じゃあこうしよう、あの子、ルシールと一緒にセツリの遺産である観測函を探すんだ。』
『うまいこと二人で見つけられたらこの話を進めていずれあんたにこの事務所を託す、見つけられなかったらこの事務所の引き取り手を私が探すよ。』
「…それ私がサボったら意味なくない?」
今のままだと私絶対サボるじゃん。
『じゃあこうしよう。』
そう言うと、おばさまは扉を開けてルシールに
『ルシール!もしあんたが呪理と一緒にセツリの観測函を見つけられたら雇ってやってもいい!』
とんでもないことを告げた!
「え、マジで!?」
「ちょ!?」
この人、事務所のために初対面のやつ巻き込んだ…
『ああ、なんならあんたの動機と成果次第で弟子にしてやってもいい。セツリの話もいくらだってしてあげよう。』
「うおおお!イギリスに来てから一番のラッキーだよ!燃えてきた〜!」
「頭痛くなってきた…」