隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録   作:sakigake2004

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6皿目

『だけどね、今日はもう遅いから二人とも帰りな。』

 

「え〜っ!ようやく始まったぞ!って感じだったのに。」

 

『補導とかされたら弟子どころじゃないよ、ほら帰った帰った!』

 

おばさまが手を振ると、家具も壁も消えていき、気づけばあの薄暗い日陰に放り出されていた。

 

「放り出されたみたいね…これは連絡先?」

 

私たちの手には電話番号と思しき数字が記された紙が握られていた。

 

「ふふふ、一周回ってやる気出てきたかも、私の才能を見せつけてやんなきゃ。」

 

「あんたがおばあちゃんの遺品を見つけたらこっちは困りそうなんだけどね。」

 

「何それ、さっきの内緒話の内容?」

 

おばさまがルシールから離れたのは事務所の事情に関わらせるか判断してる途中だったから、よね…つまり、巻き込むのが決定した今は話しても大丈夫…な、はず。

 

「…そうよ、あんたと私で遺品を見つけたら私がこの事務所を継ぐんですって。」

 

「マジ!?事務所代表形代呪理ってこと!?」

 

「まだ代表じゃないわよ!?色々急過ぎるし…」

 

「急じゃなかったら良いって事?」

 

「…どうなのかしらね。」

 

結構深く切り込んできたな…

 

「もしかしてなんか進路とか決めてある?」

 

「それが、無いのよね…だからおばさまの話断るのもちょっとしのびないというか、なんというか…なんでこんな話してるのかしらね、私達今日が初対面なのに。」

 

「いいんじゃないかな、私の従姉妹だってほぼ初対面なのに私をアメリカからイギリスに連れ出してきたしさ。」

 

「そうなのかしら…?」

 

「あ、そろそろバスの時間だ、私の家結構遠いから乗らないとまずいかも。」

 

「じゃあ、お別れってことね?」

 

「ノー!こう言う時はまた明日!だよ。」

 

「…また明日。」

 

なんだか恥ずかしいんだけど、なんなのかしら

 

「オッケー!またね!」

 

ルシールはそう言うとバス停の方向に走り…戻ってきた

 

「私の連絡先教えるの忘れてた、はいこれ!」

 

連絡用アプリの申請を送ってきた。

 

「はい、認証したわ。」

 

ルシールのアカウント名は『ラッキー』だった、普通ね。

 

「『マジック』って(まじない)だから?」

 

「そういうのは思いついても聞かないのがマナーよ。」

 

「あはは、じゃあ今度こそまた明日!」

 

「また明日…」

 




 

疲れから泥のように眠っても、結局朝はやってくるもので

当然学校生活も始まるものなのだが…

 

「ねえねえグレイさん、アメリカではこのコスメが流行ってるって本当?」

「あのヒーローって実はイケメンだって本当?」

「アメリカでは何してた?そもそもどうして転校してきたの?」

「グレイさん!」「グレイ!」「ルシールさん!」

 

ルシールはクラスどころか学校中から追われていた。

確かに見た目はいいし、外国からの転校生だし、喋りはかなりユーモアがあるし、そりゃ人気者にもなるだろうけど…昨日はあんなにじゃなかったのに。

ルシールの席は私の隣、それに一日中人が寄ってくるものだからうるさくてうるさくて…

 

「朝からずっとこの喧騒は…キツイわ…」

 

休み時間、昼食のパンを噛み締めながらぼやく。

 

「大変だねえ…」

 

「あんたの招いた現象でしょうが!昨日の今日でなんでこうなるのよ!?」

 

当事者のルシール本人がどうしてそう不思議そうな顔ができるのよ。

 

「うーん、朝に隣のクラスのイケメンの落とし物拾って、それがおじいさんの遺品とかでめちゃくちゃ激しく感謝されたからそのせいかなあ。」

 

「何その、何???」

 

学校生活二日目にしてぶっ飛びすぎじゃない?

 

「その直前に先生にしばらくバッグ預けてたからそのせいだと思う、これがないと私ラッキーすぎるんだよね。」

 

めちゃくちゃにキーホルダーをつけてデコられたハンドバッグを指差す。

 

「…古い雑誌といい、ミドルネームの話といい、そのバッグといい、貴女って何者?」

 

ずっと気になっていた事だ、自己紹介はしたけど名前ぐらいで詳しい事は何も話してなかった、はず。

 

「私はルシール、ルシール・E・グレイ、運の良さには自信があるけどそれ以外はただの女子高生だよ。」

 

「本当に?」

 

「む、疑ってるね?じゃあ実演してあげる!」

 

そう言うとルシールはバックからスマホを取り出して

 

「フォークロア観測函、起動」

 

『聖骸布』観測開始。」

 

現代の魔法の呪文を唱えた

 

「そうだね、まずは…そこの自販機!」

 

自販機に小銭を突っ込み、缶ジュースを買って…え?

 

がらがらがら

 

何あれ、すごい勢いでジュースが落ちきてる…

 

「イェーイ、ジャックポット!」

 

「いやいやいやどう考えても故障でしょこんなの!?」

 

「故障じゃないよ?ここに書いてあるじゃん『あたりが出たらもう一本』って、しかも期間限定キャンペーンで何回でも出る。」

 

「だからって…」

 

ルシールの手元には缶ジュースが11本はあった、こんな自販機のキャンペーンで10連続なんて天文学的確率とかそんなレベルで済むわけがない。

 

「あとは…そこのゴミ箱の上に置いてある宝くじ、たぶん全部あたりだよ、流石に最低値だろうけど。」

 

「は?あたりじゃないから捨てられてるんじゃないの?」

 

「ノー!それを捨てた人が近眼で数字を見間違えてるんだよね。」

 

拾って、宝くじの公式サイトを見てみると…全部五等だけど当たってる…10枚も…

 

「…なんでわかるの?仕込み?」

 

『ラッキー』だから。」

 

「意味がわからない…」

 

「そういうものなんだよ、隠秘(オカルト)ってね。」

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