隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録 作:sakigake2004
「オカルト…というか貴女、観測函持ってたのね。」
「そりゃもうね、うちの本家なんかでは個人用隠秘観測ツールを持って無い人の方が少ないぐらいだよ。」
「はあ、そのツールとアプリがあればすぐにでも探し物が見つかりそうね、頭上から降ってくるとかでさ。」
「いや?そう都合よくはならないかな。」
「どうして?幸運ってそういう事じゃないの?」
「幸運なのは幸運なんだけど、幸運という大雑把な括りでみたら世の中に幸運っていっぱいあるんだよね。この缶ジュースもその宝くじもそう、誰も見つけられなかっただけ。このバッグの観測対象があるとみんなが見つけ損なった幸運がなんとなくわかるようになるの、そしてこの『聖骸布』のアプリを使うとそれが鮮明になる。」
◇ ◇ ◇
『聖骸布』ルーツ:エルサレム、トリノ、宗教
キリスト教一部宗派における神の子、あるいは預言者として知られるイエス・キリストの遺体を包んだとされる謎多き布。正体を探ろうとしたものは多いが二十二世紀になってもそれは解き明かされることはなかった、解き明かさなくてもいい時代になってしまったとも言える。
聖骸布に限った話ではないが聖遺物への崇敬は時として所有者への尊敬という俗世利益を与えることがある。このアプリはそれらを論拠として観測対象が持つ比較的無害で有益な属性を使用者へと付与する効果を持つ。ルシールの場合は彼女が持つ観測対象に共通する『幸運』の属性を付与している。
◇ ◇ ◇
「つまり、そもそも探し物が空を飛んでないなら…」
「落ちてくるわけ無いってこと。」
「微妙に不便ねえ…いや観測函が空飛んでるってどんなシチュよ…それに私としては拾えない方が有難いし…」
「え〜一緒に探してよ呪理チャーン…」
くっ、なんとかしてこの状況を誤魔化す方法は…
「…あ、そろそろ休み時間が終わるわよ。」
「ほんとだ、急ごう!」
よし、なんとか誤魔化せた
「後で改めて今後の計画話すからね!」
…誤魔化せてなかった!
「というわけで、愛理サンに連絡してみよう!」
放課後、ルシールは当然のように私の隣に立って端末を弄っていた。
「あの電話番号ね。」
「ピ、ピ、ピっと!」
るるるるる…るるるるる…
『はい、こちらカタシロ呪術事務所、ご用件をどうぞ。』
「もしもし愛理サン?ルシールです。今事務所の前にいます!」
『あんたか、そっちからやってくるって事は観測函探しをやるんだね?』
「そうですそうです!呪理チャンはあんまり乗り気じゃないみたいだけど。」
『だろうね、しかし嫌でもなんでも探してもらう、とりあえず観測函が失われた経緯について話すよ。』
おばさまがそう言うと扉が開き、私たちは再び事務所に入った。
今回は廊下の長さは普通で、何事もなくオフィスに着いた。
『そもそも観測函はセツリが発作で倒れる直前にオラインから自分で回収してたんだよ、メンテナンス後の確認をオラインの担当者が追加でやる事を打診しようと追いかけたけどセツリを見失って、その後は発作で倒れてるところを見つかって…そう、倒れていたセツリの持ち物にその観測函はなかったんだ。』
「おばあちゃんが失くした?」
『あるいは誰かがセツリからスったか、もっと言えば強盗にあったか…あの子に外傷は無かったとカイリから聞いたから強盗の線は薄いかね。』
「落とし物探しじゃなくて泥棒追跡の可能性もあるって事か…」
『もしタチの悪いやつが拾ってたらオライン側の責任問題になるって担当者は慌ててたよ、ありゃ下っ端だね。』
「観測函の見た目は?」
『スマホ一体型だよ、呪いを跳ね返す鏡としてピッカピカに磨かれてるね。』