隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録 作:sakigake2004
スマホ、厳密にはスマホ一体型の観測函を電源をオンにしてみると、認証画面やら何やら。
おばさまがそれをスラスラと弄って…人形の手なのにどうやって感知してるんだろう?とにかく手順を済ますと、そこには『丑の刻参り』の文字が。
「夜中の二時半とかに釘を打つ呪い、だっけ?」
うろ覚えだからおばさまに尋ねてみる。
『メジャーな儀式はそうやって時間を区切るんだが、一昔前からこの手の呪術アプリは時間を限定しないで形代を殴ればそれで済むようになってる、呪いたい相手がその時間になるまで大人しくしてると思うかい?わたしゃ思わないね。』
「それにしたって手抜きでは!?」
『祈る神も抜きに鬼となって人を呪う呪術が成立する時点でオライン製品ってのはおかしいし手抜きだよ、むしろ手間抜きと考えて喜ぶほうが健康的だね。』
「言えてる〜」
おばさまが断言してルシールが同調する、コニーさんはニコニコと微笑みながらこちらを眺めていて口出しはしてこない。
『手間抜きの代わりに火力は大したことないし、呪詛返しも簡単にされちまうから、初心者向けってわけでもない。まああんまり強いのを渡すと失敗した時に恐ろしいことになるから…いざとなればその金槌で殴りな!その方が強いこともある。』
「本末転倒…!?」
カルチャーショックというか、一般常識かどうか怪しいオライン製品に関する驚愕の事実と本末転倒な可能性にぶつかりながら、私はこのアプリを試してみることにした。
「フォークロア観測函、起動」
現代の魔法の呪文を唱えると、観測函が振動した気がした。
「『丑の刻参り』観測開始…これでどうすればいいの?」
起動には成功したみたいだけど、いまいちピンとこない。
『この部屋で殴っていいもの、なんかあるかい。』
「でしたらこのクッキーとかどうでしょうか?」
コニーさんが少し焦げてとても硬そうな、茶色で丸いクッキーを手渡してきた、手で触ってみても割れる気がしないぐらいカチカチ。
「自分で焼いてみたんですけど失敗してしまいまして。」
『ちょうどいいね、そのクッキーを見据えながらそこのクッションを殴りな。』
「???」
おばさんが指差した先には比較的新しいクッションがあった、茶色で丸いふわふわのクッション。これを殴ってもダメージとか入らなさそうだけど。
『いいからやってみな』
「わかった、えいっ!」
グシャ!
クッションを殴ったのになった音が、グシャ?視界の先に据えていただけのクッキーをよくみると
「おおー、粉々だ。」
「ほんとだ…」
見れば、焦げてカチカチだったクッキーは上から何かで何かで叩きつけられたみたいに砕け、潰れていた。
『こういうことだよ、外見の照応が攻撃でも適応されるという事実を観測函によって観測するんだ。』
「色と形しか合ってないのに。」
こんなので殴ったことになるんだったら、実質なんでもありではなかろうか?
『これも手間抜き。形が似てれば似てるほど上手くダメージが乗るけど、人間みたいな複雑なのはこれで殺すのは難しい…護身用にはちょうどいいだろう?』
一応の条件とか限界はあるんだ、ちょうどいいかどうかは…
「そうかな…そうかも?」