隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録 作:sakigake2004
「アイリさん、ジュリさんとルシールは大丈夫そうですか?」
カタシロ呪術事務所、そのソファに座るのは『フェイルノート』
オラインイギリス支社最優と謳われる女傑。
『「私は骨一本折れたけどももう治った」だとさ、痛いのはどうしようもないだろうに、お宅どんな教育してるんだい?』
対するは呪いの人形、
「そう言われると困りましたね。私が干渉するのが遅すぎたのは確かなんですが、それにしたってあの子の
『自分を襲ってきた同級生を返り討ちにしたんだろう?あの子が追い求める強さとして十分じゃないか。』
「惨状を見ましたがあれは返り討ちなんてもんじゃありません、ほとんど本物の天罰です。だからこそ彼女は満足していないし、本家も彼女を放置しているのです、『ルシール自身の実力などでは決して無いから』」
『天罰ときたか、それならうちの子よりも『カインの印』の担い手としてふさわしいかもね…いやダメだ、流石に危なっかしすぎる。』
「アレ、エルサレムからの流出物でしょう?できることなら本社に返却を願いたいところですが…まあ本社にだって相応しい使い手がいるかは怪しいですからね、宝の持ち腐れになるなら誰が持っていても同じでしょう。」
『…エルサレムの話、私にしてもいいのかい?オラインでは禁句の類だろうに。』
「日本で『シンジュク』を探すのに比べればこの程度の禁忌大したことはありませんよ。」
『…それを知ってるのはもうなんでもいいけど、ありゃ最低の場所だよ、比較するんなら気をつけた方がいい。』
「ふむ、本当に行ったことがお有りなんですね?」
『カマかけたねあんた…消える前に一度、消えた後に一度、帰ってきてから一度、全てにおいて日本という国の尊厳の死を見たね。』
「そこまでですか、尊厳という意味ではどこの国も変わりませんね。」
『それで、自分でルシールに連絡せずにこっちに来たのは何か言いたいことがあるからなんだろう?しかもコニーがいないタイミングを狙って来たんだ、よっぽどの事だね?』
「流石にお見通しですか。」
『当たり前さ、私が何年
「そうですね、まあ大した話と言えるか微妙ですが念には念をという事です。」
そう言って、フェイルノートは右腕に埋め込まれた個人用電脳端末を操作し、空間に投影されたホログラムで画像を見せる。
「一つは昨日のティフォン、結局逃走したようで行方不明、それなりにダメージを与えた確信はありますがあのレベルならすぐに復活するでしょう。」
フェイルノートは悪神の画像に指を重ね、別の画像を表示する
「そしてもう一つ…」
「よーし!ついに日本に着いたぞー!」
輝くような金と銀の入り混じる長髪を振り回しながら、赤い目の少女は叫ぶ
「空港で叫ぶなよ、こっからまだ色々手続きがあるってのに。」
色素の薄い茶色の短髪の青年が、少女を宥める。
「だってさ、ずっと座ってて退屈だったしさ、『メデイア』は牢屋だしさ、ロバートさんは返信返してくんないしさ。」
「依頼者と楽しくメールすることってあるか?」
「私はあるけど?」
「…あー懐かしいなこの空気、二回目なのに前と同じ嫌な予感がする!はあ…。」
青年は少女の言葉を半ば無視して、大きくため息をつく
『『アルゴス』手続きをさっさと済ましてしまいましょう。この子の言うことは無視してかまいません。』
少女の左手に埋め込まれた端末から、女性の声が聞こえる。
「はいはい…わかりましたよ『ヘラ』様。」
『態度が悪い、減給申請を…』
「それってパワハラなんじゃ無いっすかねえ!?いやはい、やりますやります!」
アルゴスと呼ばれた青年は慌てふためきながら走って行った。
「ふ、カッコ悪いけどさ…それがいいね…!」
少女は腕を組んで青年を眺めていた、その目には妙な興奮が宿っている。
『あの男はやめなさい、彼に告白した職員は全員二ヶ月で離縁したわ。』
「えーあのダメさがいいんじゃん!それにヘラだってさ、ポンコツな妹のこと大事っしょ?」
『…タメ口、およびセクハラ、メデイアに連絡の後エーテルビールの支給を停止。』
「ごめんなさい!」
『わかればよろしい、全くアテナといい貴方たちといい手のかかる…』
「おーい『ネフィリム』!手続き済んだから早く行くぞ。」
遠くから、青年が手を振っている。
「はーい、じゃあ行きますか!ロバートさんのメモによると今度壊すのは…」
ネフィリムがホログラムを弄るとそこには
「えーと…『
「アメリカ本社からのリークです。オークションでの月の石売買を阻止するために日本に向けてアメリカ政府からの担当者が派遣されました。所属はアイテール・インダストリー、人数は二人、コードネームは『アルゴス』と『ネフィリム』…ネフィリムに関しては十中八九、私とルシールの叔父であるロバートからの刺客です。」