隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録 作:sakigake2004
二一〇二年十二月十七日
場所は第二都市、かつての名を大阪府…の地下、厳密にいえば運命市場の外縁部。
ここ数日間第二都市にいるが相変わらずここは苦手だ、というか苦手じゃなくなる気がしない。
「湿気てるし、カビ臭いし、薄暗いし、何を思ってこんなところで商売してるんだよ…」
ひとりごちたところで…
「こちとらせっかくオラインに就職して営業三課の課長にまでなったってのに…こんなところでぐだぐだ…はあ」
誰かが返答してくれるわけもなく…
「つーるぎちゃん!そんな怖い顔してたら老けちゃうわよ!」
…返答が来た
「…誰も居ないとはいえ外ではコードネームで頼みますよ『
私の目の前にいる、吹雪をあしらった水色の着物を着た灰色の髪の美女は私の先輩にして部下。
『氷柱』本名不詳、年齢不詳、生物学的性別は女性、オラクル&インサニティー・カンパニー日本支社事業部営業三課課長補佐…こんなプロフィールがどのくらいアテになるかも怪しい実力者。
「それを言うなら『先輩』はなしよ、
「また名前…はあ、わかりましたよ『氷柱』…それで、他の勢力は?」
私がこんなところでぐだついているのも、仕事の為、もっと言えばこの市場で明日行われるオークションの為だ。
「それがちょっと変なのよね、どこも不自然なぐらい落ち着いてるって言うか、私たちの参加で萎縮してるみたいな…まあそんな程度で落ち着くような組織だったらここに来るわけないし、私たちの知らない情報があるって考えるのがセオリーよね。」
「セオリー…」
アテにならないと言うならそういう思考法そのものがアテにならない。
隠秘使いの戦いはなんでもあり、死ななければなんでもあり、なんなら死すらなんでもありだ。
「念の為もう少し調べてこようかしら?」
「…いや、その必要はなさそうです。」
この道に私が仕掛けた罠
「フォークロア観測函、起動」
氷柱が観測函を起動した、時間的にはギリギリ…
「『城化物』!」
「「『オーディンの視線』」」「『オーディンの食事』」
「『指切り』」
間に合ってない!と言うかふざけんな!要注意勢力全員でこっち潰しに来んのかよ!?
迫る巨体の鬼神、ライトの使ってたやつより遥かに高強度な式神、そして目の血走った人の波!
「ちくしょうめ!『百鬼夜行…
「ちゅーもーく!」
「「「「!?」」」」
今この場にいる全員の思考が重なったな?誰だよ!?
「「撤退要素確認」」「「『抹消』」」
あ!牙羽探偵事務所の奴ら逃げやがった!?喧嘩売るなら最後までやれよおい!
「あら帰っちゃった?まあそういうこともあるよね!」
この薄暗い地下道でもはっきりわかるぐらいギラギラと輝くのは乱入してきた少女の金髪…本当に誰だ?
「お!みんな自己紹介が必要って顔してるね?ふふん、教えてしんぜよう!」
なんでこの緊張状態で得意げに胸張ってるんだこいつ…
「あいにく興味無いですわ!」
「こっちもそうだね!」
よし、注意が向こうにそれた、今のうちに逃げよう。そう思って氷柱に視線を送るが…首を振らないでくれ!ノーってことか、まあ私もうっすら思ってたよ。この状況だと逃げる方法がなさ過ぎるもんね!
「私のコードネームは『ネフィリム』!月の石は私たちのもんなんでその辺よろしく!」
月の石…
「なるほど…よし、もういい、わかった。」
これは流石に逃げられない、私もそろそろ
「やる気になってくれたみたいだね?じゃあやろっか!」
「『氷柱』頼みがあります。」
「どうしたの?」
「今すぐチームを招集してください、私だけじゃ無理そうですから。」
「りょーかい、ようやく課長らしくなってきたね。」
氷柱が地下道を走って消えていく、それを日牢会の下っ端が何人か追いかけて行くが…彼女ならなんとかなる程度の人数だから今は気にしない。
そして残った全員が構えを取る。
「「フォークロア観測函、起動」
唱えるは現代の魔法の呪文、そして悪魔との契約文。
「『化物』観測開始」
「『進化論』観測開始!」
現代の妖狐と未来の巨人が、相対する。