隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録 作:sakigake2004
「アハハ!突撃!」
「グッ」
さっきよりも遥かに重いし鋭い!サイズが大きいのも面倒!スピードが上がってないだけマシか?
「守るだけじゃダメだしさ!もっと攻め込んでこなきゃ、ね!」
「じゃあ攻め込む隙を渡せよな!?」
こんなこと言ってる場合じゃない、このままじゃチームが集まる前に私が潰されて…そうだ。
どうしてこいつは私だけを狙う?
どうして牙羽探偵事務所だけが逃げた?
どうして長壁とネフィリムはそれぞれ一人だけなんだ?
答えはシンプル、この戦場は陽動、囮だ。
「お前、目的はライバル潰しじゃなくて時間稼ぎだろ。」
その一言で攻撃が止んだ。
図星か、それとも隙に見せた罠か、どっちにせよチャンスだ。
「フフン、そうだったらどうするのさ?逃げる?」
「まさか、お前を倒してそのままお仲間も一緒に止めてやるさ、月の石はウチが貰う予定なんでね!」
「じゃあC・イルカルラは私がぶっ壊しちゃってもいいってこと?それならありがたいんだけどな。」
…なるほど、なんでこんな乱暴なやつが送り込まれたのか合点がいった。
「お前らの目的は破壊か、回収できないならいっそ日本に渡る前に壊してしまおうって魂胆だな?」
「だいせーかい!」
「だとよ、聞こえてるか姫路呪詛センターと日牢会!ここは引いた方がいいんじゃないか!」
「「…!」」
「貴方達も逃げちゃうわけ!?」
よし、引っかかった!
「『化物』!」
「っ、いったいな!」
しばらく相手して分かったが注意があっちこっち向くんだよなこいつ、罠に簡単に引っかかる。
しかし顔面にクリーンヒットしてるのに痛いですむのかよ、頑丈すぎる、私だけじゃパワーが足りてない。今のうちに氷柱を呼び戻す…ダメだ、ここ以外にアメリカの刺客が何人いるかもわからない、今呼び戻すのは悪手だ。
「やるしかないか…」
ネフィリムが痛みによって怯んだその一瞬。
単純な
「今より強い自分を…少しずつでも観測すればいい、それで十分。」
意識を、思考を、感覚を研ぎ澄ましていく。
実に十ヶ月もの間澱んでいた思考がクリアになっていく。
多くを思い起こし、それを一つずつ思考の外に押し除ける。
私を見て悲しみを浮かべるツグミ先輩の顔。
私をどうしようもできないムカつく
私をどうもしない四課長の声。
そして…私を反省させてしまったアワブンラク事務所の生き様。
そうだ、私は死にたくない、死ぬべきじゃない。
死がどこまでも軽いこの国で、せめて私ぐらいは私の死を重く見るべきだった。
死ななきゃ安い?そういうわけでもない。
苦痛を、悲しみを、思考から取り除いて残ったのは…
「私には大切にしたい人がいる。」
チーム、そしてツグミ先輩
「ん〜?遺言ってやつ?」
「違うね…覚悟ってやつさ!」
なんだか妙に晴れやかな気分で目の前の怪物と向き合う。
「せっかくだし自己紹介をしようか。」
説明、いや、宣言は
自他が認識し観測した隠秘はより強固な現実として作用する。
構えをとる、フォークロア観測函を握り締め、神経を研ぎ澄ます。
「いいね、そうこなくっちゃ!」
ネフィリムも一緒だ、ここから始まる戦いに備えている。
「オラクル&インサニティー日本支社営業三課課長、『狐火』お前を突破する神託の名だ!」
「アイテール・インダストリー加速器課バイト、『ネフィリム』もし壊しちゃっても謝らないからね!」
死闘が、始まる。